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【第一章・彷 徨 う 混 沌】
Ж-14 魔 皇 単 騎 ~Running To Horizon~ ②
しおりを挟むリュカの特質異能、 『武芸者』
は闘いに特化した汎用能力。
決して戦闘そのもののみに特化しているのではなく、
その本質は種族ごとの 「生存闘争」 に近い。
故に彼が戦闘中に繰り出す技や術は詰まる処その一端に過ぎず、
「戦いに勝つ」 というコトは 『生存』 という膨大な範疇の中では
その要素の一つに過ぎない。
戦いに勝っても喰わなきゃ死ぬ、
強敵を討ち斃しても破傷風とかの病気になれば死ぬ、
大軍を一人で壊滅させても武器が折れれば次は死ぬ。
要するに幾ら強くても生業出来ないヤツは死ね!
というコトだ。
いざ武者修行と洒落込んでも野営の仕方、
保存食及び現地での適切な狩猟採集の知識と技術。
武具の手入れ、 怪我、 病気の治療法、 予防法、
更にそれら全てを賄う路銀の調達法。
ざっとで数えただけでもコレだけのモノが 「生きる為」 には必要。
肉体的な強さや精神的な強さが、
必ずしも 『生存力』 に直結するとは限らない。
数多の兵を討ち果たした剣豪が、
錆びた釘一本を踏み抜いて死に至る場合も在る。
生きるためには、 生き抜くためには、
前提となる武力以外にソレとは別の技術が必須。
まさに 「武」 と 「芸」 なのだ。
「うむ……ッ!」
縫い終えた糸を喰い切る姿も様に成る、
流石優等生、 オレなんか小学校の家庭科2だったからね、
玉留めのやり方も満足に知らないよ~。
そうして出来上がったのは表面の鞣しも十分な一足の 「靴」
別段派手な装飾はないのに職人の技巧の所為か
裡から煌めくような出来栄えだ。
この速さと仕事の正確さ、 どこぞの相撲取りの息子に見習わせたいやね。
とか言ってるオレの鼻先に、 文字通りの 「皮靴」 が差し出される。
「履いてみて貰えるか?」
「い、いや、 オレはい~よ。 折角造ったんだからリュカが、」
「サイズが合わん」
さも当然とばかりに言われてどこぞの灰かぶり女のように
厚かましくも緊張しながら足を通す。
おぉ、 サイズピッタリ! 靴下もないのに履き心地は最高だ!
元々スエードの靴とか大好きで色違いのヤツ
幾つも持ってたからなぁ~。
ベージュやブラウンだけじゃなく黒っぽいヤツも欲しかったんだけど
ソレがまさか異世界で手に入るとは!
ちなみに今までは無意識的に足を魔氣で覆って
何とか事無きを得ていたよ。 あと曲がりなりにも魔皇らしいから
足の裏がオレの面の皮より厚かったんだろーね。
スライム共と一緒に感謝の意を告げながら平伏したんだけど、
イヤ、 美味い肉を馳走になったと取り合ってくれない。
そうこうしている内に相方の靴も完成、
履き心地を踏み締めた後、 地面に刺さっていた大剣を引き抜く。
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