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シミュレーション
しおりを挟む妻と離婚して35年、現在70歳今の日課は近所のショッピングモールの中にある喫茶店で15時10分から15時40分まで30分かけコーヒを飲むことだ。
今日もいつもと同様に15時10分にコーヒーを注文し席で待つ。ただ一つ違うことは娘が息子をその喫茶店に連れてくると、連絡が入った事だ。
最後に娘に会ったのはいまから10年以上前の話だ。
今では娘もバツイチ子持ち現代の日本社会ではよく見かける家族構成だ。
俺はどう言う話をしようかまずは何を聞こうかなどと言った会話のシミュレーションを脳内で永遠のように繰り返した。
そうこうしていると、目の前には三十路の娘と小学校生ぐらいの男の子が立っていた。
俺が2人を目の前にして直感的に出た感想が、
ガキンチョのくせに何故髪の毛をセットして黒いマスクをしているんだ。まるで東京に憧れた田舎者のそれじゃないか。
と考えてしまった。
そのせいで会話のシミュレーションは全て忘れてたった一言「久しぶりだな。」
そこからは娘が俺の事を孫に紹介したり娘の近況報告を聞き息子はおじいちゃんに似てるなど俺が嬉しいと感じる会話を続けた。
10分ほど話を聞いたら娘が「ちょっと買い物に2人で行ってくるからまた今度ね」と言い出した。
このまた今度は永遠に来ることがない。そんな事は娘も俺も孫も3人の中ではわかっていた。聞くまでもなく3人でまた今度という言葉で永遠を納得した。
2人が見えなくなったあと一口冷めたコーヒを薄くすすり、両手で顔を覆ったままふかいため息をつく。その後真っ直ぐ前を見て小声で「初めましてお爺ちゃんだよ。」「今何歳になるんだ?」「学校は楽しいか?」「好きな食べ物はなんだ?」
小声でするはずだった質問を1人で繰り返す。
永遠に答えが帰ってこない質問を。
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