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第二章
②白龍の王子
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会場へ着くと、カルセインの姿はすぐに発見することができた。
今日は仕事の取引相手も多く来ると聞いていたが、その通りに大勢の人がカルセインの周りを囲んでいた。
たくさんの人に囲まれながらカルセインは、いつも通り冷静に落ち着いた態度で表情を崩すことなく対応している。やはり誰よりも輝いていてカッコよく見えた。
メイズはちょっと休憩すると言ってこの場を離れたはずだ。なかなか帰って来なければカルセインは心配するはずで、探しに行こうとするだろう。
そこを俺が引き止めて時間を稼ぐ。
あまり長く止められるとは思えないが、それでも少しでも長く二人の時間を作ってあげたいと思っていた。
今のところカルセインは話に集中している様子だったので、ホッとしながら壁際で待機していると、横に誰かが立つ気配がした。
他の使用人だろうと思って気にも留めず、カルセインばかり見つめていたら、やけに隣から視線を感じてゾクゾクと背中に寒気が走った。
バッと顔をそちらに向けると、男が一人立っていた。
男というか、俺より背が高くて白い軍服の正装をしているので、間違いなく男だと思われるが、女性と間違いそうなくらい美しい男が立っていて、俺と目が合ったらニッコリと微笑まれた。
整った顔に少し垂れた目尻には、小さな黒子があった。女性のように長い白銀の髪を後ろで結んで緩く垂らしている。
細められた目元には、深いブルーの瞳が妖しく輝いていた。
「やあ」
カルセインよりは少し高めだが、耳に響くような声だった。
この男はどう見ても使用人には見えない。
まさか俺に話しかけてくるなんて思わなくて、キョロキョロと周りを見てしまった。
「いや、君だから」
やはりそうかと緊張で体がビクッと揺れた。他の貴族への無礼などあってはならない。主人の顔をつぶす行為になってしまう。
「し…失礼しました。あの…私に何か御用でいらっしゃいますか?」
「君さ、マクシミル家の執事?」
「……はい。そうですが……」
これだけ人がいる会場で一瞬で分かってしまうなんて、支給品のコートのどこかに名前でも書いてあったのかと、慌てて服を調べていると、男にぷっと軽く噴き出されて、クスクスと笑われてしまった。
「マクシミル公ばかり目で追っているからすぐに分かるよ」
「……失礼しました。それで……いったい何の……」
気を取り直して、声をかけられた理由を聞こうとしたら、じっと瞳を覗きこまれた。
「うん……、やっぱりそうだ。本物はちゃんと見たことがないんだけど……こんな感じなのかな」
「あの……?」
やけに顔が近くて、後ろに下がりたかったのに、あいにく後ろは壁でこれ以上下がれなかった。
初対面の美しい男にまるでキスでもされるくらいの距離を詰められた。明らかに高位の貴族らしい男なので、顔を掴んで押し返すこともできずに、怯えながらゆっくり顔を上げた。
その時、近くで叫ぶような大きな声が上がった。
「いい加減にしてちょうだい! さっきから、他の女性と話してばかりよ! しかも鼻の下を伸ばして、いやらしい目で見るなんて!」
「誤解だって、妻の君を差し置いて他の女性など……考えられない」
「あら? これで何度目なのかしら? また魔がさしたなんて言うつもり?」
どうやら夫婦喧嘩がこんなところで始まってしまった。
みんなの注目が集まり始めた時、夫人の方が近くにあった水の入ったカップを手に取った。
「この浮気者!」
その手を顔の後ろに持っていって、勢いが付けられた。マズイと思ったらしい夫の方は素早かった。
何と俺と横の男の方に身を翻して逃げて来たのだ。
当然夫人は何としてでもと夫目掛けて当てようと腕を振ったが、明らかにその方向がズレていた。そして悲しいかな、このままだと、隣の男に直撃すると俺は瞬時に察知してしまった。
バシャン!!
