天地天命【本編完結・外伝作成中】

アマリリス

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完結編 福寿草

亡き友を思う

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 志瑞也は黄水室に運ばれる間、蒼万の懐に手を忍ばせ怪しげに笑っていた。ここまで酔った姿は蒼万も初めて見るが、可笑し過ぎて見ていて楽しかった。「蒼万ぁ何で勝手に脱ぐんだよぉ、俺の楽しみ取るなよぉ、可愛いなぁよしよし」蒼万の物をなでる。「俺に会いたかったか? そうかそうか、はむっ、んっんっちゅぱっ…はぁ、俺を好きか? 苛めたい? 意地悪な奴め、ちゅ……はむっ、んっんっ…」と蒼万の物に話しかけていた。
「蒼万、挿れて…」
 志瑞也は自ら足を開げてお尻を掴み、入口をひくひくと動かす。
「久々だ、直ぐはお前が辛い」
 しかし、蒼万の物も既にはち切れそうだ。
「嫌だっ、大丈夫だから、もうほしいんだ…」
 蒼万は腰に絡んできた足に押され、呑み込む動きに合わせながら挿し込む。
「はあっ…熱いっ、ああ…っ、いいっ…きっ気持ちいいっ、ああ…っ、蒼万っ、いっぱい入ってる…っ、んっ……」
 蒼万は苦しくないよう腰を動かすも、吸いつく刺激に堪らず激しくなる。志瑞也の入口は既に液が溢れ、待ち侘びていた蒼万の物を咥え込み、もう離さない離れたくないと、悦びに卑猥な音で鳴きだす。
「あっ…んっ、気持ちいいっ、蒼万っ、おっ俺大変だったんだっ…うっ、そこいいっ、もっと擦ってっ…」
「何が大変だったのだ…っ」
「蒼亞にっ、あ…っ、キスされてっ…」
 …何と?
「あんっ、蒼万どうしたんだ? 動いて…」
「蒼亞が何をしたのだ?」
 志瑞也は蒼万の頬に触れ訴える。
「舌入れられて、身体が熱くなって、でも…蒼万いないから、俺自分で弄っても……いっいけなくて、苦しかった… ううっ…苦しかったんだっ、ひっく……」
 朱翔に言われた事を思い返し、同じ血に反応してしまったのだと、蒼万は眉間に皺を寄せる。実際、蒼亞がそこまでするとは思わなかった。
「すまない…」
「そうだっ、今回は蒼万が悪いっ……蒼万が居なくて、俺怖かったんだ…ううっ…」
 蒼万は志瑞也の涙を拭い、抱え起こして強く抱きしめた。
「ああうっ…いいっ、気持ちいいっ、あ…っ、はっ、蒼万っ、会いたかった、もっと奥擦って…あうっ、いいっ…」
「志瑞也、愛してる」
 耳元で低く囁かれ、身体に触れる唇に志瑞也は目が眩む。
「あん…っ、蒼万っ、俺も愛してる…あっ、何処も行かないで、俺の側にいて…っ、ちゅっ…」
 蒼万が志瑞也の物を握ると、反応を返し裏筋を張らせた。先から根本まで擦りながら、腰を奥に突き上げる。
「お前は私のものだ…っ、離さぬ…っ」
「はんっ、いく、蒼万っ、いっいちゃう…あっ、はっ、あ…っ、ああーっ………」
「志瑞也、大丈夫か?」
「足りない…もっと… 蒼万…」

 真夜中、蒼万は志瑞也を抱え客室に入る。志瑞也だけでなく、蒼万も夜中に何度も目が覚めていた。久々に胸に抱き共に眠る幸せを、生ある限り失わないよう尽くすと蒼万は誓う。志瑞也の頭をなで最初の頃を思い出し「ふっ」と笑う。何故こうなったかは明日聞こうと、額に口づけして瞼を閉じた。


