26 / 43
ep26 あやかし飲み会④
しおりを挟む
さて......。
おそらく皆さんも、
(糸緒莉のヤツ、一体どうしちゃったんだ?)
と思われたかと思う。
結論は簡単だ。
雲ヶ畑糸緒莉は酔っていたのである。
カワイイ長穂との出会いにテンションが上がり、ついつい短時間ハイペースで飲んでいたのだ。
自分と同じ妖女子であり、マジメで優しくておっとりとした長穂に、気の許す部分も大きかったのであろう。
そして......。
雲ヶ畑糸緒莉は酔うと時折、夢見る乙女になることがある。
妄想乙女モードの糸緒莉は、一部の親しい同性の友人しか知らない〔レアしおり〕である。
ナゴムは以前、〔レアしおり〕をほんの少しだが垣間見たことがある。
糸緒莉に好きな男性のタイプを尋ね、
「白馬の王子様」
と答えられた時だ。
といってもそれはあくまでごくごく一部。
今回ここまでガッツリ乙女妄想する糸緒莉を目の当たりにして面食らってしまうのは仕方あるまい。
しかし、ナゴムはすぐにはたとして長穂を見た。
「あれ?長穂さん?」
長穂はワナワナと震えていた。
彼はそれがどういう感情なのかわからない。
しかし、それもすぐに判明する。
「な、な、な、ななななななんですかそれはぁー!!」
長穂が顔を真っ赤にして叫んだ。
彼女の瞳の輝きはさらに照度を増している。
「糸緒莉ちゃん!」
「な、なに?」
「そのエピソード、わたしにください!」
「はい??」
「わ、わたし、趣味で少女マンガを書いているんですけど、それいただきたいです!」
「長穂ちゃん、マンガ書いているの?」
「はい!だから!」
「それなら長穂ちゃん。条件があるわ」
「条件?」
「簡単よ。私も創作に参加させなさい!」
「し、糸緒莉ちゃんが!?」
「そうよ!」
「わ、わたしは全然オーケーだけど」
「ふたりで妖少女マンガを描くのよ!なんせ私たちはホンモノの妖。強力なアドバンテージになるわ!マンガなら正体もバレずに済むし!」
糸緒莉と長穂はイェーイとハイタッチをして盛り上がる。
ついていけないナゴムは沈黙。
(そのノリ、一体なんですか......)
だが、盛り上がる妖女子ふたりを見て、しみじみ思う。
(本当にふたりを引き合わせて良かった)
当初は妖友達のいない長穂ちゃんのためだったけど、糸緒莉にとってもすごく良かったみたいだ。
糸緒莉は俺と一緒で妖であることを隠しているから、東京で妖と関わることに後向きなのかと思っていた。
だけど、なんだかんだアイツも本当に気の許せる妖友達が欲しかったんじゃないのかな?正体を隠しているだけに。
ナゴムはさらに、今さらながらこうも思う。
(てゆーかこのふたり、客観的に見て、相当カワイイよな......。駅から店まで歩いてくる時もそうだったけど、まわりの視線もちょいちょい感じたし)
ナゴムがきゃっきゃとハシャぐふたりをじっと眺めていると、いきなり妖女子コンビがナゴムにぐんと詰め寄ってくる。
「ちょっとナゴムくん!」
「ナゴムさん!」
妙な気迫があったので、ナゴムはビクッとしておずおずと返事する。
「な、なんすか」
「今すぐ天狗になりなさい!」
「お願いします!」
「はっ?」
「私達の作品のためよ!」
「そうです!」
「いや、意味わからない!」
「私たちは今、貴方に取材しているのよ!」
「それな!」
「いやいや待ってくれ!」
「待てないわ!」
「もうタイトルも決まっていますし!」
「タイトル?」
「え?そうだったの?長穂ちゃん」
「はい!タイトルは『D・S・Qが恋に落ちたらデレデレ乙女になっちゃいました』です!」
「それはやめて」
糸緒莉は食い気味で否定した。
おそらく皆さんも、
(糸緒莉のヤツ、一体どうしちゃったんだ?)