カップの中に入っていた水が、盛大にかかった。
頭からボタボタと水を垂らして、濡れた鼠状態になっているのは俺だった。
「まぁ!! この期に及んで逃げるなんて! アナタのせいで他の方に当たって……あっ…あああ…そっ……そんな………」
仕方がない。
貴族らしい隣の男に直撃したら大問題だ。ここは使用人の俺が水をかぶることで、事態は丸く収まるだろうと思った。
当然貴族のご夫人は、使用人の俺が相手なら気にも留めないと思ったが、夫人は俺の後ろの方を見て、言葉をなくしてガタガタと震え出した。
「バンフリー子爵夫人、君も苦労しているみたいだね。勇ましい姿は素敵だが、ずいぶんと狙いが外れたようだから、練習が必要かもね」
震えながら夫人は頭が床につきそうなくらいに崩れ落ちて、逃げていた夫も慌てて駆け寄って来て隣に並んで頭を下げた。
「申し訳ございません!! キリシアン殿下! 何というご無礼を!!」
「私は特に被害はなかったよ。彼が前に出て庇ってくれたからね」
俺は下を向いたまま固まっていた。
まさか、さっきまで話をしていて、俺の後ろにいる男はこの国の王族でしかも……。
「君、庇ってくれてありがとう。おいで、服を用意しよう。着替えを手伝ってあげる」
「はい!? あの……え……なっ……??」
キリシアンと呼ばれた男は、俺の手を取って甲に口付けた。
まさか、使用人にそんなことをするなんてと、周囲は口を開けて全員ぽかんとする中、ぐっと手を引かれてそのまま連れて行かれそうになった。
その時、反対側の腕を強い力で掴まれて引き寄せられた。
「キリシアン殿下、御心遣いありがとうございます。しかし、こちらは当家の使用人でして、王子殿下にお手を煩わせるようなことはできません。お気持ちだけありがたく頂戴します」
「カルセイン、久々に顔を見たな。元気そうじゃないか」
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。王族の方々は謁見の間に集まっているとお聞きしておりましたので……」
「退屈な集まりだから出てきたんだ。おかげでなかなか良いものに会うことができた」
カルセインは俺を引き寄せた後、後ろから抱きしめるように体を付けて来るし、キリシアンの手は離れたが、ウィンクしながら俺を見てくるので、これは一体なんだろうと俺の頭は混乱で限界を迎えていた。
「名前を教えてくれないか?」
「ミケイドです」
「カルセイン…君に聞いていないけど」
俺の頭の上で、バチバチと火花が散りそうなくらいの強い視線が飛び交っていて、この二人は仲が悪いのかと心配になってきてしまった。
「殿下、我々はそろそろ失礼します。賑やかな場を、中断させてしまったら申し訳ありませんので……」
「ああ、またね。カルセイン、ミケイド」
強い視線を送っていたと思ったら、キリシアンは今度はふわりと花が咲くような美しい顔で笑った。
わけの分からない人だ。
思わず見入ってしまったら、カルセインに腕を引かれてその場から離れることになった。
とりあえず頭だけ下げておいたが、キリシアンは優雅に微笑んで手をひらひらと振っていた。
「あ…あの、カルセイン様…どこへ……」
「決まっているだろう。濡れた髪と服をどうにかするんだ。それと……」
離さないというくらい強めに腕を取られて、ズンズンと廊下を歩いて行った。足がもつれて転びそうになったが、カルセインが支えてくれた。
そのままカルセインは俺の耳元に口を寄せてきた。
「色々と聞かせてもらおうか、ミケイド」
いつもの低い声にやけに甘い響きがあって、恐る恐る見上げると、カルセインは満面の笑みで俺を見つめていた。
ある意味カルセインの足止めをすることは成功したが、ゾクゾクと寒気がして背中を冷たい汗が流れていった。
□□□
今日は仕事の取引相手も多く来ると聞いていたが、その通りに大勢の人がカルセインの周りを囲んでいた。
たくさんの人に囲まれながらカルセインは、いつも通り冷静に落ち着いた態度で表情を崩すことなく対応している。やはり誰よりも輝いていてカッコよく見えた。
メイズはちょっと休憩すると言ってこの場を離れたはずだ。なかなか帰って来なければカルセインは心配するはずで、探しに行こうとするだろう。
そこを俺が引き止めて時間を稼ぐ。
あまり長く止められるとは思えないが、それでも少しでも長く二人の時間を作ってあげたいと思っていた。
今のところカルセインは話に集中している様子だったので、ホッとしながら壁際で待機していると、横に誰かが立つ気配がした。
他の使用人だろうと思って気にも留めず、カルセインばかり見つめていたら、やけに隣から視線を感じてゾクゾクと背中に寒気が走った。
バッと顔をそちらに向けると、男が一人立っていた。
男というか、俺より背が高くて白い軍服の正装をしているので、間違いなく男だと思われるが、女性と間違いそうなくらい美しい男が立っていて、俺と目が合ったらニッコリと微笑まれた。
整った顔に少し垂れた目尻には、小さな黒子があった。女性のように長い白銀の髪を後ろで結んで緩く垂らしている。
細められた目元には、深いブルーの瞳が妖しく輝いていた。
「やあ」
カルセインよりは少し高めだが、耳に響くような声だった。
この男はどう見ても使用人には見えない。
まさか俺に話しかけてくるなんて思わなくて、キョロキョロと周りを見てしまった。
「いや、君だから」
やはりそうかと緊張で体がビクッと揺れた。他の貴族への無礼などあってはならない。主人の顔をつぶす行為になってしまう。
「し…失礼しました。あの…私に何か御用でいらっしゃいますか?」
「君さ、マクシミル家の執事?」
「……はい。そうですが……」
これだけ人がいる会場で一瞬で分かってしまうなんて、支給品のコートのどこかに名前でも書いてあったのかと、慌てて服を調べていると、男にぷっと軽く噴き出されて、クスクスと笑われてしまった。
「マクシミル公ばかり目で追っているからすぐに分かるよ」
「……失礼しました。それで……いったい何の……」
気を取り直して、声をかけられた理由を聞こうとしたら、じっと瞳を覗きこまれた。
「うん……、やっぱりそうだ。本物はちゃんと見たことがないんだけど……こんな感じなのかな」
「あの……?」
やけに顔が近くて、後ろに下がりたかったのに、あいにく後ろは壁でこれ以上下がれなかった。
初対面の美しい男にまるでキスでもされるくらいの距離を詰められた。明らかに高位の貴族らしい男なので、顔を掴んで押し返すこともできずに、怯えながらゆっくり顔を上げた。
その時、近くで叫ぶような大きな声が上がった。
「いい加減にしてちょうだい! さっきから、他の女性と話してばかりよ! しかも鼻の下を伸ばして、いやらしい目で見るなんて!」
「誤解だって、妻の君を差し置いて他の女性など……考えられない」
「あら? これで何度目なのかしら? また魔がさしたなんて言うつもり?」
どうやら夫婦喧嘩がこんなところで始まってしまった。
みんなの注目が集まり始めた時、夫人の方が近くにあった水の入ったカップを手に取った。
「この浮気者!」
その手を顔の後ろに持っていって、勢いが付けられた。マズイと思ったらしい夫の方は素早かった。
何と俺と横の男の方に身を翻して逃げて来たのだ。
当然夫人は何としてでもと夫目掛けて当てようと腕を振ったが、明らかにその方向がズレていた。そして悲しいかな、このままだと、隣の男に直撃すると俺は瞬時に察知してしまった。
バシャン!!
カップの中に入っていた水が、盛大にかかった。
頭からボタボタと水を垂らして、濡れた鼠状態になっているのは俺だった。
「まぁ!! この期に及んで逃げるなんて! アナタのせいで他の方に当たって……あっ…あああ…そっ……そんな………」
仕方がない。
貴族らしい隣の男に直撃したら大問題だ。ここは使用人の俺が水をかぶることで、事態は丸く収まるだろうと思った。
当然貴族のご夫人は、使用人の俺が相手なら気にも留めないと思ったが、夫人は俺の後ろの方を見て、言葉をなくしてガタガタと震え出した。
「バンフリー子爵夫人、君も苦労しているみたいだね。勇ましい姿は素敵だが、ずいぶんと狙いが外れたようだから、練習が必要かもね」
震えながら夫人は頭が床につきそうなくらいに崩れ落ちて、逃げていた夫も慌てて駆け寄って来て隣に並んで頭を下げた。
「申し訳ございません!! キリシアン殿下! 何というご無礼を!!」
「私は特に被害はなかったよ。彼が前に出て庇ってくれたからね」
俺は下を向いたまま固まっていた。
まさか、さっきまで話をしていて、俺の後ろにいる男はこの国の王族でしかも……。
「君、庇ってくれてありがとう。おいで、服を用意しよう。着替えを手伝ってあげる」
「はい!? あの……え……なっ……??」
キリシアンと呼ばれた男は、俺の手を取って甲に口付けた。
まさか、使用人にそんなことをするなんてと、周囲は口を開けて全員ぽかんとする中、ぐっと手を引かれてそのまま連れて行かれそうになった。
その時、反対側の腕を強い力で掴まれて引き寄せられた。
「キリシアン殿下、御心遣いありがとうございます。しかし、こちらは当家の使用人でして、王子殿下にお手を煩わせるようなことはできません。お気持ちだけありがたく頂戴します」
「カルセイン、久々に顔を見たな。元気そうじゃないか」
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。王族の方々は謁見の間に集まっているとお聞きしておりましたので……」
「退屈な集まりだから出てきたんだ。おかげでなかなか良いものに会うことができた」
カルセインは俺を引き寄せた後、後ろから抱きしめるように体を付けて来るし、キリシアンの手は離れたが、ウィンクしながら俺を見てくるので、これは一体なんだろうと俺の頭は混乱で限界を迎えていた。
「名前を教えてくれないか?」
「ミケイドです」
「カルセイン…君に聞いていないけど」
俺の頭の上で、バチバチと火花が散りそうなくらいの強い視線が飛び交っていて、この二人は仲が悪いのかと心配になってきてしまった。
「殿下、我々はそろそろ失礼します。賑やかな場を、中断させてしまったら申し訳ありませんので……」
「ああ、またね。カルセイン、ミケイド」
強い視線を送っていたと思ったら、キリシアンは今度はふわりと花が咲くような美しい顔で笑った。
わけの分からない人だ。
思わず見入ってしまったら、カルセインに腕を引かれてその場から離れることになった。
とりあえず頭だけ下げておいたが、キリシアンは優雅に微笑んで手をひらひらと振っていた。
「あ…あの、カルセイン様…どこへ……」
「決まっているだろう。濡れた髪と服をどうにかするんだ。それと……」
離さないというくらい強めに腕を取られて、ズンズンと廊下を歩いて行った。足がもつれて転びそうになったが、カルセインが支えてくれた。
そのままカルセインは俺の耳元に口を寄せてきた。
「色々と聞かせてもらおうか、ミケイド」
いつもの低い声にやけに甘い響きがあって、恐る恐る見上げると、カルセインは満面の笑みで俺を見つめていた。
ある意味カルセインの足止めをすることは成功したが、ゾクゾクと寒気がして背中を冷たい汗が流れていった。
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