14 / 107
身体
第二話 【女の命】
しおりを挟む
あれはまだ、私が小学校に上がる前だったから、五歳くらいの時かしら。
あの頃って、よく、お人形さんを使って、おままごとをしたわよね?
私も、その当時「みかちゃん人形」とか、「バーディー人形」とかで遊んでたわけよ。
で、あの人形って、髪……あぁ、ウィッグね! ウィッグ!
そういう物があるから、ついつい……ほら、子供って悪戯しちゃうじゃない?
ハサミを持って、シャキシャキシャキーーンって。
そう。
みかちゃんも、バーディーちゃんも、みーーーんな個性的なカットにしちゃったわけよ。
ま、それが、私の中では、「最高!」だと思ってて、「将来は美容師さんになるー!」とか言ってたんだよね。
で、ママに別売りのウィッグを買ってもらってたから、別に困った事なんて無かったの。
で、ここからが本題!
その年の夏、パパの実家……おじいちゃんとおばあちゃんの家に行ったの。
でも、田舎だし、周りに遊ぶ所もなければ、家の中にも子供が遊べるような玩具なんて、無くてさぁ……
おじいちゃんやおばあちゃんは可愛がってくれたから、好きなんだけど、結局、大人は大人で話しだしたら、五歳の頃の私なんて、飽きちゃうじゃない?
仕方ないから、一人で家の中をウロウロしだしたの。
おじいちゃんとおばあちゃんの家って、日本家屋の平屋でね。
その辺の地域では旧家と言われる立派な家らしくって。
庭には蔵まであったなぁ……南京錠がかかっていて、入った事はないんだけどさ。
そんな家だから、五歳の私にとっては、家の中だけでも「探検だー!」って感じでドキドキしながら、あちこち部屋を見て回ったの。
おじいちゃん達の部屋、客間、仏間、応接間……色々見て回った後、最後に、西の一番奥にひっそりと、まるで隠してあるかのように、壁と一体化している不思議な扉を発見したのね。
扉を触ると、一瞬、背筋をスッと冷たい手で撫でられるような、気味の悪い感覚に襲われたものの、好奇心には勝てなくて、そのまま扉を開けたの。
え?
鍵?
そんなの掛かってなかったから、開けれたに決まってるじゃない。
でも、中は真っ暗でね……狭くて、左右の棚には何か一杯箱が重ねられてて。
多分、あれ。
倉庫だったのよね。きっと。
クーラーなんてついていないのに、その部屋だけが、やけにひんやりしていた事も覚えているわ。
狭くて暗くて冷たい……
今思えばあの倉庫、怪談やホラー映画で絶対に【出る】場所の典型的な所よね。
ふふ。
とはいえ当時の私は、小さい体のくせに、態度と度胸は人並み以上!
ん?
誰よ!
態度は今でも人並み以上って言った奴は!
