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音
第六話【鈴の音】
しおりを挟むリーンリン
リーンリン
綺麗な鈴の音が聞こえた。
あまりに綺麗な音だったので、私は思わず階段を駆け下り、外に出ようとした所を、祖母が険しい顔をし、「出るんじゃねぇ!」と、大きな声で止めた。
普段は穏やかで。
私のする事には甘かった祖母が、そこまで、怖い顔をして注意する事は一度も無かったので、思わず、怖くなって、大泣きした。
しかし祖母は、「おめぇ、アレを聞いてしまったのか?」と、泣いている私に、必死になって聞いて来るものだから、「す……鈴の……鈴の綺麗な音がぁぁぁ……」と泣きながら答えた。
すると、「いけない、いけない、いけない、いけない……」と、酷く慌てて、混乱した様子で祖母は外に出て行ってしまった。
その日、祖母は帰っては来ず、翌朝、冷たくなって帰って来た。
死因は心臓発作。
道路の真ん中で倒れていたそうだ。
しかし。
私は見てしまった。
祖母の顔が恐怖に歪んでいた事を。
それからも時々
リーンリン
リーンリン
という音が聞こえる。
私は、その音が聞こえた日は、あの日の事を思い出し、絶対に家からは出ない。
その代わり、その日、たまたま家に遊びに来ていた従姉妹の梓が、夕方、庭の花の水やりに外に出てから、行方不明になり、見つかった時には、やはり、恐怖に歪んだ顔をしていた。
それから、妹も。
そして、叔父さんも。
私には、物心ついた時から父親が居なかったのだが、もしかしたら、この『リーンリン』という、鈴の音が関係しているのかもしれない。
そう思った私は、『今度こそは……』と、チャンスを伺っていたのだが。
今日。
とうとう。
リーンリン
リーンリン
という、あの美しい鈴の音が聞こえたんだ。
私は、『今度こそ!』と思いながらも、やはり、いざとなると足が言う事をきかない。
しかし……
家から出なくとも、何かしら正体を突き止める事ぐらいは……
そう思い、私は、二階の自室の窓から
リーンリン
リーンリン
と鳴っている方向……
そう。
玄関を見下ろした。
すると。
そこには、お坊さんの袈裟を身に着けた骸骨が、真っ直ぐ玄関を見つめ
リーンリン
リーンリン
を鈴を鳴らしていた。
「ヒッ!」
思わず悲鳴を上げると、その声に反応してか、その骸骨はこちらの方を振り向いた。
その真っ黒な。
眼球が嵌っていない、ポッカリと開いた二つの目が、まるで、獲物を狙うハゲタカのように、鋭い光を放っているかのような、そんな気がした。
あいつは死神。
あの鈴の音は……
死の音。
あの音はきっと、死神に憑りつかれた家にだけ聞こえる、死の音なんだと、その時、初めて気が付いた。
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