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ブルーは魅惑的に微笑む
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ポッチャム帝国の大貴族であるプリンプ公爵家は、優れた弓騎兵を輩出し、帝国の戦いの歴史にに大きな功績を残した。それを象徴するように、弓の絵が家門の紋章となっている。
先代プリンプ公爵は三人の息子を呼びこう話した。
『一本の矢はすぐに折れるが、三本になると容易には折れない。お前たち三人は三本の矢となり、信頼関係を築き、公爵家を守っていくのだ』
どこかで聞いたような話だが、それはここがゲームの世界だからだ。
『帝国の野望』は、主人公が一国の主となり、国家の運営と大陸統一を目指す西洋風の歴史シミュレーションゲームだ。似たようなゲームがたくさんあった中で、西洋ファンタジー要素を含んでおり、異色、問題作、駄作などと呼ばれた作品だった。
三本の矢の話はその中に出てくる有力家臣の小エピソードで、飛ばして見ていたら、ほとんど記憶にすら残らない。それなのに一字一句覚えていたのは、プリンプ家のキャラクターに思い入れがあったからだろうか。
でもまさか、自分がゲームの世界に転生するなんて、夢にも思わなかった。しかも、あのプリンプ公爵家の問題児、次男のイシュマに転生し、三本の矢と呼ばれた兄弟の行く末を案ずる日が来るなんて。
思いもしなかった。
初めて二人に会った日のことを、今でも昨日のことのように思い出す。
兄のブルーノ、弟のユルビー。
知性的で優しい青い目をしたブルーノ、好奇心いっぱいで今にもこぼれ落ちそうな大きな赤い目をしたユルビー。二人とも同じ金色の髪に、白磁のような透き通った肌、人形のように綺麗な顔をしていた。
黒髪に黒目で、目立った特徴のない自分とは大違いで、同じ人間とは思えなかった。
「ブルーノは十歳でユルビーが八歳だ。イシュマは九歳だから、二人の真ん中、私の次男ということになるな」
プリンプ公爵が息子二人の背中を押すと、ブルーノがよろしくと言って手を差し出してきた。イシュマは恐る恐るその手に触れた。その瞬間、頭に雷が落ちたような感覚になり、イシュマは全てを思い出した。
ここは前世でやりこんだゲームの世界、そして自分は、ポッチャム王国を選択すると出てくる家臣のプリンプ公爵家、その次男イシュマに転生したのだと。
イシュマはプリンプ公爵の実子ではない。実の父は、公爵の護衛騎士をしていた。命を狙われた公爵を盾となって守り抜き殉職したのだ。母は体が弱く、イシュマが幼い頃に命を落としており、天涯孤独となってしまった。
そのことを不憫に思った公爵が、イシュマを養子にして引き取ることにしたのだ。公爵夫人はすでに病で他界しており、反対する者もいなかったのだろう。
ゲームの中では、ただ一人だけ本当の兄弟ではないと書かれていたが、そこに至るまでの話を実体験することになる。
前世の記憶は不鮮明で、学生をしていたくらいしか思い出せない。前世にやりこんだからだろうか、このゲームのことだけはしっかりと頭に入ってきた。
イシュマに転生したことを知り、衝撃と共に浮かんできたのは、大変な人になってしまったという感情だ。イシュマはただの名前ありモブではない。成長すると反皇帝派閥に加わり、クーデターを起こすのだ。もちろん皇帝(プレイヤー)に鎮圧され、主犯として呆気なく処刑される。皇帝はプリンプ公爵家に全責任を負わせ、ほとんどの財産を取り上げて臨時収入を得る。
国内統一を果たすイベントの一つ、という位置付けだ。自分に降り掛かる悲劇的な未来が頭を駆け巡り、イシュマは膝をついて泣き出した。
プリンプ公爵は君の父は立派な人だと言ってくれた。自分を心配そうに覗き込む、二人の顔をイシュマは忘れない。
前世の記憶と今世の悲しい記憶が入り混じり、壊れそうになった。その瞬間、イシュマの手を、両側からブルーノとユルビーがそれぞれ握ってくれた。
ありがとうと上手く言えなかったけれど、二人の手の温かさに心が軽くなったのを覚えている。
それが、ブルーノ、ユルビー、二人との出会いだった。
黒い雲に覆われた空。
冷たい雨が空から降り注ぐ。黒衣に身を包んだ者たちが墓石を囲む。皆、下を向き胸に手を当てていた。
髪も、服もしとどに濡れ、雨粒はいっそう重くなり、心の奥まで悲しみで満たしていく。
「……ごめんなさい」
雨音が全てをかき消していると思ったのに、背中に誰かが触れたのを感じた。
「どうして、イシュマが謝るの?」
ブルーノは耳がいい。名前を呼ぶと、どんなに遠くにいても駆けつけてくれる。今日のような雨の中でも、イシュマの呟きを聞き取ってくれた。
「……」
「イシュ、嵐に巻き込まれたせいでの事故だったんだ。誰のせいでもない」
イシュと名を呼ぶのはユルビーだけ。ブルーノの反対に側へ立ったユルビーが、同じように背中へ触れてきた。二人に両側から支えられて、イシュマは込み上げてくる思いに唇を震わせる。
守れなかった。
必ず守ると心に誓ったのに、止めることができなかった。
「うぅ……う、俺……、お父様……守れなかった」
「僕も同じだよ」
「ああ、俺だって一緒だ」
違う。
ここはゲームの世界。
イシュマは養父の死を知っていた。
ゲームではスタート時点で、すでに公爵は故人だった。公爵は天涯孤独となったイシュマを息子として迎え入れ、何不自由なく育ててくれた。
だからイシュマは、公爵の死を何としてでも止めようとしてきた。
ただ残念なことに、前公爵は不幸があり亡くなったとされ、死の時期や死因などが不明だった。断片的な情報しかなく、イシュマはあらゆる可能性を考えた。
口に入るものを徹底的に管理し、医師を常駐させて毎日診察をさせた。腕利きの護衛を揃え、邸内や移動の警備体制も問題がなかった。イシュマ自身も剣を学び、刺客の襲撃に備えた。かつて命を狙われた経験があるため、そのことに関連する何かが起きると思い込んでいた。
だが公爵は領地視察の帰り、嵐に巻き込まれて馬車が横転、全身を強く打って命を落とした。
ゲームの展開を変えるため、必死に動いてきたつもりだった。それなのに、大切な人を守ることができず、ゲームの流れを変えられなかった。
イシュマは自らの手を強く握り、悔しさに歯を食いしばる。涙よりも先に、唇から血が流れた。
「イシュマ、そんなに強く握ってはダメだよ。血が出ているじゃないか」
ブルーノがハンカチを唇に当ててくれる。濡れたハンカチに血が染み込んで赤く広がった。黒一色の世界だと、やけに鮮やかに見える。
「イシュは父さんのこと、人一倍大事にしていたからなぁ」
「本当にそうだったね。いつも心配していて……僕達も嫉妬しちゃうくらい」
「何を言って……二人の方が悲しんで……。俺に遠慮しないでいいよ。二人は本当の親子なんだか――」
「待って。それ以上言わないで。僕達は皆家族だよ。もちろん、イシュマも一緒。大事な家族だからね」
「ブルーノ……」
ブルーノの瞳の青が濃くなり、強い視線が注がれる。血の繋がりがないことを理由に身を引こうとすると、いつも二人に止められた。二人が家族だと言ってくれるのは嬉しい。一方で別の視線が自分に注がれていることにも気づいている。
家門の親戚達からの視線だ。
そこには、アレはどうするつもりだろう、という意味が込められていた。
ブルーノは今年二十歳になった。国の政務に携わりつつ、父の下で領地の運営を学んできた。若くして様々な事業で利益を出しており、国中から注目の的となっている。スラリとした長身で程よく筋肉のついた体格、色白で整った顔に空のように澄んだ美しい青の瞳、肩まで伸びた髪をゆるく結んだ優美な佇まい。どこから見ても完璧な美を誇っており、心を奪われない者はいないと言われている。
ユルビーは十八になり、貴族学校を出て成人を迎えたばかり。顔はブルーノとよく似ているが、少し背が高い。赤い瞳は生気に満ち溢れ、鍛えられた逞しい体をしている。在学中から帝国騎士団に所属が決まっており、すでに現役の騎士を倒せるほどの腕前を持っている。
見た目はもちろんのこと、その活躍ぶりだけでも、二人が兄弟だと分かる。
一方、イシュマは公爵を守ろうと剣を学んだが、体格に恵まれなかった。実の父は騎士として優秀だったが、イシュマは容姿も、体格も母に似てしまったらしい。二人より背が低く、訓練をしても筋肉のつかない細い体つきであった。
貴族学校を卒業後、何度か試験を受けて帝国騎士団に入ることができたが、主に事務方の仕事を任されている。
公爵が亡くなり、次期公爵位はブルーノが継ぐことになる。親戚達は血の繋がりのない人間が、公爵亡き後も家に残り続けることをよく思っていない。
公爵に直接、成人したら外へ出すべきだと進言していたのを何度も見てきた。公爵がそんなことは絶対にしないと言ってくれたのを、そっと聞きながら、イシュマは安堵していた。
