(アルファポリス投稿版)神族と癒着する悪魔の組織からの追放処分〜女神を打ち倒す力を得るため焼印師を探す旅〜

雨井雪ノ介

文字の大きさ
10 / 49
1章

第10話 追手の襲撃と勇者たち(1/3)

しおりを挟む
「ようレン。そのなりで、どうやって殺すんだ? 魔法か? 串刺しかそれとも押し潰すか?」

 この男は何をニヤついているのか。まるで、勝利を確信しているかのような素振りを見せる。多少なりとも悪魔同士で見知った奴だ。自信をもつのはいい。ただ相手を選ぶべきだろう。

 それに、どうやるかは決まっている。こいつも知っているはずだ。

 俺は、手のひらを正面にむけ答えた。

「この手だ」

 俺は人で賑わう大通りのど真ん中で、ダークボルトを声の主に向けて放つ。

 奴には一声もあげる暇さえ与えず、空気を切り裂く轟音とともに消し去った。周囲は黒い雷で焼かれて、溶かされ消失した。当然目の前の奴は、チリ一つ残っていない。

 この昼間に追手が迫るまで気が付かない俺は、迂闊すぎた。

 残りの奴らはどこにいるのか、仲間とははぐれてしまい探しながら、今度はこちらが追手を攻める。


――数刻前

 俺たちは新たな王都に着くと、目的の図書館に向かう。そこで”焼印師”の情報を探る。ただここには、想定外の来訪者がすでにいた。

 つまり”追手”だ。

 俺は何としてでも、ここの書物で確認したかった。ゆえに、図書館での争いは避けて路上に出る。今ここで俺の”制限”を知られるわけにも行かない。それに数少ない書物は、見つけ次第見ておきたい。

 ところが、仲間と認識されたエルとリリーの二人とは、短距離転移魔法陣の罠にかかり分断させられた。こうなるとそれぞれで、各個撃破するしかない。

 俺と今対峙しているのは、長身の細剣をもつ男だ。気怠そうな見た目に反して、動きが素早い。

 この男は、無数とも思える刺突を、周囲に関係なく街中で繰り出す。その剣先あてられた者たちは、血飛沫をあげて倒れていく。怒涛の勢いで、お構いなしに死体を踏みつけて奴は迫る。

 リーチが違いすぎるこの間合いは、かなりやりずらい。残念ながら武器は今手元にない。ダークボルトは回数制限もあり、多用はしたくないとろろだ。

 俺が防戦一方になりだしかけた頃、意外なことにかつての同郷だと思われる人物が、横槍を入れてきた。

「ちょっと! あなた達、街中で何しているの?」

「……」

 答える義理も義務もない。そして他とは雰囲気が異なるこの者に対して、細剣をもつ男も様子をみている。それだけ、敏感な反応を示すのはおそらく”勇者”だろう。

 この邪魔をしにきた奴は、俺と変わらず十五歳程度の見かけだ。遠くからは、勇者様などという声が聞こえてくる。ますます面倒な人種と確定した瞬間だった。

 ただこいつは、大きな勘違いをしている。諭すべき相手は俺じゃない。奴だ。

 この女を盾に見立てて、奴の攻撃をかわしても意味はないだろう。想像する未来が目前に迫る。

 なぜなら、奴にとっては俺とそれ以外としか認識していないからだ。それを証拠に奴は、背後からこの女ごと先の刺突を繰り出そうとしている。ところがこの女は、一発目だけはふせげたようだ。

 背後から迫る攻撃を、なんらかの防御壁を使い防いだようで弾いた。どうやら感はいい。

 ただ残念ながら、その勝ち誇った顔はすぐに苦痛で崩れることになる。奴の刺突は無数なのだ。ガラスの割れるような音が響くと、その透明な何かは崩れ落ちる。瞬く間に血飛沫を吹き上げて、膝から崩れ落ちてしまう。

 それを目撃した仲間なのか、名前を叫びふたり目が飛び込んでくる。

「メグミー!」

 瞬間移動かと思うほどの速度で、俺と奴の中間にやってくる。すでにこときれた女の亡骸を抱きしめて叫ぶ。異様な覇気から、奴は身動きが取れずにいる。するとこの泣き叫ぶ男は、こともあろうか激昂して、俺に詰めよってきた。

 どいつもこいつも、なんで俺なんだと嘆きたくなる。

「お前のせいで! お前のでせいで!」

「何を勘違いしているんだ? 」

「死んだ! 死んだ! 死んだ!」

「お前の背後の奴だ。串刺しにしたのは」

 だがこいつには、俺の言葉は響かない。

「お前がそこにいるから! メグミが殺されたんだ」
 
 感情が昂りすぎて混乱している様子だ。ならば、お勧めがある。

「アイスコーヒーでも飲んだらどうだ? 冷たくて落ち着く」

「ふざけるなー!」

 急激に激昂してくる。残念だ断られた。俺なりに気を利かせたつもりだった。

 光り輝く両手剣を召喚したかと思うと、上段から一気に振り下ろしてくる。この際だ仕方ない。

「ダークボルト!」

 俺の手のひらから放たれた黒い雷撃は、この一帯をすべて飲み込む。目の前の奴も刺突の男もそして、周囲の人もすべてを飲み込み消滅させた。

 これでようやく片付いた。願わくは、射線上にリリーがいないことだ。

 今回は、エルの”執行者の審判”は使えない。理由はリリーがいるからだ。まだ彼女には魔剣の恩恵がないため、使えば消滅してしまう。魔剣自体は眠ったままなので、起こすことはできず防げない。そのため、各個撃破が今回の戦法だ。

 この凄惨な場所に、またひとり横槍を入れてきた者がいた。

「お前! 日本人じゃないのかよ!」

「……」

 唐突に雄叫びをあげる、もう一人の同年代風の奴がいう。答える気はないし構っている暇もない。過ぎ去ろうとすると目の前に立ち塞がる。

「なんとか言えよ!」

「……」

「見ていたんだぞ! たしかにメグミをやっていない。あいつの勘違いだ。ただそれだけで、アイツを殺すことはないだろ? いいやつだったんだぞ?」

 先の奴より、状況は見えているようだ。だが、答えない。

「……」

「答えろよ!」

「いい奴は死ぬのか?」

 俺は問う。

「ああそうだよ! 死んだんだよ。いい奴がな!』

「お前はいい奴か?」

 俺は再び問う。

「わかんねーよ」

「……」

「グボッ! ゴフォオォ……」

 胸を貫いて、心臓を握り潰す。

「死ぬ奴はいい奴だ。証明できたな」

 仰向けに倒れたこいつを放り出して、新たな気配を察知し走る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

処理中です...