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ep33 005
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午後。
家に帰ってきた俺は勉強していた。
「......」
勉強しているのだが、普段とまったく異なることが二つある。
一つは、勉強机ではなく床に座ってテーブルで勉強していること。
そしてもう一つは......
「井藤くん。これなんだけど......」
学級委員長さんと向かい合って勉強していること!
あれから一時間ぐらいグラウンドで運動した後、学級委員長さんは自分の家に帰っていった。
ところが、ネーコが何やら画策していたらしく、学級委員長さんは私服に着替えて今度は俺ん家にやって来たのだ。
「えっ!?井藤くんって......すっごく頭良い!?」
学級委員長さんは、苦戦していた数学の問題をあっさり解いた俺に驚いた。
「そ、そうかな」
俺はテレながら頭をポリポリ掻いた。
といっても、照れているのはなにも褒められたからだけではなかった。
自分の部屋でクラスメイトの女子と二人っきりで向かい合っているこの状況に俺はテレている!
不登校児にこの状況は難易度が高すぎる。
「学校来ないのにそれってなんか反則だよぉ~」
学級委員長さんは悔しそうに言った。
「ま、まあ、勉強はしてるからね。一応」
「独学ってことだもんね?すごいなぁ」
「いや、全然そんなことは」
「ちょっと悔しいかも」
学級委員長さんはムムム~と唸って唇を噛んだ。
俺は困りながらアハハハと苦笑いを浮かべた。
「わたしも、クラスでは成績一番なんだよ?学年順位も一桁だし。たぶん井藤くん、学校来たら学年一位になれると思うよ?」
「あ、ええっと、どうかな......」
「もったいないと思う」
「いや、そんな」
「そーだよ!もったいない!」
「ああ......う、うん......」
俺はあからさまに彼女から視線をサッと外してむっつりと口を閉じる。
「......」
自分でもわかっている。
こんな態度を表に出しても、真面目で優しい彼女に気遣わせてしまうだけだって。
「......あっ!あの!そういうつもりじゃないの!ちがうの!も、もちろん、井藤くんが来てくれたらいいな~って思うけど、無理はしてほしくないし!そもそも井藤くんが決めることだし!ご、ごめんなさい!」
途端にあたふたとする学級委員長さん。
案の定、真面目で優しい彼女に余計な気を遣わせてしまった。
いっそ彼女が無神経なほうが楽だったかもしれない。
彼女が本当に真面目で優しい分、俺はこんな自分自身がますます嫌になる。
そうなっている自分がまたさらに情けなく思えて、自己嫌悪が胸をじんわりと陰鬱に熱くする。
「いや、いいよ......」
俺の声はボソボソとして、なんだか喉が詰まっている気がする。
(こういう時はもっとハッキリ言葉に出して相手を安心させるべきだろ?何やってんだよ俺...)
そんな時。
コンコンというノック音と共に、
「フミヒロ様!伊野上さん!入りますよ?」
バーン!とドアが開いて美少女アンドロイドが入ってきた。
「ね、ネーコ?」
「おやつをお持ちしました!」
ネーコの手にはおぼんがあり、その上にお菓子と飲み物が置かれている。
が......
「ん?その箱はなんだ?それもお菓子?」
俺はおぼんの一箇所に不自然に置かれた小さい箱を見出した。
「コレですか?避妊具です」
ネーコはあっさりと答えた。
「オイッ!!」
すぐさまツッコむ俺。
「持久力が無さそうと思われるフミヒロ様には厚めの005ミリをご用意いたしました」
「余計な気づかい!!」
「そうですか?」
「そうもなにもそんなことしないから!!」
「クラスメイトを部屋に連れ込んですっかりヤル気かと」
「言いかた!!」
「フミヒロ様」
「な、なんだよ?」
「ミッションコンプリ~ト!」
「もういいわ!!」
一方、さすがの学級委員長さんでもそれが何かはわかったらしく、顔をゆでだこのように真っ赤にして黙ったままうつむいていた。
午後。
家に帰ってきた俺は勉強していた。
「......」
勉強しているのだが、普段とまったく異なることが二つある。
一つは、勉強机ではなく床に座ってテーブルで勉強していること。
そしてもう一つは......