ブルーノとユルビーは、自分のことをどう思っているのか不安に襲われる時がある。二人とも優しいが、その優しさがいつまで続くのかという不安。あまりに自分と違いすぎる、才能溢れた兄弟の側で育ち、イシュマは暗い思いを心の中に抱えて生きてきた。
その不安の根元には、やはりゲームの世界が関わってくる。自らの未来を変えるため、イシュマは努力をしてきた。
ゲームの中のイシュマが、反乱軍として争いに身を投じたのにはワケがある。ゲーム内のイシュマは、父の死が公爵のせいだと思い、密かに恨んでいた。
兄弟として迎え入れられたが、兄と弟とは打ち解けることなく、貴族の暮らしだけを享受する。三本の矢の話を聞いた時も、いつか壊してやろうと反抗心を持ち続けた。
やがて公爵が亡くなり代替わりした後、働くこともなく遊び続けて公爵家の財産を湯水のように使い込む。そのことを咎められ、反皇帝派の集会へ参加するようになる。そして、反乱を起こし、国を乗っ取ろうと企むが失敗するという流れだ。
流れ通り進んだら、自分は処刑されることになる。それだけは避けるため、イシュマが取り組んだのは、家族の一員として認めてもらうことだった。特に、ブルーノとユルビーとは、絶対に仲良くなってみせると意気込んだのだ。
二人とも思っていたより優しくて気さくな性格だったため、それほど苦労せずに仲良くなることができた。
ゲーム通り、公爵から三本の矢の話を聞いた時、イシュマは二人の手を取り、これで折れないねと見本のようにして見せた。和やかな空気が流れ、幸せな気配に包まれた。
これで間違いなく、完全にゲームの流れとは違うものになった。
流れを変えたことで、何かしらの制裁が待ち受けているかもしれない不安は残る。
大丈夫、きっと上手くいく、そう信じようとした。
だが結局、公爵の死を変えることはできなかった。
葬儀は冷たい雨の中執り行われた。夜になり重要な話は後に回し、それぞれが帰宅の途につく。イシュマは長時間冷たい雨に打たれたため、邸に戻るとすぐに用意されていた温かい湯へ浸かった。
湯上りに寝巻きのガウンを羽織ったイシュマは、姿見の前に立ち布で髪を丁寧に拭いていく。貴族の令息なら侍女に任せるようなことだが、イシュマは他人に触れられるのが苦手なため、身の回りのことは自分でこなしている。
鏡の中の自分と目が合うと、胸に苦いものが広がった。平凡な黒髪に黒目、秀でたところのない地味な顔立ちに見える。男らしい勇ましさとは無縁で、公爵には年々母親に似てきたなとよく言われた。
特徴と言えば、両目の下に付いたホクロくらいだ。涙ホクロと呼ばれ、あまりいい意味ではないとされる。それが左右の目尻にあることが、悲運な人生を感じさせていっそう気分を重くする。
ブルーノやユルビーのような圧倒的に美しい人から比べたら、自分など木の棒にしか見えないと思う。
だが、こういう顔が好きという物好きな人間もいるらしい。
イシュマは子供の頃、何度か誘拐されそうになったことがある。町で道を尋ねられて、案内をしていたら物陰へ引き込まれ、男の使用人からは袋へ入れられて、どこかへ連れて行かれそうになった。
どちらもブルーノとユルビーが気づいて助けてくれた。どこか傷つけられたり、手を出されたりしたわけではないが、それ以来他人の手が怖くなった。ブルーノとユルビーだけは別だ。助け出された時も、二人に抱きついて大泣きした。他人は嫌だが二人に触れられると、心から安堵し救われた気持ちになる。
「でも……もうそろそろ、ちゃんとしないとな……」
イシュマは、鏡の中の自分に向かってそう呟いた。公爵が亡くなった今、やはり自分は出ていくべきなのではと思い始めている。ゲームの強制力など信じたくないが、このままここにいたら、二人の足を引っ張ることになるかもしれない。
それでなくとも、ブルーノもユルビーもあんなにモテるのに、浮いた噂が一つもないのだ。三本の矢として公爵家を守っていくために、二人には幸せになってもらいたい。良い女性ができても、血の繋がりのない人間が側にいることで、相手の家が不満を言う可能性がある。貴族が血の繋がりや、体面を気にすることはよく知っていた。
迷惑をかけないためには、距離を置く必要がある。
騎士団の宿舎は邸から近いので、申請すればすぐにでも用意してもらえるだろう。
「やっぱり俺は……」
そう言いかけた時、カタンと扉の開く音がした。
「イシュマ? 何度もノックしたけど……大丈夫?」
「ブルーノ! ご、ごめん。考えごとしていて気づかなかった」
雨はいつの間にか上がり、部屋の中を月明かりが照らしている。ブルーノはランプを手に持ち、音もなく部屋の中へ入ってきた。寝巻き姿のブルーノが、夜に訪ねてくるなんて珍しかった。何かあったのかと、イシュマは小走りで駆け寄る。
「寝るところだった? 悪いね」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「……少し、イシュマと話がしたくてさ」
ブルーノの悲しげな微笑みを見たイシュマは、ハッとして息を呑む。
いつも誰よりも冷静で頼りになるブルーノだが、時々イシュマにだけは、弱いところを見せてくれた。ブルーノは父親を亡くしてから、公爵家の長男として、悲しむ暇もなく動いていた。
こんな時に自分のことばかり考えていたと、イシュマは恥ずかしくなる。
「何も手伝えなくてごめん。大変だっただろう?」
イシュマがそう言うと、ブルーノは小さく笑い首を振った。
「いいんだ。家のことは任せてくれていい。それよりもイシュマと話す時間が、少なくなるのが辛い」
「そんな……、話くらいいつだって……。日中時間がなければ、今みたいに夜訪ねてきてくれてもいいし、お酒は苦手だけど、飲みたい時は付き合うよ」
イシュマは努めて明るく答えた。公爵の死で邸の中は暗く沈んでいる。自分ができることといえば、みんなを励ますくらいだ。
「ふふっ、ありがとう。イシュマは変わらないね。ずっとそのままで……、いつまでも僕の可愛いイシュマでいて」
「……う、うん」
ブルーノは兄としての意識が強いのか、イシュマのことをまだ子供扱いしてくる。成長した今でも可愛いと言ってくるので、反応に困ってしまう。
目を泳がせていると、クスッと笑ったブルーノがイシュマの頭を撫でてきた。
「イシュマにお願いがあるんだ」
「お願い? いいよ、なんでも言って」
ブルーノには助けてもらってばかりなので、力になりたいと思っていた。ゆっくり近づいてきたブルーノは、イシュマの耳元に口を寄せる。
「一緒に寝たい」
「え? 一緒にって……」
「子供の時みたいに。いいよね?」
「だっ……、だってもう……」
もう大人だ。
そう言おうとしてイシュマは口を噤んだ。
プリンプ邸に来たばかりの頃、ゲームの記憶が悪夢となり毎晩泣いて起きた。不安的なイシュマに寄り添ってくれたのは、ブルーノとユルビーだった。
ある夜はブルーノが、またある夜はユルビーが、そして時には二人でイシュマをはさんで一緒に寝てくれた。そのおかげで悪夢から解放され、未来を変えようと強い気持ちになれた。
ブルーノは父を失ったばかり、精神的に追い詰められて眠れずに苦しんでいる。今度は自分が支えるだと、イシュマはブルーノの手を取った。
「いいよ。少し狭いけど、俺のベッドでいい?」
「いいの?」
「もちろん。一緒に寝よう」
ゲームの世界とは違い、兄と弟とはいい関係を築くことができた。公爵を失ってしまったのは悔しいが、兄と弟の幸せは自分が守りたい。
「ありがとうイシュマ、嬉しいよ」
「わっ」
よほど嬉しかったのか、イシュマを抜かしてブルーノが先にベッドへたどり着く。ブルーノに手を引かれ、イシュマはベッドに転がった。
「今日は一日中濡れていたから、寒かったよね。ほら、おいで」
横に寝転んだブルーノが手を広げてくる。少し迷ったイシュマだったが、ゆっくりと移動してブルーノの懐に潜り込んだ。すぐにふわりと抱きしめられ、冷えていた体が温かくなっていく。
「イシュマは柔らかいね。いい匂いがする」
ブルーノの匂いに包まれると、途端に眠気が襲ってきた。温かくて気持ちいい。少し躊躇いがあったが、抱きしめられたら、あまりの心地良さに体の力が抜ける。なぜ今までこうしてもらわなかったのか、という思いが頭を占めていく。
「イシュマはお父様をいつも心配していたよね。近くへ出掛けるだけでも、護衛だ医者だって大騒ぎして……」
「……うん」
「それを見る度に、羨ましいと思っていたんだ」
「羨ましい? 心配してもらいたい、ってこと?」
「そうだよ」
ブルーノは令嬢達から、氷の貴公子と呼ばれている。いつも冷たい表情をしているからだそうだ。普段のブルーノを知るイシュマには理解できなかった。彼女達がこんな風に甘えているブルーノを見たら、失神してしまうだろう。
クスッと笑ったイシュマは、ブルーノの頭をボンボンと撫でる。
「心配するって。当たり前だよ、大切な家族なんだから」
明るく笑って見せると、ブルーノはイシュマの胸に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめてきた。
「ブルーノはいつも頑張り過ぎだよ。時には力を抜いた方がいい。人に甘えるってことを知らないと」
「え? イシュマにもっと、甘えていいの?」
「ええと……まぁ、うん」
周囲との関係について触れたつもりだったが、ブルーノが嬉しそうに笑うので、はっきりしない返事になる。後でいくらでも修正できるだろうと思ったイシュマは、ブルーノの頭を撫でながら、重くなった瞼を閉じた。
「お休み、イシュマ」
「う……ん、兄さんも……」
柔らかな温かさに包まれ、悲しみの日は幕を閉じる。
ここがゲームの世界だということは、誰にも話せなかった。変なことを言っていると思われて、公爵家から追い出されるのを恐れていた。
そして今は、なぜ、公爵を守ることができなかったのだと、二人から責められるのを恐れている。
何となくだが、前世も家族から見放され、寂しい人生を送っていたような気がする。
イシュマは、転生してようやく手に入れた家族の温もりを離したくなかった。
「いつもの光景だな」
「いや、学生服から騎士服に変わった。イシュマ、お迎えだぞー」
そろそろかと思っていたので、名前を呼ばれたイシュマは、書類を整理する手を止めた。
顔を上げると、同僚が指摘した通り、学生服から騎士服に変わったユルビーの姿が見えた。イシュマの勤める騎士団文書課は、騎士団本部の二階にあり、大きな窓から建物の入り口の様子がよく見える。
「すみません、残りは明日片付けます」
「おー、早く行ってやれ。第一騎士団期待の新人をお待たせしたら、俺が怒られちまう」
ガハハハと大口を開けて笑う上司に頭を下げ、イシュマは荷物をまとめて部屋を出た。
貴族学校を卒業したユルビーは、第一騎士団に所属することになった。優秀生の中でも選りすぐりの腕を持った者だけが入団を許される。ユルビーは期待の新人と呼ばれ、どこへ行っても注目の的だ。
「ユルビー、お待たせ」
イシュマが階段を駆け下りて手を振ると、ユルビーも軽く手を上げる。もう何度この光景を見たか分からない。学生時代は校門で、勤めだしてからは騎士団本部の前までユルビーが迎えに来てくれる。
ブルーノはイシュマが心配性のように言っていたが、真の心配性はこの男だと思う。
「そんなに待っていない。こっちも訓練の後、挨拶回りをさせられて、今着いたところだ」
同僚によるとイシュマが会議をしていた三十分前から待っていたらしい。相変わらず嘘が下手だなと思いながら、背の高いユルビーを見上げた。出会った頃は自分より小さかったのに、いつの間にか抜かされてしまい、もう追いつけない高さまで行ってしまった。
「何だ? 顔に何か付いているか?」
「うーん、顔じゃなくて肩かな。葉っぱが乗っている」
手を伸ばして、ユルビーの肩に乗った葉を払い落とす。長く待っていたことがバレバレで、ユルビーは何とも気まずそうな表情になる。昔からどこか抜けていて、そんなところが可愛いなと思ってしまう。
背が高く逞しい体のユルビーは、どこにいても目立つ。通りかかった人達からの視線を感じ、イシュマは下を向いた。
「ユルビー、あのさ……」
「何だ?」
もう待たなくていいよ。
そう言おうとして、言葉が続かない。
昔、町で誘拐されそうになった時、イシュマははぐれてしまったユルビーのことを探していた。ユルビーは自分のせいでイシュマが怖い目に遭ったと思い、その時のことをずっと悔やんでいる。
心配して迎えに来てくれるのは、その時の後悔からきているのだと分かっている。ユルビーにだって付き合いがあるはずだ。いつか解放してあげないといけない。そう思うのに、ユルビーの優しさが嬉しくて、言い出せずにいる。
「書店に寄ってから帰っていい? 好きな作家の新刊が出たんだ」
「ああ、いいぞ。俺が買ってやる」
「あっ、初任給が出たから浮かれるな。悪いけど、団員の給与管理は俺の仕事だから、いくら出たかも知っているんだからね。すぐに使わないでしっかり貯めなさい」
兄の顔をして肩を叩くと、参ったなと言ってユルビーは目を細めて笑った。赤い瞳は印象が強いので、怖いと言う人もいる。だけどイシュマにとってユルビーは、優しくて頼もしい可愛い弟だ。ブルーノとはまた違う、ふざけたやり取りができるのもユルビーだけ。
「ぼけっとしてんなイシュ。置いていくぞ」
「あー、ユルビー! 待て。待てってばー!」
こんな時間がいつまでも続けばいいのに。
そう思いながら、イシュマはユルビーの背中を追いかけた。
イシュマお気に入りの書店は町外れにある。
中心部の書店街とは違い、人も少なくてじっくり見て回れるのが利点だ。
書店の前に到着したが、ユルビーは馬車の中で腕を組んだまま寝てしまい起きる気配がない。慣れない環境で訓練の疲れが出たのだろう。御者に声をかけ、イシュマは一人で馬車を下りた。今日は目的の本が決まっているので、すぐに買って戻ればいい。そう思いながら店の中へ入る。
入口近くで店の主人に挨拶をして、お目当ての本を手に取る。ふと店の奥が気になり、天井高く連なった本棚の間を進んだ。埃っぽい匂いが鼻につく。店の奥に積み上げられていたのは歴史書だった。
「帝国史百年、か……」
一番上に積まれていた本の題名に目が留まる。まるでゲームの世界を表すようなタイトルだった。
『帝国の野望』は単純に言うと、君主となったプレイヤーが、一つの国を百年間統治する。一年は一時間ほどで終わり、計算上は百時間プレイするスタイルだった。野望というほど戦争に明け暮れるゲームではなく、国内の統治が主だったと記憶している。他国と戦争をするにはお金や人、たくさんの物資が必要となる。得るものは大きいが、失うものも大きい。そのため、よほど余裕があり万全の状態でなければ、他国へ侵略する選択肢は選ばなかった。
ポッチャム帝国はここ数十年大きな戦争をしていない。国境での小競り合いや、民の暴動などはあったが、今のところ平和な状態が続いている。そう考えると、自分のような転生者がプレイしている世界と考えることもできるが、上手く統治できていると言える。
だがゲーム内では、皇帝反対派の派閥があり、それは実際に存在している。ゲームのイシュマはそれに関わったことで処刑される。
ブルリと震えたイシュマは、本の上に置いていた手を離した。
「歴史に興味がおありですか?」
「え?」
突然背後から話しかけられ、イシュマは驚きで息を吸い込む。馴染みの店主の声ではない。恐る恐る振り返ると、細目で人の好さそうな顔をした若い男が立っていた。身なりは清潔で悪くないが、高級そうな物を身に着けてはいない。貴族ではなさそうだと思った。
「驚かせてしまいましたね。あまり熱心に見てらっしゃるから気になりまして」
「そうでしたか。興味というか、考え事をしていたのでそのせいかと」
知らない人間と話すのは緊張してしまう。俯きながら答えたイシュマは、頭を下げて男から離れようとした。
「急ぐので、失礼します」
「無理もない。大事な人を亡くしたばかりだ。悲しみで頭が染まってしまうこともあるでしょう」
「貴方は……」
通り過ぎようとするイシュマに、男はお構いなしに話しかけてきた。そして男の話にイシュマの足は止まる。明らかに自分を知っていて、話しかけてきたからだ。
「申し遅れました。私、ロイド社で記者をしているドレイクと申します」
「ロイド社……貴族向けのゴシップ誌の……」
「ご存知でいらっしゃるのですね。それは光栄です」
「……話すことなどありません」
「それは残念、でもこれを聞いたらどうですか? 貴方がとても慕っていらした、お父様のプリンプ公爵ですが、実は息子に殺されたという話があるのです」
振り切って走り出そうとしたイシュマの足が再び止まる。聞き捨てならない話に、怒りが湧いてきた。
「何てことを言うんだ! 父は不幸な事故に遭った。父の死を記事のネタにして面白おかしく書くつもりか!?」
「そんな滅相もない。私はイシュマさんの味方なのです。お兄様のブルーノ氏、弟のユルビー氏、二人か、またはそのどちらかが、次に貴方の命を狙っているとしたら? この話を最後まで聞きたくないですか?」
「なっ!?」
ありえない話を囁かれ、イシュマはわなわなと口を震わせる。そんなバカな話があるはずがない。そう叫びたいのに、動揺しすぎて声が出てこない。
「歴史書より、ご興味がおありでしたら、ぜひこちらにご一報ください」
そう言って記者のドレイクという男は、立ち尽くしているイシュマの手に連絡先を書いたメモを握らせた。
ドクドクと心臓の音が鳴り、頭が真っ白になって何も考えられない。いつの間にかドレイクの姿は消え、古びた書店の中に、イシュマだけが取り残されていた。
手の中からポトリとメモが落ちて床に転がる。そのメモを見つめたイシュマは、胸騒ぎがして胸に手を当てた。
「今日、書店に行ったんだって?」
ブルーノの声にイシュマはビクッと肩を震わせる。思わず手からこぼれたナイフが床に落ちた。
「新しい物を用意して」
