白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美

文字の大きさ
43 / 80

ミミックにおさげを食べられました①

しおりを挟む
 マーシェスダンジョン地下41階は岩石系の魔物の巣窟だ。
 BAN姉さんクリア後の階層となる。
 
 初めてダンジョンに足を踏み入れて地下40階をクリアしたあの日。
 ロイさんたちと気まずい別れ方をした後すぐに再会したとき、エルさんが「あそこでペットが報酬になっているのは、次の階でペットが必要だからだよ」と言っていた理由がここにはある。
 
 この階層では「イリジム鉱石」というレア鉱石がドロップするのだが、これがものすごく重い。
 握り拳ほどの大きさで成人男性ひとり分ぐらいの重さがあり、知らずに片手でひょいっと持ち上げようとすると動かすことすらできないという代物だ。
 硬度の高い強力な武器防具の材料になるため、とても高く売れる素材でもある。
 
 重さが重さなだけに、ハットリが使うシュリケンのような飛び道具には不向きだが、わたしが背負っているロイさんの大剣には、当然このイリジム鉱石が使われている。
 レア鉱石をたくさん持ち帰りたいけれど、重すぎてひとり当たり1個か2個しか運べない――そんな問題を解決するのがペットというわけだ。
 
 エルさんによれば、ペットは主人の性格や好きなものに合わせて擬態しているだけで、中身はどれも同じ精巧なマジックアイテムらしい。
 言葉を理解しているようだし感情があるようにも思えるが、それも全て主人が好む行動をとるように計算され、さらには学習しているのではないかとエルさんは推測している。

 ハットリがBAN姉さんを攻略してペットのサラマンダーを入手したとき、エルさんが「この子は従順でお利口だ」と言ったのは、ハットリの性質がそうだと評したことになる。
 そしてその後こちらをチラっと見て笑ったあの瞬間、わたしは心の中でこう叫んでいた。
 
 どうせわたしのくまーは、初対面でいきなりロイさんに左フックをかました乱暴者だわよっ!
 わたしが乱暴でガサツだって言いたいんでしょ、悪かったわね! と。
 
 まだまだ謎多きペットがどれぐらいの量や重さの物を持ち運べるのか定かではないが、大きさでいえばクラーケンを丸ごと吞み込めることは確認できている。
 イリジム鉱石に関しても、この地下41階を隈なく探索して得られる平均的な数、25個はラクラク運べるし、くまーは50個吞み込んだこともある。
 
 ロイさんたちが初めてこの地下41階に足を踏み入れた時のこと。
 岩石系の魔物自体の難易度はたいしたことがなく、ドロップ品として鉱石をたくさん手に入れたものの、全てを持ち帰ることができなかったようだ。
 特に重たいレア鉱石のイリジム鉱石に関して、ロイさんは何としてでも全部持って帰る! と駄々をこね続け、エルさんに物質を軽くする魔法をかけろと迫ったらしい。
 
 物質の重量を変えたり、浮遊させる魔法は実際にある。
 何を隠そう、わたしがいつも背負っている大剣には軽量効果が施されている。
 ただし所有者限定という高度なものにしてもらっているため、わたし以外の人が持つと運ぶのがやっとで振り回すことなど到底できないだろう。
 ロイさんから直接受け取ったため、この大剣の所有者はわたしだ。
 彼が意図的にそうしたのか、ただの偶然だったのかはわからないままだけれど。
 
 エルさんがイリジム鉱石の原石に軽量化の魔法をかけようとしても、魔法をはじいてしまってまったくかからなかったようだ。
 となると、ダンジョン内で使える魔法のうちイリジム鉱石を運ぶのに有用なのは身体強化ぐらいで、それにしたって運べる数は知れている。
 そんなこんなでイリジム鉱石は自力で少しずつ運ぶか、ペットにまとめて運んでもらうかの二択だ。
 
 だからあの日、結局ロイさんは不承不承わたしに頭を下げた。
「あなたのペットを貸してください。どうかお願いします」と。

 
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

政略結婚の意味、理解してますか。

章槻雅希
ファンタジー
エスタファドル伯爵家の令嬢マグノリアは王命でオルガサン侯爵家嫡男ペルデルと結婚する。ダメな貴族の見本のようなオルガサン侯爵家立て直しが表向きの理由である。しかし、命を下した国王の狙いはオルガサン家の取り潰しだった。 マグノリアは仄かな恋心を封印し、政略結婚をする。裏のある結婚生活に楽しみを見出しながら。 全21話完結・予約投稿済み。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『pixiv』・自サイトに重複投稿。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

処理中です...