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君の隣で生きていきたい
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結果、海の参観日には間に合った。全速力で自転車を漕いだからだ。
(髪も珍しくセットしたのに~)
雨が降ったわけでもない、強風に煽られたわけでもない。ただ、保育園までの道のりの途中に橋があった。向かい風の脅威は恐ろしい。
髪を手櫛で整えながら海の教室まで行く。窓ガラスから見える園児はみんな、先生の方を見て座っている。海もその中の一人だった。
参観日が始まった。今日は季節行事の製作をするらしく、園児の机の上には画用紙や糊などが置かれている。
そのうちに先生の掛け声で製作が始まった。みんな、夢中になって作っている。
「海もちゃんとやってるな」
「当たり前だ、俺たちの子だからな」
海の様子に感動して勇太が陽に囁くと、陽が当たり前のように言った。海のことを家族だと思ってくれている。そのことに胸がいっぱいになる。
すると、海と目が合った。どうやら勇太たちの声が耳に届いてしまったらしい。
控えめに手を振った。海が驚いたように目をまん丸にさせて、それからニッコリと、まるでずっと探していたものをやっと見つけたかのように笑った。
(来て良かったな)
迷っていた気持ちが嘘のように、霧が晴れる。ふと、手に触れる感触に気が付き、隣を見ると陽が慈しむような笑顔で微笑んでくれていた。
(ああ、俺、めっちゃ幸せなんだな)
握られた手をきつく握り返した。幸せだと思う気持ちが伝わればいい。
帰りは給食を食べずに帰ることにした。陽は仕事を一日休んだので、勇太も一日、仕事を休むことにしたのだ。
陽の自転車の後ろに海を載せた。海が保育園に通うようになってから、子どもを自転車に載せられる篭を買った。昔にはないような立派な篭に、時代の流れを感じる。
「海ね、今日、すっごい嬉しいことあったんだ」
「嬉しいことってなに?」
「んとね?ゆうりちゃんが、言ってくれたの。今日ね、陽と勇太が幼稚園に来るんだって言ったらね、ゆうりちゃんがパパ二人も来てくれていいなって。でね、バイバイするときたくみくんが海のパパ、格好良くていいなって!」
「海は俺と勇太が格好良いって褒められて嬉しかったの?」
「それもあるよ!でもね、やっぱり、海は陽と勇太が一緒にきてくれたことが嬉しかったの!だって、海、二人が大好きだからね!」
(ああ、ダメだ。海の前なのに、前が滲む)
今まで泣くときはいつも、悲しかったり悔しかったりするときだった。自分の思いが伝わらないとき、不本意に陰口を叩かれたとき、大切な人の悪口を言われたとき。
でも今は、そうじゃない。嬉しくて、愛しくて、大切だからこそ涙が溢れる。
(ずっと、陽と海と一緒にいたいな。年をとった陽と海を一番近くで見ていたい)
一年、二年、五年、十年。年を重ねた二人を想像した。未来を見ることはできないからどんな二人になっているのかはわからないけれど、きっと誰もが羨む素敵な二人になっている。
(俺も二人が誇れるような男になりたいな)
陽が自信を持って勇太も自分だけを好きなのだと言ってもらえるように。海が鼻を高くして勇太のことを格好良いと言ってくれるように。
(俺のできることから頑張るか)
できないことに手を、足を伸ばしすぎないように。目の前にある手の届くところから、一歩ずつ、掌に握れるように。
「勇太」
「勇太~どうしたの?行こう!」
二人に呼ばれ、前を見る。真っ青な空、眩しい太陽が二人を照らしている。
「ううん、なんでもない。今、行くよ」
そう言いながら、自転車を押して駆け寄った。
今はまだ、駆け寄ることしかできないかもしれないけど、いつか必ず、隣に肩を並べて歩くから。だから、それまで待っていてほしい。
きっと願う前から伝わっている。思いながらも願わずにはいられなかった。
(髪も珍しくセットしたのに~)
雨が降ったわけでもない、強風に煽られたわけでもない。ただ、保育園までの道のりの途中に橋があった。向かい風の脅威は恐ろしい。
髪を手櫛で整えながら海の教室まで行く。窓ガラスから見える園児はみんな、先生の方を見て座っている。海もその中の一人だった。
参観日が始まった。今日は季節行事の製作をするらしく、園児の机の上には画用紙や糊などが置かれている。
そのうちに先生の掛け声で製作が始まった。みんな、夢中になって作っている。
「海もちゃんとやってるな」
「当たり前だ、俺たちの子だからな」
海の様子に感動して勇太が陽に囁くと、陽が当たり前のように言った。海のことを家族だと思ってくれている。そのことに胸がいっぱいになる。
すると、海と目が合った。どうやら勇太たちの声が耳に届いてしまったらしい。
控えめに手を振った。海が驚いたように目をまん丸にさせて、それからニッコリと、まるでずっと探していたものをやっと見つけたかのように笑った。
(来て良かったな)
迷っていた気持ちが嘘のように、霧が晴れる。ふと、手に触れる感触に気が付き、隣を見ると陽が慈しむような笑顔で微笑んでくれていた。
(ああ、俺、めっちゃ幸せなんだな)
握られた手をきつく握り返した。幸せだと思う気持ちが伝わればいい。
帰りは給食を食べずに帰ることにした。陽は仕事を一日休んだので、勇太も一日、仕事を休むことにしたのだ。
陽の自転車の後ろに海を載せた。海が保育園に通うようになってから、子どもを自転車に載せられる篭を買った。昔にはないような立派な篭に、時代の流れを感じる。
「海ね、今日、すっごい嬉しいことあったんだ」
「嬉しいことってなに?」
「んとね?ゆうりちゃんが、言ってくれたの。今日ね、陽と勇太が幼稚園に来るんだって言ったらね、ゆうりちゃんがパパ二人も来てくれていいなって。でね、バイバイするときたくみくんが海のパパ、格好良くていいなって!」
「海は俺と勇太が格好良いって褒められて嬉しかったの?」
「それもあるよ!でもね、やっぱり、海は陽と勇太が一緒にきてくれたことが嬉しかったの!だって、海、二人が大好きだからね!」
(ああ、ダメだ。海の前なのに、前が滲む)
今まで泣くときはいつも、悲しかったり悔しかったりするときだった。自分の思いが伝わらないとき、不本意に陰口を叩かれたとき、大切な人の悪口を言われたとき。
でも今は、そうじゃない。嬉しくて、愛しくて、大切だからこそ涙が溢れる。
(ずっと、陽と海と一緒にいたいな。年をとった陽と海を一番近くで見ていたい)
一年、二年、五年、十年。年を重ねた二人を想像した。未来を見ることはできないからどんな二人になっているのかはわからないけれど、きっと誰もが羨む素敵な二人になっている。
(俺も二人が誇れるような男になりたいな)
陽が自信を持って勇太も自分だけを好きなのだと言ってもらえるように。海が鼻を高くして勇太のことを格好良いと言ってくれるように。
(俺のできることから頑張るか)
できないことに手を、足を伸ばしすぎないように。目の前にある手の届くところから、一歩ずつ、掌に握れるように。
「勇太」
「勇太~どうしたの?行こう!」
二人に呼ばれ、前を見る。真っ青な空、眩しい太陽が二人を照らしている。
「ううん、なんでもない。今、行くよ」
そう言いながら、自転車を押して駆け寄った。
今はまだ、駆け寄ることしかできないかもしれないけど、いつか必ず、隣に肩を並べて歩くから。だから、それまで待っていてほしい。
きっと願う前から伝わっている。思いながらも願わずにはいられなかった。
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