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第3章【火曜の火山《燎煉》】

今日から皆も燎煉山

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 智美の長ったらしいお話が終わる頃にはもう既にお昼を迎え、無事にお楽しみの従業員食堂でご飯をごちそうになったのは良い思い出だが一言付け加えるなら、さすが燎煉の味付けは濃い。
 ちなみに長ったらしいとは彼女を表してるのにはよく言ったものだが智美の名字に入ってるのは実際には【長】じゃなくて【永】の方だから間違えないように。
 あとこの事言わないでね、私どうなることやら。

 今日の昼御飯はラーメンセットで普段私は汁まで飲み干すタイプだがあれは論外すぎるものだ。
 味は塩ラーメンだったけど濃すぎる……心臓に負担かかりすぎだから皆は普通に飲み干しちゃ行けないぞ?
 お姉さんとの約束だ。

【俺は飲む。】

【上に同じく。】

 早死にしたくなければマジで飲むのはおすすめしないよ?
 私は忠告しておいたからね。

 燎煉の人達はガッツリ食べるためラーメン1杯完食すれば私のお腹は12分目になり、当然食べれば眠くなるが昼休みは何をするわけでもなく更衣室でボーッとパソコンをいじくってたけど、あることに気がついたわけ。



 ……髪が赤くなってきた。



 他の地区の人が他のところに長居したり自分の得意とする曜日の魔法以外を使うと侵食されてこうなる現象は多々多発してしまう。
 けどこれは別に身体に害がある訳じゃないし別に普通のことだから心配しなくても良いもの。
 それに結愛だって例外なくピンク色の髪の毛から赤に、瞳の色は緑からマゼンタ色と燎煉ではオーソドックスな組合せとなってるじゃないか。
 いや、私は髪は赤くても目の色は元々赤っぽいから変化はないけどね?

 ちなみに目が赤いというと幻術が使えるイメージがあるけど智美は実際に使うことができると断言してたなぁ。
 玄弥も目は赤いし……こう見れば私も使えるんじゃねって期待したいけど悪用に使いたくなるから止めるけどさ。

 いくら目が赤くても燎煉の民は幻術を扱える訳でもないらしい。
 相当強い力を持つものなら軽く使えるらしいが燎煉で智美以外の民のトップが使えても5秒が限度っぽい事は昔に聞いたことがある。
 そう思うと1度の広範囲で他人を丸1日以上も幻覚に陥れる智美の力がどれ程強いかわかるだろう?
 曜力も……そして言わなくてもわかる通り筋力もね。

 とりあえず休憩時間の1時間で作れる分の書類はできるだけ進めておいたんだけど、だれか瑞穂を見てない?
 昼御飯終わってから智美に連れていかれたっきりだから心配だなぁ。















 私と結愛の持ち場は煉瓦ブロックの製作現場に配属された。
 ただひたすらに型に溶岩を詰めては冷却倉庫に持っていき、冷えて固まったモノから取り出して隣の部初期ベルトコンベアーで移動させる……ね? 簡単でしょう?
 まあ難点と言えば飽きっぽい人には不向きとだけは言っておくけどね。

 けどこういう作業は私は嫌いじゃないから良いけど、隣の結愛はアホ毛をピョッコピョッコと動かしては不機嫌そうな表情ながらも黙々と溶岩を型に詰めてくれる。
 何だかんだワガママだけど言われたことは少しだけ不機嫌そうに反応はすれど、決してノーとは拒まず素直に従ってくれる辺りは可愛らしいと思わない?
 私は思う、可愛らしい妹分だよ。

「暑いけど頑張らなきゃ……だって私偉いんもん。 偉い人が頑張ってこそ皆付いてくるのよ!!」

 額に汗を伝わせながら心を燃やすのは七刻のトップとしての自覚なんじゃないか?
 皆のためじゃない、あくまで自分のために頑張ってるのはわかるがこうして何かのためにここまで集中する彼女もとても珍しい。
 なぜだろう、とてもマトモに聞こえるような名言が生まれた気がするわ。
 なら私も頑張ってこそ一肌脱いで頑張ってやろうじゃないか……だって私も偉いもん、女神様だもん。



 っとその前に購買質でスポーツドリンクを買ってやると大人げなくゴクゴクと一気に飲み干してしまうけど、そのあとのキリッとした表情はなかなかの見物。
 見違えるようなほど凛々しくて、玄弥にも……他の皆にも見せてやりたい気分だ。
 じゃあ第2ラウンド始めるとするかなッ!!

 仕事始めてからまだ15分もしないうちに第2ラウンドは速すぎるけどツッコむの止めてくれない?
 要するに気持ちの持ちようなんだから。
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