天地天命【本編完結・外伝作成中】

アマリリス

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第四章 七変化

誤解の多い出来事

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 柊虎の言う通り顔を洗ってすっきりしたのか、蒼万の顔色は良くなっていた。蒼万と志瑞也は昼餉を食べ終え、宿屋前広場で柊虎を待った。そこへ、目を疑うような光景が現れる。
「あっ、柊虎… ひっ、柊虎が二人⁉︎」
 目玉をひん剥いて驚き、柊虎は笑いながら言う。
「ハハハ志瑞也言ってなかったか? こっちは双子の兄上の磨虎だ」
「ふっ双子⁉︎」
 男前の顔がこの世に二つは、なんて理不尽だ。志瑞也は二人をきょろきょろ見比べた。
「柊虎、誰だこいつは?」
 柊虎を名で呼ぶ志瑞也に不快を示した磨虎が、右側に垂れた前髪をかき上げぎろっと睨む。
 志瑞也は気にせず更にたまげる。
「こっ声までそっくり… そ、蒼万の従者の志瑞也です。柊虎のお兄さんこんにちは」
 磨虎は片眉を上げ皮肉たっぷりに見下ろして言う。
「お兄さん? 誰に向かって口を聞いてるのだ? ほーう蒼万、お前の従者か? 見た目も弱そうだし神力も感じられない、お前の神力がその程度なら分家がこれでも仕方ないかハハハハ」
(こいつ……何だ?)
 志瑞也は顔をしかめる。
「兄上おやめ下さいっ」
 嘲笑う兄磨虎を柊虎が止めるも、磨虎は聞かず続ける。
「今回だってそうだ、神力が低くて戦えないからわざと遅れて来たのだろ?」
 葵から話は聞いていたが、事実を知らない者からの誹謗中傷が、こんなにも露骨に耳に入るとは思わなかった。磨虎から発する耳障りな言葉に、志瑞也は憤りを露わにする。

「ゔるさい! お前っ蒼万に謝れ!」

「……」
「……」
「……」
 予期せぬ発言に、磨虎、柊虎、蒼万、白虎家の従者達を含め全員の目が点になる。分家の従者が、本家の者を名だけで呼ぶなど有り得ない。ましてや他神家に対して〝お前〟など、尚更だ。
「なっ、こっこいつ無礼なっ、私に謝れだと⁉︎ しかもお前などと!」
 磨虎は怒りで震えだす。
 志瑞也は更に磨虎を睨み返し怒鳴る。
「いいかっ、耳の穴かっぽじって良く聞け! お前は今自分が悪いことを言ったのも気付かないのか⁉︎ 今直ぐ蒼万に謝れ!」
「はっ、悪いこと? 事実を言ったまでだ! 礼儀知らずの分際でこの私に楯突くつもりか!」
「グアォーッ! ガルルルルッ!」
 磨虎の怒りが爆発し白虎が飛び出す。
「磨虎様おっ落ち着いて下さい!」
「磨虎様ここは南宮ですぞ!」
「そうです兄上っ 他の神家の殿を壊すおつもりですか!」
「うるさいうるさいゔるさいっ、黙れ‼︎」
 柊虎や従者達の声も耳に入らない程、磨虎は憤慨していた。
「志瑞也やめろ、私は気にしていない」
「俺が気にするっ あんな言い方っ、何も知らないくせに許せない!」
 志瑞也は葵から腕輪について聞いたのだろう、蒼万は鼻息をつき冷静に言う。
「私なら慣れている、磨虎を煽っても意味がない・・・・・
「嫌だ‼︎」
「志瑞也…」
寅雅たいがっ、礼儀知らずのあの者に思い知らせろっ‼︎」
「グアォォォオッ!」
 寅雅が牙を剥き出し威嚇する。
「志瑞也逃げろっ 蒼万!」
 柊虎が蒼万に目で訴え、蒼万は志瑞也の腕を掴み後ろへ下がらせ、襲いかかる寅雅の前に立ちはだかった。
「なっ何するんだっ、蒼万っ」 
「ガルルガアァァーッ!」
 突然、矢のような速さで何かが目の前を横切る。

「グアァブッ!」
「ガァッ‼︎」

 寅雅が呻き声を上げながら転がり、志瑞也は目を見開く。
「志寅!」
 柊虎は眉をひそめる。
「志寅⁉︎」
 一瞬の出来事に何が起こったのか分からず唖然とする中、二匹の白虎は威嚇して奮闘しだす。体格は寅雅の方が一回りも大きく力の差は歴然だ。神獣が神力の象徴となる意味がよく分かったが、敵わないと分かって立ち向かう志寅の姿に、志瑞也は胸が苦しくなった。
「なっ、柊虎っ、何故志寅を出したっ、やめさせろ!」
「私ではありませんっ、かっ勝手に…志寅やめるのだ!」
 動揺しながらも磨虎と柊虎が二匹を止めに入るが、二匹は既に興奮状態に陥っていた。
 志瑞也は蒼万の後ろから出て、二匹の元に向かう。
「待てっ」
 蒼万が腕を掴んで引き止めるが、志瑞也は悲しげに言う。
「大丈夫だよ蒼万…」
 手の力を緩めると、志瑞也はすっと抜けていった。
 見ていた柊虎が冷静さを失い叫ぶ。
「行くな志瑞也! 磨虎・・っ、寅雅を止めろ・・・っ‼︎」
「うるさいっ、私に命令するな! 寅雅やめるのだっ、寅雅!」
 だが、一塊に揉み合う二匹の耳には届かない。

「お前達これなーんだ!」
 志瑞也はキャラメルを一つ出して口に含み、二匹に向かって息を吹きかける。蜂蜜の甘い匂いが奮闘中の二匹の鼻にかかると、ピタッと動きが止まった。二匹は鼻をピクピクさせながら、匂いを辿り志瑞也に振り向く。

「志瑞也っ、やめるのだ!」
「待て、待つのだ」
 駆け走る柊虎を蒼万は腕で阻み、瞳を光らせた。何かあれば蒼万が動くと分かり、柊虎も様子を見ることにした。
 何も知らない磨虎が尋ねる。
「あいつは何をしているのだ?」
「しっ!」
「おっ…」
 賢い弟柊虎の真剣な表情に、考えがあると思い磨虎は黙る。
 全員が固唾を呑んで観ていた。

「ほぅらあ、甘い匂いがするだろ?」
 志瑞也はもう一度二匹に息を吹きかける。
「アハハ、食べたいか?」
 先に動いたのは志寅だった。覚えのある匂いに気付き興奮が一気に覚めたのか、体をすり寄せ志瑞也にキャラメルをねだる。
「アハハ いい子だな志寅、ほら」
 志寅は美味しそうに「グルグル」と喉を鳴らし、志瑞也は志寅の喉を指でこしょこしょとなでる。
「助けてくれてありがとうな、怪我はないか?」
 獣毛を掻き分け傷が無いのを確認し、安堵して志寅の頭をなでる。
「仲間で喧嘩しちゃ駄目だぞ、わかったか? アハハ」
 様子を観ていた寅雅が、ゆっくりと近付いてきた。まだ少し目が血走っているが、既に涎が垂れている。こうなってしまえば、手懐けるのもあと一歩だ。
「お前も食べるか?」
 警戒して距離を取るが、既に寅雅はキャラメルしか見ていない。キャラメルを泳がせ、ほいっと投げるとパシッと前足で掴み、むしゃっと口に含むその姿は猫と変わらない。次第に興奮が冷めて来たのか「グルグル」と喉を鳴らしだす。
「もっと食べたいか?」
 寅雅までもが志瑞也に体をすり寄せ甘えだす。志寅が噛んだ所を確認したが、傷は無く本気で噛んでないと分かった。志瑞也は寅雅の両顎を、微笑みながらわしゃわしゃなでる。寅雅は手の動きに合わせて片方の後足を、パタパタと耳を掻いてるかのように動かした。それを見ていた志寅が、なでて欲しいと志瑞也に尻尾を絡ませる。志瑞也はもふもふに囲まれ満面の笑みを溢す。
 超絶最高!

「蒼万っ、あいつは何者だ!」
「志瑞也だ」
「おまっ、くそっ、柊虎っ何故志寅を出したっ 私とて殺したりはせぬっ、そこまで頭は悪くないっ」
「ふっ、頭が悪いのは自覚があるみたいだな」
「何だと⁉︎」
「蒼万やめろっ、兄上もですっ 志寅は…私の意志ではありません」
「……」
 二人が噛み付き合う前に柊虎が止めに入り、蒼万は黙って聞いていた。
「なっ、では…志寅が自分の意志であいつを守ったのか?」
 磨虎は驚きながら志瑞也を見る。
 柊虎は頷いて言う。
「恐らく…こんな事は初めてです」
 不可解な出来事に、三人はただ二匹と戯れ合う志瑞也を観た。

 志瑞也は寅雅の頬をなでながら言う。
「いいか寅雅、強い者は弱い者を守らなきゃ駄目なんだぞ、分かったか?」
 寅雅は口の周り舐めてキャラメルをねだる。
「お前食いしん坊だな… もうキャラメルは持ってないよ。全部あげたら俺の武器が無くなっちゃうだろ、あれは俺のばぁちゃんに貰ったんだ。羨ましいだろ? アハハハ ってちょっ、寅雅何するんだっ…んんんっ!」
 キャラメル欲しさに寅雅が志瑞也を押し倒し、上に乗っかり口元を舐めだす。志瑞也が話す度に、口から香る匂いにしゃぶりついたのだ。
「んん…やっやめろっ、お前っモモ爺達よりもっ、くっ食い意地が悪いぞっ…んんんっ」
 志瑞也がもがいても寅雅は退かず、志寅はその周りを、どうしたら良いものかとうろうろしだす。

「磨虎っ、早く寅雅を戻せっ」
 そう言って、蒼万は志瑞也の元に向かった。
「あいつは何を苛立ってるのだ?」
「兄上…」
 柊虎は溜息を吐く。

 蒼万が志瑞也を寅雅の下敷きから引っ張り出し、すかさず手拭いで顔を拭く。
「蒼、万?   あり、がとう、痛ッ」
「どうした?」
「昨日何か食べたのかな? 今朝から唇が痛くってさ…」
 言いながら、志瑞也は下唇を摘む。
「すまない… 擦り・・過ぎた…」
「なんで蒼万が謝るんだよっ、謝るのは柊虎兄の方だ! 同じ顔して全然違うじゃないかっ、葵ちゃんが柊虎を選ぶのが分かるよっ、ったく…」
 志瑞也は遠くの磨虎をきっと睨む。
「…お前もそうなのか?」
「ん、何が?」
 志瑞也はきょとんとした顔で蒼万を見る。蒼万は顔を横に振り、寅雅に乱された志瑞也の衿元を正しながら、首筋の鬱血痕に軽く触れる。
「…髪が伸びたな」
「そうだな…」
「磨虎のことはもうよい」
「…わかった」
 磨虎に謝らせるのは諦めようと思うが、思い返すと腹の虫がまだ治らない。
「蒼万は大丈夫か?」
 そう言う志瑞也の眼差しの中には、中傷された蒼万に気遣いながらも、まだ怒りの色が見える。頷かなければ、志瑞也は再び磨虎に食って掛かるのだろう。志瑞也の無鉄砲さに呆れながらも、それが自分のためかと思うと、蒼万は愛しさが込み上げてきた。
「出立前、祖父上に忠告された事でお前が揉めてどうする」
 …は?
「あれはっ、柊虎兄の事だったのか⁉︎」
 蒼万の「他に何か?」とでも言いたそうな顔を見て、志瑞也は勘違いに気付き、苦笑いして顔を横に振る。
「志瑞也、磨虎は頭が悪い・・・・、相手にするだけ意味がない」
 どう頭が悪いのかは分からないが、余程の判断材料が磨虎にあるのだろう。そう言った蒼万の真顔が、あまりにも可笑しかった。
「ぷっ、あれはそういう意味だったのかアハハハ」

 磨虎が柊虎の右肩に肘を置きながら言う。
「蒼万の奴、俺達の前で他の者にあんなことするなんて… 柊虎、あいつは本当に従者か?」
「……」
 それよりも柊虎は、何故志寅が自らの意志で飛び出したかの方が気になっていた。事の発端である兄磨虎の能天気さに、言葉も出ず呆れるしかなかった。
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