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終章 モブのエンディング
④迫りくる魔の手。
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一年の教室前の廊下は人集りができていた。
俺とノーベンは中の様子を確かめようと、人混みをかき分けて進んだ。
アピスは確かに性格がアレなので、人と揉めることも多かったが、それは貴族になる前の話だ。
貴族になってからの彼は、上にのし上がるために必要なのは教養と他人と上手くやる力だと気がついた。
外見の魅力は十分余りあるほどなので、そこは問題ない。
本来の我の強い自分は隠して、儚げで繊細で大人しい男子を演じていたはず。
元平民で貴族でも下っ端の俺には、何の利益もないとみたのか、話した時はひどい態度だった。
しかし、他の生徒には誰もに好かれて可愛がられるという設定だったはず。
ブランソンだって元々は問題を起こした生徒だが、今は改心して真面目になったと聞いていた。次に問題を起こしたら今度こそ退学になるかもしれない。
何かの冗談だと思いながら、人が集まっている中心に出たら、聞いていた通りブランソンがアピスの胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
「い…痛い。やめて……」
目に大粒の涙を浮かべて、弱々しく声を上げているのはアピスだった。
顔を赤くして怒り顔なのはブランソンなので、どう見てもブランソンがアピスをいじめているような構図だった。
咄嗟に前に出ようとした俺の腕をノーベンが掴んで止めた。
「分かっているのかって聞いているんだよ。お前がやっていることは最低だぞ」
「…だから…何のこと? 僕は何も……」
「知らないふりしやがって! さっき廊下でイグニス様に抱きついて口づけしようとしただろう!」
ドキッと心臓が押されたみたいに波打って、もやもやと黒い雲が胸の中を覆った。
怒りと不安が渦巻いて目の前が赤く染まって見えた。
ブランソンの言葉に周囲はザワザワと騒ぎ出した。
明らかに弱々しい立場に見えたアピスだったが、どこかおかしいぞとみんな感じ始めたのかもしれない。
「防がれて振り払われていたが、そもそもお前の行動はずっと目に余るものがある。イグニス様がテラ・エイプリルと公認の恋人であることは知っているだろう。それをわざわざ引き裂くような真似をして……俺はあの二人には恩がある。だから、お前みたいなやつを許さない!」
まさかブランソンが俺やイグニスのために怒ってくれているなんて、怒りと不安で荒れていた心が少し落ち着いた。
「………ごめんなさい。僕……ただ仲良くなりたくて……どうしても止められなくて……」
アピスの目元に浮かんでいた涙は完璧とも言えるタイミングがぽろぽろとこぼれ落ちた。
事情を知って動揺している生徒達もアピスの涙を見たら、可哀想だという気持ちが勝ってしまい、ブランソンに言い過ぎだぞと声をかける者が次々と現れた。
ここは俺が出て何か言うべきか悩んだが、とにかくこの場を収めないといけない。
やはり前に出ようとした俺の視界に、こういう時いたら頼りになる人が入ってきた。
「これはこれは……、少し騒ぎすぎではないですか?」
「ディセル様」
その場所だけ人波がサッと引いて、空色の髪を靡かせながら長男のディセルがゆっくりと近づいてきた。
「ディセル様、このアピスがイグニス様に無礼を…、こんなこと知ったらテラが傷ついて……」
すぐに気がついたブランソンが輪の中心に入ってきたディセルに必死に訴えた。
しかし、ディセルは口元に手を当てて静かにという動きをしてそれを制した。
「アピス、君のことですから、イグニスと仲良くしようとして、ちょっと過剰に近づいてしまっただけでしょう」
「うん……、怖いよディセル。僕、悪いことしていない」
「大丈夫ですよ。ブランソンこれくらいにしてあげてください。さぁ、皆の者もそれぞれ教室へお帰りください」
夢でも見ているのかと思った。
ディセルは自然にアピスに近づいてふわりと頭を撫でた後、おでこに口付けた。
声に出さずとも一瞬で動揺が広がって、誰もがその光景に唖然としていた。
「ディセル様……」
「ブランソン、二度目は言いません」
「………分かりました」
ディセルと目があった。
いつも俺と目が合うと、優しげに細められる目元が一切変わることなく、何の感情もなくスッとそらされてしまった。
どういうことだ……。
これは……いったい……。
ディセルがパンパンと手を叩くと、生徒達は蜘蛛の子を散らすようにそれぞれ教室へと戻っていった。
「大丈夫ですか? 教室まで私がお送りしましょう」
「うん…、ありがとうディセル」
ディセルが腕を出すとアピスは当然のようにそこに手を絡ませて、体重をかけるようなかたちになった。
そして俺やノーベンが言葉を失って見つめる中、アピスと二人一年の教室へ消えて行った。
「放課後、集合ね。ブランソンも分かった?」
ノーベンが告げた言葉にハッとして、俺はやっと立っていることに気がついた。
ブランソンも同じだったようで驚いた顔でこちらを見ていた。
「なんだよ。呼び出しておいてみんな黙りこくって」
放課後、二年の教室に俺とイグニス、ノーベンにブランソンが集まって四人で机を囲んだ。
他の生徒はすでに帰宅済みで、ドアも閉め切って秘密の会議が開かれていた。
俺とブランソン、ノーベンまで神妙な面持ちで腕を組んでいるので、一人状況が分からないイグニスは気持ちが悪いなと言って三人の様子を見比べていた。
「イグニス兄さん、当番で教室を出た時、アピスと何かあった?」
「げっ! 何でノーベンが知ってんだよ」
「そのことが問題の発端なの! 抱きつかれてキスされそうになったのは本当?」
「あっ……いや、その…、いきなり飛びついてきて、顔を近づけてきたから片手で押さえて振り払いはした……」
イグニスが気まずそうな顔で俺をチラリと見てきた。まあ、そんな流れだろうとは予想できた。
大丈夫だという意味を込めて、イグニスに視線を送った。
「……余計なことだとは思ったのですが、アピスの態度が気に入らなくて、すみません」
ブランソンは頭を下げて小さくなった。
俺は慌てて、謝らなくていいと言った。
「何言ってんだよ。嬉しかったよ、ブランソン。俺やイグニスのために怒ってくれて……。モヤモヤして苦しかったけど、ブランソンが怒っていたから、俺も冷静になれたし」
いまだ状況が分からなくて、目をパチパチしているイグニスに、一年の廊下であった出来事を話して聞かせた。
「なるほど……、いやブランソン。テラの言う通りだ。俺ももっと気を使えば良かった。お前まで巻き込んですまない」
「そっ…そんな、俺は全然…」
「まあ、問題なのはもうわかると思うけど、ディセル兄さんのことだよね。誰か何か聞いている?」
ノーベンの問いは、ディセルの態度が何か策があってのことだと言いたいのだろう。
みんな首を振っていて、誰もディセルから何も聞いていないようだった。
確かにディセルなら何か考えがあって急に態度を変えた可能性も考えられる。
「ディセルは昨日までアピスのことを避けていて、会っても逃げるようにしていた。それなのに、なんなのあれ! あの態度……。まさか、好きになっちゃいましたなんて言わないよね?」
「落ち着いてノーベン、ディセルのことだからきっと何かあるんだよ」
「何か考えてやってるならいいけど……。それより僕が今まで何をしていたか気になる? アピスと話しながら、アピスが何をしたいのか探っていたんだよ。明らかに怪しいからね、あの子」
さすが好奇心旺盛で一番勘の鋭いノーベンはすでに動いていたらしい。
懐から書類の束を取り出して、ボンと机の上に置いた。
「まず彼の家はフローラル家、かつてラギアゾフ家が王家への反逆罪で取り潰し寸前まで追い込んだ家だよ。その時は力を持つ者がいたおかげで、処分は免れた。けどその時の恨みをいまだに抱えているってのは有名な話だよ。それと、調べたところによると、アピスは最近、頻繁に第三皇子のルナリス様に手紙を送っている」
「へ?」
好き勝手が高じてついにノーベンの能力が開花したらしい。
机に置かれた書類には、かつてのフローラル家の所業、大人しく見えても今でも勢力を伸ばそうとしている様子、そしてアピスがルナリスに送った手紙の詳細まで調べられていた。
「全ては入手できなかったけど、内容はだいたい掴めた。まずは自分がペアであると明かして、利用価値があることをアピールしていた。後はだいたい、会いたい、仲良くしたいって内容だったね」
「なぜ…殿下にそんな手紙を……」
「婚約者になりたいからさ。国の皇子で婚約をされていないのはルナリス殿下だけだからね。第三皇子って位置もぴったり、狙い目なんでしょう。つまり、アピスはラギアゾフ家へ攻撃して、何かあっても安心の皇族と縁を作ろうとしている、僕はそう考えている」
椅子から崩れ落ちそうになった。
制作陣の設計図を初っ端から登場キャラに見抜かれてしまった。完璧な当たりではないがほぼ正解だ。
ノーベン、なんて恐ろしい子……。
俺がわなわなと震えていると、横に座っているイグニスはポンっと手を叩いた。
「なるほど、それなら色々と訳の分からない発言に説明がつく。アピスのやつ、他の兄弟が羨ましくないかとか、僕なら寂しさを分かってあげられるとか、やけに変に絡んできたんだ。あれは、俺達を仲違いさせて、喧嘩させようってことか」
「ただの喧嘩レベルじゃないよ。僕なんて家督を継ぐなら僕が一番合ってるなんて言われたからね。支えてあげようか、なんて……」
次々と主人公の選択肢が話題に上がっていく。確かそんな台詞付け加えたなというところをしっかりアピスはおさえてきていた。
しかしディセルは分からないが、ノーベンと、イグニスには響かなかったようだ。
「ディセルは……何を考えているんだろう」
まさか本当にアピスの甘言に乗せられてしまったというのだろうか。
心配になった俺の肩をノーベンがポンと叩いてきた。
「僕に任せて。証拠は揃ってきたし、そろそろ直接問いただしてみるよ」
「大丈夫か? 俺も……」
「ありがとうイグニス兄さん、でも大丈夫。まずは一対一で安心させて、追い詰めてみる」
気持ちいいくらい、ズバズバと主人公の動機まで当ててしまって、ノーベンは向かうところ敵なしというように見えた。
ノーベンなら大丈夫だろう。
きっとアピスにズバっと言ってくれて、ディセルも戻ってきてくれる。
俺はこの時、そんな風に思っていた。
□□□
俺とノーベンは中の様子を確かめようと、人混みをかき分けて進んだ。
アピスは確かに性格がアレなので、人と揉めることも多かったが、それは貴族になる前の話だ。
貴族になってからの彼は、上にのし上がるために必要なのは教養と他人と上手くやる力だと気がついた。
外見の魅力は十分余りあるほどなので、そこは問題ない。
本来の我の強い自分は隠して、儚げで繊細で大人しい男子を演じていたはず。
元平民で貴族でも下っ端の俺には、何の利益もないとみたのか、話した時はひどい態度だった。
しかし、他の生徒には誰もに好かれて可愛がられるという設定だったはず。
ブランソンだって元々は問題を起こした生徒だが、今は改心して真面目になったと聞いていた。次に問題を起こしたら今度こそ退学になるかもしれない。
何かの冗談だと思いながら、人が集まっている中心に出たら、聞いていた通りブランソンがアピスの胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
「い…痛い。やめて……」
目に大粒の涙を浮かべて、弱々しく声を上げているのはアピスだった。
顔を赤くして怒り顔なのはブランソンなので、どう見てもブランソンがアピスをいじめているような構図だった。
咄嗟に前に出ようとした俺の腕をノーベンが掴んで止めた。
「分かっているのかって聞いているんだよ。お前がやっていることは最低だぞ」
「…だから…何のこと? 僕は何も……」
「知らないふりしやがって! さっき廊下でイグニス様に抱きついて口づけしようとしただろう!」
ドキッと心臓が押されたみたいに波打って、もやもやと黒い雲が胸の中を覆った。
怒りと不安が渦巻いて目の前が赤く染まって見えた。
ブランソンの言葉に周囲はザワザワと騒ぎ出した。
明らかに弱々しい立場に見えたアピスだったが、どこかおかしいぞとみんな感じ始めたのかもしれない。
「防がれて振り払われていたが、そもそもお前の行動はずっと目に余るものがある。イグニス様がテラ・エイプリルと公認の恋人であることは知っているだろう。それをわざわざ引き裂くような真似をして……俺はあの二人には恩がある。だから、お前みたいなやつを許さない!」
まさかブランソンが俺やイグニスのために怒ってくれているなんて、怒りと不安で荒れていた心が少し落ち着いた。
「………ごめんなさい。僕……ただ仲良くなりたくて……どうしても止められなくて……」
アピスの目元に浮かんでいた涙は完璧とも言えるタイミングがぽろぽろとこぼれ落ちた。
事情を知って動揺している生徒達もアピスの涙を見たら、可哀想だという気持ちが勝ってしまい、ブランソンに言い過ぎだぞと声をかける者が次々と現れた。
ここは俺が出て何か言うべきか悩んだが、とにかくこの場を収めないといけない。
やはり前に出ようとした俺の視界に、こういう時いたら頼りになる人が入ってきた。
「これはこれは……、少し騒ぎすぎではないですか?」
「ディセル様」
その場所だけ人波がサッと引いて、空色の髪を靡かせながら長男のディセルがゆっくりと近づいてきた。
「ディセル様、このアピスがイグニス様に無礼を…、こんなこと知ったらテラが傷ついて……」
すぐに気がついたブランソンが輪の中心に入ってきたディセルに必死に訴えた。
しかし、ディセルは口元に手を当てて静かにという動きをしてそれを制した。
「アピス、君のことですから、イグニスと仲良くしようとして、ちょっと過剰に近づいてしまっただけでしょう」
「うん……、怖いよディセル。僕、悪いことしていない」
「大丈夫ですよ。ブランソンこれくらいにしてあげてください。さぁ、皆の者もそれぞれ教室へお帰りください」
夢でも見ているのかと思った。
ディセルは自然にアピスに近づいてふわりと頭を撫でた後、おでこに口付けた。
声に出さずとも一瞬で動揺が広がって、誰もがその光景に唖然としていた。
「ディセル様……」
「ブランソン、二度目は言いません」
「………分かりました」
ディセルと目があった。
いつも俺と目が合うと、優しげに細められる目元が一切変わることなく、何の感情もなくスッとそらされてしまった。
どういうことだ……。
これは……いったい……。
ディセルがパンパンと手を叩くと、生徒達は蜘蛛の子を散らすようにそれぞれ教室へと戻っていった。
「大丈夫ですか? 教室まで私がお送りしましょう」
「うん…、ありがとうディセル」
ディセルが腕を出すとアピスは当然のようにそこに手を絡ませて、体重をかけるようなかたちになった。
そして俺やノーベンが言葉を失って見つめる中、アピスと二人一年の教室へ消えて行った。
「放課後、集合ね。ブランソンも分かった?」
ノーベンが告げた言葉にハッとして、俺はやっと立っていることに気がついた。
ブランソンも同じだったようで驚いた顔でこちらを見ていた。
「なんだよ。呼び出しておいてみんな黙りこくって」
放課後、二年の教室に俺とイグニス、ノーベンにブランソンが集まって四人で机を囲んだ。
他の生徒はすでに帰宅済みで、ドアも閉め切って秘密の会議が開かれていた。
俺とブランソン、ノーベンまで神妙な面持ちで腕を組んでいるので、一人状況が分からないイグニスは気持ちが悪いなと言って三人の様子を見比べていた。
「イグニス兄さん、当番で教室を出た時、アピスと何かあった?」
「げっ! 何でノーベンが知ってんだよ」
「そのことが問題の発端なの! 抱きつかれてキスされそうになったのは本当?」
「あっ……いや、その…、いきなり飛びついてきて、顔を近づけてきたから片手で押さえて振り払いはした……」
イグニスが気まずそうな顔で俺をチラリと見てきた。まあ、そんな流れだろうとは予想できた。
大丈夫だという意味を込めて、イグニスに視線を送った。
「……余計なことだとは思ったのですが、アピスの態度が気に入らなくて、すみません」
ブランソンは頭を下げて小さくなった。
俺は慌てて、謝らなくていいと言った。
「何言ってんだよ。嬉しかったよ、ブランソン。俺やイグニスのために怒ってくれて……。モヤモヤして苦しかったけど、ブランソンが怒っていたから、俺も冷静になれたし」
いまだ状況が分からなくて、目をパチパチしているイグニスに、一年の廊下であった出来事を話して聞かせた。
「なるほど……、いやブランソン。テラの言う通りだ。俺ももっと気を使えば良かった。お前まで巻き込んですまない」
「そっ…そんな、俺は全然…」
「まあ、問題なのはもうわかると思うけど、ディセル兄さんのことだよね。誰か何か聞いている?」
ノーベンの問いは、ディセルの態度が何か策があってのことだと言いたいのだろう。
みんな首を振っていて、誰もディセルから何も聞いていないようだった。
確かにディセルなら何か考えがあって急に態度を変えた可能性も考えられる。
「ディセルは昨日までアピスのことを避けていて、会っても逃げるようにしていた。それなのに、なんなのあれ! あの態度……。まさか、好きになっちゃいましたなんて言わないよね?」
「落ち着いてノーベン、ディセルのことだからきっと何かあるんだよ」
「何か考えてやってるならいいけど……。それより僕が今まで何をしていたか気になる? アピスと話しながら、アピスが何をしたいのか探っていたんだよ。明らかに怪しいからね、あの子」
さすが好奇心旺盛で一番勘の鋭いノーベンはすでに動いていたらしい。
懐から書類の束を取り出して、ボンと机の上に置いた。
「まず彼の家はフローラル家、かつてラギアゾフ家が王家への反逆罪で取り潰し寸前まで追い込んだ家だよ。その時は力を持つ者がいたおかげで、処分は免れた。けどその時の恨みをいまだに抱えているってのは有名な話だよ。それと、調べたところによると、アピスは最近、頻繁に第三皇子のルナリス様に手紙を送っている」
「へ?」
好き勝手が高じてついにノーベンの能力が開花したらしい。
机に置かれた書類には、かつてのフローラル家の所業、大人しく見えても今でも勢力を伸ばそうとしている様子、そしてアピスがルナリスに送った手紙の詳細まで調べられていた。
「全ては入手できなかったけど、内容はだいたい掴めた。まずは自分がペアであると明かして、利用価値があることをアピールしていた。後はだいたい、会いたい、仲良くしたいって内容だったね」
「なぜ…殿下にそんな手紙を……」
「婚約者になりたいからさ。国の皇子で婚約をされていないのはルナリス殿下だけだからね。第三皇子って位置もぴったり、狙い目なんでしょう。つまり、アピスはラギアゾフ家へ攻撃して、何かあっても安心の皇族と縁を作ろうとしている、僕はそう考えている」
椅子から崩れ落ちそうになった。
制作陣の設計図を初っ端から登場キャラに見抜かれてしまった。完璧な当たりではないがほぼ正解だ。
ノーベン、なんて恐ろしい子……。
俺がわなわなと震えていると、横に座っているイグニスはポンっと手を叩いた。
「なるほど、それなら色々と訳の分からない発言に説明がつく。アピスのやつ、他の兄弟が羨ましくないかとか、僕なら寂しさを分かってあげられるとか、やけに変に絡んできたんだ。あれは、俺達を仲違いさせて、喧嘩させようってことか」
「ただの喧嘩レベルじゃないよ。僕なんて家督を継ぐなら僕が一番合ってるなんて言われたからね。支えてあげようか、なんて……」
次々と主人公の選択肢が話題に上がっていく。確かそんな台詞付け加えたなというところをしっかりアピスはおさえてきていた。
しかしディセルは分からないが、ノーベンと、イグニスには響かなかったようだ。
「ディセルは……何を考えているんだろう」
まさか本当にアピスの甘言に乗せられてしまったというのだろうか。
心配になった俺の肩をノーベンがポンと叩いてきた。
「僕に任せて。証拠は揃ってきたし、そろそろ直接問いただしてみるよ」
「大丈夫か? 俺も……」
「ありがとうイグニス兄さん、でも大丈夫。まずは一対一で安心させて、追い詰めてみる」
気持ちいいくらい、ズバズバと主人公の動機まで当ててしまって、ノーベンは向かうところ敵なしというように見えた。
ノーベンなら大丈夫だろう。
きっとアピスにズバっと言ってくれて、ディセルも戻ってきてくれる。
俺はこの時、そんな風に思っていた。
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