1 / 47
突然やってきたチャンスという名の結婚話
しおりを挟む
チャンスというのは、どこからやってくるかわからない。
そして今、
私はそれを、嫌というほど思い知らされていた。
目の前にいるのは、生まれてからこの方15年間、ほぼ顔を合わせたこともなく、会話を交わしたこともない、実の父親。
母とは政略結婚で、この侯爵家を乗っ取るために結婚しただけの、つまらない男。
母と結婚する前から愛人がいたにもかかわらず、それを前侯爵であった祖父にみじんも感じさせることなく、まんまと侯爵の地位を得た強運の持ち主、というより――運だけで生き延びてきた男だ。
10年前に母が亡くなり、そのあとすぐに祖父も亡くなったことで、堂々とその女と隠し子である私の2ヶ月年下の義妹を我が家に迎え入れ、人生を謳歌している。
私のこの男に対する印象は、“クソヤロー”の一点のみである。
多分、母はこの男の本性を早いころから見抜いていたのだろう。
祖父の頼みで仕方なく結婚したのはいいが、私が生まれるとすぐに、家内別居を開始した。
私が今住んでいる屋敷は、本宅から少し離れた位置にある別邸である。
もちろん、母名義にしてあるため、父には取り上げることができない。
おかげで、顔を合わせれば嫌味と嫌がらせのオンパレードである、継母と義妹に合わなくて済んでいる。
そんな父が、突然この別邸にやってきた。
私が一人で暮らしている、この別邸にだ。
「やっと親子の縁を切ってくれる気になりましたか?」
久々にあった父親に、第一声でこんな言葉を投げかける娘は、世界広しといえど、私くらいなものだろう。
「実の父親に向かって、それしかいうことはないのか?」
「あなたの実の愛娘は、本宅にいるではありませんか。侯爵家を乗っ取るためにしかたなく結婚した女の子どもなど、どうなろうとかまわないのでは?」
「まあ、それもそうだな。」
「では、気の変わらないうちに縁を切る書類の作成を………。」
一秒でも早く解放されたくて、私はすぐさま、席を立ったのだが。
「まあ、まてまて。」
父は慌てた様子で止めに入った。
「なぜごねるのでしょうか?」
「実は、お前に婚姻の話を持ってきた。というか、結婚してもらう。」
「はい?」
この私と、婚姻……だと?
父に一切愛されていない野放しにされていると有名なこの『捨てられ侯爵令嬢』と陰口をたたかれている、この私と?
誰だ、そんなもの好きな男は!
第一、私と結婚しても、わが侯爵家の恩恵なぞ、一切受けられないむしろ何の得もない。
「相手は、コンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公だ!」
「? 現皇帝の弟君ですよね? よくそんな高貴な人と私みたいな女との結婚を取り付けられ・・・」
というところで、ふと思い出した。
コンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公爵。
現皇帝とは10歳も離れている、たった一人の兄弟。
確か、前皇帝の寵愛を一身に受けた側妃の一人息子で、生まれたときに前皇后の策略で、現皇帝の代わりに『皇族の呪い』を受けている人。
『皇族の呪い』とは、この地に皇国を築いた初代皇帝が、この地のもともとの持ち主であった王国の最後の王女から受けた『死の呪い』だという。
その呪いのせいで、この国の皇族はなかなか子宝に恵まれない。
もし恵まれたとしても、早死にしてしまうことが多い。
そこで、一人だけを犠牲にして呪いを全て受けてもらうことで、何百年も生き延びてきたのである。
なんて、都合のいい話だろう。
『皇族の呪い』を受けた子供は、20歳までに誰か他の者に呪いを移さなければ、死んでしまう。
そして呪いを移す行為が、『子作り』である。
行為をした相手に、呪いを移すというものだ。
移した相手は、呪いによって死ぬまでずっと、地獄のような苦しみを味わうという。
それを知っている貴族たちは、まず自分たちの娘を差し出そうとは考えない。
まるで奴隷売買のように、何の躊躇もなく差し出せるのは、我が父くらいなのだろう。
しかし。
元の持ち主が生きている間は、呪いは抑えられるのだ。
つまり。
私が生きている限り、皇族の方々も公爵様も、呪いによる理不尽な『死』に怯えることはないのだ。
ただし、その呪いも移した相手、つまり私が死んでしまえば、また移した元の持ち主、つまり公爵様に戻る。
また、呪いの持ち主、つまり公爵様がその後で死んでしまえば、再び皇族に戻ってしまうという厄介な性質を持っているのだ。
よって、長身痩躯の容姿端麗超絶イケメンという聞く限りでは、超好物件である公爵様は、ただいま19歳という微妙な年齢であるにもかかわらず、今も独身でいらっしゃるのだ。
彼は、自分が20歳で呪いにより死んでしまうことに、何の躊躇もないらしい。
自分のせいで、誰かが死ぬのは騎士道に反するのだとかなんとか。
男のプライドがどうとかも言っていたような……。
正直、私にはどれも理解できませんが。
しかし。
彼が死んでしまえば、また皇族の誰かを犠牲にしなければならない。
よって、現皇帝が頭を抱えていることを知った父が、無理やりねじ込んだ案件なのだろうと、容易に推測できた。
「で? 見返りは? まさか善意でやるはずはありませんものね?」
まあ、答えはわかりきっているのだが。
一応、聞いてあげましょう。
「お前は、公爵と行為をして呪いを移された後、呪いによってもがき苦しみ、子を成すどころではなくなる。そこで、生き延びた公爵には、お前の妹であるシャトレイゼを妻に迎え入れてもらうよう、皇帝と約束を取り付けてある。あの子は公爵と結婚すると言ってきかないのでな。可愛い娘の願いを叶え、かわいげのないお前を追い出せるのだ。私にとって、これほどまでメリットしかない案件は、そうないんだ。我が家のために、犠牲になれ!」
これみよがしに、楽しそうに笑いながら話をする父親。
「…………」
まあ、うん。
そんな事だろうと思ってたけれどね。
私が黙っていると、父は何がそんなに楽しいのかと思うほどに、うれしそうに口角をつり上げた。
「十日後に、迎えが来る。逃げようとしても、周りはいつもの何倍もの見張りをつけるから諦めろ! そして公爵の二十歳の誕生日までの残り三か月の間に、何としても行為に及べ! わかったな!」
父は私にそう言い捨てると、愉快そうに笑いながら屋敷を出て行った。
…………私がうれしさのあまり、思わず口元が緩んでしまったことにも気がつかずに。
その意味を、誰も知らないまま。
そして今、
私はそれを、嫌というほど思い知らされていた。
目の前にいるのは、生まれてからこの方15年間、ほぼ顔を合わせたこともなく、会話を交わしたこともない、実の父親。
母とは政略結婚で、この侯爵家を乗っ取るために結婚しただけの、つまらない男。
母と結婚する前から愛人がいたにもかかわらず、それを前侯爵であった祖父にみじんも感じさせることなく、まんまと侯爵の地位を得た強運の持ち主、というより――運だけで生き延びてきた男だ。
10年前に母が亡くなり、そのあとすぐに祖父も亡くなったことで、堂々とその女と隠し子である私の2ヶ月年下の義妹を我が家に迎え入れ、人生を謳歌している。
私のこの男に対する印象は、“クソヤロー”の一点のみである。
多分、母はこの男の本性を早いころから見抜いていたのだろう。
祖父の頼みで仕方なく結婚したのはいいが、私が生まれるとすぐに、家内別居を開始した。
私が今住んでいる屋敷は、本宅から少し離れた位置にある別邸である。
もちろん、母名義にしてあるため、父には取り上げることができない。
おかげで、顔を合わせれば嫌味と嫌がらせのオンパレードである、継母と義妹に合わなくて済んでいる。
そんな父が、突然この別邸にやってきた。
私が一人で暮らしている、この別邸にだ。
「やっと親子の縁を切ってくれる気になりましたか?」
久々にあった父親に、第一声でこんな言葉を投げかける娘は、世界広しといえど、私くらいなものだろう。
「実の父親に向かって、それしかいうことはないのか?」
「あなたの実の愛娘は、本宅にいるではありませんか。侯爵家を乗っ取るためにしかたなく結婚した女の子どもなど、どうなろうとかまわないのでは?」
「まあ、それもそうだな。」
「では、気の変わらないうちに縁を切る書類の作成を………。」
一秒でも早く解放されたくて、私はすぐさま、席を立ったのだが。
「まあ、まてまて。」
父は慌てた様子で止めに入った。
「なぜごねるのでしょうか?」
「実は、お前に婚姻の話を持ってきた。というか、結婚してもらう。」
「はい?」
この私と、婚姻……だと?
