(アルファポリス投稿版)神族と癒着する悪魔の組織からの追放処分〜女神を打ち倒す力を得るため焼印師を探す旅〜

雨井雪ノ介

文字の大きさ
44 / 49
1章

第44話 塔へ(3/5)

しおりを挟む
「チッ!」

 相殺と言えるのか、俺の方がやや力負けしたのは否めない。奴の体重を乗せた巨大な拳は、塔が俺の頭上に落ちてくるほどの迫力と威力で圧迫していく。俺は、自身の体の頑丈さだけに助けられた格好だ。力の大きさは、地面が陥没して、俺自身の足も膝まで埋まるほどの威力を見せている。

「レン!」

 リリーの心配そうな声と同時に、力強い励ましの声のようにも聞こえた。今は、ただの一発を耐え切っただけだ。すぐにでも次の攻撃がくる。奴は何を思ったのか、俺たちの頭上に大きな影を落とす。体全体で押し潰そうと飛び跳ねてきたことで、月明かりを遮る。

 さすがにこの力へは、魔法防御なしでの拮抗は難しい。

 俺たちは即時、範囲外に回避をする。まるで自虐的な笑いを誘うとしているのか、自重と勢いで全身が地面に埋まってしまう。ある意味、非常に滑稽な行動だ。

 奴は両肘をたて、懸命に体を地面から押し返す。

 勢いよく飛び出した体は、そのまま勢い余って背後に倒れてしまう。やることが豪快な上、単純な行動が多い。

 恐らくは動物に近いのかもしれない。だとするとその延長戦上に奴がいるとしたら、野生動物とも言える。野生なら、無駄な争いを一切しない。そのことを考えると、奴にとっての俺たちは、興味本意での”遊び”に近いのかもしれない。もしくは、テリトリーに入ってきた獲物と見ているかだ。

 それだけならば、劣勢でも勝機が見えてくる。リリーの耳元でこれからの作戦を伝えた。

「――やれるか?」

「ああ。問題ない」

 俺たちは、奴が起き上がる前に、後退をして距離を稼ぐ。起き上がった後は、ゆっくりとした動きに変え少しずつ後退をし始める。奴は疑問に思ったのか、つゆ知らず、不思議そうにこちらを眺めている。

 楽しい物でも見つけたのか、嬉々としてこちらにゆっくりと近づいてくる。まだ遊んでもらえるとでも、思っているんだろう。ある程度の距離が取れた俺たちは、地面に跪くと両手を地面に当てた。

 俺たちは、作戦通りに魔法を互いに使う。用意ができたところで、動きを止める。この方法で、奴を迎え撃つ準備ができた。どこか加虐的な様相に満ちた笑みを浮かべて、ゆっくりと近づいてくる。どうせ俺たちは逃げられないとでもおもっているのだろうか。

 今度は、こちらが狩る番だと内心思いつつ、この場は奴の歩調に合わせて後退した。

 いよいよだ、奴の次の一歩で決まる。今度はこちらが用意したテリトリーに奴は足を踏み入れた。この瞬間である、存在したはずの地面が崩れ落ち、何が起きたのかわからないような顔つきでヤツは落ちてゆく。

 魔法が直接効かなくとも、魔法で周囲を作用させることはできる。

 落とし穴に落ちた奴の身動きを取れなくさせるため、一瞬にして濡れた砂で埋め尽くしてまう。ちょうど鼻の下あたりまで埋まってしまい完全に身動きが取れなくなった。

 俺たちは、驚いて暴れないようにゆっくりと近づく。当然ながら、先ほどまで届かない顔のしかも目の位置がすぐ先にある。俺は右側に、リリーは左側に行くと、魔法を放った。

「ダークボルト!」

「フェアリーランス!」

 そう目だけは、アンチマジック化をしていないのだ。俺の魔法もリリーの魔法も奴の目穿ち、後頭部を突き破った。同時に勢いよく、脳漿のうしょうをぶちまける。ここまできてようやく勝てた。

 安堵していると、重たい物の落ちる音がした。そんな響が聞こえてきたので、奴の頭の後頭部に近づくと、魔石が落ちている。

「頭の中にあるのは、はじめてだな」

「私もはじめてみるぞ!」

 大きさは、俺の頭と同じぐらいの大きさの物が一個見つかる。すぐにしまうと再び道なりに進む。

 しばらく進むと、軽くみて数十人規模の人々が、血みどろになり倒れている。あの様子はどう見ても、即死に近い。
何が起きたのか、倒れ方を見ているといきなり倒れた感じはする。

「なんだ? 全員横側面から、何か貫通した後があるな」

「私の方も同じだ。何か変だな?」

「リリー! 両サイドの壁に向けて弾幕を張れ! 今すぐだ!」

 俺も急いで両腕を広げて、ダークボルトを左右の壁に向けて放つ。リリーも同様に、フェアリーランスを放った。この時、光の奔流に飲み込まれたかと思うほどの直線的な光が、左右の壁から放たれた。
 わずかな間だけ、光が交差する。恐らくは、この光の筋にやられたに違いない。後からでは、相殺が間に合わない攻撃だ。彼らの死のおかげで俺たちは、無傷で済んだ。

 光の攻撃が止むと同時に、俺たちは走り出す。

 また、いつこの攻撃が来るのかわからない。唯一の方法は、ここから逃げることだ。十分ほど走り抜けると、十字に交差する場所に遭遇する。俺たちは、曲がれる箇所はすべて、左側に曲がることで統一をしてきた。今回も同じだ。

 今までの戦いを振り返ると、あの大蛇のような行列が、できる理由がわからなかった。

 どう見ても難易度が高すぎる。俺たちでさえ、苦戦を強いられる物ばかりだ。可能性としては、転送された位置により、当たり外れが大きいのかもしれない。

 予測では、ほとんどの場合が、容易な場所なんだろう。俺たちのような高難易度の場所は、ごく稀に起きるとそう解釈ができる。そうでなければ皆、帰らぬ人となって、近寄る者自体が減るだろう。当然行く人が少なくなれば、おいそれと命を投げ出すわけにも行かないので、廃れてしまう。そうさせない何かがあるのかもしれない。

 そうでない限り説明はつかないだろう。ただ、俺たちの行く道は困難しかなかった。

 困難さを証明するかのように次は、目先に見えるのは背丈三メートルほどの白い甲冑に身を纏う騎士がいた。盾
を構えて片手剣を持ち、一人で置物のように微動だにせず、待ち構える姿がそこにあった。

 なぜ置物でないかと言えるかは、一定間隔で白い息を履いていたからだ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

処理中です...