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第六章 解呪編
ライム視点③
しおりを挟む主を助けるために、普通の進化ではダメです。
ならば神を目指すのが一番主の為になるのでは?
そう思った私は神について研究をするため、神殿やパワースポットなど不思議な物を見て回りました。
そしてその過程で魔力を蓄えた私は、1週間後スライム牧場に戻ると進化をすることに決めたのです。
どうやら進化には魔力とイメージ、そしてそれ由来の物があると成功率があがるようでした。
なので私は神力が宿るとされた石を手に入れ、それを体に取り入れていたのです。
準備を整えた私は、進化をする為に体の外側に魔力を張り巡らせ集中していました。
そして気がつくと私は光に包まれていたのです。
これで進化が上手くいくことは、間違いありませんでした。
しかしこのとき現れた光の塊は言ったのです。この進化によって、私の身体や記憶を失う可能性があると……。
これならば進化する前に、主に会えばよかったと後悔していたときでした。
再び、あの声が私の耳に届いたのです。
『時はきた。同胞達よ……目覚めの時は近い』
進化を遮るように聞こえたその声に嫌な予感がした私は、自分の体を確認しました。
そして思った通り、私の体はもう光り輝いていませんでした。
だからそれは、進化を中途半端に止められたせいだったのかもしれません。
何故か私の姿は、スライムに戻っていたのです。
その後何度人間の姿に戻ろうとしても、戻る事はできませんでした。
私は焦り、混乱しました。
この姿で主の前に出ることなんて出来ません……。
しかし、このときの私は何故かそれを前向きに考えてしまったのです。
でもせっかくこの姿になったことですし、有用に使ってみることにしましょう。
それにもしかすると、この姿なら主に引っ付いていてもバレない可能性がありますよね。
そう思い直した私は急いで主の元へと向かいました。
そこには───。
「一体どうなってんだーーー!?」
と、叫んでいる主がいました。
そして近くには知らない男がいた事に、私はショックを受けたのです。
それから私は何度か主の近くを通ったものの、やはり気づいてもらうことはできませんでした。
「ライム……いつ帰ってくるんだよ……」
そう言いため息をつく主に、私はここにいますよ!と、話しかけたい気持ちを抑えつつ私はスライム達に指示を出しておいたのです。
もし私がいなくなっても、主をサポート出来るように……。
その後、私は主のいないところでその男に話しかけたのです。
私が見てもその男は、進化種である事がすぐにわかる存在でした。
「あなた、何者ですか?」
「へぇ~!喋るスライム?イルの周りには沢山スライムがいるけど、喋れるスライムもいるんだねー」
「私の名前はライムです」
「え?ライムって、イルの執事の!?」
全く名前を名乗らないその男に苛々しつつ、私はとりあえず頷いてやりました。
「何故あなたがその事を知っているのか知りませんが、何なんですか?」
「それはこっちのセリフだよ~!君が戻ってこないからイルがすっごく寂しそうなんだよ?」
「私がいなくて主が寂しがっている……?」
先程私の名前を呼んでいた主を思い出し、少し嬉しくなってしまいました。
どうやら私は主に嫌われている訳ではないようです。ならばすぐにでも元の姿に戻る方法を探さなくてはなりませんね。
だから仕方がなく、私はこの男に事情を説明することにしました。
「成る程~。それで、スライムから戻れなくなったんだね?」
「あなたのような男に聞くのはどうかと思いましたが、一応進化種であることには間違いありませんから」
「ひどい言われようだね!」
このチャラい男を信用したくはないのですが、今の私に頼る相手もいませんからね……。
「それで、何か知ってるとでも言うのですか?」
「うーん、少し思い当たる事があるから待ってて貰える?」
「仕方がありません。あなたのことを全く信用していませんけど、少しの間主に引っ付いて有意義に過ごしてみたいので、それまで待つとしましょう」
そう決めた私は、それから数週間主にバレる事なくひたすら主に引っ付いていました。
主には悪いですが、やはり主と一緒にいると私の心は満たされるようです。
そして、ようやく情報を持ってきた男は暫く主の側から離れる事を私に話してきました。
「近々大規模討伐がおきる可能性があるとかなんとかで、俺は出ないといけなくなったからね。落ち込んでるイルのこと頼んだよ」
「それで、戻る方法は?」
「もう一度進化を試して見ることだってさ!」
「もう一度?」
それでは、進化してしまうのでは無いだろうかと思っていると。
「進化する前に元に戻る可能性があるから、そこで進化を頑張って止めてみてねって、知り合いの女神が言ってたよ!」
「そんなことできる人いるのですか?」
「わからないけど、ライムならできるんじゃない?じゃあ、俺はもう行くからねー!」
そう言ったときには、男は私の前から姿を消していました。
全く、最後まで名を名乗らない無礼な奴ですね。
そんなことよりもとりあえず、進化を試す前に私にはやる事がありました。
それは主につきまとう錬金術師に、忠告をしなくてはならなかったのです。
その男はその扉の前でため息をつき、入るかどうか悩んでいるようでした。
だから私は男の前にでると、文句を言ってやりました。
「直球に言わせて貰います。これ以上主を傷つけるのでしたらこの場からすぐに立ち去りなさい」
「え?」
「貴方は主のためにとても尽くして下さっているようなので、まあ少しぐらいなら主に触れても許して差し上げようと思っていました。ですが、そんな簡単に諦められるのでしたら、もっとスパッと諦めて下さい」
この錬金術師の男は、あのクソ男とは違ってまだ誠実だと思うのです。
主を独り占めしたい私からしたら面白くないですが、まあ少しぐらいなら認めて差し上げてもいい、そう思っていたのです。
それなのに今の弱気な態度に、主への想いはその程度なのかと、喝をいれてやりました。
これで主が悲しんだら、あの男のせいにしてやりますから。
そう思いながら私は錬金術師の元を去り、急いでスライム牧場へと足を運びました。
人間の姿に戻るために、以前と同様に進化をするイメージを持ち、私は光輝き始めたのです。
それなのに、また偶然このタイミングであの声がしたのです。
『まもなく我らは解放される!さあ、準備はできているであるか!!』
その煩い雄叫びに私の意識は邪魔をされてしまい、また進化が途中で止まったのです。
そして、私は自分の姿を確認しました。
そこには、求めていた人間型の姿があったのです。
私はすぐさま主の元へと戻ろうとしました。
それなのに、声はまだ続いていたのです。
『同胞達よ!この憎き地を血に染めるのはすぐそこであるぞ!!』
その言葉に私は信じられないと目を見開きました。
そしてこの存在が一体何なのか理解してしまったのです。
何故私の耳に聞こえるのかはわかりませんが、もし、私に聞こえるこの声がこの国にいるとされる守護竜ブルーパールドラゴンだとしたら、まもなくその封印が解かれると言う事なのでしょう。
そして事の緊急性を理解した私は主の元へ向かうのを諦め、私の知る最強の存在であるチャラ男の元へと向かっていました。
何故でしょう。
これから起こる事には彼の助けが必要だと、そんな予感がしたのです。
そう思う私は、封印が解かれたらどうなるのか何故か理解しているようだったのです。
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