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おまけ ()内は相手キャラ 主にギャグとイチャイチャ
短編 拐われた話5 (ダン視点)
しおりを挟む通信していたイルのお陰でオークションが開始したのがわかった。
ウルとデオルは、客として上手く侵入しているためここにはいない。
そして俺はオークションが始まるまでの間に何をしていたかといえば、イルの護衛で来ていた騎士達を集めていた。
そのため外を包囲するための騎士達の手配も終わり、後は突入を待つだけだった。
しかし問題がたった今発生した。
イルとの通信が切れたのだ。
焦った俺は、とりあえずウルに通信が出来るかどうか確認する。
『おい、ウル。聞こえるか?』
『あれ、ダン。俺に通信いれるなんてイルに何かあったのかい?』
『イルと通信が取れなくなった』
『成る程ね……今いいところだったけど仕方がない』
こいつ、こんなところで一体何をしていやがるのかと文句を言ってやりたかったが、そんな時間は今の俺にはない。
何よりも俺にはイルの方が大事だからだ。
『お前とは通信が普通に通じるということは……』
『イルの魔力が不安定になったんじゃない?』
『何か盛られてたりしてねぇよなぁ……』
『さあ?でもイルが弱ってる姿を見るのは、少し楽しみだね~』
『おい、次そんなこと言ったらぶっ飛ばすぞ』
『やだなぁ~、ジョークだよジョーク!!あははは!』
全くジョークに聞こえないうえに、そんなことにつきあっている時間もない。
俺はオークション会場の現状を確認した。
『それで、イルはまだ出てきていないな?』
『今は、七色に輝く鏡が出てるよ?』
『そんな情報はいらない。俺はすぐにイルを救いに会場に突入する』
『まったく、せっかちだねぇ~。でもそんな君にいい事を教えてあげるよ。オークション会場出品ステージの真上にあたる場所は、君がいる場所から北に向かってすぐにある赤い実を付けている大きな木の所だよ!』
相変わらずそういうところは抜かりない男だ。
しかし、今は味方にいてくれるだけでとても有難い。
『情報助かる』
『だって君がすぐ助けに行かなかったら、デオが飛び出して行っちゃいそうで、これでも俺はヒヤヒヤしてるんだよ~』
何をしているのかと思ったら、案外まともな事をしていたことに驚いてしまう。
でもウルはその状況を楽しんでいるということなのだろうか?
よくわからねぇし、わかりたくもねぇ……。
『すまねぇが、イルが出てきたら合図をくれ!』
『少し待ってくれるかな、今デオに不審がられてるから……デオ、俺は別にぼーっとしてたわけじゃ……』
なんてウルが話している言葉だけ聞こえてくる。
その間に俺は、ウルが指定した位置へと移動していた。
そして少し走ったところで、その木はすぐに見えて来た。
この辺の大きな木で、赤い実をつけているのはこの木しかない。
それにしても地下オークションとはいえ、こんな普通に木が生えているような真下でやってるとは……やっぱ誰も思わねぇよなぁ。
今回イルが拐われ無ければ絶対に気づかれなかっただろう。
そう思うと、こいつらは運が悪いと言うか……。
まあ、ライムの加護を持ってるイルが豪運なのかわからねぇな。
そんな事を考えていたら、ウルからの通信に一瞬出遅れてしまった。
『ダン、ダン!!』
『おっと、すまねぇな』
『イルが出てきたよ!!なんといったらいいのか……あれは完全に盛られて……』
その言葉が聞こえた瞬間、俺のこめかみにピキッと筋が入る。
憎悪で破壊衝動が抑えられなくなった俺は、無意識に破壊の力を使って地面を粉々に粉砕したのだ。
そして気がつけば地面が割れ、轟音とともに俺は真下に落ちていた。
あ、しまった!
怒りの余り真下に穴開けちまった……。
とにかくイルが真下にいない事を祈るしかねぇな!
そう思い、床に着地した俺の前には───。
「ダン?」
俺が会いたくて、助けたくて、仕方がなかったイルがそこには立っていた。
「イル、助けに来てやったぞ!」
「ダン!!!」
俺を認識したのか、イルが俺に向かって歩いてこようとするも、何かを盛られているイルは上手く歩けないようだった。
俺はそんなイルを優しく持ち上げてやる。
「ダン、助けに来てくれるって信じてたぞ!」
そう嬉しそうに言うイルを見て、俺は耐えられずにそっとキスを落としたのだった。
そんな俺たちのまわりは未だに粉塵が上がり、客はパニックに陥って右往左往しているようだった。
しかし俺はイルしか見えておらず、そんなの全く目に入っていなかったのだった。
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