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ep36 十九淵裡尾菜⑥
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ガラス越しに広がる夜の世界。
高層から見渡す東京の夜景。
星くずのように遠く煌めく街々。
「久しぶりに来たな~ここ。裡尾菜さんは?」
「私も久しぶりです」
店を後にしたナゴムと裡尾菜は、三毛袋東口から徒歩十分ほどの場所に所在するビル『セイシャイン60』の六十階にある展望台に来ていた。
「すいません。私がワガママ言っちゃって」
「いえそんな!俺も夜景見たりするの好きなんで」
「ロマンチックなんですね」
「そ、そうなのかな?ハハハ」
山田ナゴムは空が好きだった。
空飛ぶ天狗なだけに。
それはさておき......。
ふたりがそこへ訪れたのは裡尾菜の提案によるものだった。
男女二人で夜の展望台。
しかも、女性の裡尾菜の希望によるもの。
(こ、これって......)
否が応でもナゴムの胸は高鳴る。
「キレイですね」
ガラス際に立って外を眺めながら裡尾菜が言った。
「そうですね」
ナゴムも裡尾菜のすぐ傍に立って答えた。
「好きです」
「はい。......えっ?」
「夜景」
「あ......そ、そうですよね!夜景、俺も好きだな~!ハハハ!」
「なんのことだと、思ったんですか?」
裡尾菜は手を後ろで組み、目にどこか蠱惑的な色を添えて微笑んだ。
「い、いや!ハハハ」
アタフタとただ笑ってごまかすナゴム。
「フフフ。山田さんって、可愛いですね」
「そ、そうですか?ハハハ」
「あ、可愛いなんて言い方、イヤでしたか?」
「いえ!全然問題ないです!」
夜景を見ながら談笑するふたり。
はたから見れば、カップルかもしくは付き合う直前の男女といったところ。
そんな彼らをやや離れた位置からこっそり覗き見している女子ふたり。
「ナゴムくん。なんかすごいデレデレしてない?」
「こ、これって、わわわたしたち見ていていいんでしょうか」
不機嫌そうな顔を見せる糸緒莉と、どこか居づらそうな面持ちの長穂。
「ねえ長穂ちゃん」
「も、もうやめましょうよぉ。こういうのよくないですよぉ」
「長穂ちゃんってば」
「し、糸緒莉ちゃん?」
「あらためてあのヒトのこと、どう思う?」
糸緒莉は目に疑念の色を浮かべて訊いた。
「そ、そうですね。なんというか、すごく色っぽい方だなって......て、そういう意味じゃないですよね!す、すいません」
「ううん、いいのよ。実際、女の私たちから見てもスゴく色気のある女性だと思うし。私が気になるのは...」
「さっきのお店で、わたしたちのことを見てたことですか?」
「うん。あれってやっばり、私たちの存在に気づいているって考えて間違いないわよね」
「や、やっぱりここまで付いて来ちゃったのってマズかったですよね!」
「いえ、だったらなおさら私たちが付いていないと」
「そ、それってつまり...」
「でも、美人局というよりもっと違う何かかも」
「ちがうなにか?」
「どうもあのヒトからは、なにかあやしい気配を感じるの......」
「えっ」
ガラス越しに広がる夜の世界。
高層から見渡す東京の夜景。
星くずのように遠く煌めく街々。
「久しぶりに来たな~ここ。裡尾菜さんは?」
「私も久しぶりです」
店を後にしたナゴムと裡尾菜は、三毛袋東口から徒歩十分ほどの場所に所在するビル『セイシャイン60』の六十階にある展望台に来ていた。
「すいません。私がワガママ言っちゃって」
「いえそんな!俺も夜景見たりするの好きなんで」
「ロマンチックなんですね」
「そ、そうなのかな?ハハハ」
山田ナゴムは空が好きだった。
空飛ぶ天狗なだけに。
それはさておき......。
ふたりがそこへ訪れたのは裡尾菜の提案によるものだった。
男女二人で夜の展望台。
しかも、女性の裡尾菜の希望によるもの。
(こ、これって......)
否が応でもナゴムの胸は高鳴る。
「キレイですね」
ガラス際に立って外を眺めながら裡尾菜が言った。
「そうですね」
ナゴムも裡尾菜のすぐ傍に立って答えた。
「好きです」
「はい。......えっ?」
「夜景」
「あ......そ、そうですよね!夜景、俺も好きだな~!ハハハ!」
「なんのことだと、思ったんですか?」
裡尾菜は手を後ろで組み、目にどこか蠱惑的な色を添えて微笑んだ。
「い、いや!ハハハ」
アタフタとただ笑ってごまかすナゴム。
「フフフ。山田さんって、可愛いですね」
「そ、そうですか?ハハハ」
「あ、可愛いなんて言い方、イヤでしたか?」
「いえ!全然問題ないです!」
夜景を見ながら談笑するふたり。
はたから見れば、カップルかもしくは付き合う直前の男女といったところ。
そんな彼らをやや離れた位置からこっそり覗き見している女子ふたり。
「ナゴムくん。なんかすごいデレデレしてない?」
「こ、これって、わわわたしたち見ていていいんでしょうか」
不機嫌そうな顔を見せる糸緒莉と、どこか居づらそうな面持ちの長穂。
「ねえ長穂ちゃん」
「も、もうやめましょうよぉ。こういうのよくないですよぉ」
「長穂ちゃんってば」
「し、糸緒莉ちゃん?」
「あらためてあのヒトのこと、どう思う?」
糸緒莉は目に疑念の色を浮かべて訊いた。
「そ、そうですね。なんというか、すごく色っぽい方だなって......て、そういう意味じゃないですよね!す、すいません」
「ううん、いいのよ。実際、女の私たちから見てもスゴく色気のある女性だと思うし。私が気になるのは...」
「さっきのお店で、わたしたちのことを見てたことですか?」
「うん。あれってやっばり、私たちの存在に気づいているって考えて間違いないわよね」
「や、やっぱりここまで付いて来ちゃったのってマズかったですよね!」
「いえ、だったらなおさら私たちが付いていないと」
「そ、それってつまり...」
「でも、美人局というよりもっと違う何かかも」
「ちがうなにか?」
「どうもあのヒトからは、なにかあやしい気配を感じるの......」
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