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完結編 福寿草
枕投げ
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後日、志瑞也は自室で朱翔から身体の事を全て聞かされる。
「じゃあっ、俺が蒼万を好きなのは俺の気持ちじゃないのか?」
「もしそうなら、私は〝そうだ〟と言っているさ、だがそれは違う。思い返してみろ、お前は初めから蒼万に想いを寄せていたのか?」
そう言って、朱翔は片眉を上げる。その顔はまるで「あんな奴に一目惚れ? まさかだろ?」そう言いたげだ。
「ぷっアハハハ 俺本当は可愛い女の子が好きなんだ、男を好きになったことなんて一度もないよ」
「そうだと思ったハハハ」
「それに俺さ、初めて蒼万に会った時に『お前気持ち悪い』って言ったら、めちゃくちゃ怒ったんだアハハハ」
「ぷっそれ本当か?ハハ…」
それは自分でも怒りそうだと朱翔は思った。
「そうだな……最初は友達になれたらと思っていたけど、蒼万はとっても優しいんだ…」
朱翔は本気で「何処がだ?」と思った。
「そうか…」
「こっちが泣きたくなるぐらい…優しくて、温かいんだ。全部独りで抱えて、独りで責任を取ろうとするんだ… 俺さ、朱翔に言われて考えたんだ。蒼万は何で俺にこんなに尽くすのかって… 蒼万はきっと、俺の過去を奪ったって思っているんだ…ぐすっ… だ…だからいつも『すまない』って謝るんだ… 俺のためにお父さんにお願いして…蒼亞を、お…弟を作ってほしいって、ひっく…自分は後継ぎは作れないから、宗主の地位も全ていらないって言ったんだ…うううっ… 俺は蒼万に何もあげれないのに… 蒼万は何も言わない…ううっ… 後から…葵ちゃんが、教えてくれたんだ…」
「そうか…話してくれてありがとうな、身体じゃなくて心が求めているって、分かっただろ? ふっ、惚気か?ハハハ それで身体も相性がいいなら最高じゃないかハハハ」
志瑞也は涙を拭う。
「ふっ何だよそれアハハハ ぐすっ…でもお陰で色々謎が解けたよ… 初めての時さっ」
「待て! それは言うな」
志瑞也は怪しげに微笑む。
「だってびっくりしたんだ! 朱翔聞いてくれよっ、めちゃくちゃ痛かったのがさーっ」
「あぁあぁあぁあぁあぁー聞こえないいーっ」
朱翔は耳を塞ぎなら喚く。
「アハハハハハハハ」
「ぷっハハハハハハ」
志瑞也の笑い声を朱翔は久々に聞いた。
「話戻すけど、蒼万も最初は身体の事は知らなかったはずだ。お前あいつに何かされた覚えないか?」
志瑞也は首を左に傾げて思い返す。
「あっ、そうだ! この間葵ちゃんと話して思ったんだ、蒼万はいつ〝キス〟て言葉知ったんだろう?って。確か教えた覚えないんだよなって思ったら、俺ここに来た日に多分心臓一度止まっていたのかなって…」
言いながら、志瑞也は首を右に傾げる。
…へ?
