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第2章〜冒険の始まり

伝説‥66話〜調査と接近

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 ここはジルベイムの屋敷。ミクは姿を隠し気付かれないように移動しながら進み、エイリスが監禁されている場所を探していた。

(ん~、1階の部屋は全部みたけど、それらしい人はいなかったのら。上の階にいるのかな?とりあえず2階の部屋を見てくるのら。)

 屋敷の至る所に警備の者達が配置されており、2階は更に多くの警備の者達が配置されていた。

 ミクは姿を消していたが、警備の者の数が多く慎重に廊下を歩いていた。

(何処にエイリスさんいるのかな?こうも屋敷が広いと見つけるの大変なのら。)

 ミクは各部屋毎に透視スキルを使いエイリスを探していた。

 すると2階の奥の部屋の扉の前に、いかにも強そうな者達が5人座り込んでいた。

(いかにも怖そうな人達なのら。もしかしたら、あの部屋にエイリスさんがいるかもなのら。でも、どうやって確認しよう。)

 ミクはメニュー画面を開き自分のスキルを確認してみた。

(ん~、そうだなぁ……気付かれずに部屋の中を確認するんだから。やっぱり盗賊の抜け穴しかないのら。でも、連続では使えないしある程度近づかないと使えないのら。……うん、やるしかないのら。)

 ミクは扉の前の男達に気付かれないように、手前の部屋までくると壁に手を翳し、

 《盗賊の抜け穴!!》

 壁に穴が空き吸い込まれるように消え、男達が扉の前で座り込んでいる部屋の中の壁に穴が繋がり、その穴からミクが出てきた。

(ふぅ、なんとか成功したのら。)

 ミクは部屋の中を見渡してみた。

(ほぇ~、部屋の中は結構広いのら。)

 そう思いながら部屋の中を歩き調べ始めた。

(エイリスさんこの部屋にいるのかな?とりあえず今日はいるかどうか確認するだけにするのら。)

 ミクは更に部屋の奥の方へと進んでいった。

 すると部屋の奥の方に男が3人いて、更に奥の壁際に縄で拘束された女性がいた。

(もしかして、あれがエイリスさんかもしれないのら。グラディスさんが言っていたエイリスさんの特徴は、確かオレンジ色のふわふわした感じの肩より長い髪で、前髪を花飾りの付いたカチューシャであげていて、穏やかな感じの人だって言ってたのら。)

 ミクはエイリスの特徴を思い出しながらその女性をみた。

(うん、特徴も合ってるし、間違いなくエイリスさんなのら。ん~、今直ぐ助けてあげたいけど、私だけの力じゃこの屋敷からエイリスさんを助けるのは無理なのら。とりあえずエイリスさんの居場所が分かったし、さっきここにくる途中で、色々情報も聞けたし今日はこのくらいにして宿屋に戻るのら。)

 ミクはまたさっきの壁の方まで行くと、盗賊の抜け穴を使い廊下にでた。そして、廊下を歩き屋敷の外に出るとトパーズの街の宿屋に向かった。


 ここはトパーズの街の酒場。シュウとグラディスはシュウの後ろに座った者達の話を聞いていた。

 しばらくするとその者達は酒場を出ていった。

 シュウとグラディスはそれを確認すると話し出した。

「グラディスさん。今の話だとジルベイムの屋敷に、かなりの人数の協力者を集めているみたいですね。」

「そのようだな。とりあえず今聞いた事は宿屋に戻りクレイ達を交え話した方が良さそうだな。」

「そうですね。じゃ、そろそろ行きますか。」

 そう言うとシュウとグラディスは酒場をでた。

 そして、宿屋に向かおうと歩き出すと、30代ぐらいの体格の良い男性が建物の間から出てきて、シュウとグラディスの前に立つと声を掛けてきた。

「いきなり足を止め申し訳ねぇ。俺の名はラフィル・コルドってんだが。おりいってあんた達に話がある。」

「俺達に話って何ですか?」

(ラフィル・コルドって、確かアイネが言っていたやつの名前だったはず。でも、何で俺とグラディスさんに声を掛けてきたんだ?)

「あんた達は旅の冒険者だよな?」

「ああ。そうだが。」

(こいつが、アイネが言っていた者の1人。でも、何故、俺とシュウに声を掛けてきた?)

「今、強い冒険者を募っててな。それで、あんた達が酒場から出てくるのを見て、強い冒険者なんじゃねぇかと思って声かけたんだが。もし、急ぎの旅じゃねぇなら協力してくれねぇか?」

「ちょっと待ってくれないか。いきなり協力してくれと言われても、何に協力するのか分からないのに、返事もできない。」

「ああ、悪かった。確かにそうだな。いやなぁ、ある偉い人の屋敷の警備を強化する為、強い冒険者をこうやって声を掛け募って歩いていた。あんた達は見た目だけなら強そうに見えないが、俺が見る限りだと強い能力を持ってるとみた。特に若いあんちゃんの方はかなりの使い手だよな?その体でその斧を軽々と肩に担いで歩いている。」

「なるほど。それで声を掛けてきたという事か。だが、直ぐに返事をするのは無理だ。他の旅の仲間とも相談しないと決められない。」

「なるほど。その仲間も強いのか?」

「俺より、強くはない。だが、並のやつよりは強い方だと思うんだが。」

「じゃ、こうしよう。その仲間とこの事を相談し、協力してくれるかくれねぇかの返事を明日聞かせてくれ。」

「ああ、それは構わないが、報酬は貰えるんだよな?」

「ああ、勿論だ!報酬は、1日10万ジエムと食事と泊まるとこも用意する。」

「ずいぶんといい報酬だな。まぁ、それも仲間と相談しないと決められない。それで、何処でその返事を伝えればいいんだ?」

「ああ、分かった。そうだな。そこの酒場で待ち合わせって言うのはどうだ?」

「酒場か。俺はそれでいいが。」

「じゃ、それで決まりだな。あっ、そうだった。名前を聞いて無かったな。」

「名前かぁ。俺はシュウだ。」

「余り名前を名乗りたくなかったんだが。致し方ない名乗るのも礼儀だしな。俺の名はグラディスだ。」

「シュウとグラディスか。じゃ、明日酒場でな。」

 そう言うとラフィルはシュウ達の元を離れていった。

「グラディスさん。まさか、向こうから声をかけてくると思いませんでした。」

「ああ、確かにな。一瞬、俺達の正体がバレたのかと思った。」

「そうですね。この事を明日までに、クレイ達とどうするか相談し決めないと。」

 シュウがそう言うとグラディスは頷きその後宿屋に向かった。
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