父に一切愛されていない野放しにされていると有名なこの『捨てられ侯爵令嬢』と陰口をたたかれている、この私と?
誰だ、そんなもの好きな男は!
第一、私と結婚しても、わが侯爵家の恩恵なぞ、一切受けられないむしろ何の得もない。
「相手は、コンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公だ!」
「? 現皇帝の弟君ですよね? よくそんな高貴な人と私みたいな女との結婚を取り付けられ・・・」
というところで、ふと思い出した。
コンラッド・ウィン・ヴァーミリオン公爵。
現皇帝とは10歳も離れている、たった一人の兄弟。
確か、前皇帝の寵愛を一身に受けた側妃の一人息子で、生まれたときに前皇后の策略で、現皇帝の代わりに『皇族の呪い』を受けている人。
『皇族の呪い』とは、この地に皇国を築いた初代皇帝が、この地のもともとの持ち主であった王国の最後の王女から受けた『死の呪い』だという。
その呪いのせいで、この国の皇族はなかなか子宝に恵まれない。
もし恵まれたとしても、早死にしてしまうことが多い。
そこで、一人だけを犠牲にして呪いを全て受けてもらうことで、何百年も生き延びてきたのである。
なんて、都合のいい話だろう。
『皇族の呪い』を受けた子供は、20歳までに誰か他の者に呪いを移さなければ、死んでしまう。
そして呪いを移す行為が、『子作り』である。
行為をした相手に、呪いを移すというものだ。
移した相手は、呪いによって死ぬまでずっと、地獄のような苦しみを味わうという。
それを知っている貴族たちは、まず自分たちの娘を差し出そうとは考えない。
まるで奴隷売買のように、何の躊躇もなく差し出せるのは、我が父くらいなのだろう。
しかし。
元の持ち主が生きている間は、呪いは抑えられるのだ。
つまり。
私が生きている限り、皇族の方々も公爵様も、呪いによる理不尽な『死』に怯えることはないのだ。
ただし、その呪いも移した相手、つまり私が死んでしまえば、また移した元の持ち主、つまり公爵様に戻る。
また、呪いの持ち主、つまり公爵様がその後で死んでしまえば、再び皇族に戻ってしまうという厄介な性質を持っているのだ。
よって、長身痩躯の容姿端麗超絶イケメンという聞く限りでは、超好物件である公爵様は、ただいま19歳という微妙な年齢であるにもかかわらず、今も独身でいらっしゃるのだ。
彼は、自分が20歳で呪いにより死んでしまうことに、何の躊躇もないらしい。
自分のせいで、誰かが死ぬのは騎士道に反するのだとかなんとか。
男のプライドがどうとかも言っていたような……。
正直、私にはどれも理解できませんが。
しかし。
彼が死んでしまえば、また皇族の誰かを犠牲にしなければならない。
よって、現皇帝が頭を抱えていることを知った父が、無理やりねじ込んだ案件なのだろうと、容易に推測できた。
「で? 見返りは? まさか善意でやるはずはありませんものね?」
まあ、答えはわかりきっているのだが。
一応、聞いてあげましょう。
「お前は、公爵と行為をして呪いを移された後、呪いによってもがき苦しみ、子を成すどころではなくなる。そこで、生き延びた公爵には、お前の妹であるシャトレイゼを妻に迎え入れてもらうよう、皇帝と約束を取り付けてある。あの子は公爵と結婚すると言ってきかないのでな。可愛い娘の願いを叶え、かわいげのないお前を追い出せるのだ。私にとって、これほどまでメリットしかない案件は、そうないんだ。我が家のために、犠牲になれ!」
これみよがしに、楽しそうに笑いながら話をする父親。
「…………」
まあ、うん。
そんな事だろうと思ってたけれどね。
私が黙っていると、父は何がそんなに楽しいのかと思うほどに、うれしそうに口角をつり上げた。
「十日後に、迎えが来る。逃げようとしても、周りはいつもの何倍もの見張りをつけるから諦めろ! そして公爵の二十歳の誕生日までの残り三か月の間に、何としても行為に及べ! わかったな!」
父は私にそう言い捨てると、愉快そうに笑いながら屋敷を出て行った。