あぁ……ごめん。話を戻すわ。
その当時の私は、勇敢にも、平気でその倉庫に入っていったの。
で、棚に並べてある箱を開けてみたり、上の棚の物を取る為の梯子に登ったり。
何か宝物があるんじゃないかって、ワクワクしてた。
箱の中には、お皿とか壺とか、あとはタオルとか、そんなような物が多かったんだけど、梯子で一番上の棚を覗いた時に、「あ!」と声をあげたの。
ええ、小さな子供が喜ぶ物を見つけたのね。
私は、目を輝かせて、その棚の奥にあるソレに手を伸ばしたわ。
ソレは、赤い着物を着た、綺麗な日本人形だったの。
倉庫の中の物は、殆どの物が全て箱に入って、きちんと整理整頓されているのにも関わらず、何故か、その人形だけは、箱にも入っておらず、埃も全く被ってなくて、綺麗な艶やかな長い髪が印象的でね。
私は一目で気に入って、探検なんて中断して、さっさと、その倉庫から出て行き、自分が寝泊まりする部屋に持って行ったの。
そこで、家に置いてきた、みかちゃんやバーディーちゃんの代わりに、その人形でおままごとを始めたんだけど……
やっぱり、そこは幼稚園児。
自分の人形じゃないのにも関わらず、部屋のどこからか、探し出しちゃったんだろうねぇ……
ハサミでシャキシャキシャキシャキ……
その人形の髪の毛を切っちゃったのよ。
今思うと、それはもう、かわいそうなくらいのザンバラ髪。
でも私は、その人形を見て、「可愛い可愛い」って言って、はしゃぎまくってたの。
そしたら、一人で遊んでいる私が心配になったおばあちゃんが様子を見に来てくれたんだけど、私の手元を見るなり顔を真っ青にさせたの。
「あきちゃん! あなた……この人形をどこで? あぁ……なんてこと……」
いつも穏やかで、決して声を荒げたりしないおばあちゃんが、酷く慌てた様子で、私を押しのけ、人形を取り上げたもんだから、私も「うぎゃぁぁぁぁぁん!」って大泣き。
それを聞きつけて、ママもパパも、おじいちゃんも部屋に駆け付けて来たんだけど……
皆、私を心配したり、あやしたりするでもなく、ただ、顔面蒼白にして立ち尽くしてるの。
むしろ、その変な空気のせいで、私も泣き止んだわけなんだけど。
人形をどうするべきか、寺に持っていかなくては……とか、よく分らない事をおばあちゃんとおじいちゃんが話してて。
お父さんは、お母さんに、私を連れて早く家に帰れって言い出すし。
その日はもう、のんびり過ごす訳にもいかなくなって、結局、私はお母さんと、自宅に戻って来たの。
その夜。
クーラーがついているのにも関わらず、寝苦しくて。
隣で寝てる、ママの寝息すら、耳について、中々寝付けなかったの。
で、ママにもう少しクーラーの温度を下げて貰おうと、起こそうとしたんだけど……
体が何かに縛りつけられてるかのように、ピクリとも動かない。
声を出そうにも、全く出ない。
こういう状態って……あ! 金縛り!
そうそう! 金縛りになっちゃって!
幼い私はもう、頭ん中が大パニック!
大泣きしたいのにヒュウッヒュウッと、変な息しか出ないの。
そうしてるうちに、耳元で
シャキシャキシャキシャキシャキシャキ……
刃物で何かを切る音が聞こえるの。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキ……
それが、頭の後ろを回り……徐々に目の前へ……
シャキシャキシャキシャキシャキーーーーーン!
目の前でハサミが自分の髪を切っているかと思うと
ザシュッ!
目の前の床に、ハサミが突き刺さった。
「可愛い~可愛い~……きゃはははは……」
どこからともなく、聞こえる声。
自分の首が、まるで自分の意志をは関係なく、ギギギギギギギギギギギ……と 音を立てるかのように反対に向けられると、そこには……
あの「人形」がザンバラ髪のまんま、立っていた。
「髪は女の命……戴きます」
そう言うと、その人形はすうっと消えたの。
私は、自分の髪がどんな状態になっているかなんて、全く気にならないくらい怖くて怖くて。
体の自由が利くようになった途端、ぎゃん泣き!
その泣き声にママは飛び起きたんだけど、私の頭を見て更に驚いちゃって。
すぐに、パパに電話しようとしたら……
プルルルル!
プルルル!
いきなりママの携帯がけたたましく鳴りだして。
あまりのタイミングに恐る恐る携帯を確認したママが、相手の名前を確認してホッとしたような表情で出てみたら、「あきは? あきは大丈夫か?」というパパの慌てたような声が、携帯からも漏れるくらい大きな声で聞こえて来たの。
で、どういう事かママが尋ねたんだけど……
「あの人形……あの人形の髪が……長くなっているんだ……。しかも、柔らかい、子供のような髪になっているんだ……」
パパの言葉を聞いて、ママは私の方を見たわ。
そして短く、「ヒィ!」と叫んだの。
だって……私、その場でシャキシャキシャキシャキシャキシャキって切られた筈なのに……
その場には、髪の毛が一本も落ちていなくて。
ただ床に突き刺さった、ハサミの痕だけが残っていたのだから。
あの頃って、よく、お人形さんを使って、おままごとをしたわよね?
私も、その当時「みかちゃん人形」とか、「バーディー人形」とかで遊んでたわけよ。
で、あの人形って、髪……あぁ、ウィッグね! ウィッグ!
そういう物があるから、ついつい……ほら、子供って悪戯しちゃうじゃない?
ハサミを持って、シャキシャキシャキーーンって。
そう。
みかちゃんも、バーディーちゃんも、みーーーんな個性的なカットにしちゃったわけよ。
ま、それが、私の中では、「最高!」だと思ってて、「将来は美容師さんになるー!」とか言ってたんだよね。
で、ママに別売りのウィッグを買ってもらってたから、別に困った事なんて無かったの。
で、ここからが本題!
その年の夏、パパの実家……おじいちゃんとおばあちゃんの家に行ったの。
でも、田舎だし、周りに遊ぶ所もなければ、家の中にも子供が遊べるような玩具なんて、無くてさぁ……
おじいちゃんやおばあちゃんは可愛がってくれたから、好きなんだけど、結局、大人は大人で話しだしたら、五歳の頃の私なんて、飽きちゃうじゃない?
仕方ないから、一人で家の中をウロウロしだしたの。
おじいちゃんとおばあちゃんの家って、日本家屋の平屋でね。
その辺の地域では旧家と言われる立派な家らしくって。
庭には蔵まであったなぁ……南京錠がかかっていて、入った事はないんだけどさ。
そんな家だから、五歳の私にとっては、家の中だけでも「探検だー!」って感じでドキドキしながら、あちこち部屋を見て回ったの。
おじいちゃん達の部屋、客間、仏間、応接間……色々見て回った後、最後に、西の一番奥にひっそりと、まるで隠してあるかのように、壁と一体化している不思議な扉を発見したのね。
扉を触ると、一瞬、背筋をスッと冷たい手で撫でられるような、気味の悪い感覚に襲われたものの、好奇心には勝てなくて、そのまま扉を開けたの。
え?
鍵?
そんなの掛かってなかったから、開けれたに決まってるじゃない。
でも、中は真っ暗でね……狭くて、左右の棚には何か一杯箱が重ねられてて。
多分、あれ。
倉庫だったのよね。きっと。
クーラーなんてついていないのに、その部屋だけが、やけにひんやりしていた事も覚えているわ。
狭くて暗くて冷たい……
今思えばあの倉庫、怪談やホラー映画で絶対に【出る】場所の典型的な所よね。
ふふ。
とはいえ当時の私は、小さい体のくせに、態度と度胸は人並み以上!
ん?
誰よ!
態度は今でも人並み以上って言った奴は!
あぁ……ごめん。話を戻すわ。
その当時の私は、勇敢にも、平気でその倉庫に入っていったの。
で、棚に並べてある箱を開けてみたり、上の棚の物を取る為の梯子に登ったり。
何か宝物があるんじゃないかって、ワクワクしてた。
箱の中には、お皿とか壺とか、あとはタオルとか、そんなような物が多かったんだけど、梯子で一番上の棚を覗いた時に、「あ!」と声をあげたの。
ええ、小さな子供が喜ぶ物を見つけたのね。
私は、目を輝かせて、その棚の奥にあるソレに手を伸ばしたわ。
ソレは、赤い着物を着た、綺麗な日本人形だったの。
倉庫の中の物は、殆どの物が全て箱に入って、きちんと整理整頓されているのにも関わらず、何故か、その人形だけは、箱にも入っておらず、埃も全く被ってなくて、綺麗な艶やかな長い髪が印象的でね。
私は一目で気に入って、探検なんて中断して、さっさと、その倉庫から出て行き、自分が寝泊まりする部屋に持って行ったの。
そこで、家に置いてきた、みかちゃんやバーディーちゃんの代わりに、その人形でおままごとを始めたんだけど……
やっぱり、そこは幼稚園児。
自分の人形じゃないのにも関わらず、部屋のどこからか、探し出しちゃったんだろうねぇ……
ハサミでシャキシャキシャキシャキ……
その人形の髪の毛を切っちゃったのよ。
今思うと、それはもう、かわいそうなくらいのザンバラ髪。
でも私は、その人形を見て、「可愛い可愛い」って言って、はしゃぎまくってたの。
そしたら、一人で遊んでいる私が心配になったおばあちゃんが様子を見に来てくれたんだけど、私の手元を見るなり顔を真っ青にさせたの。
「あきちゃん! あなた……この人形をどこで? あぁ……なんてこと……」
いつも穏やかで、決して声を荒げたりしないおばあちゃんが、酷く慌てた様子で、私を押しのけ、人形を取り上げたもんだから、私も「うぎゃぁぁぁぁぁん!」って大泣き。
それを聞きつけて、ママもパパも、おじいちゃんも部屋に駆け付けて来たんだけど……
皆、私を心配したり、あやしたりするでもなく、ただ、顔面蒼白にして立ち尽くしてるの。
むしろ、その変な空気のせいで、私も泣き止んだわけなんだけど。
人形をどうするべきか、寺に持っていかなくては……とか、よく分らない事をおばあちゃんとおじいちゃんが話してて。
お父さんは、お母さんに、私を連れて早く家に帰れって言い出すし。
その日はもう、のんびり過ごす訳にもいかなくなって、結局、私はお母さんと、自宅に戻って来たの。
その夜。
クーラーがついているのにも関わらず、寝苦しくて。
隣で寝てる、ママの寝息すら、耳について、中々寝付けなかったの。
で、ママにもう少しクーラーの温度を下げて貰おうと、起こそうとしたんだけど……
体が何かに縛りつけられてるかのように、ピクリとも動かない。
声を出そうにも、全く出ない。
こういう状態って……あ! 金縛り!
そうそう! 金縛りになっちゃって!
幼い私はもう、頭ん中が大パニック!
大泣きしたいのにヒュウッヒュウッと、変な息しか出ないの。
そうしてるうちに、耳元で
シャキシャキシャキシャキシャキシャキ……
刃物で何かを切る音が聞こえるの。
シャキシャキシャキシャキシャキシャキ……
それが、頭の後ろを回り……徐々に目の前へ……
シャキシャキシャキシャキシャキーーーーーン!
目の前でハサミが自分の髪を切っているかと思うと
ザシュッ!
目の前の床に、ハサミが突き刺さった。
「可愛い~可愛い~……きゃはははは……」
どこからともなく、聞こえる声。
自分の首が、まるで自分の意志をは関係なく、ギギギギギギギギギギギ……と 音を立てるかのように反対に向けられると、そこには……
あの「人形」がザンバラ髪のまんま、立っていた。
「髪は女の命……戴きます」
そう言うと、その人形はすうっと消えたの。
私は、自分の髪がどんな状態になっているかなんて、全く気にならないくらい怖くて怖くて。
体の自由が利くようになった途端、ぎゃん泣き!
その泣き声にママは飛び起きたんだけど、私の頭を見て更に驚いちゃって。
すぐに、パパに電話しようとしたら……
プルルルル!
プルルル!
いきなりママの携帯がけたたましく鳴りだして。
あまりのタイミングに恐る恐る携帯を確認したママが、相手の名前を確認してホッとしたような表情で出てみたら、「あきは? あきは大丈夫か?」というパパの慌てたような声が、携帯からも漏れるくらい大きな声で聞こえて来たの。
で、どういう事かママが尋ねたんだけど……
「あの人形……あの人形の髪が……長くなっているんだ……。しかも、柔らかい、子供のような髪になっているんだ……」
パパの言葉を聞いて、ママは私の方を見たわ。
そして短く、「ヒィ!」と叫んだの。
だって……私、その場でシャキシャキシャキシャキシャキシャキって切られた筈なのに……
その場には、髪の毛が一本も落ちていなくて。
ただ床に突き刺さった、ハサミの痕だけが残っていたのだから。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる