15 / 16
婚礼の儀⑤
しおりを挟む
そこからお祭り騒ぎが始まった。
ハープや太鼓、木管楽器で音楽が奏でられ、蜂蜜酒が振る舞われた。民衆たちは酒を飲み、気ままに踊ったり歌ったりして深夜まで騒ぐだろう。
しかし、イアランはそこから離れて城壁の周りに竜人たちが集まり始めているのに気づいた。
南の離宮へ向かう王族たちはざわつき、どこかピリピリした空気を漂わせている。
「何かあったのですか?」
イアランはコランに尋ねる。
「いや、ただの余興だよ。結婚式の名物みたいなものだ」
よく見れば、城壁の周りに集まる民衆もコランも目を輝かせている。
ーー「お前どっちに賭ける?」
「そりゃあクロム様の方だろ」
「王族を賭けの対象にしていいのか?」
「今日は人間も出入りしているんだぜ。無礼講だろ」
などと不埒な会話も聞こえてくるがコランは素知らぬフリだ。なのでイアランも放っておくことにした。
「おい、コラン。そろそろいくぞ」
クロムは赤い竜の姿になり、コランの首根っこをくわえて持ち上げ背に乗せる。イアランもクロムに促され飛び乗る。王族たちも竜の姿になり城壁の上に並んでいた。
「さ、トばすから捕まっていろよ」
「なんだ、クロムまでやるのか?」
「何が始まるのです?」
「まあ簡単に言えば、ただの競争だよ」
コランがそう言い終わった瞬間、笛の音が響き竜たちは一斉に飛び立った。竜の群れが空を弾丸のように飛んで行く。地上では歓声が上がりハンカチが舞った。
「夫側の親族と、妻の親族とで、先に新婦の家にたどり着いた方が勝ちなんだ。勝った方に酒が渡される」
ごうごうと鳴る風の音に負けないよう、コランは少し声を張る。
「黙ってろ。舌を噛むぞ」
「イアランがいるから平気だ」
イアランは背後から抱きつくようにコランを覆っている。猛スピードで飛んで行く竜たちに囲まれながらの飛行は、少しの接触で鱗が剥がれ羽根が裂けそうなほど熾烈を極める。修羅場をくぐり抜けてきたイアランも流石に肝が冷えそうになるが
「よし、ならもっと速くても大丈夫だな」
とクロムはより強く羽ばたいた。身体を後方に煽られそうになり、イアランは慌てて踏ん張った。他の竜たちとどんどんすれ違い、先を飛ぶ竜はいなくなる。
「すごい・・・・・・」
イアランは思わず呟いた。
森を越え、白亜の宮殿が見えてきた。すると、風がクロムたちの横をすり抜けた。風は不思議な気配を纏っていた気がしてイアランは首を傾げる。
「あ!クソッ、やられた!」
「あっはっは!流石だな!」
クロムは悪態をつき、コランは声を上げて笑い、イアランは頭に疑問符を浮かべる。
クロムたちが南の離宮の庭に舞い降りると、水色の目を輝かせて
「ボクの勝ちっ!」
とベリルが悪戯っぽく笑うのであった。
ハープや太鼓、木管楽器で音楽が奏でられ、蜂蜜酒が振る舞われた。民衆たちは酒を飲み、気ままに踊ったり歌ったりして深夜まで騒ぐだろう。
しかし、イアランはそこから離れて城壁の周りに竜人たちが集まり始めているのに気づいた。
南の離宮へ向かう王族たちはざわつき、どこかピリピリした空気を漂わせている。
「何かあったのですか?」
イアランはコランに尋ねる。
「いや、ただの余興だよ。結婚式の名物みたいなものだ」
よく見れば、城壁の周りに集まる民衆もコランも目を輝かせている。
ーー「お前どっちに賭ける?」
「そりゃあクロム様の方だろ」
「王族を賭けの対象にしていいのか?」
「今日は人間も出入りしているんだぜ。無礼講だろ」
などと不埒な会話も聞こえてくるがコランは素知らぬフリだ。なのでイアランも放っておくことにした。
「おい、コラン。そろそろいくぞ」
クロムは赤い竜の姿になり、コランの首根っこをくわえて持ち上げ背に乗せる。イアランもクロムに促され飛び乗る。王族たちも竜の姿になり城壁の上に並んでいた。
「さ、トばすから捕まっていろよ」
「なんだ、クロムまでやるのか?」
「何が始まるのです?」
「まあ簡単に言えば、ただの競争だよ」
コランがそう言い終わった瞬間、笛の音が響き竜たちは一斉に飛び立った。竜の群れが空を弾丸のように飛んで行く。地上では歓声が上がりハンカチが舞った。
「夫側の親族と、妻の親族とで、先に新婦の家にたどり着いた方が勝ちなんだ。勝った方に酒が渡される」
ごうごうと鳴る風の音に負けないよう、コランは少し声を張る。
「黙ってろ。舌を噛むぞ」
「イアランがいるから平気だ」
イアランは背後から抱きつくようにコランを覆っている。猛スピードで飛んで行く竜たちに囲まれながらの飛行は、少しの接触で鱗が剥がれ羽根が裂けそうなほど熾烈を極める。修羅場をくぐり抜けてきたイアランも流石に肝が冷えそうになるが
「よし、ならもっと速くても大丈夫だな」
とクロムはより強く羽ばたいた。身体を後方に煽られそうになり、イアランは慌てて踏ん張った。他の竜たちとどんどんすれ違い、先を飛ぶ竜はいなくなる。
「すごい・・・・・・」
イアランは思わず呟いた。
森を越え、白亜の宮殿が見えてきた。すると、風がクロムたちの横をすり抜けた。風は不思議な気配を纏っていた気がしてイアランは首を傾げる。
「あ!クソッ、やられた!」
「あっはっは!流石だな!」
クロムは悪態をつき、コランは声を上げて笑い、イアランは頭に疑問符を浮かべる。
クロムたちが南の離宮の庭に舞い降りると、水色の目を輝かせて
「ボクの勝ちっ!」
とベリルが悪戯っぽく笑うのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる