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過去を知る その1
本の内容はこうだ。
約1000年前、4年に及ぶ戦争で国は敗戦の色を濃くしていた。
当時の国王ルークは、后の双子の妹、魔女として名高いセラフィーナの強大な魔力を借りて戦争に勝利した。
セラフィーナが手を貸す条件として提示したのは、自分を正妃として迎える事。政略とは言え、元々長年婚約者であったセラフィーナとの婚約を一方的に破棄し、一目惚れした姉のシャルロッテに乗り換え后に迎えた。
二人の間には子は出来ず、妹セラフィーナの呪いではないかと囁かれていた。
戦争後、セラフィーナは魔力をほぼ使い果たし無抵抗のまま塔に幽閉された。国王は約束を果たさず、彼女に労いの言葉を一言発しただけだった。姉であるシャルロッテはセラフィーナが居るせいで子宝に恵まれない、危険な魔女を殺してと国王に頼み、幽閉から1年でセラフィーナは毒殺されてしまった。
塔にはセラフィーナの最後の魔力で結界が張られ、それは周囲の森にまで影響した。塔の内部に何かを残したのではと、捜索隊が組まれるが森を抜けることすらできなかった。
シャルロッテには生涯子供は出来ず、国王は側室を迎え子を生した。初めに王子、次に生まれたのは双子の姫。
国王は娘である双子の妹姫にセラフィーナの面影を重ね、自身の手で殺めてしまう。その子は迷いの森に埋められた第一号となり、王が自分の所業を正当化するためについた嘘こそが、呪いの正体。
「セラフィーナの呪いによって双子の姫が生まれると国を滅ぼす。妹姫は魔女だ、殺して森に埋めろ。それで国は安泰だ」
実際にそれ以降、この国に戦争は起きていない。小さな火種が起きても何故かすぐに解決した。それも全て言い伝えを守っているからだと信じられている。
この書は国王が記したのではなく、当時の宰相が記録した物だった。宰相は国王の愚行を窘め、正そうとしたが志半ばで死去。その意思を継いだ者がこの書庫を造り事実を後世に伝えようとしたのだ。ここに入れるのは王族と宰相、管理する司書だけだ。
そしてこの1000年の間にこの書庫にたどり着いた王族はディアナ1人だけだった。
「何これ……悪いのは魔女じゃ無く国王様じゃないの」
ディアナは他の書にも目を通した。王家の家系図を見れば、わかりやすく子供の数が減っていた。そしてもう一つの家系図を見つけた。何故ここに保管しているのかわからない、侯爵家の家系図だ。セラフィーナの兄の子供から始まるそれを見て、ディアナの母の母国と縁を結んでいることがわかった。それがディアナの母へと繋がり、アデルハイトが最後に書き足されていた。
「私、セラフィーナ様と血が繋がってる? だから塔に入れるのかしら。シーラはお母様の従姉妹だし、そういう事かもしれないわ。塔のどこかにセラフィーナ様は何かを残しているかもしれない」
隠し書庫を飛び出し、湖の塔へ向かう。怪しい場所が無かったか思い浮かべると、隠し書庫の様に作り付けの棚と棚の間が不自然に空いた場所があることを思い出す。その場所はディアナが使っている部屋。今はそこにライティングデスクが置かれていて、勉強スペースとなっている。
勢いよくドアを開け、階段を駆け上がるディアナに驚くシーラを横目に見ながら、自分の部屋に飛び込む。重い机を力任せに引きずってずらし、壁に触れてみる。スッっと手がすり抜けた。そのまま中へ入ると、2メートル四方の小さな空間に紙を紐で綴じただけの本が台に乗っている。
それを手に取りページを捲ると目の前の景色が突然変わった。
何事かと動揺する。
だって目の前には裸の男が覆いかぶさる形でこちらを見ているのだから。悲鳴をあげたいが声が出ない。体も動かない。実際には体は動いているが自分の意思で動いているのではないし感覚も無い。男が「セラフィーナ」と切なげに呼んだ。
どうやらセラフィーナの視点で物を見ているようだとわかり、この状況は理解できないが自分は黙って見ているしか無いらしい。目を覆いたいがそれも出来ない。相手の男は誰なのか、セラフィーナに結婚暦は無かったはずだ。相手の男は金髪に翡翠の目、嗜虐的な笑みを見せ、乱暴に彼女に触れ、思うがままに猛りをぶつけている。
(愛し合っているのでは無い? だた乱暴されているだけなのかしら?)
セラフィーナの腕が男を求めて伸ばされる。
「ルーク……様……愛しています」
(ルーク? ルークって王子よね? 婚約破棄した王子でしょ? なのに二人はこんな仲だったの?)
二人は互いを求め合い、ルークの口からも愛していると何度も囁かれている。これでは婚約解消する二人とは思えない。空が白み始め、小鳥の囀りが聞こえて来た。
ディアナの中にセラフィーナの感情が流れ込む。幸福感でいっぱいの、こちらが恥ずかしくなるような心の声が聞こえる。
ディアナの意識は深くセラフィーナと繋がり、彼女の記憶が一気に流れ込んできた。
(彼女の心が見えるわ。本当に王子の事が好きなのね)
しかしルーク王子からは、信じられない言葉が吐き出された。
約1000年前、4年に及ぶ戦争で国は敗戦の色を濃くしていた。
当時の国王ルークは、后の双子の妹、魔女として名高いセラフィーナの強大な魔力を借りて戦争に勝利した。
セラフィーナが手を貸す条件として提示したのは、自分を正妃として迎える事。政略とは言え、元々長年婚約者であったセラフィーナとの婚約を一方的に破棄し、一目惚れした姉のシャルロッテに乗り換え后に迎えた。
二人の間には子は出来ず、妹セラフィーナの呪いではないかと囁かれていた。
戦争後、セラフィーナは魔力をほぼ使い果たし無抵抗のまま塔に幽閉された。国王は約束を果たさず、彼女に労いの言葉を一言発しただけだった。姉であるシャルロッテはセラフィーナが居るせいで子宝に恵まれない、危険な魔女を殺してと国王に頼み、幽閉から1年でセラフィーナは毒殺されてしまった。
塔にはセラフィーナの最後の魔力で結界が張られ、それは周囲の森にまで影響した。塔の内部に何かを残したのではと、捜索隊が組まれるが森を抜けることすらできなかった。
シャルロッテには生涯子供は出来ず、国王は側室を迎え子を生した。初めに王子、次に生まれたのは双子の姫。
国王は娘である双子の妹姫にセラフィーナの面影を重ね、自身の手で殺めてしまう。その子は迷いの森に埋められた第一号となり、王が自分の所業を正当化するためについた嘘こそが、呪いの正体。
「セラフィーナの呪いによって双子の姫が生まれると国を滅ぼす。妹姫は魔女だ、殺して森に埋めろ。それで国は安泰だ」
実際にそれ以降、この国に戦争は起きていない。小さな火種が起きても何故かすぐに解決した。それも全て言い伝えを守っているからだと信じられている。
この書は国王が記したのではなく、当時の宰相が記録した物だった。宰相は国王の愚行を窘め、正そうとしたが志半ばで死去。その意思を継いだ者がこの書庫を造り事実を後世に伝えようとしたのだ。ここに入れるのは王族と宰相、管理する司書だけだ。
そしてこの1000年の間にこの書庫にたどり着いた王族はディアナ1人だけだった。
「何これ……悪いのは魔女じゃ無く国王様じゃないの」
ディアナは他の書にも目を通した。王家の家系図を見れば、わかりやすく子供の数が減っていた。そしてもう一つの家系図を見つけた。何故ここに保管しているのかわからない、侯爵家の家系図だ。セラフィーナの兄の子供から始まるそれを見て、ディアナの母の母国と縁を結んでいることがわかった。それがディアナの母へと繋がり、アデルハイトが最後に書き足されていた。
「私、セラフィーナ様と血が繋がってる? だから塔に入れるのかしら。シーラはお母様の従姉妹だし、そういう事かもしれないわ。塔のどこかにセラフィーナ様は何かを残しているかもしれない」
隠し書庫を飛び出し、湖の塔へ向かう。怪しい場所が無かったか思い浮かべると、隠し書庫の様に作り付けの棚と棚の間が不自然に空いた場所があることを思い出す。その場所はディアナが使っている部屋。今はそこにライティングデスクが置かれていて、勉強スペースとなっている。
勢いよくドアを開け、階段を駆け上がるディアナに驚くシーラを横目に見ながら、自分の部屋に飛び込む。重い机を力任せに引きずってずらし、壁に触れてみる。スッっと手がすり抜けた。そのまま中へ入ると、2メートル四方の小さな空間に紙を紐で綴じただけの本が台に乗っている。
それを手に取りページを捲ると目の前の景色が突然変わった。
何事かと動揺する。
だって目の前には裸の男が覆いかぶさる形でこちらを見ているのだから。悲鳴をあげたいが声が出ない。体も動かない。実際には体は動いているが自分の意思で動いているのではないし感覚も無い。男が「セラフィーナ」と切なげに呼んだ。
どうやらセラフィーナの視点で物を見ているようだとわかり、この状況は理解できないが自分は黙って見ているしか無いらしい。目を覆いたいがそれも出来ない。相手の男は誰なのか、セラフィーナに結婚暦は無かったはずだ。相手の男は金髪に翡翠の目、嗜虐的な笑みを見せ、乱暴に彼女に触れ、思うがままに猛りをぶつけている。
(愛し合っているのでは無い? だた乱暴されているだけなのかしら?)
セラフィーナの腕が男を求めて伸ばされる。
「ルーク……様……愛しています」
(ルーク? ルークって王子よね? 婚約破棄した王子でしょ? なのに二人はこんな仲だったの?)
二人は互いを求め合い、ルークの口からも愛していると何度も囁かれている。これでは婚約解消する二人とは思えない。空が白み始め、小鳥の囀りが聞こえて来た。
ディアナの中にセラフィーナの感情が流れ込む。幸福感でいっぱいの、こちらが恥ずかしくなるような心の声が聞こえる。
ディアナの意識は深くセラフィーナと繋がり、彼女の記憶が一気に流れ込んできた。
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しかしルーク王子からは、信じられない言葉が吐き出された。
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