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第一章 学園
⑬秘密
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ピッピッと笛の音が鳴って、運動場に賑やかな声が集まってきた。
学園の運動の授業は男女に別れて行われる。
男子は主に剣術と乗馬の訓練。女子はダンスと体操だった。
数が少ない女子の運動の授業は基本的に一年から三年まで合同で行われる。
その時間は女子達の高い声が運動場に咲いて華やかになると言われている。
……が、レオンにとって運動の授業は地獄の時間だった。
「ついに、二年の先輩からも睨まれるようになったわね、アデル」
逃げ出したい思いで小さくなっていると、ミレニアがからかうように声をかけて来た。
シドヴィスに近づくなと脅してきた三年の先輩女子グループの他にも、代表生になったことで、ディオと同じ二年の女子からも冷たい視線を浴びるようになってしまった。
立っているだけで、両側から凍りつきそうなくらいの寒さを感じるのだ。
唯一の救いは、レオンのいる一年のクラスの女子は貴族も含め大人しい女子が多く、皆とは比較的仲が良い。代表生になって心配したが、話を聞いてくれないとかは今のところはなく、スムーズに進めることができている。
教師の笛の音に合わせて、上半身を動かす体操が始まった。
レオンは体を動かしながら、ぼんやりと考えていた。
手紙を送ったのだが、家からの返事がなかなか来ない。父が見たのならば飛びついて連絡が来そうなのに、もう一週間は経っていた。
もしかしたら、届かなかったのかもしれない。仕方がないので、今夜辺りまた書いて出そうかと思い始めていた。
「そういえば、この前、お付き合いについて質問してきたじゃない。あれから恋に進展はあった?」
簡単な運動を終えて、校庭に座らされて上級生の体操を見る時間に、ミレニアが横からそっと話しかけてきた。
「恋?」
「隠さなくていいわよぉ。あんなこと聞いてくるってことは、良いと思っている方がいるんでしょう!」
「あ…だっ!……べつに…そんな、恋なんて……」
真っ赤になって慌て出したレオンを見て、ミレニアはやっぱり怪しいと言って笑った。
今日は諸事情もあってミレニアの目がまともに見られないのだ。
レオンはお付き合いのレッスンについて思い出していた。シドヴィスとは、放課後に会議室で恋人同士のお付き合いについて教えてもらっている。
といっても、最初は名前を呼ぶだけだったし、次は軽いボディタッチで、手を繋いだりするくらいで、正直なところこんなものかと思うくらいだ。
ミレニアとの方が距離も近くて仲良くしているような気がするくらいだ。
それに、シドヴィスはどこか体が悪いのかもしれない。昨日、手を繋いで名前を呼ぶというレッスンをしたが、シドヴィスは途中苦しそうに前屈みになって一時退室してしまった。
若いから仕方がないと謎の言葉を残して出ていったが、しばらくしたら、またいつもの落ち着いたシドヴィスになって戻ってきたのだ。
そういえば店のお客さんで体の弱い人がいて、時々発作が出て困ると言っていたのを思い出した。
それと同じ症状なのかもしれない。
確か良い薬があると聞いたので、それを取り寄せようかとレオンはぼんやり考えていた。
「ほら、やっぱり最近、上の空になっていることが多いわよ。誰のことを考えているのかしら?うふふ……」
「うっ…ちがっ…私は何も……!」
ミレニアに指摘されてレオンの胸はドキリ揺れた。確かにこのところシドヴィスのことばかり考えている。しかも夜中にあの濡れて艶のある瞳を思い出してしまい、久しぶりにあの悩ましい感覚がきてしまったのだ。
それはレオンが誰にも話せない秘密だ。