「お前、それって一度死んだって事か⁉︎」
「そうだな、俺も気にしてなかったからなぁ」
腕を組んで考えるこの雰囲気は黄虎そっくりだ。
「お前なぁ…」
「そう、だからその時起きたら服…えっとなんて言うのかな、衣がこうバッてっ」
志瑞也はあろうことか、自ら上衣を朱翔に向かって開けた。
「しっ志瑞也っ、分かったからやめろ!」
「何だよ男同士なんだし、今は何処にも跡付いてないよアハハハ」
「……」
朱翔はだんだん黄虎に見えてきた。志瑞也も気にしない性分だ、上衣を正すことなく話しだす。
「その時皮膚が火傷みたいにひりひりして少し赤かったんだ。溺れて助けられたんだって思ったけど、ファ…あ、最初のキスは好きな人とって思っていたから、思わず『キスしたのかっ』って聞いたら…」
「聞いたら?」
朱翔は「それだ!」と思い食い付く。
「ん?ってこんな顔して首を傾げたんだ」
志瑞也は眉間に皺を寄せ蒼万の真似をするも、朱翔は「どっちなんだ!」と内心少し苛つく。
「だから俺、キスはされてないと思ったけど、その時の蒼万はまだ意味は分かっていなかったはずなんだ。だからいつ知ったんだろう?って…」
志瑞也は上半身半裸の状態で考え込む。
曖昧な記憶を辿るより、自覚がある事から辿ろうと朱翔は尋ねる。
「志瑞也、お前昔から匂いに敏感か?」
「どちらかといえばそうだったかも。まぁ最初から二つも揃ってたって分かったからいいや、アハハハ」
志瑞也はすっきりした顔をしている。誰だって、自分の分からない事があれば気になるものだ。
「俺てっきりさ、黄怜が『玄武家でも分からない面白い事が私達には起こっている』って言っていたから、辰瑞の事とか神獣達と話せる事だと思っていたんだ。でもお母さんが後から観玄様に聞いたら、他心通にそんな力はないし聞いた事もないって言われてさ。黄怜もこうなるって分からなかったんだなアハハハ」
だとすると、玄葉も何かしら知っている可能性がある。やはり玄武家は口が堅い、朱翔はぴくりと片眉を動かす。
「…黄怜といつ話したんだ?」
「あっ…」
志瑞也は黄怜と玄武家の神力を漏らし、まずいと目を泳がす。
「…まぁ玄武家が知らないなら仕方ないよなハハハ」
「そうだよなアハハハ」
志瑞也はほっとして笑う。
「蒼万の匂いを感じたのはいつ頃からなんだ?」
「うーん、好きな人の匂いだから特別なんだと思っていたけど… そうだなぁ、あの時妖魔退治で南宮に行っている時には、今ほど強くはないけど感じ取っていたかも」
言いながら当時の蒼万を思い出し、志瑞也は懐かしくなり微笑む。
「そっか、お前にとって蒼万はどんな匂いなんだ?」
「懐かしくて、甘いんだ」
「甘い?」
「そう、不思議だろ? 全部が甘いんだ」
志瑞也はにんまりと笑う。
「お前、わざとだろ」
「本当だってっ、本当に甘い匂いがするし、何処を舐めても甘いんだ」
再び志瑞也はにんまり笑う。
「黙れ!」
朱翔は苛つき「この淫魔め!」と思いながら枕を投げ突ける。
「痛ッ 何するんだよ朱翔!」
志瑞也は寝床に仰向けで倒れ込み、ばっと起き上がる。
「ん? 今っ枕が当たって思い出した!」
本当にそんな事があるのだろうかと、朱翔は疑いの目で見る。
「あの時も甘かった…」
志瑞也は真顔で唇を触る。
……。
「お前ふざけるなよ!」
朱翔が再び枕を投げ突けようと構え、志瑞也はそれを手で防ぎながら言う。
「違う本当なんだ! 青ちゃんに連れ込まれた元の所の池は吐きそうなぐらい汚れていたんだ! あの時もこうやって寝てばって起きて、ここは何処だって……胸触って口の中甘いなって……水臭くないって、そうだっやっぱり甘かったよ! なら蒼万は人工呼吸で俺にキスしたのかな?」
朱翔は「それしかない」と拳を握る。
「それは今度、お前から直接蒼万に聞いてみるんだな」
「そうだな、わかった」
朱翔は志瑞也と微笑んで頷き合い、軽い口調で尋ねる。
「志瑞也、今なら聞けそうか?」
「まだ怖いけど、自分の口からは言えない…」
「無理するなよ」
「わかった」
「いいか?」
志瑞也は深呼吸をして頷く。
「お前は」
「……」
「蒼万が…」
志瑞也の瞳はまだ変わらない。
「死んだら…」
「うっ…」
瞳は淡い光を滲ませるも、志瑞也は必死に耐える。
「どうするんだ?」
「いっ、今はまだ…分からないっ、ううっ…嫌だ!」
「志瑞也っ大丈夫だ!」
朱翔は志瑞也を抱き寄せ背中を摩る。
「朱翔っ…ううっ… 怖いんだっ… もう…目の前で見たくないんだっ… ううっ…」
「大丈夫だ、頑張ったな…」
本来これは蒼万の役目だ。朱翔は怒りを抑えながら、優しく志瑞也の頭をなでる。
バンッ!
「朱翔っ、雷が鳴っていた……が…」
……。
「柊虎!」
「待て志瑞也っ衣!」
志瑞也は柊虎に抱きつく。
柊虎は一瞬固まるも、優しく抱き返す。その微笑みに、こいつも侮れないと朱翔は見つめる。
「志瑞也さんっ、きゃっ」
部屋の外で様子が気になっていた葵は、すかさず顔を手で覆う。
「葵ちゃん!」
志瑞也は自室を出て石段を駆け下り、葵に抱きつこうと向かうも、側に立つ玄弥の苦笑いに気付く。
「あっ、流石に人妻はまずいかアハハハ」
朱翔が慌てて部屋を飛び出す。
「違うだろ志瑞也っ、衣だ! 黄虎っ玄弥っ、磨虎を押さえろ!」
「はい朱翔さん!」
「わかったっ、磨…」
「自分の事ぐらい分かっている」
二人は急ぎ押さえに向かおうとしたが、既に磨虎自ら両手を広げ、押さえられに来ていた。
志瑞也は上衣を正す。
「あ、そっか…ごめんアハハ 皆ありがとう」
柊虎が朱翔に耳打ちする。
「何をしていたのだ? 誰が見ても誤解するぞ」
「お前こそ諦めたんじゃないのか? 絶対叶わないぞ」
「ふっ、私はこの位置が良いのだ」
蒼万が柊虎に警戒するのは正解だと朱翔は思った。
「柊虎、明日話がある」
「わかった」
二人は微笑んで、葵達と話をしている志瑞也を眺めた。
「じゃあっ、俺が蒼万を好きなのは俺の気持ちじゃないのか?」
「もしそうなら、私は〝そうだ〟と言っているさ、だがそれは違う。思い返してみろ、お前は初めから蒼万に想いを寄せていたのか?」
そう言って、朱翔は片眉を上げる。その顔はまるで「あんな奴に一目惚れ? まさかだろ?」そう言いたげだ。
「ぷっアハハハ 俺本当は可愛い女の子が好きなんだ、男を好きになったことなんて一度もないよ」
「そうだと思ったハハハ」
「それに俺さ、初めて蒼万に会った時に『お前気持ち悪い』って言ったら、めちゃくちゃ怒ったんだアハハハ」
「ぷっそれ本当か?ハハ…」
それは自分でも怒りそうだと朱翔は思った。
「そうだな……最初は友達になれたらと思っていたけど、蒼万はとっても優しいんだ…」
朱翔は本気で「何処がだ?」と思った。
「そうか…」
「こっちが泣きたくなるぐらい…優しくて、温かいんだ。全部独りで抱えて、独りで責任を取ろうとするんだ… 俺さ、朱翔に言われて考えたんだ。蒼万は何で俺にこんなに尽くすのかって… 蒼万はきっと、俺の過去を奪ったって思っているんだ…ぐすっ… だ…だからいつも『すまない』って謝るんだ… 俺のためにお父さんにお願いして…蒼亞を、お…弟を作ってほしいって、ひっく…自分は後継ぎは作れないから、宗主の地位も全ていらないって言ったんだ…うううっ… 俺は蒼万に何もあげれないのに… 蒼万は何も言わない…ううっ… 後から…葵ちゃんが、教えてくれたんだ…」
「そうか…話してくれてありがとうな、身体じゃなくて心が求めているって、分かっただろ? ふっ、惚気か?ハハハ それで身体も相性がいいなら最高じゃないかハハハ」
志瑞也は涙を拭う。
「ふっ何だよそれアハハハ ぐすっ…でもお陰で色々謎が解けたよ… 初めての時さっ」
「待て! それは言うな」
志瑞也は怪しげに微笑む。
「だってびっくりしたんだ! 朱翔聞いてくれよっ、めちゃくちゃ痛かったのがさーっ」
「あぁあぁあぁあぁあぁー聞こえないいーっ」
朱翔は耳を塞ぎなら喚く。
「アハハハハハハハ」
「ぷっハハハハハハ」
志瑞也の笑い声を朱翔は久々に聞いた。
「話戻すけど、蒼万も最初は身体の事は知らなかったはずだ。お前あいつに何かされた覚えないか?」
志瑞也は首を左に傾げて思い返す。
「あっ、そうだ! この間葵ちゃんと話して思ったんだ、蒼万はいつ〝キス〟て言葉知ったんだろう?って。確か教えた覚えないんだよなって思ったら、俺ここに来た日に多分心臓一度止まっていたのかなって…」
言いながら、志瑞也は首を右に傾げる。
…へ?
「お前、それって一度死んだって事か⁉︎」
「そうだな、俺も気にしてなかったからなぁ」
腕を組んで考えるこの雰囲気は黄虎そっくりだ。
「お前なぁ…」
「そう、だからその時起きたら服…えっとなんて言うのかな、衣がこうバッてっ」
志瑞也はあろうことか、自ら上衣を朱翔に向かって開けた。
「しっ志瑞也っ、分かったからやめろ!」
「何だよ男同士なんだし、今は何処にも跡付いてないよアハハハ」
「……」
朱翔はだんだん黄虎に見えてきた。志瑞也も気にしない性分だ、上衣を正すことなく話しだす。
「その時皮膚が火傷みたいにひりひりして少し赤かったんだ。溺れて助けられたんだって思ったけど、ファ…あ、最初のキスは好きな人とって思っていたから、思わず『キスしたのかっ』って聞いたら…」
「聞いたら?」
朱翔は「それだ!」と思い食い付く。
「ん?ってこんな顔して首を傾げたんだ」
志瑞也は眉間に皺を寄せ蒼万の真似をするも、朱翔は「どっちなんだ!」と内心少し苛つく。
「だから俺、キスはされてないと思ったけど、その時の蒼万はまだ意味は分かっていなかったはずなんだ。だからいつ知ったんだろう?って…」
志瑞也は上半身半裸の状態で考え込む。
曖昧な記憶を辿るより、自覚がある事から辿ろうと朱翔は尋ねる。
「志瑞也、お前昔から匂いに敏感か?」
「どちらかといえばそうだったかも。まぁ最初から二つも揃ってたって分かったからいいや、アハハハ」
志瑞也はすっきりした顔をしている。誰だって、自分の分からない事があれば気になるものだ。
「俺てっきりさ、黄怜が『玄武家でも分からない面白い事が私達には起こっている』って言っていたから、辰瑞の事とか神獣達と話せる事だと思っていたんだ。でもお母さんが後から観玄様に聞いたら、他心通にそんな力はないし聞いた事もないって言われてさ。黄怜もこうなるって分からなかったんだなアハハハ」
だとすると、玄葉も何かしら知っている可能性がある。やはり玄武家は口が堅い、朱翔はぴくりと片眉を動かす。
「…黄怜といつ話したんだ?」
「あっ…」
志瑞也は黄怜と玄武家の神力を漏らし、まずいと目を泳がす。
「…まぁ玄武家が知らないなら仕方ないよなハハハ」
「そうだよなアハハハ」
志瑞也はほっとして笑う。
「蒼万の匂いを感じたのはいつ頃からなんだ?」
「うーん、好きな人の匂いだから特別なんだと思っていたけど… そうだなぁ、あの時妖魔退治で南宮に行っている時には、今ほど強くはないけど感じ取っていたかも」
言いながら当時の蒼万を思い出し、志瑞也は懐かしくなり微笑む。
「そっか、お前にとって蒼万はどんな匂いなんだ?」
「懐かしくて、甘いんだ」
「甘い?」
「そう、不思議だろ? 全部が甘いんだ」
志瑞也はにんまりと笑う。
「お前、わざとだろ」
「本当だってっ、本当に甘い匂いがするし、何処を舐めても甘いんだ」
再び志瑞也はにんまり笑う。
「黙れ!」
朱翔は苛つき「この淫魔め!」と思いながら枕を投げ突ける。
