46 / 65
Ⅳ Farvel―決別―
45 「ルーベンさん?」
しおりを挟む
肩を竦めて嫌味を言うと「仕方無い」と、居間で仕事について詳細を聞いた。どうも明日から定期船に乗って見張りの任に就いて貰いたいらしい。
それだけを簡単に説明されると、ロヴィーサとの会話が途絶えた。この女王様は極力男と話したくないらしく、早々に追い出される事になった。
昼前で少しずつ明るくなってきた中、すやすやと寝息を立てているウィルを背負い、充てがわれた家に向かっていく。
背が高いだけあり意外と重たいその体をおぶり、充てがわれた崖上の家に向かう。明日からはここから港へ向かう事になるだろう。
ハンメルフェストの我が家よりもずっと広い家。
2階建てのこの家なら妻子ともゆっくり過ごせるし、アトリエだって持てるだろう。
ヒビの入っていない窓ガラスの外。すぐに止むかと思っていたが、強い風に乗った雪が一層降ってきた。
***
見渡す限り雪化粧をした山しか映らぬ街道を行くと、1つ2つと見覚えのある建物が現れて来る。
アストリッド・グローヴェンはそれを見てトロムソが近付いて来た事を知り、降車の準備を始めた。
数日馬車に揺られていると、頭も少し冷えて涙も引いた。悲しみはずっと瞼の裏に潜んでいたものの、今は馬車から日の出を楽しむ余裕もあった。
恥ずかしがり屋の子供のように中途半端に顔を覗かせる太陽を見ながら、あの金髪の魔法使いの事を考えていた。
あの時は錯乱しきっていた。
ウィルが嘘をついたのは事実だ。けれどきっと、ウィルは悪意があって嘘を吐いたわけではない。何かのっぴきならない事情があったのだ。そう思いたかった。
しかし、自分を追って来る気配が無い事を思うと、見捨てられたのかな、と瞼の裏が再び熱くなる。
「お疲れ様です! トロムソに到着しましたっ!」
街道に乗ったと思えば、馬車はもう本土の港の市場の近くに到着した。御者が大声で宣言し、車内のあちこちから疲れた、と溜め息が聞こえて来る。
「あ~疲れた~……お父さん。ほら行くよ」
途中宿泊した宿屋から乗ってきた父娘が、伸びをしながら馬車を降りていく。途中休憩した村で喧嘩していたが、何時の間にか仲直りしてまた笑い合っていた。他の乗車客も伸びをしながら思い思いの方向へ散っていく。
自分も降りようと思ったが、その前にカウトケイノから一緒だった女性の下に近付いた。数日一緒だった事もあり、世話になった礼を伝えるためだ。
「お姉さん! ご一緒出来て嬉しかったです。色々有り難う御座いました」
宝飾品の交易をしているという女性は、自分の呼び掛けに笑みを浮かべる。
「あらアストリッド、わざわざ有り難う。私も嬉しかったよ」
女性はそう言った後不意に口を噤み、自分の顔に涙の跡が無い事を確かめるようにこちらを見てきた後、ぎゅっと眉根を下げた。
「ねえ……お姉さん思うのだけど。嘘を吐かれても、その理由によっては嘘を許す事って大事だと思うの。だって、大好きな人じゃなきゃあんなに泣けないもの。手放したら絶対……後悔するわ」
ぽつ、と言われた言葉が何を指しているかすぐに分かった。カウトケイノで初めて声をかけられた時の事――ウィルの事だ。
この女性が言っている事は分かる。自分だってそれが出来たらどんなに素敵な事かと思う。
が、月が太陽を食べる時のようにじわじわと侵食してくるわだかまりが、あの青年を威嚇して止まないのだ。実は彼は冷たい人間なのではないか、自分の事はもうどうでも良いのでは無いか、と。
そんな気持ちを隠すように、にっこりと笑みを浮かべる。
「そうですね、覚えておきます。お姉さん、有り難うございます!」
女性は一度何か言いたそうに口をもごつかせ、結局何も言わなかった。
「じゃあ元気でね」と女性は言い、ようやく明るくなりだした市場へ向かう。その後ろ姿を見送り、自分も本島へ渡るべく港へ向かいながら、ただただレオンの無事を祈った、
やってきた本土との連絡船に早速乗り椅子に座る。海を走っているより待機している時間のが長いので何となく周囲を見渡し――見覚えのある体格の良い船乗りを見つけ目を丸くする。
金髪緑目で、精悍な顔に豊かな顎髭を蓄えた男性――ルーベンだ。
どうしてあの父親になったばかりの船長が連絡船に居るのだろう。自分もすぐにカウトケイノに行くと言っていなかったか。
この人は信用ならない。やっぱりこの人が自分達を売ったのだろう。
しかしもうそんな事どうでも良かった。カリンが無事な事くらいは伝えたい。
座ったばかりの席を立ち、追いかけるように冷たい風が吹くデッキに出た。
「……ルーベンさん?」
スウェーデン=ノルウェー連合王国の大きな国旗がぱたぱたと風にたなびく中、声をかけていた。
***
「ふう……」
同じ海の仕事ではあるが、貨物船と連絡船じゃ仕事内容も、働いている人間の性格も随分違う、とルーベン・ハンセンは思っていた。
トロムソ本島と本土の港で頻繁に積み荷を降ろしていた関係、新しい職場には見知った顔も多い。乗船経験のある自分を即戦力だと喜んでくれた。
しかしいざ実際彼らと話してみると、彼らはロンドンへの滞在経歴でもありそうな程紳士的で、上流階級が如く上品で。崖上の家に同僚を招待して酒を飲む事も叶わなさそうだ。
家の1階に寝転したウィルはもうずっと寝ているし、同僚は言ってしまうと物足りない。正直言うと暇だった。
家に帰ってもカリンへ手紙を認めるか、パイプタバコをふかしながら黙々とキャンパスに向き合うしか無く、それはそれで楽しくはあるもののつまらない。昼間は子供達が周囲で良く遊んでいて気も紛れるが、夜だとその声も楽しめない。
もしここがハンメルフェストの家だったら、カリンと取り留めのない会話をして笑いあえたろうに。
カリンの出産はどうなっただろう。妻が心配なのも心からトロムソを楽しめない原因だった。
そんな事を考えていた時。
「ルーベンさん?」
双眼鏡で周囲に障害物が無いかを見ていたら、聞き覚えのあるソプラノに話し掛けられた。
振り返ってみると、そこには白い三角巾を被った赤いロングヘアが印象的な少女が立っていた。一瞬だけ頬が強張ったのは、誰だかすぐに分かったから。
それだけを簡単に説明されると、ロヴィーサとの会話が途絶えた。この女王様は極力男と話したくないらしく、早々に追い出される事になった。
昼前で少しずつ明るくなってきた中、すやすやと寝息を立てているウィルを背負い、充てがわれた家に向かっていく。
背が高いだけあり意外と重たいその体をおぶり、充てがわれた崖上の家に向かう。明日からはここから港へ向かう事になるだろう。
ハンメルフェストの我が家よりもずっと広い家。
2階建てのこの家なら妻子ともゆっくり過ごせるし、アトリエだって持てるだろう。
ヒビの入っていない窓ガラスの外。すぐに止むかと思っていたが、強い風に乗った雪が一層降ってきた。
***
見渡す限り雪化粧をした山しか映らぬ街道を行くと、1つ2つと見覚えのある建物が現れて来る。
アストリッド・グローヴェンはそれを見てトロムソが近付いて来た事を知り、降車の準備を始めた。
数日馬車に揺られていると、頭も少し冷えて涙も引いた。悲しみはずっと瞼の裏に潜んでいたものの、今は馬車から日の出を楽しむ余裕もあった。
恥ずかしがり屋の子供のように中途半端に顔を覗かせる太陽を見ながら、あの金髪の魔法使いの事を考えていた。
あの時は錯乱しきっていた。
ウィルが嘘をついたのは事実だ。けれどきっと、ウィルは悪意があって嘘を吐いたわけではない。何かのっぴきならない事情があったのだ。そう思いたかった。
しかし、自分を追って来る気配が無い事を思うと、見捨てられたのかな、と瞼の裏が再び熱くなる。
「お疲れ様です! トロムソに到着しましたっ!」
街道に乗ったと思えば、馬車はもう本土の港の市場の近くに到着した。御者が大声で宣言し、車内のあちこちから疲れた、と溜め息が聞こえて来る。
「あ~疲れた~……お父さん。ほら行くよ」
途中宿泊した宿屋から乗ってきた父娘が、伸びをしながら馬車を降りていく。途中休憩した村で喧嘩していたが、何時の間にか仲直りしてまた笑い合っていた。他の乗車客も伸びをしながら思い思いの方向へ散っていく。
自分も降りようと思ったが、その前にカウトケイノから一緒だった女性の下に近付いた。数日一緒だった事もあり、世話になった礼を伝えるためだ。
「お姉さん! ご一緒出来て嬉しかったです。色々有り難う御座いました」
宝飾品の交易をしているという女性は、自分の呼び掛けに笑みを浮かべる。
「あらアストリッド、わざわざ有り難う。私も嬉しかったよ」
女性はそう言った後不意に口を噤み、自分の顔に涙の跡が無い事を確かめるようにこちらを見てきた後、ぎゅっと眉根を下げた。
「ねえ……お姉さん思うのだけど。嘘を吐かれても、その理由によっては嘘を許す事って大事だと思うの。だって、大好きな人じゃなきゃあんなに泣けないもの。手放したら絶対……後悔するわ」
ぽつ、と言われた言葉が何を指しているかすぐに分かった。カウトケイノで初めて声をかけられた時の事――ウィルの事だ。
この女性が言っている事は分かる。自分だってそれが出来たらどんなに素敵な事かと思う。
が、月が太陽を食べる時のようにじわじわと侵食してくるわだかまりが、あの青年を威嚇して止まないのだ。実は彼は冷たい人間なのではないか、自分の事はもうどうでも良いのでは無いか、と。
そんな気持ちを隠すように、にっこりと笑みを浮かべる。
「そうですね、覚えておきます。お姉さん、有り難うございます!」
女性は一度何か言いたそうに口をもごつかせ、結局何も言わなかった。
「じゃあ元気でね」と女性は言い、ようやく明るくなりだした市場へ向かう。その後ろ姿を見送り、自分も本島へ渡るべく港へ向かいながら、ただただレオンの無事を祈った、
やってきた本土との連絡船に早速乗り椅子に座る。海を走っているより待機している時間のが長いので何となく周囲を見渡し――見覚えのある体格の良い船乗りを見つけ目を丸くする。
金髪緑目で、精悍な顔に豊かな顎髭を蓄えた男性――ルーベンだ。
どうしてあの父親になったばかりの船長が連絡船に居るのだろう。自分もすぐにカウトケイノに行くと言っていなかったか。
この人は信用ならない。やっぱりこの人が自分達を売ったのだろう。
しかしもうそんな事どうでも良かった。カリンが無事な事くらいは伝えたい。
座ったばかりの席を立ち、追いかけるように冷たい風が吹くデッキに出た。
「……ルーベンさん?」
スウェーデン=ノルウェー連合王国の大きな国旗がぱたぱたと風にたなびく中、声をかけていた。
***
「ふう……」
同じ海の仕事ではあるが、貨物船と連絡船じゃ仕事内容も、働いている人間の性格も随分違う、とルーベン・ハンセンは思っていた。
トロムソ本島と本土の港で頻繁に積み荷を降ろしていた関係、新しい職場には見知った顔も多い。乗船経験のある自分を即戦力だと喜んでくれた。
しかしいざ実際彼らと話してみると、彼らはロンドンへの滞在経歴でもありそうな程紳士的で、上流階級が如く上品で。崖上の家に同僚を招待して酒を飲む事も叶わなさそうだ。
家の1階に寝転したウィルはもうずっと寝ているし、同僚は言ってしまうと物足りない。正直言うと暇だった。
家に帰ってもカリンへ手紙を認めるか、パイプタバコをふかしながら黙々とキャンパスに向き合うしか無く、それはそれで楽しくはあるもののつまらない。昼間は子供達が周囲で良く遊んでいて気も紛れるが、夜だとその声も楽しめない。
もしここがハンメルフェストの家だったら、カリンと取り留めのない会話をして笑いあえたろうに。
カリンの出産はどうなっただろう。妻が心配なのも心からトロムソを楽しめない原因だった。
そんな事を考えていた時。
「ルーベンさん?」
双眼鏡で周囲に障害物が無いかを見ていたら、聞き覚えのあるソプラノに話し掛けられた。
振り返ってみると、そこには白い三角巾を被った赤いロングヘアが印象的な少女が立っていた。一瞬だけ頬が強張ったのは、誰だかすぐに分かったから。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる