11 / 21
⑪
しおりを挟む
「三号のボルトを頂戴、ロイド」
「どうぞ、お嬢様」
貯水タンクとボイラーを繋ぐパイプを一旦取り外し、その間に発熱装置を挟む。
この取り付け方ならば魔力の量に応じて発熱装置の出力を変えることもできるし、必要なければ装置自体を使わなくてもいい。
更にボイラー側から得た出力を貯めておくこともできるので、薪をくべるなどの面倒な作業がいらない造りだ。
動力を機械だけに頼らず魔法の力も組み込む、私のお気に入りの構造。
「んぅーっ……」
作業のコリをほぐすように全身を伸ばし、汗の染みた上着を一旦ロイドへと手渡す。
しかしそれでもなお肌着はぴったりとまとわりつき、不快感をより一層後押ししてくる。
「ロイド、それを洗濯室へ運んだら侯爵様を呼んできて」
「了解しました」
なにかあったら呼ぶようにと言っておきながら、いきなりこちらから呼びつけるのもどうかとは思ったが。
とにかく最初の出力を確保しないことには始まらないので、ここはジン様にお願いするしかないだろう。
「このようなことでお呼びしてしまって申し訳ありません、ジン様」
「……このくらいは、気にしなくていい」
流石ジン様の魔力だ。
数日ぶりに、勢いのよい温水シャワーを堪能させていただく。
「……あまり見かけない装置だな」
「そうですね。自己流の装置なので、見かけないのも当然かと」
機械技術と魔法文明の関係から、機械の動力源は原始的なものが多い。
火力、水力、風力など色々なものが存在するが、魔法を動力としたものは成り立ちの関係から有用であったとしても普及は絶対にしないだろう。
実に勿体ない話である。
「……やはりキミは、天才だな」
「え?」
「機械と魔法の融合。思い付くのも難しいが、実現させるのはさらに難しい」
「そんな大げさな。普及しないから誰も発表しないだけですよ」
「……前の家でどんな評価を受けていたかは、知らないが」
少しだけ大きくなったジン様の声。
それに合わせて私は、シャワーの温度を少しだけ下げる。
「キミの才能は素晴らしい。それだけは間違いない」
「……」
不相応な過大評価だとは思うのだが。
それでも誰かに褒められるという事は、自然と胸が高鳴ってしまうもので。
ジン様から言われたのだから、なおのことだ。
「……光栄です」
しかしそれが、よくなかった。
「お嬢様。タオルと着替えをお持ちしました」
「ん……ありがと、ロイド」
すっかり舞い上がってしまった頭は正常な判断能力を失っていて。
身体だけがいつもの通りに動いてしまった結果。
「……む」
ジン様とばったり鉢合わせしてしまった。
当然ながら私の方は一糸まとわぬ格好で、だ。
「どうぞ、お嬢様」
貯水タンクとボイラーを繋ぐパイプを一旦取り外し、その間に発熱装置を挟む。
この取り付け方ならば魔力の量に応じて発熱装置の出力を変えることもできるし、必要なければ装置自体を使わなくてもいい。
更にボイラー側から得た出力を貯めておくこともできるので、薪をくべるなどの面倒な作業がいらない造りだ。
動力を機械だけに頼らず魔法の力も組み込む、私のお気に入りの構造。
「んぅーっ……」
作業のコリをほぐすように全身を伸ばし、汗の染みた上着を一旦ロイドへと手渡す。
しかしそれでもなお肌着はぴったりとまとわりつき、不快感をより一層後押ししてくる。
「ロイド、それを洗濯室へ運んだら侯爵様を呼んできて」
「了解しました」
なにかあったら呼ぶようにと言っておきながら、いきなりこちらから呼びつけるのもどうかとは思ったが。
とにかく最初の出力を確保しないことには始まらないので、ここはジン様にお願いするしかないだろう。
「このようなことでお呼びしてしまって申し訳ありません、ジン様」
「……このくらいは、気にしなくていい」
流石ジン様の魔力だ。
数日ぶりに、勢いのよい温水シャワーを堪能させていただく。
「……あまり見かけない装置だな」
「そうですね。自己流の装置なので、見かけないのも当然かと」
機械技術と魔法文明の関係から、機械の動力源は原始的なものが多い。
火力、水力、風力など色々なものが存在するが、魔法を動力としたものは成り立ちの関係から有用であったとしても普及は絶対にしないだろう。
実に勿体ない話である。
「……やはりキミは、天才だな」
「え?」
「機械と魔法の融合。思い付くのも難しいが、実現させるのはさらに難しい」
「そんな大げさな。普及しないから誰も発表しないだけですよ」
「……前の家でどんな評価を受けていたかは、知らないが」
少しだけ大きくなったジン様の声。
それに合わせて私は、シャワーの温度を少しだけ下げる。
「キミの才能は素晴らしい。それだけは間違いない」
「……」
不相応な過大評価だとは思うのだが。
それでも誰かに褒められるという事は、自然と胸が高鳴ってしまうもので。
ジン様から言われたのだから、なおのことだ。
「……光栄です」
しかしそれが、よくなかった。
「お嬢様。タオルと着替えをお持ちしました」
「ん……ありがと、ロイド」
すっかり舞い上がってしまった頭は正常な判断能力を失っていて。
身体だけがいつもの通りに動いてしまった結果。
「……む」
ジン様とばったり鉢合わせしてしまった。
当然ながら私の方は一糸まとわぬ格好で、だ。
0
あなたにおすすめの小説
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!
放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】
侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。
しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。
「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」
利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。
一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。
「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう
ムラサメ
恋愛
漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。
死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。
しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。
向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。
一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される
黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」
無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!?
自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。
窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる