38 / 65
Ⅲ Løy―嘘―
37 「泣か……ない……」
しおりを挟む
「まだ、です……!」
助産婦がまだ家に到着していない。時計の針はさほど動いていないと言うのに、痛い痛いと叫ぶ声を聞くと気が逸る。
「お待たせっ!」
その時。
バンッ! と玄関を開ける大きな音がして、嗄れた女性の声が家の中に響いた。どうやら産婆が到着したようだ。
「こっちだよ!」
母親が怒鳴って返すと寝室の扉が開いた――のだが、扉の奥にウィルの姿が無い。
「森に狼の群れが居て、呼びに来てくれた子が注意を引いてくれている間に、少し遠回りして1人でここに来たんだ。遅くなってすまないね」
慣れた様子でたらいや毛布の位置を調節しながら、産婆が母親に謝っている。
ではあの野犬も追い払うのに手こずる青年は今、狼に囲まれていると言うのだろうか。
助けに行きたいと一瞬思ったが、お腹の子は出てくるのを待ってくれないし、自分だって散らかった室内を片付ける役目があるので我慢した。野犬の時だって少し遅れて来てくれたのだし、今回も大丈夫だろう。
「クララ! これを洗ってきて! お湯も淹れて来てね!」
「あ、はい!」
カリンが顔を顰めている寝台の横、母親が汚れた水とタオルが入ったたらいをこちらに渡してくる。流しに行こうと寝台を出て――厨房で父親と湯を沸かしている金髪の青年が居た事に目を丸くした。
「え……ウィル? 狼に遭ったと聞いたけど大丈夫だったの?」
割り込むように厨房で洗い物をしながら尋ねる。産婆の口ぶりだとまだまだ外に居るのだと思っていた。幽霊でも見ている気分だ。
「ああ、先程追い払いましたよ。もう家に居ますから何かあったら呼んで下さいね」
「あ……そう? うん分かった、有り難う」
平然と返され少し気が抜けたし釈然としない物もあったが、雑談はしていられない。首を傾げながら沸いた湯を持って慎重に寝室に戻り、ボロボロ涙を流して激痛に耐えているカリンの元に戻った。
「痛い痛いっ!!」
思ってた以上に分娩の手伝いを出来なかった。頑張れ、とカリンに声を掛けたり産婆に言われた物を持ってくる事しか出来ない。
白くなる程キツく母親の手を握り締め痛みに耐えている。ふとロヴィーサもこのような思いをして自分を産んだのかと胸をよぎった。気位の高いあの人が、こんなに顔を歪ませて。
「頑張って下さい、頭が出て来ましたよ!」
「受け止めは任せて! クララ! 鋏と吸引用の管の用意をお願いっ!」
「は……はい!」
ルーベンとカリンと同じ金色の髪をした赤子の上半身が見える――へその緒が首に絡まっている。
「やっ、く、首がっ!」
「大丈夫、良くある事よ」
産婆は落ち着いて慎重に外していたが、見ているこちらは胸が締め付けられて、苦しくて息が上手く吸えなかった。一緒に出てきた胎盤も血みどろでクラクラする。
無理矢理顔を逸し、熱湯消毒を行っているたらいから鋏を抜き取り、清潔なタオルで水気を拭いて産婆の隣に置く。赤子は男児のようだ。
「ふぅ……」
これでもう一安心だと、安堵の息を静かな部屋に響かせ――まだ終わっていない事に気が付いた。
「泣か……ない……」
その事実に気が付いた時背筋が凍った。
朦朧としながらぐったりと横たわっているカリンも、こちらに心配そうな眼差しを向けている。
「喉に羊水が詰まってるんだわ……吸引用の管をおくれっ!」
「は、はいっ!」
産婆が取り上げたばかりの赤子の喉に管を挿れ、頬をへこませては吸った水をたらいに吐き出し始めた。何度もその行為を行いもう吐き出す物も無くなったというのに、男児はうんともすんとも言わないし、顔も紫色だ。
「泣いて……私の赤ちゃん……」
朦朧と唇を動かしているカリンの声は、どんな祈りよりも悲しくて涙に濡れていた。
ウィルだ。
こういう時の為に居る事にした青年。あの魔法使いならこの赤子に生を与えられる事が出来る。
「ウィ――!!」
胸を占めるこの不安を終わらせて欲しくて、扉に駆け寄って魔法使いの名前を呼びかけた、その時。
「おぎゃー!!」
己の存在を刻むように泣き叫ぶ声が室内に響いた。
自分の声を遮る程大きいその声は、張り詰めた室内の空気を和らげる力を持っていて。ふう、と産婆が大きな声で安堵の息を漏らすのが聞こえて来た。
振り返ると、母親がうわああと幼子のように声を上げて泣いていた。寝台で横になっているカリンの目元も光っている。
その光景を見て自分も体の力が抜けていく。
「良かった……」
おぎゃあおぎゃあと泣く男児の顔色が見る間に良くなっていく。
泣き声が止まない。その音は今まで聞いた中で1番美しく、輝きに満ちていた。
「良かっ、た……!」
気付けば立っていられる事が出来なくなっていた。板張りの床にへたへたと座り込み、目から涙が止まらなかった。
産婆が寝室にへその緒を切るジョキリという音を響かせると、切り口に血が滲んだ。
「ふう。おめでとう、元気な男の子だよ。さ、抱いておやり」
分娩中はずっと眉を顰めていた産婆が腕に男児を抱き、頬を持ち上げながらカリンに話し掛けていた。
己の子供を腕に抱いた誕生したばかりの母親は、世界で1番愛しい物を見るように目を細めている。
自分はこの日の事を、一生忘れないだろう。
男児が産まれたのが深夜だった事もあり、家は朝まで慌ただしかった。
一段落ついてからは糸が切れたように眠りにつき、晩まで寝ていた。軽めの夕食を頂き、ウィルが淹れてくれたコーヒーカップを持って客室の椅子に腰を下ろし息をつく。
「久しぶり、って程でも無いんだけど、久しぶり」
「そうですね、お久しぶりです。そしてお疲れ様でした。産声が寝室から聞こえて来た時、お父さん泣いていましたよ。……まあ俺もなんですけど」
向かいの席に座っているウィルの目元が緩んでいる。
カリンの体調は安定している。
ルーベンが危惧していたような事は起こらず彼の魔法は使わずじまいだったのだが、彼は文句を言うでもなく「なんにもなくて良かったです」と微笑んでいた。
「私もああやって産まれて来たんだね。なんか感動しちゃった。ウィルにも聞こえたのね、あの産声の力強さ! ルーベンさんに目元が良く似てるのも不思議!」
温かいコーヒーを喉に流すとそれだけでホッとする。
気付けば好きなピアノ曲について話す時のように早口になっていたが、ウィルは都度頷いて話を聞いてくれていた。
「あ、そういえば貴方、狼は大丈夫だったの?」
「はい。以前野犬に襲われた時、貴女は俺に浮けば良い、と言ったでしょう。林道に引き返してそれを実践したんです。暗くて助かりました。貴女は何時も俺の世界を広げてくれますよね」
青年は照れ臭そうに笑った後コーヒーを飲んでいたが、自分はその言葉に引っかかりを覚え瞬いた。
「ん? 何時も……?」
助産婦がまだ家に到着していない。時計の針はさほど動いていないと言うのに、痛い痛いと叫ぶ声を聞くと気が逸る。
「お待たせっ!」
その時。
バンッ! と玄関を開ける大きな音がして、嗄れた女性の声が家の中に響いた。どうやら産婆が到着したようだ。
「こっちだよ!」
母親が怒鳴って返すと寝室の扉が開いた――のだが、扉の奥にウィルの姿が無い。
「森に狼の群れが居て、呼びに来てくれた子が注意を引いてくれている間に、少し遠回りして1人でここに来たんだ。遅くなってすまないね」
慣れた様子でたらいや毛布の位置を調節しながら、産婆が母親に謝っている。
ではあの野犬も追い払うのに手こずる青年は今、狼に囲まれていると言うのだろうか。
助けに行きたいと一瞬思ったが、お腹の子は出てくるのを待ってくれないし、自分だって散らかった室内を片付ける役目があるので我慢した。野犬の時だって少し遅れて来てくれたのだし、今回も大丈夫だろう。
「クララ! これを洗ってきて! お湯も淹れて来てね!」
「あ、はい!」
カリンが顔を顰めている寝台の横、母親が汚れた水とタオルが入ったたらいをこちらに渡してくる。流しに行こうと寝台を出て――厨房で父親と湯を沸かしている金髪の青年が居た事に目を丸くした。
「え……ウィル? 狼に遭ったと聞いたけど大丈夫だったの?」
割り込むように厨房で洗い物をしながら尋ねる。産婆の口ぶりだとまだまだ外に居るのだと思っていた。幽霊でも見ている気分だ。
「ああ、先程追い払いましたよ。もう家に居ますから何かあったら呼んで下さいね」
「あ……そう? うん分かった、有り難う」
平然と返され少し気が抜けたし釈然としない物もあったが、雑談はしていられない。首を傾げながら沸いた湯を持って慎重に寝室に戻り、ボロボロ涙を流して激痛に耐えているカリンの元に戻った。
「痛い痛いっ!!」
思ってた以上に分娩の手伝いを出来なかった。頑張れ、とカリンに声を掛けたり産婆に言われた物を持ってくる事しか出来ない。
白くなる程キツく母親の手を握り締め痛みに耐えている。ふとロヴィーサもこのような思いをして自分を産んだのかと胸をよぎった。気位の高いあの人が、こんなに顔を歪ませて。
「頑張って下さい、頭が出て来ましたよ!」
「受け止めは任せて! クララ! 鋏と吸引用の管の用意をお願いっ!」
「は……はい!」
ルーベンとカリンと同じ金色の髪をした赤子の上半身が見える――へその緒が首に絡まっている。
「やっ、く、首がっ!」
「大丈夫、良くある事よ」
産婆は落ち着いて慎重に外していたが、見ているこちらは胸が締め付けられて、苦しくて息が上手く吸えなかった。一緒に出てきた胎盤も血みどろでクラクラする。
無理矢理顔を逸し、熱湯消毒を行っているたらいから鋏を抜き取り、清潔なタオルで水気を拭いて産婆の隣に置く。赤子は男児のようだ。
「ふぅ……」
これでもう一安心だと、安堵の息を静かな部屋に響かせ――まだ終わっていない事に気が付いた。
「泣か……ない……」
その事実に気が付いた時背筋が凍った。
朦朧としながらぐったりと横たわっているカリンも、こちらに心配そうな眼差しを向けている。
「喉に羊水が詰まってるんだわ……吸引用の管をおくれっ!」
「は、はいっ!」
産婆が取り上げたばかりの赤子の喉に管を挿れ、頬をへこませては吸った水をたらいに吐き出し始めた。何度もその行為を行いもう吐き出す物も無くなったというのに、男児はうんともすんとも言わないし、顔も紫色だ。
「泣いて……私の赤ちゃん……」
朦朧と唇を動かしているカリンの声は、どんな祈りよりも悲しくて涙に濡れていた。
ウィルだ。
こういう時の為に居る事にした青年。あの魔法使いならこの赤子に生を与えられる事が出来る。
「ウィ――!!」
胸を占めるこの不安を終わらせて欲しくて、扉に駆け寄って魔法使いの名前を呼びかけた、その時。
「おぎゃー!!」
己の存在を刻むように泣き叫ぶ声が室内に響いた。
自分の声を遮る程大きいその声は、張り詰めた室内の空気を和らげる力を持っていて。ふう、と産婆が大きな声で安堵の息を漏らすのが聞こえて来た。
振り返ると、母親がうわああと幼子のように声を上げて泣いていた。寝台で横になっているカリンの目元も光っている。
その光景を見て自分も体の力が抜けていく。
「良かった……」
おぎゃあおぎゃあと泣く男児の顔色が見る間に良くなっていく。
泣き声が止まない。その音は今まで聞いた中で1番美しく、輝きに満ちていた。
「良かっ、た……!」
気付けば立っていられる事が出来なくなっていた。板張りの床にへたへたと座り込み、目から涙が止まらなかった。
産婆が寝室にへその緒を切るジョキリという音を響かせると、切り口に血が滲んだ。
「ふう。おめでとう、元気な男の子だよ。さ、抱いておやり」
分娩中はずっと眉を顰めていた産婆が腕に男児を抱き、頬を持ち上げながらカリンに話し掛けていた。
己の子供を腕に抱いた誕生したばかりの母親は、世界で1番愛しい物を見るように目を細めている。
自分はこの日の事を、一生忘れないだろう。
男児が産まれたのが深夜だった事もあり、家は朝まで慌ただしかった。
一段落ついてからは糸が切れたように眠りにつき、晩まで寝ていた。軽めの夕食を頂き、ウィルが淹れてくれたコーヒーカップを持って客室の椅子に腰を下ろし息をつく。
「久しぶり、って程でも無いんだけど、久しぶり」
「そうですね、お久しぶりです。そしてお疲れ様でした。産声が寝室から聞こえて来た時、お父さん泣いていましたよ。……まあ俺もなんですけど」
向かいの席に座っているウィルの目元が緩んでいる。
カリンの体調は安定している。
ルーベンが危惧していたような事は起こらず彼の魔法は使わずじまいだったのだが、彼は文句を言うでもなく「なんにもなくて良かったです」と微笑んでいた。
「私もああやって産まれて来たんだね。なんか感動しちゃった。ウィルにも聞こえたのね、あの産声の力強さ! ルーベンさんに目元が良く似てるのも不思議!」
温かいコーヒーを喉に流すとそれだけでホッとする。
気付けば好きなピアノ曲について話す時のように早口になっていたが、ウィルは都度頷いて話を聞いてくれていた。
「あ、そういえば貴方、狼は大丈夫だったの?」
「はい。以前野犬に襲われた時、貴女は俺に浮けば良い、と言ったでしょう。林道に引き返してそれを実践したんです。暗くて助かりました。貴女は何時も俺の世界を広げてくれますよね」
青年は照れ臭そうに笑った後コーヒーを飲んでいたが、自分はその言葉に引っかかりを覚え瞬いた。
「ん? 何時も……?」
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる