(アルファポリス投稿版)神族と癒着する悪魔の組織からの追放処分〜女神を打ち倒す力を得るため焼印師を探す旅〜

雨井雪ノ介

文字の大きさ
28 / 49
1章

第28話 殲滅 勇者の軍勢(3/3)

しおりを挟む
 二体目の指揮官ゴーレムに強襲をかけた。

「ダークボルト!」

 地面を穿、両足を打ち砕く。勢い余ってうつ伏せに倒れ始めた。
痛みも無いことから、即時復帰して両腕を使い俺に向けて迫る。

 変わらず、出鱈目な性能に思わず歯噛みする。
一度でも敵と認定すると、自らが存在しなくなるまで戦い続ける。
敵になると厄介な相手だ。

 俺はすかさず、ダークボルトを放つ。
胸部に現れた大きな亀裂目掛けてだ。瞬間的に反応して回避行動にでた。
かなり機敏な反応に驚く。今までにない行動パターンだ。

 ほんのわずかながら、胸部は避けられても右半身はほとんど吹き飛んでしまう。
俺は瞬時に間合いを詰めるべく、地面をける。
視界が一気に後ろに押し流されると、目の前には半身だけのゴーレムがいた。

 剥き出しになる魔石をつかみ、直接ひっぺがす。
途端に、行動が停止して動き出すことはなかった。

 指揮官クラスは、ようやく終わった。

 エルとリリーたちも残すところわずかの様子だ。
物の五分もしないうちに討伐が終わり、俺たちは合流する。

「レン、何か変な感じがあの門から感じるわ」

「エルもなのか? 俺も……この感じは何か妙だな」

「私も感じたぞ! 何かまとわりつく嫌な感じだな!」

 俺たちは、門から目が離せないでいた。
連戦の疲労が癒えないうちに、妙な気配を放ち何かを予感させる。

 突然現れたのは、人族だった。

 騎士風から魔導士風など入り混じった混成チームのようだ。
数にしてすでに数百はいる。沸き続けているので最終的には何人か不明だ。

 黒目・黒髪の姿は、どうみても日本人に見えた。

 彼らはこちらを認識したのかざわつき始める。
ところが、何をいっているのか言語がわからない。
こんなことが起きたのは初だ。

 しかも日本語ではない異なる言語体系にも聞こえる。

 見た目は日本人で、しゃべる言葉はまるで違う。
しかもこのような場所での出会いとなると残りは悲劇しかない。

――そう、殺し合いだ。

 エルもリリーも相手の様子がおかしいことに気が付き
いつでも放つ準備は、すでに完了していた。後は一斉に放つだけである。

 俺は試しに、一度だけ声をかけてみた。

「お前ら、日本人か?」

 すると幾人か反応を示す。やはり、何を言っているのかわからない。
その問いの答えは、奴らが一斉にスキルを駆使し始めたことで開幕した。

 顎骨指輪の言っていた勇者が、コイツらだとするならば、使えるはずだ。

「ヴォルテックス!」

 瞬時に悪魔化した俺は、ダークボルトを向かいの勇者風情の者たちに叩きつけた。
泣き叫ぶ絶叫とともに互いに、魔法の乱れ打ちが始まる。

 騎士風の姿格好をしている者たちでさえ、何かの魔法を放ってきた。
まずは、様子見だろう。

 この時ばかり俺は、無慈悲に遠慮なく力の限り打ち始めた。

 動きがどこか手慣れていない感じも、まさしく勇者の特徴だろう。
何らかしらのスキルの恩恵と、装備の恩恵のみで、ここまできたことがうかがえる。

 さらに、自らが導いた結果得た力だと、慢心していたことも想像に難しくない。
そうでなけらば、ここまで酷い殲滅戦にはなっていないだろう。
とはいえ、どの一撃も大きく力強い。さすが勇者と言われるだけはある様子だ。

 魔法の撃ち合いが一段落したのか、それとも次の準備に入るためか騎士風の勇者が迫る。

 剣から繰り出される攻撃と魔法は舌を巻くほどであっても、肝心の技術が追いついていない。
拙い剣捌きで、振り回されている印象すら抱かせる。

 単に技や魔法や装備たちにとって、勇者は自らを使い動かすための道具でしかないとも見られる。
いわゆる肉でできた蓄電池のような物に、成り下がっている。

 こことは異なる平行世界かもしくは、まったく別の何か何だろう。
最初の意気揚々とした表情は陰り、悲壮感と絶望感だけが肉体を支配しているように見えた。

 そこまでする使命感はあるのだろうか? 恐らくは無い。

 虚栄心で突き動かされた挙句、現実を知りどうにもならなく、命を散らしている。
もしかすると、勇者の手から離れることが目的だったのだろうか。
技や魔法や装備たちの視点からみると、この地にきて自由になることが狙いにも思えてしまう。
 
 胸の内まで察することはできない。彼らはすでに刃を向けてしまったからだ。

 今残された道は、ヤルかヤられるかの二択しか残されていない。
命乞いや捕虜などの選択肢を考慮できるのは、勝者だけで敗者の選択肢はない。

 ようやく湧き出る速度が止まり、もうは出てこないことが確認できた。

「エル、リリー全力放出だ!」

「わかった任せて!」

「私も行くぞ!」

 エルとリリーから無慈悲で凶暴な魔力が勇者に殺到する。
この魔法の前には、何者も断じて命が残ることは許されない。

 そんな意思表示を二人から感じとった。

 俺もみているだけでなく、迫る勇者を迎えうつ。
上段から振りかぶる魔剣の類は、俺の体に傷一つつけられない。
エルの物に遠く及ばずというところだ。

 俺はそのまま肩で受け、驚きで一瞬硬直するこの勇者の胸を手刀で串刺しにする。
掴んだ心臓はそのまま握りつぶして、次の勇者の顔に投げつける。

 慌て同様をした勇者は、何かのスキルを使用したのか武器に振り回された状態で接近する。
短剣二刀流と円熟した剣技を見せる物の、体が追いついていない。
 
 俺は瞬時に間合いを詰めて、掌底でダークボルトを撃ち放つ。
勇者の背後にいたものは、爆裂した背中から臓物で目眩しを受けた。

 すかさず、連続してダークボルトを放ち、目を開けた時はすでに胴体が上下に別れた時だ。

 俺の周囲でも泣き叫び、ヤケになり突撃してくる者など地獄絵図の様子だ。
まだ五分の一程度しか殲滅しておらず、さらに攻撃を加速させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...