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おまけ話
ランスの恩返し? グレン救済計画
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アリアとエドモンドが婚約し、肩を落とす男が一人、家で静かに酒を飲んでいた。
「アニキ、いつまでウジウジしてるんだ? クロエ姉ちゃんの時はあっさり諦めたのに、今回は違うんだな。アリアさんの事は仕方ないと思うぜ? アニキも頑張ったけどさ、アリアさんは初めからエドモンド兵士長の事が好きだったんだ。オレも協力しようと思ったけどさ、アニキの良いところを話したりして。でも無理だった。そんなに気を落とすなよ、な?」
ランスはかれこれ一週間、落ち込んで毎晩酒を飲むグレンを黙って見守って来たが、さすがに放ってはおけず慰める事にした。
「お前にはわからないだろ。本気で好きになった女が出来たら、俺の気持ちが良くわかるよ」
柄にもなく高級な酒を飲み、ランスには放っておいてくれと背を向けた。ランスはハァ、と溜息を吐き、グレンにクロエからの伝言を伝える。
「アニキ、クロエ姉ちゃんから伝言があるんだけど」
「……何だよ、仕事の話か?」
グレンは振り返りランスを見る。
「明日、研究所に来て欲しいってさ。アニキの手を借りたいって言ってた。詳しい事はオレが聞いても意味わかんなかったから、直接アニキが聞いてきてくれよ。なんか、いい話みたいだぜ?」
ランスはニカッと笑い、ぐっと親指を突き出した。グレンは子供のランスに気を使わせた事を少し後悔して、息を吐き、ランスの頭を撫でた。
「わかったよ。実験台でもなんでもやってやるさ。どうせ俺の事を慰めてやってくれとか、そんな事をお前が頼んだんだろ?」
「オレ、何にも頼んでないぜ? とにかく、明日行けばわかるって」
しらばっくれるランスの下手な演技は、グレンを思わず噴き出させた。笑顔が戻ったグレンを見て満足したランスは、テーブルに並べられた高級な酒の瓶をせっせと棚に仕舞い始めた。そしてクロエに伝授された、イザークを悶絶させた例の煎じ薬をテーブルに置く。
「何だこれ?」
嗅いだことの無い匂いに、グレンは警戒心を露にした。
「これ飲んでおけば、明日具合が悪くなる事は無いんだってさ。この一週間、毎日二日酔いのまま仕事に出てただろ? だから、姉ちゃんに作り方聞いてオレが作った特製ドリンクだぜ。明日の朝飲んでも良いけど、今のうちに飲んだ方が朝スッキリ起きられるだろ? ほら、グッと一気に飲み干して」
グレンはクロエのレシピなら大丈夫だろうと、言われるままにグッと飲み干した。
「ん…………!? んがぁーーーーー!! げほっ、がはっ、馬鹿これ、飲んじゃ駄目なやつだろ!? お前作り方間違えたんじゃないのか? 口ん中痺れるくらい苦いぞ!」
「えー? ちゃんと聞いた通り作ったぜ?」
ランスは忘れていた。この薬と対になる飴の存在を。
「あ! それだけじゃ駄目だって言われたの忘れてた! 飴! 飴! 今作るから、我慢して! やっべー、煎じ薬作って満足してたぜ」
ランスは慌てて台所へ向い、クロエに渡された材料を並べて飴作りを始めた。全部自分でやりたいと言って、クロエが作ってあげると言うのを断ったのは失敗だった。慌てすぎて肘をボールに引っ掛けてガラーンという音を響かせ材料を全て床にぶちまけてしまった。
「わあ! やべー、材料きっちり一回分しか貰ってないのに……」
チラリとグレンを見れば、絶望的な表情でランスを見ていた。ランスは冷や汗を流し、言い訳する。
「苦いのは時間が経てば消えるって言ってた! へへへ、ごめん、アニキ……」
ランスはしゅんとして床を掃除し、それぞれの材料の入っていた包み紙を片付け始めた。すると、コロンと小さな紙袋が出て来た。袋には何か書いてある。『苦味を消す飴です。普通に食べても美味しいので、ランスのおやつに』