「痛ッ 何するんだよ朱翔!」
志瑞也は寝床に仰向けで倒れ込み、ばっと起き上がる。
「ん? 今っ枕が当たって思い出した!」
本当にそんな事があるのだろうかと、朱翔は疑いの目で見る。
「あの時も甘かった…」
志瑞也は真顔で唇を触る。
……。
「お前ふざけるなよ!」
朱翔が再び枕を投げ突けようと構え、志瑞也はそれを手で防ぎながら言う。
「違う本当なんだ! 青ちゃんに連れ込まれた元の所の池は吐きそうなぐらい汚れていたんだ! あの時もこうやって寝てばって起きて、ここは何処だって……胸触って口の中甘いなって……水臭くないって、そうだっやっぱり甘かったよ! なら蒼万は人工呼吸で俺にキスしたのかな?」
朱翔は「それしかない」と拳を握る。
「それは今度、お前から直接蒼万に聞いてみるんだな」
「そうだな、わかった」
朱翔は志瑞也と微笑んで頷き合い、軽い口調で尋ねる。
「志瑞也、今なら聞けそうか?」
「まだ怖いけど、自分の口からは言えない…」
「無理するなよ」
「わかった」
「いいか?」
志瑞也は深呼吸をして頷く。
「お前は」
「……」
「蒼万が…」
志瑞也の瞳はまだ変わらない。
「死んだら…」
「うっ…」
瞳は淡い光を滲ませるも、志瑞也は必死に耐える。
「どうするんだ?」
「いっ、今はまだ…分からないっ、ううっ…嫌だ!」
「志瑞也っ大丈夫だ!」
朱翔は志瑞也を抱き寄せ背中を摩る。
「朱翔っ…ううっ… 怖いんだっ… もう…目の前で見たくないんだっ… ううっ…」
「大丈夫だ、頑張ったな…」
本来これは蒼万の役目だ。朱翔は怒りを抑えながら、優しく志瑞也の頭をなでる。
バンッ!
「朱翔っ、雷が鳴っていた……が…」
……。
「柊虎!」
「待て志瑞也っ衣!」
志瑞也は柊虎に抱きつく。
柊虎は一瞬固まるも、優しく抱き返す。その微笑みに、こいつも侮れないと朱翔は見つめる。
「志瑞也さんっ、きゃっ」
部屋の外で様子が気になっていた葵は、すかさず顔を手で覆う。
「葵ちゃん!」
志瑞也は自室を出て石段を駆け下り、葵に抱きつこうと向かうも、側に立つ玄弥の苦笑いに気付く。
「あっ、流石に人妻はまずいかアハハハ」
朱翔が慌てて部屋を飛び出す。
「違うだろ志瑞也っ、衣だ! 黄虎っ玄弥っ、磨虎を押さえろ!」
「はい朱翔さん!」
「わかったっ、磨…」
「自分の事ぐらい分かっている」
二人は急ぎ押さえに向かおうとしたが、既に磨虎自ら両手を広げ、押さえられに来ていた。
志瑞也は上衣を正す。
「あ、そっか…ごめんアハハ 皆ありがとう」
柊虎が朱翔に耳打ちする。
「何をしていたのだ? 誰が見ても誤解するぞ」
「お前こそ諦めたんじゃないのか? 絶対叶わないぞ」
「ふっ、私はこの位置が良いのだ」
蒼万が柊虎に警戒するのは正解だと朱翔は思った。
「柊虎、明日話がある」
「わかった」
二人は微笑んで、葵達と話をしている志瑞也を眺めた。
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