機械油と男爵令嬢 ~婚約破棄されて出会った侯爵様は私を必要としてくれるようです~

ハナミツキ

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「三号のボルトを頂戴、ロイド」

「どうぞ、お嬢様」

 貯水タンクとボイラーを繋ぐパイプを一旦取り外し、その間に発熱装置を挟む。
 この取り付け方ならば魔力の量に応じて発熱装置の出力を変えることもできるし、必要なければ装置自体を使わなくてもいい。
 更にボイラー側から得た出力を貯めておくこともできるので、薪をくべるなどの面倒な作業がいらない造りだ。
 動力を機械だけに頼らず魔法の力も組み込む、私のお気に入りの構造。
 
「んぅーっ……」

 作業のコリをほぐすように全身を伸ばし、汗の染みた上着を一旦ロイドへと手渡す。
 しかしそれでもなお肌着はぴったりとまとわりつき、不快感をより一層後押ししてくる。

「ロイド、それを洗濯室へ運んだら侯爵様を呼んできて」

「了解しました」

 なにかあったら呼ぶようにと言っておきながら、いきなりこちらから呼びつけるのもどうかとは思ったが。
 とにかく最初の出力を確保しないことには始まらないので、ここはジン様にお願いするしかないだろう。

「このようなことでお呼びしてしまって申し訳ありません、ジン様」

「……このくらいは、気にしなくていい」

 流石ジン様の魔力だ。
 数日ぶりに、勢いのよい温水シャワーを堪能させていただく。

「……あまり見かけない装置だな」

「そうですね。自己流の装置なので、見かけないのも当然かと」

 機械技術と魔法文明の関係から、機械の動力源は原始的なものが多い。
 火力、水力、風力など色々なものが存在するが、魔法を動力としたものは成り立ちの関係から有用であったとしても普及は絶対にしないだろう。
 実に勿体ない話である。

「……やはりキミは、天才だな」

「え?」

「機械と魔法の融合。思い付くのも難しいが、実現させるのはさらに難しい」

「そんな大げさな。普及しないから誰も発表しないだけですよ」

「……前の家でどんな評価を受けていたかは、知らないが」

 少しだけ大きくなったジン様の声。
 それに合わせて私は、シャワーの温度を少しだけ下げる。

「キミの才能は素晴らしい。それだけは間違いない」

「……」

 不相応な過大評価だとは思うのだが。
 それでも誰かに褒められるという事は、自然と胸が高鳴ってしまうもので。
 ジン様から言われたのだから、なおのことだ。

「……光栄です」

 しかしそれが、よくなかった。

「お嬢様。タオルと着替えをお持ちしました」

「ん……ありがと、ロイド」

 すっかり舞い上がってしまった頭は正常な判断能力を失っていて。
 身体だけがいつもの通りに動いてしまった結果。

「……む」

 ジン様とばったり鉢合わせしてしまった。
 当然ながら私の方は一糸まとわぬ格好で、だ。
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