鉱石の国の黒白竜

SF

文字の大きさ
上 下
8 / 16

第八話

しおりを挟む
「おれはあなたが欲しい」
 イアランは震える手でコランの頬に手を伸ばす。
「ぜんぶ、捧げます。身体も時間も。一生奴隷でもいい。どうか、そばにおいて」
 コランの口付けが、言葉を遮った。唇が離れると、イアランは涙を流したままぽかんと口を開ける。
「お前は本当にいじらしいね」
   コランは目元と口元に弧を描いた。
「愛しているよ、イアラン」
 イアランの顔は子どものようにくしゃりと歪む。
 褐色の胸板に頬を擦り寄せながら、白く華奢な手が腹筋に覆われた腹を撫でる。
「僕も今すぐお前が欲しい」
 コランが起き上がりイアランの膝を掬うと、イアランは自ら腰を上げた。コランはふっと笑みを漏らし、震えるほど張り詰めた陰茎をイアランの中に沈めていく。
 イアランの中は暖かく、弾力のある肉壁が押し寄せ締め付けてくる。ああ、と悲鳴に似た声が上がり、コランの身体に絶頂が駆け抜ける。愕然としつつも快感の名残りが身体をぶるぶると震わせた。
 一旦離れようと腰を引くも、イアランの脚がコランの身体を引き寄せる。
「嫌です。離れないで」
 目を潤ませ熱い吐息を吐くイアランに、コランの理性は弾け飛ぶ。頭が真っ白になり、夢中でイアランの中を貪った。華奢な体のどこにこんな力があるのかというほど、激しく腰を叩きつけ、肉棒を擦り付け、その奥で何度も射精した。
 身体をのけぞらせ喘ぐイアランを心配する余裕はなく、許しを乞うようにただ名前を呼ぶ。
 やがて体力が底をついたコランは、イアランの上に倒れ込んだ。疲労困憊になっても陰茎は勃ちあがったままで、貪欲に快楽を求めて疼いている。下半身が自分とは別の意思を持つかのように腰が勝手に動き続けた。
 すると、イアランはコランの身体を抱きしめ起き上がる。コランを仰向けに寝かせると、熱のこもった目で問いかける。
「まだ、おれがいりますか」
 コランはなんのことか理解が追いつかなかったが、イアランがいらなくなることなどない。息を乱しながら頷いた。
 イアランはコランの陰茎をそっと持ち上げ後孔に当てる。白濁を溢れさせながら陰茎を飲み込んでいくさまはとてつもなく淫靡でコランの喉が鳴る。
 あっという間にすべて飲み込むと、イアランは全身を上下させコランの中心を愛撫し始めた。褐色の肌には汗が滴り、イアランの陰茎からも透明な液が流れていた。律動に合わせて陰茎が揺れるたび雫が散る。
 歯を食いしばる顔は苦しみによるものなのか快楽によるものなのか、経験がないコランにはわからない。
「あ、あ、コラン、さま。お許しください。もう・・・・・・っ」
   イアランの背中は弓形になり、陰茎から精液が飛び出した。コランの腹に白濁がまだら模様を作る。
 イアランはすみません、と言いけたが、コランに腕を引かれのしかかる形になった。華奢な身体を押し潰してしまうそうで起きあがろうとするも、コランの腕は首に絡みついてくる。
「嬉しいよイアラン」
 イアランも快感を感じていることが、求めてくれたのが嬉しかった。
 目が合うと唇が惹かれあった。口付けを交わしながらお互いの身体をまさぐる。身体も心も一つになっていくのを確かに感じ、お互いを満たしていった。


 クロムは閨から声が聞こえ始めると、そこを後にした。あとは天に任せるしかない。
 クロムはセオドラ王国きっての戦士で王の跡継ぎであった。無関係の人間を人柱にしてしまったことでその矜持が崩れそうになる。
 しかし、クロムの五人いたきょうだいは暗殺や戦で若い命を摘み取られ、残るはコランだけになってしまった。たった一人残った弟を失いたくなかったのだ。
 城の誰もが眠れぬ夜が明けた。閨からは物音一つしなかった。医師や侍従たちはみな悲愴な面持ちで扉の前に立っている。
 クロムはアイアンに手をかけ扉を開け放つ。黒い巨躯と白く華奢な身体が、乱れた寝台の上で寄り添っていた。しんと静まり返る中、白い睫毛から赤色が、褐色の厚い瞼から青色が覗く。
 侍従たちに安堵の輪が広がり、瞳を涙に潤ませる者もいた。クロムも溜息を吐き、ようやく表情を緩めたのであった。
しおりを挟む

処理中です...