健康な成人男子であれば、もちろん定期的にくるものなのでそれ自体はおかしくはない。だが、レオンはもともと欲が薄くてあまりそういう熱が上がることは少なかった。
生理的にもやもやと体に溜まってきたものを出すというだけの行為だった。
単純に解放だけを求めるわけではない。ベッドの中でシドヴィスの瞳を思い出したレオンは、まるで自分が見られているような気持ちになって、体の熱が高まってくるのを感じた。
寝息をたてるミレニアに気づかれないように、布団をかぶって熱に手を伸ばした。
そして、慌てて大きなタオルも一緒に布団の中に入れた。
急速に高まっていくそこに手を添えて擦り出したら、すぐにイキそうになってしまう。レオンはいわゆる早漏で感じやすく、膨張状態になったら少しの刺激で達してしまう。布団の中にくちゅくちゅと水音が響いて、レオンは声を殺した。すぐにタオルはびっしょりと濡れてしまった。
レオンの秘密は、汗かきの体質でもあるし、自慰の際に、感じ始めると、中心であるソコからもドバドバと汁が流れてしまうのだ。
しかも、今回はシドヴィスの顔が頭に思い浮かんで、なんとそこでレオンは達してしまった。
終わってから感じるのは、虚しい自己嫌悪だ。ミレニアの寝ているベッド下で最低なことをしてしまったと、ベッドを清めながら泣きたくなったのだ。
気をつけたつもりだが、やはりベッドは濡れてシミになりそうだったので慌ててシーツを交換した。
これでは完全にオネショをした子供と一緒で笑えない。
汗かき体質であることは言えても、体液自体が多すぎるということは誰にも言えない。
もちろん家族にも、ずっとレオンが秘密にしてきたことだった。
こんな衝動など無くなってしまえばいいのにと、いつも思ってきた。
しかし、ただ虚しいだけだった行為に、シドヴィスという存在が加わったことで、不思議と少しだけ満たさせたような気持ちになった。
しかし、やっぱり、ミレニアの下でいたしたのはまずかったと、レオンは昨日の夜からずっと反省しているのだ。
「やだ私、次の時間の宿題忘れてたんだわ!先に戻ってちょっとやっておくね」
運動の授業が終わり、宿題を思い出したとミレニアは、先に走って教室へ行ってしまった。
「ねぇ、アデルさん。一年生の代表生さん」
背中に甘ったるい声をかけられて振り向くと、二年の貴族女子グループが立っていた。どうやら、一人になるところを待っていたらしい。
「代表生でしたら、片付け、やっておいてくれますよね?」
校庭で使った用具は学年ごとに当番制で片付けが決まっていた。今日は二年生の番だった。
「そっ…それは…、片付けは当番なので…。代表生だからやるというわけでは…」
「私達、今日全員月のモノなの。男の教師に説明できないでしょう。立っているのも辛いのよ、重いものなんて持てないわ」
「つっ…月の……、ぜっ全員がですか?」
女の子の体のことを言われると、レオンはどう反応していいか分からない。
そもそも同じタイミングでなるものなのかも不明だったが、確かにアデルはその時体調が悪くなるので、嘘をつくなとは言えなかった。
「じゃ、お願い」
唖然として立ち尽くしているレオンを見て、クスクスと笑いながら、自分達が片付ける分の仕事を残して、二年の先輩方は歩いて行ってしまった。
もう周りには人はいなくて、手伝ってくれそうな人に声をかけることもできない。
レオンは仕方ないと諦めて、運動場に転がっている授業で使用した用具を一人で片付け始めた。
本来であれば、こんな雑用を貴族様がやるはずないのだが、学園では平民と一緒に学ぶ意味も込めて平等に雑用もやらされるのだ。
しかしながら、それを自分の仕事ではないと拒否する者が多い。男子はみんなやっているようだが、どの学年も女子は特別生が常に担当している。
レオンはせっかく代表生になったのだから、こういった現状を変えられないかと思い始めていた。
用具倉庫の前まで荷物を運んで、扉を押さえながら次々と片付けた。一人でやるにはかなりの量だった。
きっといつも片付けを担当している二年の特別生は、貴族女子達が先に帰らせたのだろう。仕事を残してわざわざ、レオンに嫌がらせをするために。
ミレニアから聞いた話だと、ディオもまた女子達の間では相当な人気があるらしい。
ディオは女性嫌いを公言しているので、仲良くしたいけどできないのにという女子達が、代表生として一緒にいることが多いレオンに嫉妬の気持ちを抱くのは想像できた。
分厚いマットは両手に抱えないといけないので、ドアは箒で押さえながら、重たいマットを抱えて中に運んだ。用具倉庫の中は構造的な問題なのか熱かった。窓もないので換気もできなくて埃っぽい。
早く出ようと考えて、背中に視線を感じたレオンがぱっと振り向くとドアのところに人が立っていた。
太陽を背にして立っているのは、歓迎パーティーのときに声をかけてきたあの男だった。
「やぁ、パーティー以来だね。最近は楽しそうだね。代表生にも選ばれて充実しているじゃないか」
「ええと……、ジョアン様……」
すっかり忘れていたので、辛うじて名前が出てきたくらいだった。
こんなにタイミング良く倉庫に来るとは思えない。誰かの策略を感じてレオンは身構えた。
「あれ?どうしてそんなにビクビクしているの?ちょっと君と遊びたいだけなんだよ」
「私は用はないです。一人で勝手に遊んでください」
「ふっ…少し前まで、子爵や男爵家の息子相手に、話しかけまくってたくせに、何言ってんだよ。君、純情そうなふりして遊びたいんだろ?」
結婚相手探しに奔走していたのは確かだ。しかし、ジョアンのお遊びに付き合うなんてごめんだとレオンはジョアンをぎりりと睨みつけた。
「いい目をするね……。ゾクゾクしてきちゃった」
途端に興奮したような顔になったジョアンは後ろ手に入口のドアを閉めた。
パタンという音が倉庫内に響いた。
レオンの額から汗が流れ落ちてきた。ジリジリと後ろに下がりながら、レオンは逃げることを考えながら頭を必死で働かせたのだった。
□□□
学園の運動の授業は男女に別れて行われる。
男子は主に剣術と乗馬の訓練。女子はダンスと体操だった。
数が少ない女子の運動の授業は基本的に一年から三年まで合同で行われる。
その時間は女子達の高い声が運動場に咲いて華やかになると言われている。
……が、レオンにとって運動の授業は地獄の時間だった。
「ついに、二年の先輩からも睨まれるようになったわね、アデル」
逃げ出したい思いで小さくなっていると、ミレニアがからかうように声をかけて来た。
シドヴィスに近づくなと脅してきた三年の先輩女子グループの他にも、代表生になったことで、ディオと同じ二年の女子からも冷たい視線を浴びるようになってしまった。
立っているだけで、両側から凍りつきそうなくらいの寒さを感じるのだ。
唯一の救いは、レオンのいる一年のクラスの女子は貴族も含め大人しい女子が多く、皆とは比較的仲が良い。代表生になって心配したが、話を聞いてくれないとかは今のところはなく、スムーズに進めることができている。
教師の笛の音に合わせて、上半身を動かす体操が始まった。
レオンは体を動かしながら、ぼんやりと考えていた。
手紙を送ったのだが、家からの返事がなかなか来ない。父が見たのならば飛びついて連絡が来そうなのに、もう一週間は経っていた。
もしかしたら、届かなかったのかもしれない。仕方がないので、今夜辺りまた書いて出そうかと思い始めていた。
「そういえば、この前、お付き合いについて質問してきたじゃない。あれから恋に進展はあった?」
簡単な運動を終えて、校庭に座らされて上級生の体操を見る時間に、ミレニアが横からそっと話しかけてきた。
「恋?」
「隠さなくていいわよぉ。あんなこと聞いてくるってことは、良いと思っている方がいるんでしょう!」
「あ…だっ!……べつに…そんな、恋なんて……」
真っ赤になって慌て出したレオンを見て、ミレニアはやっぱり怪しいと言って笑った。
今日は諸事情もあってミレニアの目がまともに見られないのだ。
レオンはお付き合いのレッスンについて思い出していた。シドヴィスとは、放課後に会議室で恋人同士のお付き合いについて教えてもらっている。
といっても、最初は名前を呼ぶだけだったし、次は軽いボディタッチで、手を繋いだりするくらいで、正直なところこんなものかと思うくらいだ。
ミレニアとの方が距離も近くて仲良くしているような気がするくらいだ。
それに、シドヴィスはどこか体が悪いのかもしれない。昨日、手を繋いで名前を呼ぶというレッスンをしたが、シドヴィスは途中苦しそうに前屈みになって一時退室してしまった。
若いから仕方がないと謎の言葉を残して出ていったが、しばらくしたら、またいつもの落ち着いたシドヴィスになって戻ってきたのだ。
そういえば店のお客さんで体の弱い人がいて、時々発作が出て困ると言っていたのを思い出した。
それと同じ症状なのかもしれない。
確か良い薬があると聞いたので、それを取り寄せようかとレオンはぼんやり考えていた。
「ほら、やっぱり最近、上の空になっていることが多いわよ。誰のことを考えているのかしら?うふふ……」
「うっ…ちがっ…私は何も……!」
ミレニアに指摘されてレオンの胸はドキリ揺れた。確かにこのところシドヴィスのことばかり考えている。しかも夜中にあの濡れて艶のある瞳を思い出してしまい、久しぶりにあの悩ましい感覚がきてしまったのだ。
それはレオンが誰にも話せない秘密だ。
健康な成人男子であれば、もちろん定期的にくるものなのでそれ自体はおかしくはない。だが、レオンはもともと欲が薄くてあまりそういう熱が上がることは少なかった。
生理的にもやもやと体に溜まってきたものを出すというだけの行為だった。
単純に解放だけを求めるわけではない。ベッドの中でシドヴィスの瞳を思い出したレオンは、まるで自分が見られているような気持ちになって、体の熱が高まってくるのを感じた。
寝息をたてるミレニアに気づかれないように、布団をかぶって熱に手を伸ばした。
そして、慌てて大きなタオルも一緒に布団の中に入れた。
急速に高まっていくそこに手を添えて擦り出したら、すぐにイキそうになってしまう。レオンはいわゆる早漏で感じやすく、膨張状態になったら少しの刺激で達してしまう。布団の中にくちゅくちゅと水音が響いて、レオンは声を殺した。すぐにタオルはびっしょりと濡れてしまった。
レオンの秘密は、汗かきの体質でもあるし、自慰の際に、感じ始めると、中心であるソコからもドバドバと汁が流れてしまうのだ。
しかも、今回はシドヴィスの顔が頭に思い浮かんで、なんとそこでレオンは達してしまった。
終わってから感じるのは、虚しい自己嫌悪だ。ミレニアの寝ているベッド下で最低なことをしてしまったと、ベッドを清めながら泣きたくなったのだ。
気をつけたつもりだが、やはりベッドは濡れてシミになりそうだったので慌ててシーツを交換した。
これでは完全にオネショをした子供と一緒で笑えない。
汗かき体質であることは言えても、体液自体が多すぎるということは誰にも言えない。
もちろん家族にも、ずっとレオンが秘密にしてきたことだった。
こんな衝動など無くなってしまえばいいのにと、いつも思ってきた。
しかし、ただ虚しいだけだった行為に、シドヴィスという存在が加わったことで、不思議と少しだけ満たさせたような気持ちになった。
しかし、やっぱり、ミレニアの下でいたしたのはまずかったと、レオンは昨日の夜からずっと反省しているのだ。
「やだ私、次の時間の宿題忘れてたんだわ!先に戻ってちょっとやっておくね」
運動の授業が終わり、宿題を思い出したとミレニアは、先に走って教室へ行ってしまった。
「ねぇ、アデルさん。一年生の代表生さん」
背中に甘ったるい声をかけられて振り向くと、二年の貴族女子グループが立っていた。どうやら、一人になるところを待っていたらしい。
「代表生でしたら、片付け、やっておいてくれますよね?」
校庭で使った用具は学年ごとに当番制で片付けが決まっていた。今日は二年生の番だった。
「そっ…それは…、片付けは当番なので…。代表生だからやるというわけでは…」
「私達、今日全員月のモノなの。男の教師に説明できないでしょう。立っているのも辛いのよ、重いものなんて持てないわ」
「つっ…月の……、ぜっ全員がですか?」
女の子の体のことを言われると、レオンはどう反応していいか分からない。
そもそも同じタイミングでなるものなのかも不明だったが、確かにアデルはその時体調が悪くなるので、嘘をつくなとは言えなかった。
「じゃ、お願い」
唖然として立ち尽くしているレオンを見て、クスクスと笑いながら、自分達が片付ける分の仕事を残して、二年の先輩方は歩いて行ってしまった。
もう周りには人はいなくて、手伝ってくれそうな人に声をかけることもできない。
レオンは仕方ないと諦めて、運動場に転がっている授業で使用した用具を一人で片付け始めた。
本来であれば、こんな雑用を貴族様がやるはずないのだが、学園では平民と一緒に学ぶ意味も込めて平等に雑用もやらされるのだ。
しかしながら、それを自分の仕事ではないと拒否する者が多い。男子はみんなやっているようだが、どの学年も女子は特別生が常に担当している。
レオンはせっかく代表生になったのだから、こういった現状を変えられないかと思い始めていた。
用具倉庫の前まで荷物を運んで、扉を押さえながら次々と片付けた。一人でやるにはかなりの量だった。
きっといつも片付けを担当している二年の特別生は、貴族女子達が先に帰らせたのだろう。仕事を残してわざわざ、レオンに嫌がらせをするために。
ミレニアから聞いた話だと、ディオもまた女子達の間では相当な人気があるらしい。
ディオは女性嫌いを公言しているので、仲良くしたいけどできないのにという女子達が、代表生として一緒にいることが多いレオンに嫉妬の気持ちを抱くのは想像できた。
分厚いマットは両手に抱えないといけないので、ドアは箒で押さえながら、重たいマットを抱えて中に運んだ。用具倉庫の中は構造的な問題なのか熱かった。窓もないので換気もできなくて埃っぽい。
早く出ようと考えて、背中に視線を感じたレオンがぱっと振り向くとドアのところに人が立っていた。
太陽を背にして立っているのは、歓迎パーティーのときに声をかけてきたあの男だった。
「やぁ、パーティー以来だね。最近は楽しそうだね。代表生にも選ばれて充実しているじゃないか」
「ええと……、ジョアン様……」
すっかり忘れていたので、辛うじて名前が出てきたくらいだった。
こんなにタイミング良く倉庫に来るとは思えない。誰かの策略を感じてレオンは身構えた。
「あれ?どうしてそんなにビクビクしているの?ちょっと君と遊びたいだけなんだよ」
「私は用はないです。一人で勝手に遊んでください」
「ふっ…少し前まで、子爵や男爵家の息子相手に、話しかけまくってたくせに、何言ってんだよ。君、純情そうなふりして遊びたいんだろ?」
結婚相手探しに奔走していたのは確かだ。しかし、ジョアンのお遊びに付き合うなんてごめんだとレオンはジョアンをぎりりと睨みつけた。
「いい目をするね……。ゾクゾクしてきちゃった」
途端に興奮したような顔になったジョアンは後ろ手に入口のドアを閉めた。
パタンという音が倉庫内に響いた。
レオンの額から汗が流れ落ちてきた。ジリジリと後ろに下がりながら、レオンは逃げることを考えながら頭を必死で働かせたのだった。
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