ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪蒸気船編≫

8.妖怪退治

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 妖怪退治ようかいたいじを決意した2人は、少女を助けるため、幸手さって村へ向かう……

……

妖怪退治ようかいたいじを引き受けてしまった……この前は異界いかいで妖怪に奥義おうぎ一撃放いちげきはなって逃げて来たけど……たぶん、今回退治するのはあの妖怪だよな?……すさまじい妖気だった、今思い出しても『ぞっ』とする……ちょと自分を擁護ようごする訳では無いが、あの時はさらわれたマリンが心配で、戦っている場合じゃないなと思ったからで……あ~、なんと言うか無駄むだな戦いは避けたかっただけだ……勝てる自信はある……」

『ニャ~』
 ミーシャはマリンにっこされてご機嫌きげんで甘えている。

「日本に来たばかりの時には不覚ふかくをとったけど、私には忍術と魔法があるのよ、ちゃんと準備をしていどめば妖怪なんてどうって事は無いわ、今回退治する妖怪は私のお腹を切ったヤツだと思うけど大丈夫よ……今思い出しても頭にきちゃうわ! この次に会ったら痛い目に合わせてあげるんだからね! 覚悟して待ってなさい!」

『ニャ、ニャ~』
 ミーシャはマリンにっこされてさらに甘えている。

……

「マリン! 何か作戦はあるのか?」

「そうね、妖怪におそわれた時、忍術の御札おふだが効果があったから、この御札と魔法陣を組み合わせてハイブリッド結界を作るわ!」

 裕翔ゆうとはマリンが作る結界ならば殺れるかも知れないと考える……
「そうか、結界を作るのか!」

「でも、御札が、今持っている1枚しか無いのよね……」

「それじゃ急いで、沢山たくさんつくらないと」

「村の人にも手伝ってもらえたら良いんだけどな?」
一緒にいた村人の権助ごんすけさんにマリンは、お願いしてみる……

「妖怪を退治たいじし、この子が助かるのなら協力させてほしい、いいや、ぜひお願いしたい……村長にも話を付けておくよ」

「ありがとう! 権助さん!」

 村人の助けをもらえる事になり、絶対に退治すると意気込いきごむむマリン。

……

 ところで、裕翔はマリンが今までに使ってた魔法、そのほとんどを忍術だと言い張るので、いい機会きかいだから聞いてみる事にした……とりあえずここでは忍術と言っておくが……

「な~マリン、忍術は何処どこおぼえたんだ?」

「それはね、日本から忍者の本を取り寄せてもらったのよ! 結構大変けっこうたいへんだったんだから……時間も、お金も掛かったわ」

 マリンは本で勉強したらしく、かなり自信たっぷりだ……

 忍術らしい技は一度見たけど、あの技は格好良かっこよかったな……裕翔はマリンが使った土遁どとんの術の事を思い出していた……だけど、御札おふだを使うんだよな?

「な~、マリン、前から思っていたんだが?  マリンが使っているのは、忍術じゃなくて陰陽道おんみょうどうの術なんじゃないのか?」

「なにそれ? 陰陽道? 知らないわよ、忍術よ!」

「忍術では、御札は使わないと思うんだけどな?」

「そんな事ないわ! 本の表紙に『忍者!』って書いてあったもん……」

……

『書いてあったもん』……って、ちょと可愛いじゃないかと裕翔は思ったが、妖怪退治については少し心配になった……

「だけど、魔法は、かなりの腕前うでまえだからな、大丈夫だろう」

「なに? なんか言った?」

 マリンは早く村へ行って御札の準備をしようと意気込んでいて、もう裕翔の話を聞いていない様だ……

「ん! なんでもないよ! 急ごう……」

……

 活気かっきがなく、静まり返っている村、村人は妖怪の襲撃しゅうげきを恐れていて、戸をめ、外へ出て来ない……閑散かんさんとする村をしばらく歩くと、少女の家が見えて来た。

 村はずれの、小さな住まいで、一人つつましく暮らしている……

「くるみちゃん! お父さんとお母さんは?」

「お父さんも、お母さんもいないの、私1人」
さみしそうに話す。
 2年前、妖怪退治に行くと言って、出て行った両親は戻って来ない。若い村人のほとんどは妖怪退治に行ったきり戻って来なかったのだ。

いやな事を聞いちゃたかな……ごめんなさい」
マリンはくるみにあやまる。

……

 しばらくして、村人が御札を作るのを手伝いに夜遅くに集まって来てくれた。

「話は権助から聞きました、妖怪を退治出来るのであれば、私たちもお手伝いいたします」

「みなさん、ありがとうございます。絶対に妖怪を退治しますから!」

 その夜は、少女の家で御札作りが行われた。


……『コケコー』

朝になる。

「私たちが、妖怪を退治するから安心してね!」

 マリンは、くるみちゃんを安心させようと優しく話しかける。

「うん」
 くるみちゃんはうなずいて、笑顔を見せてくれた。
その笑顔を見て少し安心するマリンだった……

「がんばろうね!」

 マリンと裕翔は妖怪の出る場所を教えてもらい、昼間の内に現地に行って、その場所を囲うように結界を張る事にする……

……

綺麗きれいな池だね! こんな場所に妖怪がいるのかな?」

「この場所に妖怪が住んでいるわけじゃないぞ、異界からの門をこの場所に作ってあるんだよ」

「そうなの?」

「今夜、この場所からくるみが人身御供ひとみごくうとして、妖怪の元に行くことになるから、絶対に助けるぞ!」

「わかったわ! 強力な結界をつくりましょう!」
 二人は池を囲む様に結界を張り始めた。

……

「もう、夕方になっちゃたわね!」
2人は半日以上もかかって結界を念入りにはる。

「ごめんね裕翔、この結界は時間が掛かるのよ……」

「いや大丈夫だ!」

 池の周囲には、西洋せいようの魔方陣と忍術? のハイブリット結界が出来上がる…… 

「そろそろ帰ろう、くるみちゃんも不安になってるかも知れないから」

「そうね」……

 2人が村に帰った時には、日が落ちて暗くなっていた。くるみは身を清められ、儀式ぎしきの準備が始まっている。彼女は気丈きじょう振舞ふるまってはいるが、緊張しているように見えた……

「くるみちゃん、遅くなってごめんね。結界の準備は出来たから安心してね! 絶対、退治するからね、あとこの御札がくるみちゃんの事を守ってくれるからね!」と、体に貼り付ける……

「……そこに貼るのか……」

 御札を貼られたくるみの表情から、少し緊張が取れたのが分かった……

……

 草木くさきねむる時間、村人たち数人と一緒にくるみは人身御供として、妖怪が出る池へ連れていかれる。
 もちろん、裕翔とマリンも同行する。

……

 一行は妖怪の出る池に到着した。月明つきあかりにらされ、水面が輝いていて、神秘的に見える池、フクローの鳴き声が少し不気味にきこえて来る……

「ちょと裕翔、私少し怖いわ……」

「マリン、大丈夫だよ、落ち着いて」

「そうよね、わかっているわ、くるみちゃんの方がもっと怖いよね……私も頑張らないとね!」
 くるみは、池のほとりに一人で座らされていて、怖さで震えているようだ。

……

 10分程経過したか、不気味な突風が吹きはじめる。突然、水面の1メートル上の空間が大きく割れて、中から妖怪が現れる。その妖怪は水面の上に降り立ち、くるみの方へゆっくりと向かって来る……

りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん
破邪はじゃの法! マリンは手刀しゅとう空中くうちゅう九字くじを切りながら呪文じゅもんとなえ、白く輝く魔法陣を出現させて結界として準備していた御札に力を流し込む。すると池の周囲に設置した御札と一対いっついになっている複数の魔法陣が連動、一つの巨大な結界として起動した。

「マリンが呪文じゅもんとなえるの初めてじゃないか?」

「そう? 何か怖いし、気分的に唱えて見ようかなって、思ったのよ……」

「そ、そうなのか……」

……

「ね~裕翔ヤバイ! あの妖怪、私のお腹を切った奴ににているわ!」

 マリンは、嫌なことを思いだして、少したじろぐ……

 暫くすると、もう一体の妖怪が現われて水面の上に降り立つ……

「2体もいるよ~」マリンの声は少し震えていた……

 マリンが張った結界に気が付き、さらに強い妖気をまとった妖怪が出て来た……結界の力が押され始める……

「だめ~!、私、力が入らない……」

 体から力らがどんどんけて行く……

「大丈夫かマリン! 頑張れ!」

 歯を食いしばり、頑張っているマリン……もう駄目かと思った時、 突然マリンの体に強力で大量の力が流れ込んで来た……

「あっん!」

 マリンは、思わず、可愛らし声を出してしまい、顔が真っ赤になっている。

……

 強力で大量な力はマリンに流れ込み、さらに結界の力を強くする……くるみに持たせた御札も妖怪の接近をこばむ……次第に結界の中にいる妖怪が、もがき苦しみ始める……

「私、もう限界……も~このちから~! いったいなんなの~!」

 大量に流れ込んで来る力にマリンも耐えられなくなって来ている……

「裕翔! 止めをお願い!」

「俺が仕留しとめるのか?」

「そうよ! 早く~! もう限界よ~!」

「わかった、それじゃーおれ剣術けんじゅつをみせてやる!」

 そう言うと、裕翔は居合いあいの構えを取り、妖怪に技をはなった!

「奥義、『烈風れっぷう』!」

 裕翔のはなった技が水面を切り裂きながら走り、一体の妖怪を切り裂いた!

 一瞬で妖怪は消えていなくなった……

「凄い! 裕翔、強いのね!」

 すかさず、もう一体に攻撃を仕掛けるが、異界へ逃げ込まれらる……

「だめか、逃げられた~」

 くやしがる裕翔たが、異界の門はゆっくりと閉じていった……

……

 裕翔は気を失っているくるみをかかえ、格好良く戻って来た。

「終わったな、マリン!」

「ありがとう裕翔! 格好良かったわ!」

「マリンも可愛い声だったぞ!」

「もう! いじわるね、あれは、急に強力な力が流れ込んで来たから……もう! びっくりしたんだかね!……でも何だったのかな?」裕翔にからかわれ、少し照れながら話す。

「村に帰ろう!」

「特別よ、手を繋いであげるわ!」

「そうか、ありがとう」

 裕翔がくるみをおんぶして、マリンと手を繋ぎ、仲良く帰ろうとしたとき! 辺りが派手に光輝き、一人の幼女が現れ、行く手を塞いだ……

……
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