 翌日、志瑞也は蒼万の匂いで目覚める。包まれる温もりや感触に、夢ではなかったのだと腰に手を回す。すると、ぎゅっと抱き返してくる。何て幸せなのだろう。蒼万の寝衣の中に手を忍ばせ、吸いつく皮膚の感触に思わず笑みが溢れる。指全体で味わうように、逞しい身体を滑らせていく。開けた胸に口づけを繰り返し、匂いを嗅ぐと甘い香が舌を踊らせた。志瑞也は堪らず胸に貪り付き、蒼万に足を絡め身体を擦り付ける。
「志瑞也、ここでは駄目だ」
「ちゅっ…何で? 俺、勃っちゃった…」
「…酔っているのか?」
 蒼万は志瑞也を黄水室に連れて行き、口づけで声を塞ぎなが落ち着けさせる。だが、溜め過ぎたのか、その日の内で志瑞也の興奮は収まらなかった。少しでも蒼万を見失うと、獣の様に匂いを辿り、見つけてはずっと体にくっ付きべたべたと触る。食事中も「蒼万、口にご飯の粒が付いているよ、俺が取ってあげる」と襲いかかる。礼儀正しい蒼万に限ってそれはない。全員が、一日中志瑞也の行動に振り回された。酒がまだ残っているのか、久々に会えたことで狂ってしまっているのか。皆で志瑞也を掴まえ朱翔が瞳孔を覗き「志瑞也、私は誰だ?」と問うも「蒼万!」朱翔の背後に立っている蒼万しか見ていない。周りが見えていないと分かり、一時的なものだろうと思うも、このまま子供達の前でうろうろされては困る。朱翔は志瑞也をもう一日休ませ、誰も居ない日中の間だけ部屋で許可した。

 今日は基本編の試験日、朱翔は振り回され疲れ切っていた。子供達を見ながら頬杖を突いて座る。一歩間違えば、今日の日を迎えられなかった。そう考えると、とても眩い光景に見えてくる。志瑞也の存在が必然なら、数百年振りに武神・・として生まれたあの男の存在も、必然ということになる。だが、特異な力は実に危うい。両者共に極端過ぎて苦しんでいる姿を見ると、並の上……いや、自分の様な上の中ほどが、平穏に暮らせるのだと朱翔は思った。
「朱翔、隣りいいか?」
「聞かなくても座れよ。来るの見えていたよ、ふっ」
 柊虎は微笑んで座る。
「昨日は散々だったなハハハ」
「休みなのに休んだ気がしないよ、はぁー…」
「蒼万も見たことないって驚いていたなハハハ」
 二人は呆れ笑う。
 朱翔は頬杖を突いたまま片眉を上げて言う。
「それで? 優秀な私の右腕様、一昨日の夜、あいつをどうやってあの状態・・・・で連れて来たんだ?」
 通常の蒼万なら、不意打ちでも確実に躱される。周りが見えないぐらい動揺させないと、朱翔では殴れなかった。
 柊虎は足を肩幅に広げ、両膝に手を置き頭を下げて言う。
「これはこれは策士様『倒れて意識が戻らない』と言って連れて参りました」
「ふっ、私が手を出しているって吹っかけなかったのか?」
 柊虎は笑いながら姿勢を元に戻した。
「〝志瑞也の自室に入ったら、朱翔が衣を脱がして抱きしめていたのだ〟って最初は言おうと思ったが、あいつがお前に志瑞也を託したってことは、お前が絶対手を出さないって分かっているからだ。これは裏があると直ぐ気付かれるさ、お前は志瑞也を抱けないが私は抱ける。それをあいつは分かっているのだ」
「おま……そこまで想っているのか? はぁー、お前と蒼万の関係もよく分からんなハハハ」
 溜息混じりにそう言って、朱翔は顔を横に振る。
「普通に友だ、あいつも私の気持ちは知っているよ。それに志瑞也の心が私に向かないのも知っているさ、手を出してしまって私が傷つかないよう、いつも見張っているのだ。だから私は安心してあの位置にいれるのだ、何かあれば蒼万が止めに来るからなハハハ」
「お前とんだ食わせ者だな…ふっハハハ」
 相手の行動を利用して、自分の利を叶えようとするこの思考は、蒼万と似ていると朱翔は呆れ笑う。
「それに、あいつは志瑞也の意識が戻らない事に異常に焦るのだ… 一度死んだ姿を見ているなら尚更頭を過ぎるさ、あんな思いは二度としたくないってな… あいつも失うことに怯えているのだよ…」
 言いながら、柊虎は眉をひそめた。
「ってことは、お前も言いたくない事を言ったんだな。悪かったな…」
「いいや、今回は皆苦しんださ。志瑞也と蒼万とお前は特にな、これぐらい覚悟の上だ。見守る側も皆苦しんだはずだ… お前こそ、わざと私と比べさせて蒼万に聞かせたのだろ?」
「…それは違う、お前のためだ。お前が諦める切っ掛けになればと思っただけだよ… あいつの笑顔は眩しいから、はっきり言われないと難しいと思ってさ…」
「そうか…」
 朱翔の思惑とは別に〝柊虎の代わりは蒼万でも無理だ〟と言われた事の方が、柊虎は嬉しかったのだ。
 朱翔が肘で柊虎を小突く。
「お前良い男なのに何で婚姻できないんだ? 私が女だったら直ぐに婚約申込んでいるぞハハハ」
 柊虎は顔を引き攣らせて首を傾げた。
「お前みたいな直ぐ手の出る女は…ちょっと無理かなハハハハ」
「ふっ、お前変な性癖ありそうだな」
「そうかもなハハハ」
 柊虎は満更でもない顔をする。

「私な、黄怜にも似たようなことを言ったんだ… 成人の儀の時に『お前が女だったら、私は今日婚約を申込んでいるな』ってな… あいつどんな気持ちだったのかな…」

 伏し目がちにうつむく朱翔に柊虎は言う。
「私は『また明日ここで会おう』と言って、黄怜は『また明日』…これが最後だ」

「そうか…」
「あぁ…」
 二人は庭園の子供達を見つめた。

「柊虎さーんっ、朱翔さーんっ、成績発表しますよーっ」

 朱翔は玄弥に「わかった」と手で合図を送る。
「柊虎、行くか」
「そうだな」
 二人は立ち上がり歩きだす。
 朱翔は柊虎の肩を組んで言う。
「お前、磨虎殴っといたか?」
「あれが冗談なら殴れるが、兄上は真剣に言ったのだ。あの後落ち込んでもいたし殴れないよハハハハ」
「磨虎らしいなハハハハ」
 二人は笑いながら子供達の元へ向かった。

 基本試験では、蒼亞が一位、壱黄は八位だった。残り十四日間となり、気を抜かないよう皆は引き締め直した。
「義兄上」
「蒼亞、私の講習は今日で終わりでも、講習会の間は師匠って呼ぶのだよ。どうした?」
 玄弥は微笑んで蒼亞の頭をなでる。
「はい。玄弥師匠、志ぃ兄ちゃんは今日は来ないのですか?」
「あ、えっと…」
 玄弥は目を泳がせ、側にいた朱翔が言う。
「蒼亞、私に聞けばいいじゃないか、志瑞也の居場所を知りたいのか?」
「……」
 口づけ事件以来、蒼亞は朱翔に対して敵意を剥き出しにしている。
「お前、兄上の友を睨んでいいのか?」
「…志ぃ兄ちゃんは何処ですか?」
 不満げに言う蒼亞に、朱翔は事実を告げる。
「お前が志瑞也にあんな事するから、蒼万が迎えに来た」
 朱翔はにんまり微笑む。
「朱翔さんっ、大人気ないですよ!」
「だって本当の事だろ? 今だってきっとっ」
「朱翔さん!」
 玄弥は朱翔の口を塞ごうとするも躱され、目で「やめて下さい!」と訴える。
「あ…兄上がっいらしてるんですか?」
 おやおや?
 蒼亞の顔が露骨に曇る。
「どうした蒼亞?」
「あっ兄上はっ、私が志ぃ兄ちゃんにした事…」
「知っているよ」
 朱翔は両眉をあげて「当然」と顔をする。
「……」
 蒼亞は何も言わず、とぼとぼと去って行く。
「何だあいつ?」
「どうしたんですかね?」
 朱翔と玄弥は首を傾げた。
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