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第4章〜儀式の始まり…そして…

番外⑵‥⓬〜超難関クエスト‥⑸

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 無残にもカウントは減り残り8になっていた。リュウキ達3人はそれぞれミニデーモンナイトを自分達の方に引きつけ、その間にマリースとクロノアは魔法を放つタイミングを測っていた。

 リュウキ達3人はクロノアとマリースが攻撃しやすいように追い込むも、ミニデーモンナイトは、俊敏な動きで、すぐさま後ろに回り込まれ、それを回避するのがやっとだった。

(なかなか、魔法を使うタイミングが合わないんだけど。)

(ん~、流石にこうちょこまかと動かれると上手く狙いが定まらない。)

(なかなか1ヶ所に集まってくれそうもねぇな。さて、どうする?)

(あ~、イライラしてきたで!焦んなと思えば思うほど余計イライラするやんけ!)

(なんだこの違和感は?これは超難関クエストのはず。ミニデーモンナイトを1ヶ所に集めて魔法で一掃する。これはそんな単純な考えでクリア出来るクエストなのか?)

「リュウキ、クレイ。すまないが俺に2分時間をくれ。少し気付いた事があるんだ。それを確認する時間が欲しい。」

(あのミニデーモンナイトの動き……それぞれが不規則に動いて攻撃しているように見えるが、本当にそうなのか?)

 シュウは、ミニデーモンナイトを2体に集中して動き観察した。

(やはり、そうか。コイツら不規則に動いてるとばかりに考えてたが、実は違うんだ。10体が同じ姿をしているから、誤魔化されていたが、30秒ごとにある一定の動きを繰り返して、近くで反応した敵を攻撃してやがる。俺達は、同じ姿に騙されていたって事か。それならリュウキ達がくれた残りの時間。その動きを全力で見極めてやる。)

 シュウはミニデーモンナイトの微妙な動きを更に細かく分析する為、目を凝らし観察していた。

(なるほどな。ようやく動きが読めた。という事は……チャンスは残り5分になった時って訳か。残り5分になれば、コイツらは左右に5体ずつに分かれたポジションになる。左の5体をリュウキに風の斬撃で、右にいる5体へ近付けてもらう。そこで俺が下からの竜巻で10体を跳ね上げる。クレイは竜巻から外れた奴を集めて、クロノア達に合図を送り離脱する。そこでクロノアとマリースの全力の魔法で、まとめてコイツらを叩き潰す。勿論リスクはあるが、このチャンスは残り5分になった時の1回だけだ。)

 シュウは画面越しで一息つくと、

(まぁこれで倒せないなら、俺達にはお手上げって事だがな。)

「リュウキ。今の状況で風の斬撃は放てるか?」

「ああ、大丈夫だと思うが、どうするつもりだ?」

「上手くいくかは分からないけど、俺に考えがある。それからクレイ。コイツらは残り5分になれば左右に分かれる。リュウキが風の斬撃で右の5体を左に寄せる。と同時に、俺が下から10体全部を竜巻で跳ね上げる。クレイは竜巻から外れた奴を1ヶ所に追い込んで欲しい。追い込む方法はクレイに任せる。」

「なるほどな。リュウキとシュウが風の斬撃で吹き飛ばしたミニデーモンナイトを、俺の技で真ん中の一ヶ所に集めるちゅう訳やな……てか、そんなに上手く行くはずないんちゃうか。」

「ああ、そうだな。だからお前の力が必要なんだよ!一瞬だけでも中央に集まれば、クロノアとマリースが狙いやすくなるだろ。出来そうか?クレイ。」

「シュウ……お前、誰に言うとんねん。そんなもん目つぶっててもやったるわ!」

「そうなると、私とマリースはその一瞬に狙いを定めて魔法を放てばいいのよね?」

「ああ、そうなる。もう時間も残り僅かだ。ここで倒せないとクリアは不可能だ。だから残りの魔力を全開で頼む。何とかなりそうか?」

「私は、大丈夫だと思うけど。マリースは大丈夫かな?」

「うん、任せて!ありったけの魔力を込めるから。」

「シュウの言う通り、その方法しか無いな。じゃ、さっさと終わらせるか!」

 リュウキがそう言うと、シュウとクレイは持ち場につき、マリースとクロノアはそのタイミングを待つ事にした。

 そして時は刻々と経過していき、カウントは5を指し示す。

(シュウの言った通りだな。コイツら左右に分かれていきやがる。斬撃とは少し違うが、この技の方でいってみるか。)

 リュウキは刀に持ち替えると、次第に右に集まりつつある5体のミニデーモンナイトに刃を向け後ろに引き構えると、

 《奥義 参の型 青龍!!》

 一瞬のうちにリュウキの周りに風の渦が無数に現れた。

 すると、リュウキは刀を突き出し、その無数の風の渦を右側の5体のミニデーモンナイト目掛け放った。

 同時に、シュウはすかさず斧を右斜め上に振り上げ、

 《斧奥義 極風圧殺撃!!》

 斧を下から斜め上に曲線を描くように、集まった10体のミニデーモンナイト目掛け振り上げると。

 その無数の巨大な風の渦はそのまま10体のミニデーモンナイトを巻き込み吹き飛ばされ舞っていた。

(リュウキ!!はぁ、まぁいいか。斬撃じゃ無いが効果はあったしな。)

(さて、こいつらを一ヶ所に纏めななあかんのか。あれとあれを組み合わせて、攻撃するしかないなぁ。)

 すかさずクレイは舞っている10体のミニデーモンナイト目掛け、

 《カンガルー ハイジャンプ!!》

 高く跳び上がり、(からの~。)

 《ファルコン オブ ゲイル!!》

 クレイは、空中で身体をひねらせ、竜巻から逃げ出そうとするミニデーモンナイト目掛け突っ込み、目にも止まらぬ速さの打撃系を繰り出し一ヶ所に集めていった。

「今や!クロノア、マリース!撃てぇ!」

 一ヶ所に集まった事を確認すると、マリースとクロノアはすかさず、10体のミニデーモンナイト目掛け、

「了解!」

(これで決める!!)

 《極大魔法 ファイヤーワークス!!》

「オッケー!」

(慎重に狙いを定めて!!)

 《極大魔法 メテオダストバースト!!》

 と、呪文を唱えると一ヶ所に集められた10体のミニデーモンナイトの周りが、一瞬のうちに炎の海とかし、無数の隕石を落下爆破していき、50000のダメージを9体に与え倒した。

 しかし、残り1体には25000しか与える事が出来なかった。

 カウントは残り2、マリース達は1体を残してしまい諦めかけていた。

(嘘でしょう……もう魔力が尽きたんだけど。)

 マリースは魔力を消費し動けず中央を向いたまま座り込んでいた。

(ちょっと、何で後1体だけ残るわけ?)

 クロノアはどうしていいかもう分からなくなり呆然と立っていた。

(冗談きっついやんけ?こんなん、どう戦えちゅうねん!)

 クレイは立て膝をつき、残ったミニデーモンナイトを睨んでいた。

(もう全力は出しきった。作戦は間違っていなかった。なのに何で1体残るんだよ!!)

 シュウは力を使い果たし、その場にまだ立てている事さえ不思議な状態だった。

 ミニデーモンナイトは動かず呆然と立っているシュウ目掛け突進してきた。シュウは画面を見ていなかった為、そのまま当たり5000のダメージを負った。

「シュウ!!何やってんだ?おい聞こえてんのか!?」

 シュウはピクリとも動かなかった。

(クソッ!何でこんな時に、シュウ何やってんだよ!!)

 ミニデーモンナイトは、シュウ目掛け氷の刃を放った。

 リュウキは動かないシュウを助ける為、弾みをつけながら駆け出し、刃に炎を纏わせると、氷の刃目掛け刀を一閃した。

 すると、シュウに向かっていた氷の刃を、リュウキの炎の斬撃が撃ち落とした。

 ミニデーモンナイトは、シュウからリュウキに狙いを変えた。

 そして、リュウキはまだ諦めてはいなかった。わずかばかりではあるが、まだ戦えそうだった。

(ふぅ、なんとかこっちを向いてくれたか。あの作戦でも1体が残ってしまったのは予想外だが、諦めが悪いのが俺の良いところなんでな。)

 リュウキはすかさず動いた。刀を左斜め下に構え、すかさずミニデーモンナイトの懐に入り、

 《刀秘儀 極風殺!!》

 斜めに振り上げ斬りつけ、ミニデーモンナイトに当たったかに見えた。だが、ミニデーモンナイトはその攻撃を避け、リュウキ目掛け捨て身の攻撃をしてきた。

(クッ、嘘だろ?これを避けるのかよ!)

 リュウキは、ミニデーモンナイトの捨て身の攻撃に一瞬体勢を崩されかけたが、なんとか持ち直し、身体を後退させ避けた。

(クソッ、技使うにも後少ししか……。てか、シュウ達は何してんだよ!まさか、全部力使い果たしたなんて事はねぇよな?)

 そう思っていると、ミニデーモンナイトの身体全体が、赤く点滅し始めた事に気づいた。

(ちょっと、待て!まさか自爆するんじゃねぇよな?)

 ミニデーモンナイトは自爆しようとしていた。

「自爆なんてさせるかよ!」

 リュウキは、最後の力を振り絞り、刀の柄を右手で握り左下段に構え鞘から素早く抜くと、

 《抜刀術 鷹の構え!!》

 ミニデーモンナイトの死角から斬り上げ、鷹が獲物に襲いかかるように、斜めに素早く振り上げ斬りつけ、40000のダメージを与え撃破した。

 カウントは残り0.05で止まっていた。

(……ふぅ、何とかギリギリ勝てたか。てか、シュウ達は何やってたんだ?)

((((え?))))

 マリース達4人は既に諦めかけていた為、あまりの一瞬の出来事に反応する事も出来ていなかったが、目の前のリュウキのガッツポーズと共に、超難関クエストの終了の音楽が、辺りに鳴り響いた。

 そして、直ぐに画面が切り替わり、各自勝者として報酬を受け取ると元いた噴水広場に戻された。

 そして、マリース達はリュウキの所に集まると、
 
「あれ?これってリュウキさんが倒したんですか?凄いですね。デーモンズナイトも倒しましたし。」

「ん?まぁ、皆の協力があったおかげだけどな。」

「ねぇ?まさか、リュウキが残りのミニデーモンナイト倒したの?」

「ん?ああ、俺は諦めが悪いって有名なんだよ。」

「いや、リュウキの事や。恐らく、わざと余力残してたんとちゃうか?」

「さあ、どうだろうな。でも、倒せたんだからいいだろ?」

「まぁな。だが、リュウキ。ホント、いつもいつも美味しい所を皆かっさらっていくな。」

「シュウ。かっさらうって……あっ!そうだ、皆は報酬何もらったんだ?」

「ああ、俺は、運良く聖龍の斧だ!」

「私は、運が良いのか悪いのか聖龍の衣だった。本当は杖が欲しかったんだけどなぁ。」

「今日の俺はついとる!聖龍のツメをゲットやで。」

「えっと、私は……聖龍の杖だったけど。クロノアがこの杖がいいなら交換しようか?」

「あっ!マリースいいの?うんうん交換しよう!」

 クロノアは聖龍の衣を、マリースは聖龍の杖をそれぞれのフレンドボックスに入れた。

「マリースありがとう!これ欲しかったんだよね。」

「うん。私はとりあえず強化出来れば何でもいいから。」

「そういえば。リュウキは何もらったのかなぁ?」

「ん?クロノア……あーそうだなぁ何だろなぁ。」

「リュウキ。まさか報酬いい物だったんじゃないだろうな。まさか!聖龍の剣か?刀か?それとも槍か?」

「はぁ、シュウ。それ手に入れてたら多分自慢してると思うぞ。」

「じゃ、報酬は何だったんだ?」

「……分かった。言えばいいんだろう!聖龍の着ぐるみだったよ。多分アバター用の装備なのかも知れないが俺には必要ない!まぁ可愛いけどな。そうだな。まぁ持ってて誰かと交換しようかと思う。」

「着ぐるみかぁ。残念やったな。でも、彼女出来たら喜ばれるんとちゃうか?まぁ着ぐるみが好きな子やったらの話やけどな。」

(まぁ、そうそう着ぐるみなんか好きなやつがおるとも思えへんけどな。)

「そうだな。それも良いかもな。」

「まぁ、着ぐるみかなりレアらしいから持ってると良いかもよ。オークションで高値付くかもだから。」

(なるほど、オークションか。そういう手もあるな。ただ、こうは言っていても、恐らく、この4人とも画面越しで笑ってんだろうな……はぁ。)

「あの。その着ぐるみ可愛いですね。私だったらそういうの貰えたら嬉しいかな。」

(ああいう、レアな物も手に入るのか。他のクエストもそうなのかな?今度試してみよう。)

「あっ!もし良かったら、何かと交換しようか?」

(んー、マリースかもしかして、クロノアよりまともなのか?)

「あー、えっと多分交換する物が無いから。もし交換出来るような装備が手に入った時にでもお願いします。」

「そうか。まぁなるべく取っておこうと思うが、他のやつと交換するかも知れないが?」

「はい、大丈夫です。その時は気になさらずに、交換して下さい。」

「ああ、じゃそうする。」

「ふぅ~ん、良い雰囲気の所悪いんだけど。これからどうするの?シュウとクレイは忙しいって先に落ちたけど。」

「あー、そっか。あの2人今日午後忙しいって言ってたからな。そうだな……俺も夜バイト入ってるし、そろそろ落ちて飯食って寝るか。」

「じゃ、私もそろそろ落ちますね。今日はありがとうございました。」

 マリースはそう言うとログアウトした。

「そうね。私は暇だけど、お腹が空いてきたし私も落ちるね。またね、リュウキ。」

 クロノアはそう言うとログアウトした。

 それを確認するとリュウキは辺りを確認した後、着ぐるみを取り出し改めてみた。

(着ぐるみか……んー、言われてみれば可愛いよなぁ。でも、やっぱりこういうのは可愛い子が着るのが1番だろうなぁ。)

 リュウキは画面越しでしばらく着ぐるみを見て妄想を膨らませていたのだった…。
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