8 / 32
第一章 学園
⑧適任者
しおりを挟む
「失礼します」
校長室のドアを開けるとそこには、白髪頭でたっぷりとしたお腹の人の良さそうな顔の校長と、シドヴィスと、間違いなくあのディオの姿があった。
やはりそうだったかと、レオンは気づかれないように項垂れて小さくため息をついた。
「アデルくん、よく来てくれた。この度は代表生として元気に活動してくれるのを期待しているよ」
開口一番、キラキラした目で校長に手を掴まれて握手されてしまった。
こんな輝きを見せられて、どうやって荷が重い話を切り出そうか胃が痛くなってきた。
「あの……まだ、信じられなくて……、私が学力テストで一番だったって……、それは本当なんですか?」
もちろん解けた問題は多かったが、分からなくて適当に選んだ問題もある。ちゃんと勉強していた人達を押し退けてというのは、信じられなかった。
「実は、アデルくんが一番というわけではない。上に何人かいるのは確かだよ。しかし、代表生は学力だけではない。これからの開かれた学園を象徴するような人材を選びたかった。そこで貴族ではなく、女性である君に決められたんだ。そこにいる三年の代表でもあるシドヴィスくんの推薦もあってね」
シドヴィスは目を細めながらにこやかに笑っていた。レオンは平静を保った顔をしながら、心の中でシドヴィスにお前か!とツっこんだ。
そういえば前回会ったときに、意味ありげにこれから会う機会が増えるとかなんとか言っていた。まさかそのときにはと、レオンは呆然とした気持ちになった。
「やっぱり……私には……、身に余るお話でして……」
「アデル!あなたような聡明な女性が、一年生を引っ張っていけると私は信じています。これからよろしくお願いします」
断りの体勢に入ろうかと思ったところで、シドヴィスがずいっと出てきて、勝手に手を掴んで大袈裟に握手をしてきた。
すっかり勢いを封じられて、レオンはパクパクと声にならない声を出した。
仲良しごっこでもしているような構図になってしまった。
「なんだ!すっかり打ち解けているじゃないか!良かった良かった!じゃ、私はこれから会議だから、シドヴィスくん、この部屋を使って色々と説明してくれ」
「え!あ…あの…こうちょ……」
「分かりました。お任せください」
キラキラした瞳のまま、校長は若いっていいねと言いながら部屋から出ていってしまった。
「そんなーーー!無理だよぉぉ」
「……アデル、やっぱり断ろうとしていましたね」
情けない声を上げたレオンに、シドヴィスは物言いたげな視線を向けてきた。
「当たり前ですよ、私が代表なんて!推薦なんか困ります!みんな話を聞いてくれるはずないじゃないですか!!ただでさえ、貴族のご令嬢方に冷たい視線を浴びているのに!絶対ごちゃごちゃに揉めます!」
「大丈夫ですよ。揉めるようなときは言ってください。一緒に対応しますから。それに言い訳させてもらうと、校長はテストの順位が一番高い女子でほぼ決めておられて、どうかなと聞かれたのではいと答えただけなのです。これを推薦と呼ばれると困ってしまいますね」
レオンはがっくりと項垂れた、結局はばか正直に挑んでしまった自分のせいなのだ。
こんなことで忙しくしていたら、ますます男に戻る日が遠のいてしまう。
「あの狸親父は、あぁ見えてキレ者だからなぁ。女子だと断られる可能性が高いと思ってシドの名前を出したんだろ。断るとやっかいな事になるから、なるべくなら引き受けた方がいい。まっ、そう暗くなるなよ。大してやることねーし」
ディオにまで慰められてしまい、レオンはますます肩を落とした。
引き受けるも断るも地獄のような思いだった。
「基本的には生徒達の声を集めて学園に伝える橋渡し的な役割ですね。定例会議で声を集めて提出します。学園からは生徒の生活についての要望が来るので、それを論議して規則を消したり増やしたり、というのもありますね。後はイベントの時などに、準備から当日の仕事、終了後の片付け、来年度に向けた課題の話し合いや……」
「……けっこう、やることあるじゃないですか……」
「まぁ…シドは優秀だからさ、任せますって言っときゃそれで終わりだから」
「ディオ、後輩にまでその適当さを教えないでください。こちらとしては、ちゃんと参加して欲しいんですよ」
シドヴィスとディオが賑やかに言い合っている中、レオンはアデルのことを考えていた。
こんな大役を引き受けて、アデルと交代した日には、ふざけんなアニキと怒鳴られて、絶対ボコボコにされるとしか思えなかった。
「大丈夫ですか?アデル、何か心配なことでも……」
青くなって顔を押さえているレオンを心配そうにシドヴィスが覗きこんだ。
「心配……って……、心配ですよ。結婚が……どんどん遠くに……」
「ああ、アデル、まだそれ言ってんのかよ」
こっちは軽い気持ちじゃないんだと、レオンはディオをキっとにらんだ。
「結婚?そういえば、お二人はいつの間にお知り合いになったのでしょうか?」
レオンは自分でぽろっと結婚の話をこぼしてしまったので、今さら隠しても仕方がないと思って、ディオと偶然出会って結婚相手探しを手伝ってもらったことを話した。
「なんだ……、どうして早く言ってくださらなかったのですか?」
「は?えっ…なんで?」
「ぴったりの相手がいるじゃないですか!」
爽やかな笑顔で近づいてきたシドヴィスは、流れるような仕草でレオンの手を取って甲にキスをした。
「へ!?もしかして……」
「ええ、私です。貴族の男子で、健康、見た目も性格もそこそこ良い方だと思うのですが……」
「いや……だって……」
「ああ!SMプレイに関してはご希望があれば喜んで協力しますが、強制はしません!」
「そこはいいです!その話題に触れないでください!」
シドヴィスは女性であれば、うっとりしてしまいそうな、甘い雰囲気を漂わせながら、色気たっぷりにレオンを見つめてきた。
「アデル……、私と結婚を前提にお付き合いしませんか?」
「………大変光栄なことですが、お断りします」
「光栄そうな顔には見えませんね」
明らかに渋い顔をしたレオンを見て、ジドヴィスは残念そうにそうこぼした。
「ジドヴィス様、私知ってますよ。同級生に恋人がいらっしゃるんでしょう。気まぐれに遊ぶのはやめてください!」
「……アデル!嬉しい!私のことを調べてくれたのですか!?」
「いや…そういうことではなくて……」
「それについては、色々事情がありまして、ぜひ私の話を聞いて欲しいのですが……」
「おい!」
ずっと放っておかれたからだろう。ディオが腹立たしそうに声を上げた。レオンとシドヴィスは二人揃ってディオの方に目を向けた。
「悪いけどそういうのは他所でやってくんね。ここでアデルを口説くとかナシね」
「相変わらずの女性嫌いですね。よくそんな考えでアデルの相手探しを名乗り出ましたね」
「……なんか、バカそうだったからさ、からかっただけだよ」
ディオは気まずそうに目をそらした。確かにその件で少しもめた。自分も頭に血が上って責めてしまったが、レオンから見てディオは本気でバカにしてからかっていたようには思えなかった。
黙りこんでしまったディオを庇うように、ジドヴィスが、仕方ないですねと話し始めた。
「ディオと私は幼なじみでして、家族間の交流も深いのです。ディオの上には姉が二人いるのですが、それはもう強烈な方々で、子供の頃からさんざん苛められて、ディオはすっかり女性嫌いになってしまったのです。なにか失礼があったかもしれませんが、一緒に代表生をするわけですから、その辺りのことは………」
「………そうなんですね。分かりました。苦手なことは誰にでもありますから、私にはそっちの方が多いくらいです」
得意なことより、苦手なこと恐いことの方が幾らでも思いつく。
高貴な家に生まれ不自由なく生きていたように見える男にもそういった一面があるのかと、レオンは逆に親近感がわいた。
「ディオ様、結婚相手探しの件、興奮して苛立ってしまって申し訳ございません。そもそも私の説明が悪かったのが原因ですから、違ったとか言うのはよくなかったと反省しています」
「いや……俺も……ちゃんと聞いていなかったし……」
「まずは人任せにせず、ちゃんと自分で探してみて……」
「ですから、それには私がぴったりだと!」
せっかく流れていた話を、ジドヴィスが元に戻してしまい、レオンはズッコケそうになった。
「……ジドヴィス様、この際はっきり申し上げますが、ジドヴィス様のご厚意はありがたいのですが、公爵家の男子ではうちには巨大勢力過ぎるのです!」
「……つり合わないとかは言わないでください。今の時代そう言った考えは古いもので、平民の女性であっても私の家はまったく構いません」
「父には、男爵か子爵家から探すようにと言われているのです。今後のことを考えても、ジドヴィス様の相手はうちのアデルでは荷が重すぎて……」
「うちのアデルって、なんで他人事なんだよ……」
ディオの冷静なツッコミで、レオンはしまったと青くなった。
完全に言い方を間違えてしまった。
「う………うちの家族は自分のことをそれぞれ……名前で呼んでいまして……そのクセが………つい、お恥ずかしいです」
非常に苦しすぎる言い方でレオンは汗だくになっていたが、ディオは子供かよとまたツッコんでくれて、なんとかごまかせたようだった。
「………そうですか。では、こうしましょう!もし、相手が見つからなかったら、私にするというのはいかがですか?」
「は?そんなの無理に……」
「相手を決めればいいんだろ。めんどくさいから頷いておけよアデル、こいつ言い出したらしつこいぞ」
確かに笑顔のまま、地の果てまで追いかけてきそうな迫力を感じて、レオンは後ろに下がって壁に背中が当たってしまった。
「……ぃった」
「そうですか!分かったですか!良かった良かったです」
「えっ!!ちが……」
レオンの否定の声は全く聞き入れず、派手に握手をした後、それではまたと言ってシドヴィスはキラキラとした嬉しそうな顔をして校長室から出ていってしまった。
「………お前って、変なことに巻き込まれる運命だな」
ディオの言葉には激しく同意したかったが、認めたくなくてレオンは絶対に見つけてやると心に決めたのだった。
□□□
校長室のドアを開けるとそこには、白髪頭でたっぷりとしたお腹の人の良さそうな顔の校長と、シドヴィスと、間違いなくあのディオの姿があった。
やはりそうだったかと、レオンは気づかれないように項垂れて小さくため息をついた。
「アデルくん、よく来てくれた。この度は代表生として元気に活動してくれるのを期待しているよ」
開口一番、キラキラした目で校長に手を掴まれて握手されてしまった。
こんな輝きを見せられて、どうやって荷が重い話を切り出そうか胃が痛くなってきた。
「あの……まだ、信じられなくて……、私が学力テストで一番だったって……、それは本当なんですか?」
もちろん解けた問題は多かったが、分からなくて適当に選んだ問題もある。ちゃんと勉強していた人達を押し退けてというのは、信じられなかった。
「実は、アデルくんが一番というわけではない。上に何人かいるのは確かだよ。しかし、代表生は学力だけではない。これからの開かれた学園を象徴するような人材を選びたかった。そこで貴族ではなく、女性である君に決められたんだ。そこにいる三年の代表でもあるシドヴィスくんの推薦もあってね」
シドヴィスは目を細めながらにこやかに笑っていた。レオンは平静を保った顔をしながら、心の中でシドヴィスにお前か!とツっこんだ。
そういえば前回会ったときに、意味ありげにこれから会う機会が増えるとかなんとか言っていた。まさかそのときにはと、レオンは呆然とした気持ちになった。
「やっぱり……私には……、身に余るお話でして……」
「アデル!あなたような聡明な女性が、一年生を引っ張っていけると私は信じています。これからよろしくお願いします」
断りの体勢に入ろうかと思ったところで、シドヴィスがずいっと出てきて、勝手に手を掴んで大袈裟に握手をしてきた。
すっかり勢いを封じられて、レオンはパクパクと声にならない声を出した。
仲良しごっこでもしているような構図になってしまった。
「なんだ!すっかり打ち解けているじゃないか!良かった良かった!じゃ、私はこれから会議だから、シドヴィスくん、この部屋を使って色々と説明してくれ」
「え!あ…あの…こうちょ……」
「分かりました。お任せください」
キラキラした瞳のまま、校長は若いっていいねと言いながら部屋から出ていってしまった。
「そんなーーー!無理だよぉぉ」
「……アデル、やっぱり断ろうとしていましたね」
情けない声を上げたレオンに、シドヴィスは物言いたげな視線を向けてきた。
「当たり前ですよ、私が代表なんて!推薦なんか困ります!みんな話を聞いてくれるはずないじゃないですか!!ただでさえ、貴族のご令嬢方に冷たい視線を浴びているのに!絶対ごちゃごちゃに揉めます!」
「大丈夫ですよ。揉めるようなときは言ってください。一緒に対応しますから。それに言い訳させてもらうと、校長はテストの順位が一番高い女子でほぼ決めておられて、どうかなと聞かれたのではいと答えただけなのです。これを推薦と呼ばれると困ってしまいますね」
レオンはがっくりと項垂れた、結局はばか正直に挑んでしまった自分のせいなのだ。
こんなことで忙しくしていたら、ますます男に戻る日が遠のいてしまう。
「あの狸親父は、あぁ見えてキレ者だからなぁ。女子だと断られる可能性が高いと思ってシドの名前を出したんだろ。断るとやっかいな事になるから、なるべくなら引き受けた方がいい。まっ、そう暗くなるなよ。大してやることねーし」
ディオにまで慰められてしまい、レオンはますます肩を落とした。
引き受けるも断るも地獄のような思いだった。
「基本的には生徒達の声を集めて学園に伝える橋渡し的な役割ですね。定例会議で声を集めて提出します。学園からは生徒の生活についての要望が来るので、それを論議して規則を消したり増やしたり、というのもありますね。後はイベントの時などに、準備から当日の仕事、終了後の片付け、来年度に向けた課題の話し合いや……」
「……けっこう、やることあるじゃないですか……」
「まぁ…シドは優秀だからさ、任せますって言っときゃそれで終わりだから」
「ディオ、後輩にまでその適当さを教えないでください。こちらとしては、ちゃんと参加して欲しいんですよ」
シドヴィスとディオが賑やかに言い合っている中、レオンはアデルのことを考えていた。
こんな大役を引き受けて、アデルと交代した日には、ふざけんなアニキと怒鳴られて、絶対ボコボコにされるとしか思えなかった。
「大丈夫ですか?アデル、何か心配なことでも……」
青くなって顔を押さえているレオンを心配そうにシドヴィスが覗きこんだ。
「心配……って……、心配ですよ。結婚が……どんどん遠くに……」
「ああ、アデル、まだそれ言ってんのかよ」
こっちは軽い気持ちじゃないんだと、レオンはディオをキっとにらんだ。
「結婚?そういえば、お二人はいつの間にお知り合いになったのでしょうか?」
レオンは自分でぽろっと結婚の話をこぼしてしまったので、今さら隠しても仕方がないと思って、ディオと偶然出会って結婚相手探しを手伝ってもらったことを話した。
「なんだ……、どうして早く言ってくださらなかったのですか?」
「は?えっ…なんで?」
「ぴったりの相手がいるじゃないですか!」
爽やかな笑顔で近づいてきたシドヴィスは、流れるような仕草でレオンの手を取って甲にキスをした。
「へ!?もしかして……」
「ええ、私です。貴族の男子で、健康、見た目も性格もそこそこ良い方だと思うのですが……」
「いや……だって……」
「ああ!SMプレイに関してはご希望があれば喜んで協力しますが、強制はしません!」
「そこはいいです!その話題に触れないでください!」
シドヴィスは女性であれば、うっとりしてしまいそうな、甘い雰囲気を漂わせながら、色気たっぷりにレオンを見つめてきた。
「アデル……、私と結婚を前提にお付き合いしませんか?」
「………大変光栄なことですが、お断りします」
「光栄そうな顔には見えませんね」
明らかに渋い顔をしたレオンを見て、ジドヴィスは残念そうにそうこぼした。
「ジドヴィス様、私知ってますよ。同級生に恋人がいらっしゃるんでしょう。気まぐれに遊ぶのはやめてください!」
「……アデル!嬉しい!私のことを調べてくれたのですか!?」
「いや…そういうことではなくて……」
「それについては、色々事情がありまして、ぜひ私の話を聞いて欲しいのですが……」
「おい!」
ずっと放っておかれたからだろう。ディオが腹立たしそうに声を上げた。レオンとシドヴィスは二人揃ってディオの方に目を向けた。
「悪いけどそういうのは他所でやってくんね。ここでアデルを口説くとかナシね」
「相変わらずの女性嫌いですね。よくそんな考えでアデルの相手探しを名乗り出ましたね」
「……なんか、バカそうだったからさ、からかっただけだよ」
ディオは気まずそうに目をそらした。確かにその件で少しもめた。自分も頭に血が上って責めてしまったが、レオンから見てディオは本気でバカにしてからかっていたようには思えなかった。
黙りこんでしまったディオを庇うように、ジドヴィスが、仕方ないですねと話し始めた。
「ディオと私は幼なじみでして、家族間の交流も深いのです。ディオの上には姉が二人いるのですが、それはもう強烈な方々で、子供の頃からさんざん苛められて、ディオはすっかり女性嫌いになってしまったのです。なにか失礼があったかもしれませんが、一緒に代表生をするわけですから、その辺りのことは………」
「………そうなんですね。分かりました。苦手なことは誰にでもありますから、私にはそっちの方が多いくらいです」
得意なことより、苦手なこと恐いことの方が幾らでも思いつく。
高貴な家に生まれ不自由なく生きていたように見える男にもそういった一面があるのかと、レオンは逆に親近感がわいた。
「ディオ様、結婚相手探しの件、興奮して苛立ってしまって申し訳ございません。そもそも私の説明が悪かったのが原因ですから、違ったとか言うのはよくなかったと反省しています」
「いや……俺も……ちゃんと聞いていなかったし……」
「まずは人任せにせず、ちゃんと自分で探してみて……」
「ですから、それには私がぴったりだと!」
せっかく流れていた話を、ジドヴィスが元に戻してしまい、レオンはズッコケそうになった。
「……ジドヴィス様、この際はっきり申し上げますが、ジドヴィス様のご厚意はありがたいのですが、公爵家の男子ではうちには巨大勢力過ぎるのです!」
「……つり合わないとかは言わないでください。今の時代そう言った考えは古いもので、平民の女性であっても私の家はまったく構いません」
「父には、男爵か子爵家から探すようにと言われているのです。今後のことを考えても、ジドヴィス様の相手はうちのアデルでは荷が重すぎて……」
「うちのアデルって、なんで他人事なんだよ……」
ディオの冷静なツッコミで、レオンはしまったと青くなった。
完全に言い方を間違えてしまった。
「う………うちの家族は自分のことをそれぞれ……名前で呼んでいまして……そのクセが………つい、お恥ずかしいです」
非常に苦しすぎる言い方でレオンは汗だくになっていたが、ディオは子供かよとまたツッコんでくれて、なんとかごまかせたようだった。
「………そうですか。では、こうしましょう!もし、相手が見つからなかったら、私にするというのはいかがですか?」
「は?そんなの無理に……」
「相手を決めればいいんだろ。めんどくさいから頷いておけよアデル、こいつ言い出したらしつこいぞ」
確かに笑顔のまま、地の果てまで追いかけてきそうな迫力を感じて、レオンは後ろに下がって壁に背中が当たってしまった。
「……ぃった」
「そうですか!分かったですか!良かった良かったです」
「えっ!!ちが……」
レオンの否定の声は全く聞き入れず、派手に握手をした後、それではまたと言ってシドヴィスはキラキラとした嬉しそうな顔をして校長室から出ていってしまった。
「………お前って、変なことに巻き込まれる運命だな」
ディオの言葉には激しく同意したかったが、認めたくなくてレオンは絶対に見つけてやると心に決めたのだった。
□□□
58
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります
かとらり。
BL
前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。
勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。
風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。
どうやらその子どもは勇者の子供らしく…
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う
凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。
傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。
そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。
不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。
甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる