1 / 3
私とコアラの朝
しおりを挟む
私はコアラと暮らしている。
6時20分にアラームで飛び起きる。すると隣で寝ているコアラが身じろぎをする。
バタバタと準備をして、家を出る5分前にコアラを起こす。
「ちょあら」
コアラのかけている布団を剥がす。
我ながら最低な同居人だ。
コアラは布団を求めてもぞもぞ動く。
「ちょあら、起きて。連れてって」
「ングググ…」
コアラを揺さぶる。
「起きて起きて。ぎゅーして」
コアラはにまぁーっと笑って腕を広げる。
「起きてぎゅーして」
コアラはぐねぐね体を動かしてやっとのことでベッドに腰掛ける。
「ぎゅーーー♡」
私はコアラを抱きしめる。暖かい。胸の辺りにすりすり頭を擦り付けられる。頭の毛を揉むように撫でるのが好きだ。
「ちょあら、私のこと好き?」
「ングググ…」
お腹の辺りをぐりぐりするばかりで、求めていた返事は返ってこない。
ああ、仕事に行かないと。
「ちょあら、連れてって」
コアラのお気に入りのジャージを指差す。
あと2分で出なきゃ。
荷物を詰めていると、メガネをかけてジャージを着たコアラがぼんやり立っている。
「ちょあら、私のこと好き?」
もう一回聞く。
「ダイシューキ」
棒読みで求めていた言葉が返ってきた。不満だがもう家を出なくては。
コアラに運転してもらって駅まで向かう。
ああ、仕事に行きたくない。ロクな仕事してないくせに仕事に行きたくない。組織にいたくない。新しい仕事を任されるのが怖い。
「ちょあら、仕事行きたくないよ」
「ンー」
思わずコアラに弱音を吐いてしまう。大丈夫だよ、と言ってもらえることをどこか期待して。
でも求めていた返事は返ってこない。
コアラのために仕事を頑張れるような、優しくて強い人でありたかった。
ああ、駅が見える。
「ちょあら、ありがとう。いってきます」
諦めてドアを開けると、思いがけずコアラが頭を撫でてくれた。
「…ありがとう」
ああ、もう行かなくては。
6時20分にアラームで飛び起きる。すると隣で寝ているコアラが身じろぎをする。
バタバタと準備をして、家を出る5分前にコアラを起こす。
「ちょあら」
コアラのかけている布団を剥がす。
我ながら最低な同居人だ。
コアラは布団を求めてもぞもぞ動く。
「ちょあら、起きて。連れてって」
「ングググ…」
コアラを揺さぶる。
「起きて起きて。ぎゅーして」
コアラはにまぁーっと笑って腕を広げる。
「起きてぎゅーして」
コアラはぐねぐね体を動かしてやっとのことでベッドに腰掛ける。
「ぎゅーーー♡」
私はコアラを抱きしめる。暖かい。胸の辺りにすりすり頭を擦り付けられる。頭の毛を揉むように撫でるのが好きだ。
「ちょあら、私のこと好き?」
「ングググ…」
お腹の辺りをぐりぐりするばかりで、求めていた返事は返ってこない。
ああ、仕事に行かないと。
「ちょあら、連れてって」
コアラのお気に入りのジャージを指差す。
あと2分で出なきゃ。
荷物を詰めていると、メガネをかけてジャージを着たコアラがぼんやり立っている。
「ちょあら、私のこと好き?」
もう一回聞く。
「ダイシューキ」
棒読みで求めていた言葉が返ってきた。不満だがもう家を出なくては。
コアラに運転してもらって駅まで向かう。
ああ、仕事に行きたくない。ロクな仕事してないくせに仕事に行きたくない。組織にいたくない。新しい仕事を任されるのが怖い。
「ちょあら、仕事行きたくないよ」
「ンー」
思わずコアラに弱音を吐いてしまう。大丈夫だよ、と言ってもらえることをどこか期待して。
でも求めていた返事は返ってこない。
コアラのために仕事を頑張れるような、優しくて強い人でありたかった。
ああ、駅が見える。
「ちょあら、ありがとう。いってきます」
諦めてドアを開けると、思いがけずコアラが頭を撫でてくれた。
「…ありがとう」
ああ、もう行かなくては。
0
あなたにおすすめの小説
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる