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ep4 雲ケ畑糸緒莉②
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「しおりさんは、この辺はよく来るんですか?」
夜の週末に賑わう街を歩きながら、なにか会話をしなければと山田ナゴムはしおりに質問を投げかけた。
「しょっちゅうは来ませんけど、たまに友達に誘われて来ますね。山田さんは?」
「僕は仕事でちょくちょく来ます。休みの日に来ることはあまりないですけど」
「そうなんですね」
「......」
山田ナゴムはハッとした。
(や、ヤバい!会話がつづかない!)
まだ店にも着いていないし、まずは当たりさわりのない会話から始めたけど......ミスった!
当たりさわりなさすぎて、会話が広がらナーイ!
どどどうする!?
さっそくつまらないヤツだと思われるぞ!
どうした山田和!
おまえはもうオトナだぞ!
二十四歳の社会人だぞ!
ましてやお前は営業やってんだろ?
そうだ!
その営業経験を活かすんだ!
よーし!
「......あ、そうそう」
山田ナゴムは、とぎれかかった会話の糸を繋げようと口を切る。
「?」
「今朝、ニュースで〇〇社の株が一気に下落したとか出てたんですけど、〇〇社って紡績会社ですよね?そういえばしおりさんも紡績会社勤務だったよな~て」
「あっ、ああ~それですか。〇〇社は私が働いている会社の親会社です」
「えっ」
「勉強も兼ねて私も〇〇社の株を持ってたんですけど、すっかり値下がりしちゃいました」
「そ、そうでしたか......」
しおりはフツーに笑顔を見せていたが、山田ナゴムは不器用な笑みを浮かべて密かに動揺する。
(てゆーかこの会話なんなんだ!?
俺はなんのハナシをしてるんだ!?
こーゆーのってどう返せばいいんだ??)
全然ダイジョーブだよ!とか?
大丈夫ってなにが?と言われたら終わる...。
マジで?ウケる~!とか?
なにがウケるの?と言われたら終わる...。
俺が元値で買うよ!とか?
そんなの怪しがられるに決まっている...。
俺の中でしおり株は爆上がり中だぜ!とか?
そんなん言ったらスベるどころかフツーに引かれるわ!
(ヤバい。正解がまったくわからない......)
青年の努力むなしく......。
会話は弾まないまま、目的地の大人カジュアルなレストランに到着。
山田ナゴムがあらかじめ席を予約していたため、二人はすんなりとテーブルに着く。
彼はしおりと向かい合うと、あらためてその美しさに圧倒される。
(こ、こうやって正面からマトモに見ると、うん。や、ヤバい......)
それでも、すぐに必死にさっきまでの失敗を取りもどそうと、
「あ、あの、し...」
会話のボールを投げようと動きだすが、
「こちらメニューになります」
店員とかぶった。
......もはや踏んだり蹴ったりの気分で意気消沈する山田ナゴム。
そんな彼を察してかはわからないが、しおりが穏やかに微笑みかける。
「ステキなお店を予約していただいてありがとうございます」
「あっ、い、いえ!そんな!」
このとき、山田ナゴムは瞬時に、
(あ、気をつかってくれたんだな)
と思い、次の瞬間、
(落ち込んでる場合じゃない!)
即座にスイッチを入れなおした。
注文をすませると、気を取りなおして、ナゴムはあらためて切りだす。
「先ほども申しましたが......あらためまして、山田ナゴムと申します!
本日はお忙しいなか、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます!」
しおりはナゴムの言葉に、
「......ぷっ」
吹きだし、可憐な口もとに手をあててクスクス笑いだした。
「あの、えっと、しおりさん??」
「す、すいません!つい......クスクス」
「お、俺、なんかヘンなこと言っちゃいましたかね~?ハハハ」
「いえ!私が笑ってしまっただけです。
ゴメンなさい。いきなり失礼ですよね。
ただ、山田さんの挨拶があまりにマジメすぎて...」
「あ、そ、そういうことですか!すいません!つい営業のノリで...」
「いえ、いいんです。むしろマジメそうな方で安心しました」
「な、なら良かった......!」
「やっぱり、いくらしっかりと事前のやりとりがあったからといっても、実際に会ってみないと、人となりってわからないですし。
あ、じゃあ私もあらためて自己紹介しますね。
雲ヶ畑糸緒莉です。今日はよろしくお願いします」
このとき、ナゴムの肩の力がようやくスゥーッと抜けた。
糸緒莉がそれをうまく促したともいえる。
それからふたりの会話はおおいに盛り上がった。
夜の週末に賑わう街を歩きながら、なにか会話をしなければと山田ナゴムはしおりに質問を投げかけた。
「しょっちゅうは来ませんけど、たまに友達に誘われて来ますね。山田さんは?」
「僕は仕事でちょくちょく来ます。休みの日に来ることはあまりないですけど」
「そうなんですね」
「......」
山田ナゴムはハッとした。
(や、ヤバい!会話がつづかない!)
まだ店にも着いていないし、まずは当たりさわりのない会話から始めたけど......ミスった!
当たりさわりなさすぎて、会話が広がらナーイ!
どどどうする!?
さっそくつまらないヤツだと思われるぞ!
どうした山田和!
おまえはもうオトナだぞ!
二十四歳の社会人だぞ!
ましてやお前は営業やってんだろ?
そうだ!
その営業経験を活かすんだ!
よーし!
「......あ、そうそう」
山田ナゴムは、とぎれかかった会話の糸を繋げようと口を切る。
「?」
「今朝、ニュースで〇〇社の株が一気に下落したとか出てたんですけど、〇〇社って紡績会社ですよね?そういえばしおりさんも紡績会社勤務だったよな~て」
「あっ、ああ~それですか。〇〇社は私が働いている会社の親会社です」
「えっ」
「勉強も兼ねて私も〇〇社の株を持ってたんですけど、すっかり値下がりしちゃいました」
「そ、そうでしたか......」
しおりはフツーに笑顔を見せていたが、山田ナゴムは不器用な笑みを浮かべて密かに動揺する。
(てゆーかこの会話なんなんだ!?
俺はなんのハナシをしてるんだ!?
こーゆーのってどう返せばいいんだ??)
全然ダイジョーブだよ!とか?
大丈夫ってなにが?と言われたら終わる...。
マジで?ウケる~!とか?
なにがウケるの?と言われたら終わる...。
俺が元値で買うよ!とか?
そんなの怪しがられるに決まっている...。
俺の中でしおり株は爆上がり中だぜ!とか?
そんなん言ったらスベるどころかフツーに引かれるわ!
(ヤバい。正解がまったくわからない......)
青年の努力むなしく......。
会話は弾まないまま、目的地の大人カジュアルなレストランに到着。
山田ナゴムがあらかじめ席を予約していたため、二人はすんなりとテーブルに着く。
彼はしおりと向かい合うと、あらためてその美しさに圧倒される。
(こ、こうやって正面からマトモに見ると、うん。や、ヤバい......)
それでも、すぐに必死にさっきまでの失敗を取りもどそうと、
「あ、あの、し...」
会話のボールを投げようと動きだすが、
「こちらメニューになります」
店員とかぶった。
......もはや踏んだり蹴ったりの気分で意気消沈する山田ナゴム。
そんな彼を察してかはわからないが、しおりが穏やかに微笑みかける。
「ステキなお店を予約していただいてありがとうございます」
「あっ、い、いえ!そんな!」
このとき、山田ナゴムは瞬時に、
(あ、気をつかってくれたんだな)
と思い、次の瞬間、
(落ち込んでる場合じゃない!)
即座にスイッチを入れなおした。
注文をすませると、気を取りなおして、ナゴムはあらためて切りだす。
「先ほども申しましたが......あらためまして、山田ナゴムと申します!
本日はお忙しいなか、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます!」
しおりはナゴムの言葉に、
「......ぷっ」
吹きだし、可憐な口もとに手をあててクスクス笑いだした。
「あの、えっと、しおりさん??」
「す、すいません!つい......クスクス」
「お、俺、なんかヘンなこと言っちゃいましたかね~?ハハハ」
「いえ!私が笑ってしまっただけです。
ゴメンなさい。いきなり失礼ですよね。
ただ、山田さんの挨拶があまりにマジメすぎて...」
「あ、そ、そういうことですか!すいません!つい営業のノリで...」
「いえ、いいんです。むしろマジメそうな方で安心しました」
「な、なら良かった......!」
「やっぱり、いくらしっかりと事前のやりとりがあったからといっても、実際に会ってみないと、人となりってわからないですし。
あ、じゃあ私もあらためて自己紹介しますね。
雲ヶ畑糸緒莉です。今日はよろしくお願いします」
このとき、ナゴムの肩の力がようやくスゥーッと抜けた。
糸緒莉がそれをうまく促したともいえる。
それからふたりの会話はおおいに盛り上がった。
応援ありがとうございます!
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