ブルーノの指示に素早く動いた使用人が、新しいナイフをイシュマに手渡してきた。イシュマはありがとうと言って受け取り、動揺を悟られないように口元に笑みを浮かべた。
「そうなんだ。ほら、冒険記の新刊が出たからさ」
「ああ、イシュマはあの本が好きだったね。紹介したのは僕だから、気に入ってくれて嬉しいよ」
大丈夫、大丈夫。頭の中で繰り返して、イシュマは料理を口に運ぶ。今日の夕食は、好きな物ばかりのはずなのに、どれも味がしない。
対面の席に座るブルーノは、イシュマの様子をジッと見ながら、ワイングラスを傾けた。
「ユルビーは? 下りて来ないの? 夕食はいつも先に来てたくさん食べるのに」
「厳しい訓練だったみたいだし、あれで繊細なところがあるから、新しい環境に気疲れしたみたいだね。食事は部屋で済ませたから今日はもう寝るって」
「そ……そうか。馬車の中でも寝ていたから、よほど疲れたんだね」
「寝ていた?」
ブルーノの声色が変わり、イシュマは肉を切っていた手を止める。マズいことを言ってしまったかもしれない。ゆっくり顔を上げると、ブルーノは無表情でグラスの中に視線を落としていた。
「イシュマの迎えを頼んているのに、居眠りをするなんて最低だね」
「ユルビーは疲れていたんだよ。それくらいで……」
「自分が送迎をやるって言ったのはユルビーだよ。後でキツく言っておかないと」
部屋の温度が一気に冷えて、状況を察した使用人達が食堂を出ていく。ブルーノは暴力を振るうことはないが、他人に厳しいところがある。弟でもイシュマに対しては優しいのに、ユルビーに厳しく当たる。椅子から立ち上がったイシュマは机を回り、ブルーノの側へ駆け寄った。
「喧嘩なんてしたら、父さんが悲しむ。居眠りくらい誰だってする。俺はもう大人だし、大丈夫だよ。心配しないで」
ブルーノの肩に手を置き、安心させるように指を動かす。そうすると、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じた。
「そうだね。イシュマの言う通りだ。うるさく言うのはやめておくよ」
「よかった」
二人に何かあればこうやって、自分が間に入ってきた。あの記者が言っていたことを思い出す。責任感の強いブルーノが父親を殺すなどありえない。ましてや、次に自分を殺そうとしているなんて……。
「イシュマ?」
「え、あ、ああ」
「大丈夫? 考え事?」
「俺も疲れたみたい」
何を考えていたのか、誤魔化すようにイシュマが笑うと、開いた口の中にブルーノが何かを入れた。
「ん、何これ……あまっ、キャンディ?」
「そうだよ。元気がないみたいだからさ」
「まったく……もう子供じゃないのに」
ブルーノがくれたキャンディは、口の中でコロコロと転がり、甘さを振り撒いていく。キャンディなんてもらって喜ぶのは子供だけだと思ったが、胸がくすぐったくなり嬉しくなる。
「部屋に戻るよ。ブルーノはゆっくり食べて」
「ああ、そうする。お休み、イシュマ」
ブルーノはにっこりと微笑んで軽く手を挙げた。キャンディよりももっと甘い微笑に、胸がドキリと鳴る。
何だか、今日はブルーノの顔がやけに色っぽく見えてしまい、心臓がトクトクと揺れる。イシュマは小さく首を振り、食堂を後にした。
自室に戻ったイシュマは、寝巻きに着替えてベッドに座った。色々あって今日は本当に疲れを感じる。
「キャンディって、こんなに甘かったかな」
元々甘いものが好きではなく、お菓子の類は食べなかった。だけど公爵が時々、ご褒美だよと言って書斎に置いてあるキャンディをくれることがあった。
そのキャンディだけは好きで、ご褒美をもらうために勉強を頑張ったのを思い出す。懐かしさに目頭が熱くなった時、体の中心にも熱を感じて息を呑む。
「え……嘘、だろう……」
気づいてしまうと、その熱はどんどん広がっていく。ムクムクと下穿きが膨らんでいくのを見て、イシュマは額に手を当てる。
「はぁ……こんな時に、俺は何を……」
疲れが溜まりすぎたのか。そういえば、自分で処理したのは随分前だったことを思い出す。養父の死からそれほど時間が経っていないのに、不謹慎だと思い息を吐いた。
寝てしまおうかと思ったが、ソコは大きく張り詰めて萎える気配を見せない。こうなったら処理した方が早いので、イシュマはベッドへ転がった。
下穿きをズラして自身を取り出すと、反り返るほど勃っており、すでに先端から滴を垂らしていた。
「はぁ…………う…………うん…………ぁぁ」
いつも適当に擦っていれば、すぐに上り詰めて達する。それほど時間はかからないのに、今日はなぜか、どんなに扱いてもなかなかイケない。
「ん……ど、……して……」
『コンコン』
「――!?」
ノックの音がして、イシュマはベッドから飛び起きた。
「イシュマ? 苦しそうな声が聞こえたけど、大丈夫?」
ブルーノだ。様子がおかしいから心配して見に来てくれたかもしれない。急いではだけていた衣服を合わせてベッドの乱れを直す。
「へ、平気、大丈夫!」
「入るよ」
「ま、待って」
ダメだという前に、ブルーノはドアを開ける。大丈夫と言いながら、部屋の中へ入って来てしまった。
「寝ていた? 髪がぐちゃぐちゃだ」
「う、うん。寝てて……んっ」
ブルーノは心配そうな顔をして、イシュマの隣に座った。体が敏感になっており、ベッドの揺れだけで感じてしまう。
「熱かな? 顔が赤い。おでこに触らせて」
「まっ、待って、本当にだっ……あぁっ」
ブルーノがおでこを合わせてきた。衣服の下でソコがピクッと揺れ、艶のある声を漏らしてしまう。
「イシュマ……? もしかして……?」
「い、言わないで。疲れて……その……自分で……」
「ああ、そうか。邪魔をしてしまったね」
男同士で義理とはいえ、兄弟のこんな場面を見るなんて気持ちが悪いだろう。ベッドで体を丸めたイシュマは、ブルーノに背を向ける。
出ていってくれるはずと思ったのに、ベッドの軋む音がして、背中が温かくなる。
「ブルーノ? な、何を……?」
「ん? 一緒に寝ようと思って」
「ええ!?」
「甘えていいって、言ってくれたでしょう?」
それはそうだが、今はどう考えてもおかしい。ブルーノは空気の読めない男ではないはずだ。
「あ、あまり、くっ付かないで」
「どうして?」
「だっ……あ……あっ、だめっ」
背中をブルーノの手が滑っていく。体が敏感な状態は続いていて、触れられただけで声が出てしまう。
「可愛い……大丈夫だよ。僕に任せて」
「う……嘘……そんなっ」
後ろから抱きしめられている状態で、ブルーノの手が下半身に落ちていく。熱くなったソコに触れてきたので、イシュマはビクッと身を震わせた。
「男同士での抜き合いくらい、貴族学校では普通だったよ」
「え?」
「僕はやっていなかったけど、多感な時期で、ほら、男子しかいないしさ」
「で……でも、あっ」
「イシュマは疲れているんでしょう? 僕が介抱してあげる」
「まっ、まっ……て、あっ……んんっ」
本当にそんなことがあったのか。元平民だったこともあり、貴族学校でイシュマには友人ができなかった。いつも一人で行動していたので、そんな馴れ合いが普通に行われていたなんて知らなかった。
「うぅ……う……んっぐっ……」
「先っぽから溢れてきた。随分シテなかったの? あ、ほら、唇を噛んだらダメ」
「んっ……んんっ――ああっ!」
声が漏れないように口に力を入れていたが、そこにブルーノのが指を入れてきた。噛むことができず、だらしなく口を開けると、大きな声が出てしまった。
達そうになったが、鈴口を掴まれてイケなかった。吐き出すことのできない快感が身体中を駆け巡る。頭の中まで溶かされて、どこもかしこも熱くてたまらない。
「どうしたの? イシュマ? 何でも言ってごらん」
「あ……う……た、い……あっん、イき……たい」
「いい子だ。すごいよ、裏筋がドクドク脈打ってる」
「んんっ――あっ、んんっ!」
ブルーノは先走りを指に絡めて、根本からゴシゴシと扱いてきた。脳天を直撃する快感に身を捩らせ。イシュマは嬌声をあげる。
「だっ……め、イッ……イっちゃう」
「いいよ。好きなだけ出して」
「あっあっあっ、イッ、クッ……んん――!!」
一番大きな波に飲み込まれ、イシュマは欲望をたっぷりと吐き出した。大量の白濁がシーツの上に勢いよく飛び飛び散る。出し切ったというのに、まだ終わることのない快感に体は熱くなるばかりだ。
「あれ、まだ足りないのかな」
「はぉ……はぁはぁ……ハァ……ん、もっ……もっと」
「ん? どうしてほしい?」
チュッと音がして、ブルーノが目の下にキスを落としたのが分かった。ぼんやり見つめると、ブルーノは美しく微笑んだ。
その微笑みに導かれるように、イシュマは唇を震わせる。
「ほし……ほしい、きもちいい……もっと欲しい」
「いいよ、いくらでも。イシュマが満足するまで、可愛がってあげる」
あぁ嬉しい。
兄の手でイカされることが嬉しいなんて、ありえないことなのに、頭の中はすっかり染まってしまった。
次々と襲いくる快感の波をどうにかしてほしい。
触れてほしい。
ソコだけじゃなく、もっと奥まで……。
理性はとっくにどこかに消えてしまった。
青い瞳に魅入られたイシュマは、懇願しながら、ブルーノの白くて長い指に体を擦り付けた。
先代プリンプ公爵は三人の息子を呼びこう話した。
『一本の矢はすぐに折れるが、三本になると容易には折れない。お前たち三人は三本の矢となり、信頼関係を築き、公爵家を守っていくのだ』
どこかで聞いたような話だが、それはここがゲームの世界だからだ。
『帝国の野望』は、主人公が一国の主となり、国家の運営と大陸統一を目指す西洋風の歴史シミュレーションゲームだ。似たようなゲームがたくさんあった中で、西洋ファンタジー要素を含んでおり、異色、問題作、駄作などと呼ばれた作品だった。
三本の矢の話はその中に出てくる有力家臣の小エピソードで、飛ばして見ていたら、ほとんど記憶にすら残らない。それなのに一字一句覚えていたのは、プリンプ家のキャラクターに思い入れがあったからだろうか。
でもまさか、自分がゲームの世界に転生するなんて、夢にも思わなかった。しかも、あのプリンプ公爵家の問題児、次男のイシュマに転生し、三本の矢と呼ばれた兄弟の行く末を案ずる日が来るなんて。
思いもしなかった。
初めて二人に会った日のことを、今でも昨日のことのように思い出す。
兄のブルーノ、弟のユルビー。
知性的で優しい青い目をしたブルーノ、好奇心いっぱいで今にもこぼれ落ちそうな大きな赤い目をしたユルビー。二人とも同じ金色の髪に、白磁のような透き通った肌、人形のように綺麗な顔をしていた。
黒髪に黒目で、目立った特徴のない自分とは大違いで、同じ人間とは思えなかった。
「ブルーノは十歳でユルビーが八歳だ。イシュマは九歳だから、二人の真ん中、私の次男ということになるな」
プリンプ公爵が息子二人の背中を押すと、ブルーノがよろしくと言って手を差し出してきた。イシュマは恐る恐るその手に触れた。その瞬間、頭に雷が落ちたような感覚になり、イシュマは全てを思い出した。
ここは前世でやりこんだゲームの世界、そして自分は、ポッチャム王国を選択すると出てくる家臣のプリンプ公爵家、その次男イシュマに転生したのだと。
イシュマはプリンプ公爵の実子ではない。実の父は、公爵の護衛騎士をしていた。命を狙われた公爵を盾となって守り抜き殉職したのだ。母は体が弱く、イシュマが幼い頃に命を落としており、天涯孤独となってしまった。
そのことを不憫に思った公爵が、イシュマを養子にして引き取ることにしたのだ。公爵夫人はすでに病で他界しており、反対する者もいなかったのだろう。
ゲームの中では、ただ一人だけ本当の兄弟ではないと書かれていたが、そこに至るまでの話を実体験することになる。
前世の記憶は不鮮明で、学生をしていたくらいしか思い出せない。前世にやりこんだからだろうか、このゲームのことだけはしっかりと頭に入ってきた。
イシュマに転生したことを知り、衝撃と共に浮かんできたのは、大変な人になってしまったという感情だ。イシュマはただの名前ありモブではない。成長すると反皇帝派閥に加わり、クーデターを起こすのだ。もちろん皇帝(プレイヤー)に鎮圧され、主犯として呆気なく処刑される。皇帝はプリンプ公爵家に全責任を負わせ、ほとんどの財産を取り上げて臨時収入を得る。
国内統一を果たすイベントの一つ、という位置付けだ。自分に降り掛かる悲劇的な未来が頭を駆け巡り、イシュマは膝をついて泣き出した。
プリンプ公爵は君の父は立派な人だと言ってくれた。自分を心配そうに覗き込む、二人の顔をイシュマは忘れない。
前世の記憶と今世の悲しい記憶が入り混じり、壊れそうになった。その瞬間、イシュマの手を、両側からブルーノとユルビーがそれぞれ握ってくれた。
ありがとうと上手く言えなかったけれど、二人の手の温かさに心が軽くなったのを覚えている。
それが、ブルーノ、ユルビー、二人との出会いだった。
黒い雲に覆われた空。
冷たい雨が空から降り注ぐ。黒衣に身を包んだ者たちが墓石を囲む。皆、下を向き胸に手を当てていた。
髪も、服もしとどに濡れ、雨粒はいっそう重くなり、心の奥まで悲しみで満たしていく。
「……ごめんなさい」
雨音が全てをかき消していると思ったのに、背中に誰かが触れたのを感じた。
「どうして、イシュマが謝るの?」
ブルーノは耳がいい。名前を呼ぶと、どんなに遠くにいても駆けつけてくれる。今日のような雨の中でも、イシュマの呟きを聞き取ってくれた。
「……」
「イシュ、嵐に巻き込まれたせいでの事故だったんだ。誰のせいでもない」
イシュと名を呼ぶのはユルビーだけ。ブルーノの反対に側へ立ったユルビーが、同じように背中へ触れてきた。二人に両側から支えられて、イシュマは込み上げてくる思いに唇を震わせる。
守れなかった。
必ず守ると心に誓ったのに、止めることができなかった。
「うぅ……う、俺……、お父様……守れなかった」
「僕も同じだよ」
「ああ、俺だって一緒だ」
違う。
ここはゲームの世界。
イシュマは養父の死を知っていた。
ゲームではスタート時点で、すでに公爵は故人だった。公爵は天涯孤独となったイシュマを息子として迎え入れ、何不自由なく育ててくれた。
だからイシュマは、公爵の死を何としてでも止めようとしてきた。
ただ残念なことに、前公爵は不幸があり亡くなったとされ、死の時期や死因などが不明だった。断片的な情報しかなく、イシュマはあらゆる可能性を考えた。
口に入るものを徹底的に管理し、医師を常駐させて毎日診察をさせた。腕利きの護衛を揃え、邸内や移動の警備体制も問題がなかった。イシュマ自身も剣を学び、刺客の襲撃に備えた。かつて命を狙われた経験があるため、そのことに関連する何かが起きると思い込んでいた。
だが公爵は領地視察の帰り、嵐に巻き込まれて馬車が横転、全身を強く打って命を落とした。
ゲームの展開を変えるため、必死に動いてきたつもりだった。それなのに、大切な人を守ることができず、ゲームの流れを変えられなかった。
イシュマは自らの手を強く握り、悔しさに歯を食いしばる。涙よりも先に、唇から血が流れた。
「イシュマ、そんなに強く握ってはダメだよ。血が出ているじゃないか」
ブルーノがハンカチを唇に当ててくれる。濡れたハンカチに血が染み込んで赤く広がった。黒一色の世界だと、やけに鮮やかに見える。
「イシュは父さんのこと、人一倍大事にしていたからなぁ」
「本当にそうだったね。いつも心配していて……僕達も嫉妬しちゃうくらい」
「何を言って……二人の方が悲しんで……。俺に遠慮しないでいいよ。二人は本当の親子なんだか――」
「待って。それ以上言わないで。僕達は皆家族だよ。もちろん、イシュマも一緒。大事な家族だからね」
「ブルーノ……」
ブルーノの瞳の青が濃くなり、強い視線が注がれる。血の繋がりがないことを理由に身を引こうとすると、いつも二人に止められた。二人が家族だと言ってくれるのは嬉しい。一方で別の視線が自分に注がれていることにも気づいている。
家門の親戚達からの視線だ。
そこには、アレはどうするつもりだろう、という意味が込められていた。
ブルーノは今年二十歳になった。国の政務に携わりつつ、父の下で領地の運営を学んできた。若くして様々な事業で利益を出しており、国中から注目の的となっている。スラリとした長身で程よく筋肉のついた体格、色白で整った顔に空のように澄んだ美しい青の瞳、肩まで伸びた髪をゆるく結んだ優美な佇まい。どこから見ても完璧な美を誇っており、心を奪われない者はいないと言われている。
ユルビーは十八になり、貴族学校を出て成人を迎えたばかり。顔はブルーノとよく似ているが、少し背が高い。赤い瞳は生気に満ち溢れ、鍛えられた逞しい体をしている。在学中から帝国騎士団に所属が決まっており、すでに現役の騎士を倒せるほどの腕前を持っている。
見た目はもちろんのこと、その活躍ぶりだけでも、二人が兄弟だと分かる。
一方、イシュマは公爵を守ろうと剣を学んだが、体格に恵まれなかった。実の父は騎士として優秀だったが、イシュマは容姿も、体格も母に似てしまったらしい。二人より背が低く、訓練をしても筋肉のつかない細い体つきであった。
貴族学校を卒業後、何度か試験を受けて帝国騎士団に入ることができたが、主に事務方の仕事を任されている。
公爵が亡くなり、次期公爵位はブルーノが継ぐことになる。親戚達は血の繋がりのない人間が、公爵亡き後も家に残り続けることをよく思っていない。
公爵に直接、成人したら外へ出すべきだと進言していたのを何度も見てきた。公爵がそんなことは絶対にしないと言ってくれたのを、そっと聞きながら、イシュマは安堵していた。
ブルーノとユルビーは、自分のことをどう思っているのか不安に襲われる時がある。二人とも優しいが、その優しさがいつまで続くのかという不安。あまりに自分と違いすぎる、才能溢れた兄弟の側で育ち、イシュマは暗い思いを心の中に抱えて生きてきた。
その不安の根元には、やはりゲームの世界が関わってくる。自らの未来を変えるため、イシュマは努力をしてきた。