「姉ちゃん……!」
ランスは中から飴をひとつ取り出して、有無を言わさずグレンの口に押し込んだ。
「おい! 今度は何だよ?」
グレンは涙が出るほど苦かった口の中が一瞬で甘酸っぱい味に満たされて驚いた。コロコロと口の中で飴を転がす。
「どうだ? もう苦くないだろ?」
「これが何なのか説明してから口に入れてくれ。ビックリするだろうがっ」
ランスはこの流れはゲンコツが降って来ると思い、ぎゅっと目を瞑って衝撃に備えた。
しかしいつまで経っても衝撃が来ない。そっと薄目を開けてグレンを見ると、ランスを見て優しく微笑んでいた。
「あれ? ゲンコツは?」
「殴られることなんてしてないだろ。それとも、自主的にゲンコツが欲しいと言うなら、聞いてやらない事も無い」
グレンは拳を振り上げて見せる。
「イヤイヤイヤ、いらないし。あ、オレ明日早いからもう寝る。おやすみ、アニキ!」
ランスは自分の部屋に駆け込んでドアを閉めた。グレンはそれを見て、久しぶりに声をあげて笑った。
翌日、二日酔いになることもなくスッキリ目覚めたグレンは、ランスが用意して行った朝食を食べて魔法省へと向った。受付のサラは事前に聞いていた風貌の男性が現れたため、すぐにクロエを呼び出した。
「おはようございます、グレンさん。今日はお仕事お休みなんですよね? 実は折り入って相談があって来てもらいました。付いて来てくれますか?」
「おはよう……俺で何か実験でもするのか?」
クロエはクスクスと笑いながら、研究所の奥へとグレンを連れて行く。
「これを持っていて下さい。これが無いと入れないので」
入室許可証を渡され、グレンはそれを首から提げた。着いたところはまるで倉庫のような広い研究室だった。
「カール、レオ、フランツ、お待たせ! グレンさんを連れて来たわよ」
研究所の中には最近王都内でたまに見かける箱状の荷台と、それを引く乗り物が何台も並んでいる。グレンは興味深そうにそれを横目に見ながらクロエの後について行く。その先のガラスの研究ブースの前で紹介されたのはクロエの結婚式の時に会った青年達だった。
「おはようございます、グレンさん。今日はあなたにお願いがあって来て頂きました」
カールは爽やかに挨拶し、グレンに近付いた。
「あ、おはようございます、俺に相談があると聞いて来たんだが……」
「はい、グレンさんは荷運びを生業としているそうですね。ここでは輸送用の魔道具を研究、製作しています。今までは大型で、何人かの魔力で動かす物を作っていたのですが、最近一人でも動かせる物を開発しました。そこで是非、グレンさんにそれを使って欲しいと思いまして」
レオは布で覆われていた一台の車をグレンに披露した。イメージとしては軽トラと2トントラックの中間のような物だ。今まではロバに荷車を引かせて大きな荷物を数回に分けて運んでいたが、これなら何件分もの荷物を一度に運べて、しかも餌代もかからない。それに箱状の荷台は雨が降っていても荷物が濡れる心配も無い。
グレンは目を丸くしてその車を見た。素材は木ではなく、魔力を通す金属で出来たそれはどう見ても高価な物だ。
「いや俺、これを買うだけの貯えは無いです。すごく便利そうだけど、他を当たって下さい」
「嫌だな、誰も買ってくれとは言ってませんよ。あなたは主に王都内の配達を請け負っていますよね。これを使って仕事をしてくれるだけで良いんです。それが宣伝になって、この魔道具が売れる事を狙っているんですよ。それに実際使う人の意見を聞きたいんです。町中では大きすぎるかも知れないですし、もう少しコンパクトに設計するべきか、荷台の使い勝手はどうかなど、気付いた事を教えて下さい」
グレンは突如舞い込んだ幸運に、信じられないといった様子で頬を抓った。夢では無い。
「俺で良いんですか? もっと適任の人がいるんじゃ?」
「あなたの仕事ぶりはクロエから聞いています。信用のおける人物であると彼女の保障付きですから、あなたを選んだんですよ。この先、運送業は需要が増えるでしょう。近い将来、まずは小規模ですが、初の運送会社を立ち上げて、あなたをその社長に据えたいと考えています」