…………私がうれしさのあまり、思わず口元が緩んでしまったことにも気がつかずに。
その意味を、誰も知らないまま。
90
あなたにおすすめの小説
赤毛の伯爵令嬢
もも野はち助
恋愛
【あらすじ】
幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。
しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。
※1:本編17話+番外編4話。
※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。
※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
子供のままの婚約者が子供を作ったようです
夏見颯一
恋愛
公爵令嬢であるヒルダの婚約者であるエリックは、ヒルダに嫌がらせばかりしている。
嫌がらせには悪意しか感じられないのだが、年下のヒルダの方がずっと我慢を強いられていた。
「エリックは子供だから」
成人済みのエリックに、ヒルダの両親もエリックの両親もとても甘かった。
昔からエリックのやんちゃな所が親達には微笑ましかったらしい。
でも、エリックは成人済みです。
いつまで子供扱いするつもりですか?
一方の私は嫌がらせで寒い中長時間待たされたり、ご飯を食べられなかったり……。
本当にどうしたものかと悩ませていると友人が、
「あいつはきっと何かやらかすだろうね」
その言葉を胸に、私が我慢し続けた結果。
エリックは子供を作りました。
流石に目が覚めた両親とヒルダは、エリックと婚約破棄するも、今まで甘やかされたエリックは本当にしつこい。
ねえエリック、知ってる?
「私にはもっと相応しい人がいるのよ?」
非常識な婚約者に悩まされていたヒルダが、穏やかな結婚をするまでの物語。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!
放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】
侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。
しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。
「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」
利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。
一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。
今さら執着されても困ります
メイリリー
恋愛
「これから先も、俺が愛するのは彼女だけだ。君と結婚してからも、彼女を手放す気はない」
婚約者・リアムが寝室に連れ込んでいたのは、見知らぬ美しい女だった――
アンドレセン公爵令嬢のユリアナは、「呪われた子」として忌み嫌われながらも、政略結婚によりクロシェード公爵家の嫡男・リアムと婚約し、彼の屋敷に移り住んだ。
いつか家族になれると信じて献身的に尽くすが、リアムの隣にはいつも、彼の幼馴染であり愛人のアリスがいた。
蔑まれ、無視され、愛人の引き立て役として扱われる日々。
ある舞踏会の日、衆前で辱めを受けたユリアナの中で、何かがプツリと切れる。
「わかりました。もう、愛される努力はやめにします」
ユリアナがリアムへの関心を捨て、心を閉ざしたその夜。彼女は庭園で、謎めいた美しい青年・フィンレイと出会う。
彼との出会いが、凍りついていたユリアナの人生を劇的に変えていく。
一方、急に素っ気なくなったユリアナに、リアムは焦りと歪んだ執着を抱き始める。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる