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一章:異世界 異能と魔法の東京国(新宿編)
第10話『地属性最強種! 埼玉!』(3/8)
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魔法噴水のある中央広場に到着した零士は、背後に噴水を背負い、正面から迫り来るサメに直面していた。サメは勢いを増して大きく口を開け、飲み込むかのように零士に襲い掛かる。
「今だ!」の叫びと共に、零士は噴水へと飛び込むタイミングを見計らい、ギリギリのところで身を退く。サメも躊躇なくその後を追い、水しぶきが高く舞う中、サメの形をなぞるように水が動く。
突然、零士の目にはっきりとしたものが映る。「見つけたぜ!」と彼は声を上げる。
「零士さま、今です!」ウルもタイミングを合わせて叫ぶ。その声は零士の脳内に響き渡り、彼はその指示に従う。
零士は水中に手を突っ込み、紫色に輝く魔核を見つけ出す。それは親指ほどの大きさで、彼はそれを掴み取り、力強く握り潰した。サメが驚愕の表情を浮かべた瞬間を、彼は見逃さなかった。サメの持つ知性があるものの、今回の教訓は生かされないだろうと彼は感じ取る。
水を纏ったサメの形は崩れ、零士は頭から水を被りながらも、ずぶ濡れの状態で立ち上がる。「さて、続きをやるか」と彼が言うと、「ええ、戻りましょう」とウルはどこか和やかな笑みを浮かべたように思えた。
解放感に満ちた足取りで、彼はギルド裏の訓練場へと走り出す。先ほどの戦いの緊張が解けたことで、彼の動きはより軽やかになっていた。
「やはり、あれ以上の魔法生物はいないか」と零士は周囲を警戒しながら呟く。
「そのようですね」とウルも同意する。彼女の声には安堵の色が滲んでいた。
地面を駆け巡った魔法生物たちはもう姿を消していた。
「零士さま、今回の思い切りの良さが勝因でしたね。何かヒントがあったのですか?」とウルは彼に問う。その問いに、零士は「ああ、体さ。全部土だけだったからな」と答える。
「表層の土だけしかなかったのですね」とウルが確認する。
「そうだ。土だけで構成されていたから、表面の物質にしか作用しないと踏んだんだ」と零士はその理由を説明する。ウルは零士の洞察力に改めて感嘆する。
「大抵は少し掘れば砂利や大石が混じっているものですが、土だけだったんですね」と彼女は状況を納得する。
「それを踏まえた賭けだった。あの魔法をもし水の上でもうまくやれば、歩けるかもしれないな」と零士は敵ながらさらなる可能性をみた。
訓練場に戻ると、状況は変わらないままだった。わずかに動いているのは変わりない。
埼玉は変わらず同じ位置におり、先ほどの掌底を食らわせたダメージはまだ届いていない。
零士は前へ踏み出そうとしている姿勢の埼玉を左の膝を超筋を使い斜め上から足裏で撃ち抜く。すると最も簡単に逆のくの字になり折れ曲がってしまう。
同様に右足の膝も逆のくの字にして、さらに左腕の肘も二の腕と腕を掴むと自身の膝を使いテコの原理で逆のくの字になるよう折ってしまう。同じことを右の肘にもこない、これで左右の足と腕は使い物にならなくなる。
これで、相手の動きを完全に封じ込めることができた。
続けて連続する掌底の打撃は、三十ほど連打したところで止めた。戦闘が通常の時間軸に戻ると、その惨たらしさは言葉に尽くせないほどだった。
「覚悟していたわけだからな」と零士は一応は死なない程度にまでは手加減したつもりだった。ただし、後からまた挑戦者が出ると厄介なので、見せしめとして手ひどくダメージを与えた。
「当然ですね!」とウルも心の底から同意するようだ。もし隣にいたら肯定の意味で何度も頭を頷いた動作をしていそうだ。
「ウル、解除!」と零士は要請した。
「はい! 超人化! 解除!」とウルは超人化を解除し、元の時間軸へと移行した。
灰色だった景色が、色とりどりの色彩に戻り同時に埼玉は、目をまるくし苦しむかのように口を半開きに開けた。彼の目は痛みに潤み、血の味が口内に広がっていた。
両足の膝が折れてしまい逆くの字に曲がると、その数秒後に両肘が反対側に曲がりさらに数秒も立たない内に、背をくの字に曲げて盛大に吐血をして倒れてしまう。
零士は倒れた埼玉に向けて正直な気持ちを吐露した。
「お前、強かったぜ」と零士は言った。彼の声には敬意と同情がこもっており、戦いの激しさを物語るような暖かみがあった。
埼玉は半分諦め顔で「これで……。適正がないなんて言い草は……不公平だ」とギルドに対して、不満を漏らす。
言葉を発すると意識を失ったのか、頭をうなだれてしまう。待機していたギルドの職員たちは、救護に駆けつけ回復魔法を使い肘も膝も元通りに修復し、群馬の時と同様に担架に乗せ運び出してしまう。
この救護班は仕事が早く正確だ。今回で2回目の遭遇である。1回目は言わずもがな群馬だ。
零士はこの処置を当然群馬の時も見ているから、死ななければどうとでもなると踏んでいた。結果としては予想通りではあるもののどこか腑に落ちない。果たして自分が逆に同じような症状で倒れたら助けてくれるのかと。
恐らくは放置が正解だろうと零士は思っていた。なぜなら方やエリートの高ランクハンター。こちららは、名無しでモグリの自称ハンター。どちらがギルドにとって価値ある存在かは誰の目にも明らかだ。
とはいえ、ギルドにとって価値ある群馬や埼玉を倒してもハンターランクは上がらない。
それに、現在も追放されたままの状態で野良の自称ハンターだ。どんなに狩りをしても得られるのは、自らの実体験の上昇。それと獲物を売ることでの金、あとは能力を使う為のエネルギー源としてだ。当然、浸食率を上げる為の捕食も含まれる。
つまりどこにも所属していない流浪の『モグリ』のハンターである。
群馬と埼玉を倒してからというもの、難癖をつけてくる者は現れてこなかった。むしろ、命をかけて死闘を演じた群馬からの報復に皆が恐れていたぐらいだ。
とはいえ、ハンターは全て自己責任。自由を謳歌し自分の判断で自らの命を賭け金にする職業だ。その分、リターンも当然多いし負ければ即死亡なんてざらだ。
零士の場合は、能力の維持と「レメデヴェル」と謎の言葉を発して去った者の行方を追っているため、ハンターランクにはこだわりもなかった。零士にとって魔法結社は、単に情報収集と買取屋にしかすぎない場所だ。多少は買い叩かれても日銭にはなるし、宿代と食い物は買える。誰からも縛りも受けない身持ちだ。未登録で身分証すらない潜りのハンターはそんな物らしい。皆それぞれ事情があるのだ。
さっそく、ギルドの受付で埼玉の預けた賞金である金貨百枚を譲り受け、これですべて終了した。よくよく考えると、埼玉はエリートでベテランな割には金貨百枚などと随分とケチくさい金額の提示だった。今更それを言っても始まらないし、零士にとっては身になる戦いだったので結果はよしとした。
「今だ!」の叫びと共に、零士は噴水へと飛び込むタイミングを見計らい、ギリギリのところで身を退く。サメも躊躇なくその後を追い、水しぶきが高く舞う中、サメの形をなぞるように水が動く。
突然、零士の目にはっきりとしたものが映る。「見つけたぜ!」と彼は声を上げる。
「零士さま、今です!」ウルもタイミングを合わせて叫ぶ。その声は零士の脳内に響き渡り、彼はその指示に従う。
零士は水中に手を突っ込み、紫色に輝く魔核を見つけ出す。それは親指ほどの大きさで、彼はそれを掴み取り、力強く握り潰した。サメが驚愕の表情を浮かべた瞬間を、彼は見逃さなかった。サメの持つ知性があるものの、今回の教訓は生かされないだろうと彼は感じ取る。
水を纏ったサメの形は崩れ、零士は頭から水を被りながらも、ずぶ濡れの状態で立ち上がる。「さて、続きをやるか」と彼が言うと、「ええ、戻りましょう」とウルはどこか和やかな笑みを浮かべたように思えた。
解放感に満ちた足取りで、彼はギルド裏の訓練場へと走り出す。先ほどの戦いの緊張が解けたことで、彼の動きはより軽やかになっていた。
「やはり、あれ以上の魔法生物はいないか」と零士は周囲を警戒しながら呟く。
「そのようですね」とウルも同意する。彼女の声には安堵の色が滲んでいた。
地面を駆け巡った魔法生物たちはもう姿を消していた。
「零士さま、今回の思い切りの良さが勝因でしたね。何かヒントがあったのですか?」とウルは彼に問う。その問いに、零士は「ああ、体さ。全部土だけだったからな」と答える。
「表層の土だけしかなかったのですね」とウルが確認する。
「そうだ。土だけで構成されていたから、表面の物質にしか作用しないと踏んだんだ」と零士はその理由を説明する。ウルは零士の洞察力に改めて感嘆する。
「大抵は少し掘れば砂利や大石が混じっているものですが、土だけだったんですね」と彼女は状況を納得する。
「それを踏まえた賭けだった。あの魔法をもし水の上でもうまくやれば、歩けるかもしれないな」と零士は敵ながらさらなる可能性をみた。
訓練場に戻ると、状況は変わらないままだった。わずかに動いているのは変わりない。
埼玉は変わらず同じ位置におり、先ほどの掌底を食らわせたダメージはまだ届いていない。
零士は前へ踏み出そうとしている姿勢の埼玉を左の膝を超筋を使い斜め上から足裏で撃ち抜く。すると最も簡単に逆のくの字になり折れ曲がってしまう。
同様に右足の膝も逆のくの字にして、さらに左腕の肘も二の腕と腕を掴むと自身の膝を使いテコの原理で逆のくの字になるよう折ってしまう。同じことを右の肘にもこない、これで左右の足と腕は使い物にならなくなる。
これで、相手の動きを完全に封じ込めることができた。
続けて連続する掌底の打撃は、三十ほど連打したところで止めた。戦闘が通常の時間軸に戻ると、その惨たらしさは言葉に尽くせないほどだった。
「覚悟していたわけだからな」と零士は一応は死なない程度にまでは手加減したつもりだった。ただし、後からまた挑戦者が出ると厄介なので、見せしめとして手ひどくダメージを与えた。
「当然ですね!」とウルも心の底から同意するようだ。もし隣にいたら肯定の意味で何度も頭を頷いた動作をしていそうだ。
「ウル、解除!」と零士は要請した。
「はい! 超人化! 解除!」とウルは超人化を解除し、元の時間軸へと移行した。
灰色だった景色が、色とりどりの色彩に戻り同時に埼玉は、目をまるくし苦しむかのように口を半開きに開けた。彼の目は痛みに潤み、血の味が口内に広がっていた。
両足の膝が折れてしまい逆くの字に曲がると、その数秒後に両肘が反対側に曲がりさらに数秒も立たない内に、背をくの字に曲げて盛大に吐血をして倒れてしまう。
零士は倒れた埼玉に向けて正直な気持ちを吐露した。
「お前、強かったぜ」と零士は言った。彼の声には敬意と同情がこもっており、戦いの激しさを物語るような暖かみがあった。
埼玉は半分諦め顔で「これで……。適正がないなんて言い草は……不公平だ」とギルドに対して、不満を漏らす。
言葉を発すると意識を失ったのか、頭をうなだれてしまう。待機していたギルドの職員たちは、救護に駆けつけ回復魔法を使い肘も膝も元通りに修復し、群馬の時と同様に担架に乗せ運び出してしまう。
この救護班は仕事が早く正確だ。今回で2回目の遭遇である。1回目は言わずもがな群馬だ。
零士はこの処置を当然群馬の時も見ているから、死ななければどうとでもなると踏んでいた。結果としては予想通りではあるもののどこか腑に落ちない。果たして自分が逆に同じような症状で倒れたら助けてくれるのかと。
恐らくは放置が正解だろうと零士は思っていた。なぜなら方やエリートの高ランクハンター。こちららは、名無しでモグリの自称ハンター。どちらがギルドにとって価値ある存在かは誰の目にも明らかだ。
とはいえ、ギルドにとって価値ある群馬や埼玉を倒してもハンターランクは上がらない。
それに、現在も追放されたままの状態で野良の自称ハンターだ。どんなに狩りをしても得られるのは、自らの実体験の上昇。それと獲物を売ることでの金、あとは能力を使う為のエネルギー源としてだ。当然、浸食率を上げる為の捕食も含まれる。
つまりどこにも所属していない流浪の『モグリ』のハンターである。
群馬と埼玉を倒してからというもの、難癖をつけてくる者は現れてこなかった。むしろ、命をかけて死闘を演じた群馬からの報復に皆が恐れていたぐらいだ。
とはいえ、ハンターは全て自己責任。自由を謳歌し自分の判断で自らの命を賭け金にする職業だ。その分、リターンも当然多いし負ければ即死亡なんてざらだ。
零士の場合は、能力の維持と「レメデヴェル」と謎の言葉を発して去った者の行方を追っているため、ハンターランクにはこだわりもなかった。零士にとって魔法結社は、単に情報収集と買取屋にしかすぎない場所だ。多少は買い叩かれても日銭にはなるし、宿代と食い物は買える。誰からも縛りも受けない身持ちだ。未登録で身分証すらない潜りのハンターはそんな物らしい。皆それぞれ事情があるのだ。
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