カールの説明はグレンには理解しがたいものだった。学も無い自分が会社を経営など出来るはずが無い。
「無理無理、そんなの出来るわけないよ。いち従業員としてなら働くけど、いきなり社長って……」
「無理ではないでしょう、今だって数名の従業員を従えて営業してますよね? すでに立派な事業主ですよ。彼らに給料を払い、国に税金も納めている。違いますか?」
グレンはぐっと言葉を飲み込んだ。言われてみれば、仕事が増えてから下町の手下や仲間に手伝ってもらい、給料を渡している。
「あなたが今、手下だと思っている彼らをきちんと教育して社員にできるかどうかは、あなたに懸かっています。やる気さえあれば、クロエの作った学校で経営の勉強も出来ますし、グレンさんが下町の住人を引き上げて生活を向上させる事はとても素晴らしい事だと思いませんか? 会社立ち上げはまだ先の話です。まずはこの魔道具を使ってみて下さい」
グレンは戸惑ってクロエを見る。クロエは微笑んでグレンに頷いた。
「その話、引き受けます」
グレンは覚悟を決め、ここに居る技術者達を見た。自分より若い彼らが頑張っているのだ。自分も頑張れば、まだ成長できるのではと考えた。
魔道具を運転するには練習が必要だ。グレンは翌日からここに通い、練習する事になった。
カール達の研究室からの帰り道、クロエに外まで送ってもらいながらグレンは質問した。
「クロエ、俺のことランスから何か言われただろう?」
クロエは一瞬動きが止まり、顔が強張った。
「私、何にも聞いてないですよ? とにかく明日から、練習頑張って下さいね。それじゃ、グレンさん、今日は来て頂いてありがとうございました。ここで失礼します」
クロエはグレンに手を振って研究室に戻って行った。
「まったく、姉弟して演技が下手だな。フフ、あいつらの気遣いに甘えてばかりもいられないな。この俺が社長か、まぁ、やれるだけやってみるか」
努力を重ねたグレンの運送会社立ち上げが現実のものとなるのは、そう先の話ではなかった。
「アニキ、いつまでウジウジしてるんだ? クロエ姉ちゃんの時はあっさり諦めたのに、今回は違うんだな。アリアさんの事は仕方ないと思うぜ? アニキも頑張ったけどさ、アリアさんは初めからエドモンド兵士長の事が好きだったんだ。オレも協力しようと思ったけどさ、アニキの良いところを話したりして。でも無理だった。そんなに気を落とすなよ、な?」
ランスはかれこれ一週間、落ち込んで毎晩酒を飲むグレンを黙って見守って来たが、さすがに放ってはおけず慰める事にした。
「お前にはわからないだろ。本気で好きになった女が出来たら、俺の気持ちが良くわかるよ」
柄にもなく高級な酒を飲み、ランスには放っておいてくれと背を向けた。ランスはハァ、と溜息を吐き、グレンにクロエからの伝言を伝える。
「アニキ、クロエ姉ちゃんから伝言があるんだけど」
「……何だよ、仕事の話か?」
グレンは振り返りランスを見る。
「明日、研究所に来て欲しいってさ。アニキの手を借りたいって言ってた。詳しい事はオレが聞いても意味わかんなかったから、直接アニキが聞いてきてくれよ。なんか、いい話みたいだぜ?」
ランスはニカッと笑い、ぐっと親指を突き出した。グレンは子供のランスに気を使わせた事を少し後悔して、息を吐き、ランスの頭を撫でた。
「わかったよ。実験台でもなんでもやってやるさ。どうせ俺の事を慰めてやってくれとか、そんな事をお前が頼んだんだろ?」
「オレ、何にも頼んでないぜ? とにかく、明日行けばわかるって」
しらばっくれるランスの下手な演技は、グレンを思わず噴き出させた。笑顔が戻ったグレンを見て満足したランスは、テーブルに並べられた高級な酒の瓶をせっせと棚に仕舞い始めた。そしてクロエに伝授された、イザークを悶絶させた例の煎じ薬をテーブルに置く。
「何だこれ?」
嗅いだことの無い匂いに、グレンは警戒心を露にした。
「これ飲んでおけば、明日具合が悪くなる事は無いんだってさ。この一週間、毎日二日酔いのまま仕事に出てただろ? だから、姉ちゃんに作り方聞いてオレが作った特製ドリンクだぜ。明日の朝飲んでも良いけど、今のうちに飲んだ方が朝スッキリ起きられるだろ? ほら、グッと一気に飲み干して」
グレンはクロエのレシピなら大丈夫だろうと、言われるままにグッと飲み干した。
「ん…………!? んがぁーーーーー!! げほっ、がはっ、馬鹿これ、飲んじゃ駄目なやつだろ!? お前作り方間違えたんじゃないのか? 口ん中痺れるくらい苦いぞ!」
「えー? ちゃんと聞いた通り作ったぜ?」
ランスは忘れていた。この薬と対になる飴の存在を。
「あ! それだけじゃ駄目だって言われたの忘れてた! 飴! 飴! 今作るから、我慢して! やっべー、煎じ薬作って満足してたぜ」
ランスは慌てて台所へ向い、クロエに渡された材料を並べて飴作りを始めた。全部自分でやりたいと言って、クロエが作ってあげると言うのを断ったのは失敗だった。慌てすぎて肘をボールに引っ掛けてガラーンという音を響かせ材料を全て床にぶちまけてしまった。
「わあ! やべー、材料きっちり一回分しか貰ってないのに……」
チラリとグレンを見れば、絶望的な表情でランスを見ていた。ランスは冷や汗を流し、言い訳する。
「苦いのは時間が経てば消えるって言ってた! へへへ、ごめん、アニキ……」
ランスはしゅんとして床を掃除し、それぞれの材料の入っていた包み紙を片付け始めた。すると、コロンと小さな紙袋が出て来た。袋には何か書いてある。『苦味を消す飴です。普通に食べても美味しいので、ランスのおやつに』
「姉ちゃん……!」
ランスは中から飴をひとつ取り出して、有無を言わさずグレンの口に押し込んだ。
「おい! 今度は何だよ?」
グレンは涙が出るほど苦かった口の中が一瞬で甘酸っぱい味に満たされて驚いた。コロコロと口の中で飴を転がす。
「どうだ? もう苦くないだろ?」
「これが何なのか説明してから口に入れてくれ。ビックリするだろうがっ」
ランスはこの流れはゲンコツが降って来ると思い、ぎゅっと目を瞑って衝撃に備えた。
しかしいつまで経っても衝撃が来ない。そっと薄目を開けてグレンを見ると、ランスを見て優しく微笑んでいた。
「あれ? ゲンコツは?」
「殴られることなんてしてないだろ。それとも、自主的にゲンコツが欲しいと言うなら、聞いてやらない事も無い」
グレンは拳を振り上げて見せる。
「イヤイヤイヤ、いらないし。あ、オレ明日早いからもう寝る。おやすみ、アニキ!」
ランスは自分の部屋に駆け込んでドアを閉めた。グレンはそれを見て、久しぶりに声をあげて笑った。
翌日、二日酔いになることもなくスッキリ目覚めたグレンは、ランスが用意して行った朝食を食べて魔法省へと向った。受付のサラは事前に聞いていた風貌の男性が現れたため、すぐにクロエを呼び出した。
「おはようございます、グレンさん。今日はお仕事お休みなんですよね? 実は折り入って相談があって来てもらいました。付いて来てくれますか?」
「おはよう……俺で何か実験でもするのか?」
クロエはクスクスと笑いながら、研究所の奥へとグレンを連れて行く。
「これを持っていて下さい。これが無いと入れないので」
入室許可証を渡され、グレンはそれを首から提げた。着いたところはまるで倉庫のような広い研究室だった。
「カール、レオ、フランツ、お待たせ! グレンさんを連れて来たわよ」
研究所の中には最近王都内でたまに見かける箱状の荷台と、それを引く乗り物が何台も並んでいる。グレンは興味深そうにそれを横目に見ながらクロエの後について行く。その先のガラスの研究ブースの前で紹介されたのはクロエの結婚式の時に会った青年達だった。
「おはようございます、グレンさん。今日はあなたにお願いがあって来て頂きました」
カールは爽やかに挨拶し、グレンに近付いた。
「あ、おはようございます、俺に相談があると聞いて来たんだが……」
「はい、グレンさんは荷運びを生業としているそうですね。ここでは輸送用の魔道具を研究、製作しています。今までは大型で、何人かの魔力で動かす物を作っていたのですが、最近一人でも動かせる物を開発しました。そこで是非、グレンさんにそれを使って欲しいと思いまして」
レオは布で覆われていた一台の車をグレンに披露した。イメージとしては軽トラと2トントラックの中間のような物だ。今まではロバに荷車を引かせて大きな荷物を数回に分けて運んでいたが、これなら何件分もの荷物を一度に運べて、しかも餌代もかからない。それに箱状の荷台は雨が降っていても荷物が濡れる心配も無い。
グレンは目を丸くしてその車を見た。素材は木ではなく、魔力を通す金属で出来たそれはどう見ても高価な物だ。
「いや俺、これを買うだけの貯えは無いです。すごく便利そうだけど、他を当たって下さい」
「嫌だな、誰も買ってくれとは言ってませんよ。あなたは主に王都内の配達を請け負っていますよね。これを使って仕事をしてくれるだけで良いんです。それが宣伝になって、この魔道具が売れる事を狙っているんですよ。それに実際使う人の意見を聞きたいんです。町中では大きすぎるかも知れないですし、もう少しコンパクトに設計するべきか、荷台の使い勝手はどうかなど、気付いた事を教えて下さい」
グレンは突如舞い込んだ幸運に、信じられないといった様子で頬を抓った。夢では無い。
「俺で良いんですか? もっと適任の人がいるんじゃ?」
「あなたの仕事ぶりはクロエから聞いています。信用のおける人物であると彼女の保障付きですから、あなたを選んだんですよ。この先、運送業は需要が増えるでしょう。近い将来、まずは小規模ですが、初の運送会社を立ち上げて、あなたをその社長に据えたいと考えています」
カールの説明はグレンには理解しがたいものだった。学も無い自分が会社を経営など出来るはずが無い。
「無理無理、そんなの出来るわけないよ。いち従業員としてなら働くけど、いきなり社長って……」
「無理ではないでしょう、今だって数名の従業員を従えて営業してますよね? すでに立派な事業主ですよ。彼らに給料を払い、国に税金も納めている。違いますか?」
グレンはぐっと言葉を飲み込んだ。言われてみれば、仕事が増えてから下町の手下や仲間に手伝ってもらい、給料を渡している。
「あなたが今、手下だと思っている彼らをきちんと教育して社員にできるかどうかは、あなたに懸かっています。やる気さえあれば、クロエの作った学校で経営の勉強も出来ますし、グレンさんが下町の住人を引き上げて生活を向上させる事はとても素晴らしい事だと思いませんか? 会社立ち上げはまだ先の話です。まずはこの魔道具を使ってみて下さい」
グレンは戸惑ってクロエを見る。クロエは微笑んでグレンに頷いた。
「その話、引き受けます」
グレンは覚悟を決め、ここに居る技術者達を見た。自分より若い彼らが頑張っているのだ。自分も頑張れば、まだ成長できるのではと考えた。
魔道具を運転するには練習が必要だ。グレンは翌日からここに通い、練習する事になった。
カール達の研究室からの帰り道、クロエに外まで送ってもらいながらグレンは質問した。
「クロエ、俺のことランスから何か言われただろう?」
クロエは一瞬動きが止まり、顔が強張った。
「私、何にも聞いてないですよ? とにかく明日から、練習頑張って下さいね。それじゃ、グレンさん、今日は来て頂いてありがとうございました。ここで失礼します」
クロエはグレンに手を振って研究室に戻って行った。
「まったく、姉弟して演技が下手だな。フフ、あいつらの気遣いに甘えてばかりもいられないな。この俺が社長か、まぁ、やれるだけやってみるか」
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