ゲームの中のイシュマが、反乱軍として争いに身を投じたのにはワケがある。ゲーム内のイシュマは、父の死が公爵のせいだと思い、密かに恨んでいた。
兄弟として迎え入れられたが、兄と弟とは打ち解けることなく、貴族の暮らしだけを享受する。三本の矢の話を聞いた時も、いつか壊してやろうと反抗心を持ち続けた。
やがて公爵が亡くなり代替わりした後、働くこともなく遊び続けて公爵家の財産を湯水のように使い込む。そのことを咎められ、反皇帝派の集会へ参加するようになる。そして、反乱を起こし、国を乗っ取ろうと企むが失敗するという流れだ。
流れ通り進んだら、自分は処刑されることになる。それだけは避けるため、イシュマが取り組んだのは、家族の一員として認めてもらうことだった。特に、ブルーノとユルビーとは、絶対に仲良くなってみせると意気込んだのだ。
二人とも思っていたより優しくて気さくな性格だったため、それほど苦労せずに仲良くなることができた。
ゲーム通り、公爵から三本の矢の話を聞いた時、イシュマは二人の手を取り、これで折れないねと見本のようにして見せた。和やかな空気が流れ、幸せな気配に包まれた。
これで間違いなく、完全にゲームの流れとは違うものになった。
流れを変えたことで、何かしらの制裁が待ち受けているかもしれない不安は残る。
大丈夫、きっと上手くいく、そう信じようとした。
だが結局、公爵の死を変えることはできなかった。
葬儀は冷たい雨の中執り行われた。夜になり重要な話は後に回し、それぞれが帰宅の途につく。イシュマは長時間冷たい雨に打たれたため、邸に戻るとすぐに用意されていた温かい湯へ浸かった。
湯上りに寝巻きのガウンを羽織ったイシュマは、姿見の前に立ち布で髪を丁寧に拭いていく。貴族の令息なら侍女に任せるようなことだが、イシュマは他人に触れられるのが苦手なため、身の回りのことは自分でこなしている。
鏡の中の自分と目が合うと、胸に苦いものが広がった。平凡な黒髪に黒目、秀でたところのない地味な顔立ちに見える。男らしい勇ましさとは無縁で、公爵には年々母親に似てきたなとよく言われた。
特徴と言えば、両目の下に付いたホクロくらいだ。涙ホクロと呼ばれ、あまりいい意味ではないとされる。それが左右の目尻にあることが、悲運な人生を感じさせていっそう気分を重くする。
ブルーノやユルビーのような圧倒的に美しい人から比べたら、自分など木の棒にしか見えないと思う。
だが、こういう顔が好きという物好きな人間もいるらしい。
イシュマは子供の頃、何度か誘拐されそうになったことがある。町で道を尋ねられて、案内をしていたら物陰へ引き込まれ、男の使用人からは袋へ入れられて、どこかへ連れて行かれそうになった。
どちらもブルーノとユルビーが気づいて助けてくれた。どこか傷つけられたり、手を出されたりしたわけではないが、それ以来他人の手が怖くなった。ブルーノとユルビーだけは別だ。助け出された時も、二人に抱きついて大泣きした。他人は嫌だが二人に触れられると、心から安堵し救われた気持ちになる。
「でも……もうそろそろ、ちゃんとしないとな……」
イシュマは、鏡の中の自分に向かってそう呟いた。公爵が亡くなった今、やはり自分は出ていくべきなのではと思い始めている。ゲームの強制力など信じたくないが、このままここにいたら、二人の足を引っ張ることになるかもしれない。
それでなくとも、ブルーノもユルビーもあんなにモテるのに、浮いた噂が一つもないのだ。三本の矢として公爵家を守っていくために、二人には幸せになってもらいたい。良い女性ができても、血の繋がりのない人間が側にいることで、相手の家が不満を言う可能性がある。貴族が血の繋がりや、体面を気にすることはよく知っていた。
迷惑をかけないためには、距離を置く必要がある。
騎士団の宿舎は邸から近いので、申請すればすぐにでも用意してもらえるだろう。
「やっぱり俺は……」
そう言いかけた時、カタンと扉の開く音がした。
「イシュマ? 何度もノックしたけど……大丈夫?」
「ブルーノ! ご、ごめん。考えごとしていて気づかなかった」
雨はいつの間にか上がり、部屋の中を月明かりが照らしている。ブルーノはランプを手に持ち、音もなく部屋の中へ入ってきた。寝巻き姿のブルーノが、夜に訪ねてくるなんて珍しかった。何かあったのかと、イシュマは小走りで駆け寄る。
「寝るところだった? 悪いね」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「……少し、イシュマと話がしたくてさ」
ブルーノの悲しげな微笑みを見たイシュマは、ハッとして息を呑む。
いつも誰よりも冷静で頼りになるブルーノだが、時々イシュマにだけは、弱いところを見せてくれた。ブルーノは父親を亡くしてから、公爵家の長男として、悲しむ暇もなく動いていた。
こんな時に自分のことばかり考えていたと、イシュマは恥ずかしくなる。
「何も手伝えなくてごめん。大変だっただろう?」
イシュマがそう言うと、ブルーノは小さく笑い首を振った。
「いいんだ。家のことは任せてくれていい。それよりもイシュマと話す時間が、少なくなるのが辛い」
「そんな……、話くらいいつだって……。日中時間がなければ、今みたいに夜訪ねてきてくれてもいいし、お酒は苦手だけど、飲みたい時は付き合うよ」
イシュマは努めて明るく答えた。公爵の死で邸の中は暗く沈んでいる。自分ができることといえば、みんなを励ますくらいだ。
「ふふっ、ありがとう。イシュマは変わらないね。ずっとそのままで……、いつまでも僕の可愛いイシュマでいて」
「……う、うん」
ブルーノは兄としての意識が強いのか、イシュマのことをまだ子供扱いしてくる。成長した今でも可愛いと言ってくるので、反応に困ってしまう。
目を泳がせていると、クスッと笑ったブルーノがイシュマの頭を撫でてきた。
「イシュマにお願いがあるんだ」
「お願い? いいよ、なんでも言って」
ブルーノには助けてもらってばかりなので、力になりたいと思っていた。ゆっくり近づいてきたブルーノは、イシュマの耳元に口を寄せる。
「一緒に寝たい」
「え? 一緒にって……」
「子供の時みたいに。いいよね?」
「だっ……、だってもう……」
もう大人だ。
そう言おうとしてイシュマは口を噤んだ。
プリンプ邸に来たばかりの頃、ゲームの記憶が悪夢となり毎晩泣いて起きた。不安的なイシュマに寄り添ってくれたのは、ブルーノとユルビーだった。
ある夜はブルーノが、またある夜はユルビーが、そして時には二人でイシュマをはさんで一緒に寝てくれた。そのおかげで悪夢から解放され、未来を変えようと強い気持ちになれた。
ブルーノは父を失ったばかり、精神的に追い詰められて眠れずに苦しんでいる。今度は自分が支えるだと、イシュマはブルーノの手を取った。
「いいよ。少し狭いけど、俺のベッドでいい?」
「いいの?」
「もちろん。一緒に寝よう」
ゲームの世界とは違い、兄と弟とはいい関係を築くことができた。公爵を失ってしまったのは悔しいが、兄と弟の幸せは自分が守りたい。
「ありがとうイシュマ、嬉しいよ」
「わっ」
よほど嬉しかったのか、イシュマを抜かしてブルーノが先にベッドへたどり着く。ブルーノに手を引かれ、イシュマはベッドに転がった。
「今日は一日中濡れていたから、寒かったよね。ほら、おいで」
横に寝転んだブルーノが手を広げてくる。少し迷ったイシュマだったが、ゆっくりと移動してブルーノの懐に潜り込んだ。すぐにふわりと抱きしめられ、冷えていた体が温かくなっていく。
「イシュマは柔らかいね。いい匂いがする」
ブルーノの匂いに包まれると、途端に眠気が襲ってきた。温かくて気持ちいい。少し躊躇いがあったが、抱きしめられたら、あまりの心地良さに体の力が抜ける。なぜ今までこうしてもらわなかったのか、という思いが頭を占めていく。
「イシュマはお父様をいつも心配していたよね。近くへ出掛けるだけでも、護衛だ医者だって大騒ぎして……」
「……うん」
「それを見る度に、羨ましいと思っていたんだ」
「羨ましい? 心配してもらいたい、ってこと?」
「そうだよ」
ブルーノは令嬢達から、氷の貴公子と呼ばれている。いつも冷たい表情をしているからだそうだ。普段のブルーノを知るイシュマには理解できなかった。彼女達がこんな風に甘えているブルーノを見たら、失神してしまうだろう。
クスッと笑ったイシュマは、ブルーノの頭をボンボンと撫でる。
「心配するって。当たり前だよ、大切な家族なんだから」
明るく笑って見せると、ブルーノはイシュマの胸に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめてきた。
「ブルーノはいつも頑張り過ぎだよ。時には力を抜いた方がいい。人に甘えるってことを知らないと」
「え? イシュマにもっと、甘えていいの?」
「ええと……まぁ、うん」
周囲との関係について触れたつもりだったが、ブルーノが嬉しそうに笑うので、はっきりしない返事になる。後でいくらでも修正できるだろうと思ったイシュマは、ブルーノの頭を撫でながら、重くなった瞼を閉じた。
「お休み、イシュマ」
「う……ん、兄さんも……」
柔らかな温かさに包まれ、悲しみの日は幕を閉じる。
ここがゲームの世界だということは、誰にも話せなかった。変なことを言っていると思われて、公爵家から追い出されるのを恐れていた。
そして今は、なぜ、公爵を守ることができなかったのだと、二人から責められるのを恐れている。
何となくだが、前世も家族から見放され、寂しい人生を送っていたような気がする。
イシュマは、転生してようやく手に入れた家族の温もりを離したくなかった。
「いつもの光景だな」
「いや、学生服から騎士服に変わった。イシュマ、お迎えだぞー」
そろそろかと思っていたので、名前を呼ばれたイシュマは、書類を整理する手を止めた。
顔を上げると、同僚が指摘した通り、学生服から騎士服に変わったユルビーの姿が見えた。イシュマの勤める騎士団文書課は、騎士団本部の二階にあり、大きな窓から建物の入り口の様子がよく見える。
「すみません、残りは明日片付けます」
「おー、早く行ってやれ。第一騎士団期待の新人をお待たせしたら、俺が怒られちまう」
ガハハハと大口を開けて笑う上司に頭を下げ、イシュマは荷物をまとめて部屋を出た。
貴族学校を卒業したユルビーは、第一騎士団に所属することになった。優秀生の中でも選りすぐりの腕を持った者だけが入団を許される。ユルビーは期待の新人と呼ばれ、どこへ行っても注目の的だ。
「ユルビー、お待たせ」
イシュマが階段を駆け下りて手を振ると、ユルビーも軽く手を上げる。もう何度この光景を見たか分からない。学生時代は校門で、勤めだしてからは騎士団本部の前までユルビーが迎えに来てくれる。
ブルーノはイシュマが心配性のように言っていたが、真の心配性はこの男だと思う。
「そんなに待っていない。こっちも訓練の後、挨拶回りをさせられて、今着いたところだ」
同僚によるとイシュマが会議をしていた三十分前から待っていたらしい。相変わらず嘘が下手だなと思いながら、背の高いユルビーを見上げた。出会った頃は自分より小さかったのに、いつの間にか抜かされてしまい、もう追いつけない高さまで行ってしまった。
「何だ? 顔に何か付いているか?」
「うーん、顔じゃなくて肩かな。葉っぱが乗っている」
手を伸ばして、ユルビーの肩に乗った葉を払い落とす。長く待っていたことがバレバレで、ユルビーは何とも気まずそうな表情になる。昔からどこか抜けていて、そんなところが可愛いなと思ってしまう。
背が高く逞しい体のユルビーは、どこにいても目立つ。通りかかった人達からの視線を感じ、イシュマは下を向いた。
「ユルビー、あのさ……」
「何だ?」
もう待たなくていいよ。
そう言おうとして、言葉が続かない。
昔、町で誘拐されそうになった時、イシュマははぐれてしまったユルビーのことを探していた。ユルビーは自分のせいでイシュマが怖い目に遭ったと思い、その時のことをずっと悔やんでいる。
心配して迎えに来てくれるのは、その時の後悔からきているのだと分かっている。ユルビーにだって付き合いがあるはずだ。いつか解放してあげないといけない。そう思うのに、ユルビーの優しさが嬉しくて、言い出せずにいる。
「書店に寄ってから帰っていい? 好きな作家の新刊が出たんだ」
「ああ、いいぞ。俺が買ってやる」
「あっ、初任給が出たから浮かれるな。悪いけど、団員の給与管理は俺の仕事だから、いくら出たかも知っているんだからね。すぐに使わないでしっかり貯めなさい」
兄の顔をして肩を叩くと、参ったなと言ってユルビーは目を細めて笑った。赤い瞳は印象が強いので、怖いと言う人もいる。だけどイシュマにとってユルビーは、優しくて頼もしい可愛い弟だ。ブルーノとはまた違う、ふざけたやり取りができるのもユルビーだけ。
「ぼけっとしてんなイシュ。置いていくぞ」
「あー、ユルビー! 待て。待てってばー!」
こんな時間がいつまでも続けばいいのに。
そう思いながら、イシュマはユルビーの背中を追いかけた。
イシュマお気に入りの書店は町外れにある。
中心部の書店街とは違い、人も少なくてじっくり見て回れるのが利点だ。
書店の前に到着したが、ユルビーは馬車の中で腕を組んだまま寝てしまい起きる気配がない。慣れない環境で訓練の疲れが出たのだろう。御者に声をかけ、イシュマは一人で馬車を下りた。今日は目的の本が決まっているので、すぐに買って戻ればいい。そう思いながら店の中へ入る。
入口近くで店の主人に挨拶をして、お目当ての本を手に取る。ふと店の奥が気になり、天井高く連なった本棚の間を進んだ。埃っぽい匂いが鼻につく。店の奥に積み上げられていたのは歴史書だった。
「帝国史百年、か……」
一番上に積まれていた本の題名に目が留まる。まるでゲームの世界を表すようなタイトルだった。
『帝国の野望』は単純に言うと、君主となったプレイヤーが、一つの国を百年間統治する。一年は一時間ほどで終わり、計算上は百時間プレイするスタイルだった。野望というほど戦争に明け暮れるゲームではなく、国内の統治が主だったと記憶している。他国と戦争をするにはお金や人、たくさんの物資が必要となる。得るものは大きいが、失うものも大きい。そのため、よほど余裕があり万全の状態でなければ、他国へ侵略する選択肢は選ばなかった。
ポッチャム帝国はここ数十年大きな戦争をしていない。国境での小競り合いや、民の暴動などはあったが、今のところ平和な状態が続いている。そう考えると、自分のような転生者がプレイしている世界と考えることもできるが、上手く統治できていると言える。
だがゲーム内では、皇帝反対派の派閥があり、それは実際に存在している。ゲームのイシュマはそれに関わったことで処刑される。
ブルリと震えたイシュマは、本の上に置いていた手を離した。
「歴史に興味がおありですか?」
「え?」
突然背後から話しかけられ、イシュマは驚きで息を吸い込む。馴染みの店主の声ではない。恐る恐る振り返ると、細目で人の好さそうな顔をした若い男が立っていた。身なりは清潔で悪くないが、高級そうな物を身に着けてはいない。貴族ではなさそうだと思った。
「驚かせてしまいましたね。あまり熱心に見てらっしゃるから気になりまして」
「そうでしたか。興味というか、考え事をしていたのでそのせいかと」
知らない人間と話すのは緊張してしまう。俯きながら答えたイシュマは、頭を下げて男から離れようとした。
「急ぐので、失礼します」
「無理もない。大事な人を亡くしたばかりだ。悲しみで頭が染まってしまうこともあるでしょう」
「貴方は……」
通り過ぎようとするイシュマに、男はお構いなしに話しかけてきた。そして男の話にイシュマの足は止まる。明らかに自分を知っていて、話しかけてきたからだ。
「申し遅れました。私、ロイド社で記者をしているドレイクと申します」
「ロイド社……貴族向けのゴシップ誌の……」
「ご存知でいらっしゃるのですね。それは光栄です」
「……話すことなどありません」
「それは残念、でもこれを聞いたらどうですか? 貴方がとても慕っていらした、お父様のプリンプ公爵ですが、実は息子に殺されたという話があるのです」
振り切って走り出そうとしたイシュマの足が再び止まる。聞き捨てならない話に、怒りが湧いてきた。
「何てことを言うんだ! 父は不幸な事故に遭った。父の死を記事のネタにして面白おかしく書くつもりか!?」
「そんな滅相もない。私はイシュマさんの味方なのです。お兄様のブルーノ氏、弟のユルビー氏、二人か、またはそのどちらかが、次に貴方の命を狙っているとしたら? この話を最後まで聞きたくないですか?」
「なっ!?」
ありえない話を囁かれ、イシュマはわなわなと口を震わせる。そんなバカな話があるはずがない。そう叫びたいのに、動揺しすぎて声が出てこない。
「歴史書より、ご興味がおありでしたら、ぜひこちらにご一報ください」
そう言って記者のドレイクという男は、立ち尽くしているイシュマの手に連絡先を書いたメモを握らせた。
ドクドクと心臓の音が鳴り、頭が真っ白になって何も考えられない。いつの間にかドレイクの姿は消え、古びた書店の中に、イシュマだけが取り残されていた。
手の中からポトリとメモが落ちて床に転がる。そのメモを見つめたイシュマは、胸騒ぎがして胸に手を当てた。
「今日、書店に行ったんだって?」
ブルーノの声にイシュマはビクッと肩を震わせる。思わず手からこぼれたナイフが床に落ちた。
「新しい物を用意して」
ブルーノの指示に素早く動いた使用人が、新しいナイフをイシュマに手渡してきた。イシュマはありがとうと言って受け取り、動揺を悟られないように口元に笑みを浮かべた。
「そうなんだ。ほら、冒険記の新刊が出たからさ」
「ああ、イシュマはあの本が好きだったね。紹介したのは僕だから、気に入ってくれて嬉しいよ」
大丈夫、大丈夫。頭の中で繰り返して、イシュマは料理を口に運ぶ。今日の夕食は、好きな物ばかりのはずなのに、どれも味がしない。
対面の席に座るブルーノは、イシュマの様子をジッと見ながら、ワイングラスを傾けた。
「ユルビーは? 下りて来ないの? 夕食はいつも先に来てたくさん食べるのに」
「厳しい訓練だったみたいだし、あれで繊細なところがあるから、新しい環境に気疲れしたみたいだね。食事は部屋で済ませたから今日はもう寝るって」
「そ……そうか。馬車の中でも寝ていたから、よほど疲れたんだね」
「寝ていた?」
ブルーノの声色が変わり、イシュマは肉を切っていた手を止める。マズいことを言ってしまったかもしれない。ゆっくり顔を上げると、ブルーノは無表情でグラスの中に視線を落としていた。
「イシュマの迎えを頼んているのに、居眠りをするなんて最低だね」
「ユルビーは疲れていたんだよ。それくらいで……」
「自分が送迎をやるって言ったのはユルビーだよ。後でキツく言っておかないと」
部屋の温度が一気に冷えて、状況を察した使用人達が食堂を出ていく。ブルーノは暴力を振るうことはないが、他人に厳しいところがある。弟でもイシュマに対しては優しいのに、ユルビーに厳しく当たる。椅子から立ち上がったイシュマは机を回り、ブルーノの側へ駆け寄った。
「喧嘩なんてしたら、父さんが悲しむ。居眠りくらい誰だってする。俺はもう大人だし、大丈夫だよ。心配しないで」
ブルーノの肩に手を置き、安心させるように指を動かす。そうすると、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じた。
「そうだね。イシュマの言う通りだ。うるさく言うのはやめておくよ」
「よかった」
二人に何かあればこうやって、自分が間に入ってきた。あの記者が言っていたことを思い出す。責任感の強いブルーノが父親を殺すなどありえない。ましてや、次に自分を殺そうとしているなんて……。
「イシュマ?」
「え、あ、ああ」
「大丈夫? 考え事?」
「俺も疲れたみたい」
何を考えていたのか、誤魔化すようにイシュマが笑うと、開いた口の中にブルーノが何かを入れた。
「ん、何これ……あまっ、キャンディ?」
「そうだよ。元気がないみたいだからさ」
「まったく……もう子供じゃないのに」
ブルーノがくれたキャンディは、口の中でコロコロと転がり、甘さを振り撒いていく。キャンディなんてもらって喜ぶのは子供だけだと思ったが、胸がくすぐったくなり嬉しくなる。
「部屋に戻るよ。ブルーノはゆっくり食べて」
「ああ、そうする。お休み、イシュマ」
ブルーノはにっこりと微笑んで軽く手を挙げた。キャンディよりももっと甘い微笑に、胸がドキリと鳴る。
何だか、今日はブルーノの顔がやけに色っぽく見えてしまい、心臓がトクトクと揺れる。イシュマは小さく首を振り、食堂を後にした。
自室に戻ったイシュマは、寝巻きに着替えてベッドに座った。色々あって今日は本当に疲れを感じる。
「キャンディって、こんなに甘かったかな」
元々甘いものが好きではなく、お菓子の類は食べなかった。だけど公爵が時々、ご褒美だよと言って書斎に置いてあるキャンディをくれることがあった。
そのキャンディだけは好きで、ご褒美をもらうために勉強を頑張ったのを思い出す。懐かしさに目頭が熱くなった時、体の中心にも熱を感じて息を呑む。
「え……嘘、だろう……」
気づいてしまうと、その熱はどんどん広がっていく。ムクムクと下穿きが膨らんでいくのを見て、イシュマは額に手を当てる。
「はぁ……こんな時に、俺は何を……」
疲れが溜まりすぎたのか。そういえば、自分で処理したのは随分前だったことを思い出す。養父の死からそれほど時間が経っていないのに、不謹慎だと思い息を吐いた。
寝てしまおうかと思ったが、ソコは大きく張り詰めて萎える気配を見せない。こうなったら処理した方が早いので、イシュマはベッドへ転がった。
下穿きをズラして自身を取り出すと、反り返るほど勃っており、すでに先端から滴を垂らしていた。
「はぁ…………う…………うん…………ぁぁ」
いつも適当に擦っていれば、すぐに上り詰めて達する。それほど時間はかからないのに、今日はなぜか、どんなに扱いてもなかなかイケない。
「ん……ど、……して……」
『コンコン』
「――!?」
ノックの音がして、イシュマはベッドから飛び起きた。
「イシュマ? 苦しそうな声が聞こえたけど、大丈夫?」
ブルーノだ。様子がおかしいから心配して見に来てくれたかもしれない。急いではだけていた衣服を合わせてベッドの乱れを直す。
「へ、平気、大丈夫!」
「入るよ」
「ま、待って」
ダメだという前に、ブルーノはドアを開ける。大丈夫と言いながら、部屋の中へ入って来てしまった。
「寝ていた? 髪がぐちゃぐちゃだ」
「う、うん。寝てて……んっ」
ブルーノは心配そうな顔をして、イシュマの隣に座った。体が敏感になっており、ベッドの揺れだけで感じてしまう。
「熱かな? 顔が赤い。おでこに触らせて」
「まっ、待って、本当にだっ……あぁっ」
ブルーノがおでこを合わせてきた。衣服の下でソコがピクッと揺れ、艶のある声を漏らしてしまう。
「イシュマ……? もしかして……?」
「い、言わないで。疲れて……その……自分で……」
「ああ、そうか。邪魔をしてしまったね」
男同士で義理とはいえ、兄弟のこんな場面を見るなんて気持ちが悪いだろう。ベッドで体を丸めたイシュマは、ブルーノに背を向ける。
出ていってくれるはずと思ったのに、ベッドの軋む音がして、背中が温かくなる。
「ブルーノ? な、何を……?」
「ん? 一緒に寝ようと思って」
「ええ!?」
「甘えていいって、言ってくれたでしょう?」
それはそうだが、今はどう考えてもおかしい。ブルーノは空気の読めない男ではないはずだ。
「あ、あまり、くっ付かないで」
「どうして?」
「だっ……あ……あっ、だめっ」
背中をブルーノの手が滑っていく。体が敏感な状態は続いていて、触れられただけで声が出てしまう。
「可愛い……大丈夫だよ。僕に任せて」
「う……嘘……そんなっ」
後ろから抱きしめられている状態で、ブルーノの手が下半身に落ちていく。熱くなったソコに触れてきたので、イシュマはビクッと身を震わせた。
「男同士での抜き合いくらい、貴族学校では普通だったよ」
「え?」
「僕はやっていなかったけど、多感な時期で、ほら、男子しかいないしさ」
「で……でも、あっ」
「イシュマは疲れているんでしょう? 僕が介抱してあげる」
「まっ、まっ……て、あっ……んんっ」
本当にそんなことがあったのか。元平民だったこともあり、貴族学校でイシュマには友人ができなかった。いつも一人で行動していたので、そんな馴れ合いが普通に行われていたなんて知らなかった。
「うぅ……う……んっぐっ……」
「先っぽから溢れてきた。随分シテなかったの? あ、ほら、唇を噛んだらダメ」
「んっ……んんっ――ああっ!」
声が漏れないように口に力を入れていたが、そこにブルーノのが指を入れてきた。噛むことができず、だらしなく口を開けると、大きな声が出てしまった。
達そうになったが、鈴口を掴まれてイケなかった。吐き出すことのできない快感が身体中を駆け巡る。頭の中まで溶かされて、どこもかしこも熱くてたまらない。
「どうしたの? イシュマ? 何でも言ってごらん」
「あ……う……た、い……あっん、イき……たい」
「いい子だ。すごいよ、裏筋がドクドク脈打ってる」
「んんっ――あっ、んんっ!」
ブルーノは先走りを指に絡めて、根本からゴシゴシと扱いてきた。脳天を直撃する快感に身を捩らせ。イシュマは嬌声をあげる。
「だっ……め、イッ……イっちゃう」
「いいよ。好きなだけ出して」
「あっあっあっ、イッ、クッ……んん――!!」
一番大きな波に飲み込まれ、イシュマは欲望をたっぷりと吐き出した。大量の白濁がシーツの上に勢いよく飛び飛び散る。出し切ったというのに、まだ終わることのない快感に体は熱くなるばかりだ。
「あれ、まだ足りないのかな」
「はぉ……はぁはぁ……ハァ……ん、もっ……もっと」
「ん? どうしてほしい?」
チュッと音がして、ブルーノが目の下にキスを落としたのが分かった。ぼんやり見つめると、ブルーノは美しく微笑んだ。
その微笑みに導かれるように、イシュマは唇を震わせる。
「ほし……ほしい、きもちいい……もっと欲しい」
「いいよ、いくらでも。イシュマが満足するまで、可愛がってあげる」
あぁ嬉しい。
兄の手でイカされることが嬉しいなんて、ありえないことなのに、頭の中はすっかり染まってしまった。
次々と襲いくる快感の波をどうにかしてほしい。
触れてほしい。
ソコだけじゃなく、もっと奥まで……。
理性はとっくにどこかに消えてしまった。
青い瞳に魅入られたイシュマは、懇願しながら、ブルーノの白くて長い指に体を擦り付けた。
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