1 / 44
プロローグ
しおりを挟む「回天戦用意!」
号令と共に艦内が慌ただしくなった。
相良はゆっくりと立ち上がり、鉢巻きを締めた。
「搭乗員乗艇!」
潜水艦の乗組員に感謝と激励の言葉を述べ、同じ釜の飯を食った回天隊員と抱擁をかわす。
「柳原一飛層!」
相良は同じ回天隊員の柳原一飛層に声をかけた。
「はい!」
「貴様は…………」
相良が何か言いかけたが、その言葉は艦内の雑音にかき消された。
「相良少尉。なんでしょう」
「貴様が持っていろ!」
相良は自分の懐中時計を柳原一飛層の手に握らせてから敬礼した。そして一瞬、彼に微笑みかけ、自艇に乗り込んでいった。
昭和二十年八月四日、相良少尉はバシー海峡にて戦死。
柳原一飛層の艇は、油圧の故障により発進する事ができなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる