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家電
第四話【おまじないメール】
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「ねぇねぇ~! さっちゃぁん。知ってるぅ? 願いが叶うおまじない!」
「また、変なやつでしょ?」
「まぁまぁ! 聞いてよぉ!」
さっちゃんこと、早智は“まぁた、始まった……”と、呆れた様子で、幼馴染の久美子を見た。
二人は、女子高生。
軽くメイクするのは当たり前。
スカートも短くし、髪もパーマをかけたり、染めたり……
パッと見は、大人びてみえるものの、中身はまだまだ十代。
オシャレや恋、それに、意外とおまじないなんかに夢中になる。
特に、久美子の見つけて来るものは、ちょっと、ソレはやっちゃ駄目でしょう? という物ばかり。
例えば、中学生の時。
バレンタインのチョコレートに、髪の毛と爪を入れて、好きな子に告白したもんだから、後々、その男の子だけでなく、一部の男子から、もの凄い勢いで避けられ続けたという伝説の持ち主。
他にも、ヤモリの丸焼きで作る惚れ薬。
自分の唾液を好きな人に飲ませる。
そんな変な物ばっか。
「いい加減、もう止めなよ!」と思いつつも、半分、面白がっている部分もあった。
しかし、今日の久美子は、予想を覆した。
「あのねぇ。さっちゃん! 今回のはぁ、簡単なんだよぉ~」
うふふ。と、嬉しそうな顔をする。
「なんかねぇ、自分のスマホから、自分のメールアドレスにぃ、メールするんだってぇ」
「……何を?」
「やだなぁ~、さっちゃん。これから、それを言うんじゃない~。あのねぇ、件名に“叶え”って入れてぇ、本文にはぁ、自分の願い事を書いてぇ、自分に送信するんだってぇ」
「……え? それだけ?」
「うん。あ! 重要なのはぁ、その送信したメールは削除してぇ、受信されたメールは絶対開かずに保護しておくんだってぇ。」
「でも、送信内容も受信内容も同じでしょ? 受信メール開こうが開かまいが、関係なくない?」
そんなの意味ないじゃん! といった感じで、早智がそう言うと、久美子は頬を膨らませ
「さっちゃんは、それだから駄目なのよぉ~。意味の無い事にも、意味はあるんだからねぇ~!」
拗ねたような言い方をした。
いやいやいや。
その“意味の無い不気味な事”をして、ドン引きされてる、貴女に言われたくないわ! と内心思いつつも、「ごめん、ごめん」と言えば、久美子は機嫌を直し、「とにかくぅ、それを守らなきゃ、逆に災いが起こるらしぃから、さっちゃん、やる時には気を付けてねぇ~……」と、上目遣いで言うと
ガラガラガラ!
と、教室のドアが開き、「早智!」と、誰かが呼ぶ声がした。
開いたドアの方を二人が見ると、そこには、早智の彼氏の良平がいた。
「帰るぞ!」
爽やかな笑顔で、早智に声を掛ける良平。
久美子は、一瞬、暗い顔をしたものの、すぐに、ほんわかした表情に戻り、「いいよぉ。帰った帰ったぁ~! 旦那様のお迎えじゃぁ~!」と笑顔で言うので、早智は、すまなそうな顔で、「ごめんね」と言って、良平の方へ駆けていった。
その晩、早智の家に久美子が訪れた。
「さっちゃぁん。スマホ、忘れてたよぉ~」
その手には、間違いなく早智のスマホがあった。
「え……あぁ~っ! どこにあった?」
「さっちゃんが、帰った後でぇ、私も帰ろうかなぁと思ったら、着信音が鳴ってぇ……それが、さっちゃんの机の中だったから、悪いとは思ったけどぉ……」
「あ~。授業中、つい、机の中に入れて、隠れてスマホいじってるから、忘れてたんだ!助かった~! ありがとう~!!」
「いえいえ~。どういたしましたぁ~」
うふふ。とにっこり笑って、スマホを早智に手渡すと、「じゃぁ、また明日ねぇ~」と言って、久美子はすぐに帰っていった。
「着信音が鳴ったって言ってたけど……」
早智は、直ぐにスマホを確認した。
メールボックスに受信メールがある事を知らせるマークが付いている。
「なんだろ?」
差出人も確認せずに、メールを開く。
そこには
【件名】
叶え
【本文】
小林 良平は、内田 早智とずっと一緒に過ごします
――END――
「これって……」
クスッ
久美子ったら……
私と良平の事、願ってくれたんだ。
ほんと、幼馴染としては、凄く可愛いのよね。
あの子。
……あれ?
でも……この“おまじない”って。
送信メールは削除して……
慌てて、送信BOXを見ると、送信メールは削除されてあった。
しかし……
受信メールは……
開かずに保護する……んだよね。
「ま、あくまでも“おまじない”だしね!」
早智は、嫌な感じがするのを覚えつつも、受信メールもそのまま削除した。
しかし。
その“嫌な感じ”が、翌日、現実のものとなる。
良平が、登校途中にトラックに撥ねられ、死亡したのだ。
「ま、さか……」
早智は、昨晩の出来事を思い出した。
そう。
確認もせずにメールを開いた、あの“おまじないメール”の事を。
受信メールを開いたら
“災いが起きる”
その言葉が頭に響いた。
そして、勝手に早智のスマホを使い、勝手にメールを作成し、勝手に送信した久美子への怒りに変わり、ザワつく教室の中、バッと、久美子の方に顔を向けた。
すると、久美子は、満面の笑みで、口パクで、何かを伝えようとしていた。
え?
何?
『ヨ・カ・タ・ネ』
……よかったね?
『コ・レ・デ・ズ・ト』
……これでずっと?
『カ・レ・ト・イ・ショ・ダ・ネ・』
……かれと……彼と一緒だね?
早智は、突然、寒気に襲われたかと思うと、横に、誰かが立っているような気配がした。
いや。
皆が着席しているというのに……
確かに、立ったまま机の横に、学生服を着た男子生徒がいる。
ガクガク震えだす体。
周りは、未だに良平のニュースでザワついていて、早智の異変に気が付いているのは、久美子だけ。
その久美子がニッコリと笑い、早智の横を指差す。
怖いのに……
見ちゃいけないのに……
早智は言い知れぬ何かに、首を動かされているかのように、そちらの方に顔を向けた。
「いやーーーーーーーーーーーーーーー!」
そこには、首や手足があらぬ方向に曲がり、頭の半分が無く、真っ赤に血濡れになった良平の姿があった。
「サァ……チィ……」
「いやぁぁぁぁぁ!」
突然の早智の叫び声に、教室中が騒めく。
「こないでぇぇぇぇ! こないでぇぇぇ!」
何も見えない、クラスメイトや担任は、気が狂ったかのように暴れ叫ぶ早智を、必死で取り押さえた。
そして、救急車を呼ぶ。
早智は相変わらず、何もない所を見て、顔を引き攣らせながら、男子生徒五人掛かりでも、押さえ付けるのが困難なくらい激しく暴れた。
「あぁ……内田は良平の……」
「可哀想に……」
あちこちから、同情するような声が上がる。
早智が、“愛しい彼氏”を亡くした、精神的ショックからのヒステリーだと思っているようだ。
早智は、そのまま救急車に運ばれたものの、あまりの出来事に、教室は、その日一日、騒然としていた。
そんな中、久美子は一人、満足気な顔をして、大人しく机に座っていた。
さっちゃん。
さっちゃんならぁ……きっと、受信メール、開けちゃうと思ったんだぁ……。
いっつも、迷惑メールが来てもぉ、直ぐに、送信者確認せずに開けちゃうんだもん。
“おまじない”ってね
“御呪い”って書くんだよぉ。
さっちゃんさぁ。
私が、良平くんのこと好きなの知っていた癖にぃ。
これ見よがしに、見せつけてくれたよねぇ?
そんなに、良平くんが好きならぁ。
一生一緒にいればいいのよぉ。
どんな形になってもぉ。
二人の愛は永遠だってぇ。
そう言ったのは、さっちゃんだもんねぇ?
クスクスクスクス……
「また、変なやつでしょ?」
「まぁまぁ! 聞いてよぉ!」
さっちゃんこと、早智は“まぁた、始まった……”と、呆れた様子で、幼馴染の久美子を見た。
二人は、女子高生。
軽くメイクするのは当たり前。
スカートも短くし、髪もパーマをかけたり、染めたり……
パッと見は、大人びてみえるものの、中身はまだまだ十代。
オシャレや恋、それに、意外とおまじないなんかに夢中になる。
特に、久美子の見つけて来るものは、ちょっと、ソレはやっちゃ駄目でしょう? という物ばかり。
例えば、中学生の時。
バレンタインのチョコレートに、髪の毛と爪を入れて、好きな子に告白したもんだから、後々、その男の子だけでなく、一部の男子から、もの凄い勢いで避けられ続けたという伝説の持ち主。
他にも、ヤモリの丸焼きで作る惚れ薬。
自分の唾液を好きな人に飲ませる。
そんな変な物ばっか。
「いい加減、もう止めなよ!」と思いつつも、半分、面白がっている部分もあった。
しかし、今日の久美子は、予想を覆した。
「あのねぇ。さっちゃん! 今回のはぁ、簡単なんだよぉ~」
うふふ。と、嬉しそうな顔をする。
「なんかねぇ、自分のスマホから、自分のメールアドレスにぃ、メールするんだってぇ」
「……何を?」
「やだなぁ~、さっちゃん。これから、それを言うんじゃない~。あのねぇ、件名に“叶え”って入れてぇ、本文にはぁ、自分の願い事を書いてぇ、自分に送信するんだってぇ」
「……え? それだけ?」
「うん。あ! 重要なのはぁ、その送信したメールは削除してぇ、受信されたメールは絶対開かずに保護しておくんだってぇ。」
「でも、送信内容も受信内容も同じでしょ? 受信メール開こうが開かまいが、関係なくない?」
そんなの意味ないじゃん! といった感じで、早智がそう言うと、久美子は頬を膨らませ
「さっちゃんは、それだから駄目なのよぉ~。意味の無い事にも、意味はあるんだからねぇ~!」
拗ねたような言い方をした。
いやいやいや。
その“意味の無い不気味な事”をして、ドン引きされてる、貴女に言われたくないわ! と内心思いつつも、「ごめん、ごめん」と言えば、久美子は機嫌を直し、「とにかくぅ、それを守らなきゃ、逆に災いが起こるらしぃから、さっちゃん、やる時には気を付けてねぇ~……」と、上目遣いで言うと
ガラガラガラ!
と、教室のドアが開き、「早智!」と、誰かが呼ぶ声がした。
開いたドアの方を二人が見ると、そこには、早智の彼氏の良平がいた。
「帰るぞ!」
爽やかな笑顔で、早智に声を掛ける良平。
久美子は、一瞬、暗い顔をしたものの、すぐに、ほんわかした表情に戻り、「いいよぉ。帰った帰ったぁ~! 旦那様のお迎えじゃぁ~!」と笑顔で言うので、早智は、すまなそうな顔で、「ごめんね」と言って、良平の方へ駆けていった。
その晩、早智の家に久美子が訪れた。
「さっちゃぁん。スマホ、忘れてたよぉ~」
その手には、間違いなく早智のスマホがあった。
「え……あぁ~っ! どこにあった?」
「さっちゃんが、帰った後でぇ、私も帰ろうかなぁと思ったら、着信音が鳴ってぇ……それが、さっちゃんの机の中だったから、悪いとは思ったけどぉ……」
「あ~。授業中、つい、机の中に入れて、隠れてスマホいじってるから、忘れてたんだ!助かった~! ありがとう~!!」
「いえいえ~。どういたしましたぁ~」
うふふ。とにっこり笑って、スマホを早智に手渡すと、「じゃぁ、また明日ねぇ~」と言って、久美子はすぐに帰っていった。
「着信音が鳴ったって言ってたけど……」
早智は、直ぐにスマホを確認した。
メールボックスに受信メールがある事を知らせるマークが付いている。
「なんだろ?」
差出人も確認せずに、メールを開く。
そこには
【件名】
叶え
【本文】
小林 良平は、内田 早智とずっと一緒に過ごします
――END――
「これって……」
クスッ
久美子ったら……
私と良平の事、願ってくれたんだ。
ほんと、幼馴染としては、凄く可愛いのよね。
あの子。
……あれ?
でも……この“おまじない”って。
送信メールは削除して……
慌てて、送信BOXを見ると、送信メールは削除されてあった。
しかし……
受信メールは……
開かずに保護する……んだよね。
「ま、あくまでも“おまじない”だしね!」
早智は、嫌な感じがするのを覚えつつも、受信メールもそのまま削除した。
しかし。
その“嫌な感じ”が、翌日、現実のものとなる。
良平が、登校途中にトラックに撥ねられ、死亡したのだ。
「ま、さか……」
早智は、昨晩の出来事を思い出した。
そう。
確認もせずにメールを開いた、あの“おまじないメール”の事を。
受信メールを開いたら
“災いが起きる”
その言葉が頭に響いた。
そして、勝手に早智のスマホを使い、勝手にメールを作成し、勝手に送信した久美子への怒りに変わり、ザワつく教室の中、バッと、久美子の方に顔を向けた。
すると、久美子は、満面の笑みで、口パクで、何かを伝えようとしていた。
え?
何?
『ヨ・カ・タ・ネ』
……よかったね?
『コ・レ・デ・ズ・ト』
……これでずっと?
『カ・レ・ト・イ・ショ・ダ・ネ・』
……かれと……彼と一緒だね?
早智は、突然、寒気に襲われたかと思うと、横に、誰かが立っているような気配がした。
いや。
皆が着席しているというのに……
確かに、立ったまま机の横に、学生服を着た男子生徒がいる。
ガクガク震えだす体。
周りは、未だに良平のニュースでザワついていて、早智の異変に気が付いているのは、久美子だけ。
その久美子がニッコリと笑い、早智の横を指差す。
怖いのに……
見ちゃいけないのに……
早智は言い知れぬ何かに、首を動かされているかのように、そちらの方に顔を向けた。
「いやーーーーーーーーーーーーーーー!」
そこには、首や手足があらぬ方向に曲がり、頭の半分が無く、真っ赤に血濡れになった良平の姿があった。
「サァ……チィ……」
「いやぁぁぁぁぁ!」
突然の早智の叫び声に、教室中が騒めく。
「こないでぇぇぇぇ! こないでぇぇぇ!」
何も見えない、クラスメイトや担任は、気が狂ったかのように暴れ叫ぶ早智を、必死で取り押さえた。
そして、救急車を呼ぶ。
早智は相変わらず、何もない所を見て、顔を引き攣らせながら、男子生徒五人掛かりでも、押さえ付けるのが困難なくらい激しく暴れた。
「あぁ……内田は良平の……」
「可哀想に……」
あちこちから、同情するような声が上がる。
早智が、“愛しい彼氏”を亡くした、精神的ショックからのヒステリーだと思っているようだ。
早智は、そのまま救急車に運ばれたものの、あまりの出来事に、教室は、その日一日、騒然としていた。
そんな中、久美子は一人、満足気な顔をして、大人しく机に座っていた。
さっちゃん。
さっちゃんならぁ……きっと、受信メール、開けちゃうと思ったんだぁ……。
いっつも、迷惑メールが来てもぉ、直ぐに、送信者確認せずに開けちゃうんだもん。
“おまじない”ってね
“御呪い”って書くんだよぉ。
さっちゃんさぁ。
私が、良平くんのこと好きなの知っていた癖にぃ。
これ見よがしに、見せつけてくれたよねぇ?
そんなに、良平くんが好きならぁ。
一生一緒にいればいいのよぉ。
どんな形になってもぉ。
二人の愛は永遠だってぇ。
そう言ったのは、さっちゃんだもんねぇ?
クスクスクスクス……
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