「井藤くん。これなんだけど......」
学級委員長さんと向かい合って勉強していること!
あれから一時間ぐらいグラウンドで運動した後、学級委員長さんは自分の家に帰っていった。
ところが、ネーコが何やら画策していたらしく、学級委員長さんは私服に着替えて今度は俺ん家にやって来たのだ。
「えっ!?井藤くんって......すっごく頭良い!?」
学級委員長さんは、苦戦していた数学の問題をあっさり解いた俺に驚いた。
「そ、そうかな」
俺はテレながら頭をポリポリ掻いた。
といっても、照れているのはなにも褒められたからだけではなかった。
自分の部屋でクラスメイトの女子と二人っきりで向かい合っているこの状況に俺はテレている!
不登校児にこの状況は難易度が高すぎる。
「学校来ないのにそれってなんか反則だよぉ~」
学級委員長さんは悔しそうに言った。
「ま、まあ、勉強はしてるからね。一応」
「独学ってことだもんね?すごいなぁ」
「いや、全然そんなことは」
「ちょっと悔しいかも」
学級委員長さんはムムム~と唸って唇を噛んだ。
俺は困りながらアハハハと苦笑いを浮かべた。
「わたしも、クラスでは成績一番なんだよ?学年順位も一桁だし。たぶん井藤くん、学校来たら学年一位になれると思うよ?」
「あ、ええっと、どうかな......」
「もったいないと思う」
「いや、そんな」
「そーだよ!もったいない!」
「ああ......う、うん......」
俺はあからさまに彼女から視線をサッと外してむっつりと口を閉じる。
「......」
自分でもわかっている。
こんな態度を表に出しても、真面目で優しい彼女に気遣わせてしまうだけだって。
「......あっ!あの!そういうつもりじゃないの!ちがうの!も、もちろん、井藤くんが来てくれたらいいな~って思うけど、無理はしてほしくないし!そもそも井藤くんが決めることだし!ご、ごめんなさい!」
途端にあたふたとする学級委員長さん。
案の定、真面目で優しい彼女に余計な気を遣わせてしまった。
いっそ彼女が無神経なほうが楽だったかもしれない。
彼女が本当に真面目で優しい分、俺はこんな自分自身がますます嫌になる。
そうなっている自分がまたさらに情けなく思えて、自己嫌悪が胸をじんわりと陰鬱に熱くする。
「いや、いいよ......」
俺の声はボソボソとして、なんだか喉が詰まっている気がする。
(こういう時はもっとハッキリ言葉に出して相手を安心させるべきだろ?何やってんだよ俺...)
そんな時。
コンコンというノック音と共に、
「フミヒロ様!伊野上さん!入りますよ?」
バーン!とドアが開いて美少女アンドロイドが入ってきた。
「ね、ネーコ?」
「おやつをお持ちしました!」
ネーコの手にはおぼんがあり、その上にお菓子と飲み物が置かれている。
が......
「ん?その箱はなんだ?それもお菓子?」
俺はおぼんの一箇所に不自然に置かれた小さい箱を見出した。
「コレですか?避妊具です」
ネーコはあっさりと答えた。
「オイッ!!」
すぐさまツッコむ俺。
「持久力が無さそうと思われるフミヒロ様には厚めの005ミリをご用意いたしました」
「余計な気づかい!!」
「そうですか?」
「そうもなにもそんなことしないから!!」
「クラスメイトを部屋に連れ込んですっかりヤル気かと」
「言いかた!!」
「フミヒロ様」
「な、なんだよ?」
「ミッションコンプリ~ト!」
「もういいわ!!」
一方、さすがの学級委員長さんでもそれが何かはわかったらしく、顔をゆでだこのように真っ赤にして黙ったままうつむいていた。
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