と思われたかと思う。
結論は簡単だ。
雲ヶ畑糸緒莉は酔っていたのである。
カワイイ長穂との出会いにテンションが上がり、ついつい短時間ハイペースで飲んでいたのだ。
自分と同じ妖女子であり、マジメで優しくておっとりとした長穂に、気の許す部分も大きかったのであろう。
そして......。
雲ヶ畑糸緒莉は酔うと時折、夢見る乙女になることがある。
妄想乙女モードの糸緒莉は、一部の親しい同性の友人しか知らない〔レアしおり〕である。
ナゴムは以前、〔レアしおり〕をほんの少しだが垣間見たことがある。
糸緒莉に好きな男性のタイプを尋ね、
「白馬の王子様」
と答えられた時だ。
といってもそれはあくまでごくごく一部。
今回ここまでガッツリ乙女妄想する糸緒莉を目の当たりにして面食らってしまうのは仕方あるまい。
しかし、ナゴムはすぐにはたとして長穂を見た。
「あれ?長穂さん?」
長穂はワナワナと震えていた。
彼はそれがどういう感情なのかわからない。
しかし、それもすぐに判明する。
「な、な、な、ななななななんですかそれはぁー!!」
長穂が顔を真っ赤にして叫んだ。
彼女の瞳の輝きはさらに照度を増している。
「糸緒莉ちゃん!」
「な、なに?」
「そのエピソード、わたしにください!」
「はい??」
「わ、わたし、趣味で少女マンガを書いているんですけど、それいただきたいです!」
「長穂ちゃん、マンガ書いているの?」
「はい!だから!」
「それなら長穂ちゃん。条件があるわ」
「条件?」
「簡単よ。私も創作に参加させなさい!」
「し、糸緒莉ちゃんが!?」
「そうよ!」
「わ、わたしは全然オーケーだけど」
「ふたりで妖少女マンガを描くのよ!なんせ私たちはホンモノの妖。強力なアドバンテージになるわ!マンガなら正体もバレずに済むし!」
糸緒莉と長穂はイェーイとハイタッチをして盛り上がる。
ついていけないナゴムは沈黙。
(そのノリ、一体なんですか......)
だが、盛り上がる妖女子ふたりを見て、しみじみ思う。
(本当にふたりを引き合わせて良かった)
当初は妖友達のいない長穂ちゃんのためだったけど、糸緒莉にとってもすごく良かったみたいだ。
糸緒莉は俺と一緒で妖であることを隠しているから、東京で妖と関わることに後向きなのかと思っていた。
だけど、なんだかんだアイツも本当に気の許せる妖友達が欲しかったんじゃないのかな?正体を隠しているだけに。
ナゴムはさらに、今さらながらこうも思う。
(てゆーかこのふたり、客観的に見て、相当カワイイよな......。駅から店まで歩いてくる時もそうだったけど、まわりの視線もちょいちょい感じたし)
ナゴムがきゃっきゃとハシャぐふたりをじっと眺めていると、いきなり妖女子コンビがナゴムにぐんと詰め寄ってくる。
「ちょっとナゴムくん!」
「ナゴムさん!」
妙な気迫があったので、ナゴムはビクッとしておずおずと返事する。
「な、なんすか」
「今すぐ天狗になりなさい!」
「お願いします!」
「はっ?」
「私達の作品のためよ!」
「そうです!」
「いや、意味わからない!」
「私たちは今、貴方に取材しているのよ!」
「それな!」
「いやいや待ってくれ!」
「待てないわ!」
「もうタイトルも決まっていますし!」
「タイトル?」
「え?そうだったの?長穂ちゃん」
「はい!タイトルは『D・S・Qが恋に落ちたらデレデレ乙女になっちゃいました』です!」
「それはやめて」
糸緒莉は食い気味で否定した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる