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本編
美紅の決意
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※第六十三話から第六十五話までの間、キャラクター名に誤りが有りました。
正しくは
×光司
↓
○薫 です。
現在は修正済みです。
訂正してお詫びします。
それでは本編です。
「あああっ!」
美紅が地面を勢いよく転がる。
隙の無い連続攻撃に手も足も出ない。
屋外では毒ガスも効果は限定的だが、それも試してみた。
しかし、当然と言うべきか効果は無かった。
多分マスクに防毒機能が備わっているのだろう。
使える武器はスネークビュートくらいか。
格闘戦はあまり得意では無かったが、この時代の相手にならば通用していた。
しかし高度な科学技術と組織的な訓練をうかがわせる彼らには通用しない。
彼らの持つ銃は剣にもなり、その剣はスネークビュートでさえも受け止めた。
破壊する事が出来ないのだ。
美紅のセンサーを介して解る事は、知れば知るほど『強敵だ』と言う事だけである。
強力な酸による攻撃さえ、効果は無かった。
恐らく、事前に酸に対する防護処置が施されているのは間違いがなかった。
「……何なのコイツら」
美紅はまた立ち上がった。
何度目かはもう解らない。
不幸中の幸いと言えば、牛嶋がゲニウスを連れて脱出した事が確認出来た事だろう。
これで一応最低限の仕事は果たした事にはなる。
だが、出来れば自分も生き延びたい所ではある。
走って逃げる事も考えたが、こう囲まれていてはそれもままならない。
後は何が出来る?
美紅は冷静に考えた。
最悪の選択肢から順に考える。
まず、自爆だ。
これは本当に最後の手段である。
どうせ死ぬならと言う時だ。
今はまだそこまででは無いだろう。
次にヘッジ・ブルとチェリー・ブロッサムを遠隔操作で呼ぶ。
これはかなり有効だろう。
ただし、大型マシンをここへ突っ込ませた場合、邸を含め辺りは壊滅的に破壊されるだろう。
だがもしも奪われでもしたら損失は計り知れない。
それでも死ぬよりはマシだろうか。
いよいよとなればこれも致し方ない。
超音速戦闘ヘリ『スネーク・クイーン』を呼ぶ場合も同様である。
それから、ゲニウスのマルチプルベースも死守しなければならない。
あれはこの世界におけるヤゴスの生命線とも言える部分である。
ゲニウスの研究、開発、製造、その他を司っている。
これを押さえられる訳にはいかなかった。
これらを敵の相手をしながら同時に行うのは不可能だろう。
「もう、時間稼ぎにしかならないけど……」
後はもうこれしか思い付かなかった。
全てを地中に退避させ、封印してしまう方法だ。
自分も含め地中深くに潜りプロテクトを掛け活動を停止する。
ゲニウスが無事ならば、いつか復活させてくれる筈である。
だが、これは賭けだった。
「みんなが生き残ったら可能性はゼロでは無い……か」
美紅は覚悟を決めた。
マルチプルベースを初め、ヘッジ・ブル、チェリー・ブロッサムとの通信を開く。
メインコンピューターにアクセスし、緊急退避プログラムを発令した。
ゴゴゴゴゴゴ……
地響きが鳴った。
時空超越隊の四人は辺りを見回す。
「何だ? この地鳴りは!?」
涼が警戒した。
「あれは!?」
玲が邸の上を指差す。
邸の裏手で噴水の如く、土が吹き上がるのが見える。
「な、何? あれ」
恵麻も驚いて声が上ずった。
大型マシンは地中深く、自ら沈降して行った。
これから地下数千メートルまで潜って行く。
丁度戻って来たビビアンとクイーンがこの様子を目撃していた。
「あれは!?」
急いで邸の正面に回る。
「一体何をした!」
涼が言った。
だが美紅は肩をすくめて惚けた。
「さあ? 何かしら。地震でも来るのかしらね」
「ふざけるな! 何を企んでいる!」
光司が叫ぶ。
「企むも何も、私達まだ何もしてないわよ。アンタ建ちこそ何なのよ」
美紅が鼻で笑いながら言った。
「お姉様!」
「美紅様!」
ビビアンとクイーンが駆け付けた。
だが様子を見て言葉を呑み込んだ。
一方的にやられたのが見て解った。
美紅は満身創痍である。
「貴様らあーッ!」
クイーンが大声を上げた。
それを美紅が手で制した。
「止めなさい。無駄よ」
クイーンが驚いて美紅を見る。
「あなた達は関係無いわ。今更どうやっても戦況を引っくり返せないわ。知らんふりしてなさい」
ビビアンが言葉に詰まった。
「美紅様! それはあんまりです!」
クイーンが食い下がる。
「無駄な事にエネルギーを使うのは浪費と言うのよ。ビビちゃん、貴女なら解るでしょ?」
美紅はそう言ってビビアンを一目見た。
その一瞬で、ビビアンは何かを感じ取った。
今から何かする気なのではないか。
今、その後を託そうとしているのではないか。
ビビアンはそう受け取った。
「美紅様!」
叫ぶクイーンの腕をビビアンが掴まえた。
「大丈夫。大丈夫です」
ビビアンはクイーンにそう繰り返した。
「今は負けを認めるわ。今だけね……だけど結局全体で見れば私達が勝つのよ」
美紅はそう言うとスネークビュートを螺旋状に体に巻き付けた。
そしてゆっくりと回転し始めると、そこから超高速回転へと移る。
ドリルの様に地面を掘ると、美紅は自ら地面へ潜って行った。
ここから同じく数千メートル地下まで潜り、そこでスリープモードに移行する。
ゲニウスがスリープモードを解除するまで何百年でもこのままである。
「しまった! さっきのもこれか!」
光司が気付いた。だが、もう遅い。
巨大マシンも美紅も地中深く消えてしまった。
追跡も引き上げも不可能である。
「やられたな……」
涼が美紅の潜った後を見て、一言呟いた。
正しくは
×光司
↓
○薫 です。
現在は修正済みです。
訂正してお詫びします。
それでは本編です。
「あああっ!」
美紅が地面を勢いよく転がる。
隙の無い連続攻撃に手も足も出ない。
屋外では毒ガスも効果は限定的だが、それも試してみた。
しかし、当然と言うべきか効果は無かった。
多分マスクに防毒機能が備わっているのだろう。
使える武器はスネークビュートくらいか。
格闘戦はあまり得意では無かったが、この時代の相手にならば通用していた。
しかし高度な科学技術と組織的な訓練をうかがわせる彼らには通用しない。
彼らの持つ銃は剣にもなり、その剣はスネークビュートでさえも受け止めた。
破壊する事が出来ないのだ。
美紅のセンサーを介して解る事は、知れば知るほど『強敵だ』と言う事だけである。
強力な酸による攻撃さえ、効果は無かった。
恐らく、事前に酸に対する防護処置が施されているのは間違いがなかった。
「……何なのコイツら」
美紅はまた立ち上がった。
何度目かはもう解らない。
不幸中の幸いと言えば、牛嶋がゲニウスを連れて脱出した事が確認出来た事だろう。
これで一応最低限の仕事は果たした事にはなる。
だが、出来れば自分も生き延びたい所ではある。
走って逃げる事も考えたが、こう囲まれていてはそれもままならない。
後は何が出来る?
美紅は冷静に考えた。
最悪の選択肢から順に考える。
まず、自爆だ。
これは本当に最後の手段である。
どうせ死ぬならと言う時だ。
今はまだそこまででは無いだろう。
次にヘッジ・ブルとチェリー・ブロッサムを遠隔操作で呼ぶ。
これはかなり有効だろう。
ただし、大型マシンをここへ突っ込ませた場合、邸を含め辺りは壊滅的に破壊されるだろう。
だがもしも奪われでもしたら損失は計り知れない。
それでも死ぬよりはマシだろうか。
いよいよとなればこれも致し方ない。
超音速戦闘ヘリ『スネーク・クイーン』を呼ぶ場合も同様である。
それから、ゲニウスのマルチプルベースも死守しなければならない。
あれはこの世界におけるヤゴスの生命線とも言える部分である。
ゲニウスの研究、開発、製造、その他を司っている。
これを押さえられる訳にはいかなかった。
これらを敵の相手をしながら同時に行うのは不可能だろう。
「もう、時間稼ぎにしかならないけど……」
後はもうこれしか思い付かなかった。
全てを地中に退避させ、封印してしまう方法だ。
自分も含め地中深くに潜りプロテクトを掛け活動を停止する。
ゲニウスが無事ならば、いつか復活させてくれる筈である。
だが、これは賭けだった。
「みんなが生き残ったら可能性はゼロでは無い……か」
美紅は覚悟を決めた。
マルチプルベースを初め、ヘッジ・ブル、チェリー・ブロッサムとの通信を開く。
メインコンピューターにアクセスし、緊急退避プログラムを発令した。
ゴゴゴゴゴゴ……
地響きが鳴った。
時空超越隊の四人は辺りを見回す。
「何だ? この地鳴りは!?」
涼が警戒した。
「あれは!?」
玲が邸の上を指差す。
邸の裏手で噴水の如く、土が吹き上がるのが見える。
「な、何? あれ」
恵麻も驚いて声が上ずった。
大型マシンは地中深く、自ら沈降して行った。
これから地下数千メートルまで潜って行く。
丁度戻って来たビビアンとクイーンがこの様子を目撃していた。
「あれは!?」
急いで邸の正面に回る。
「一体何をした!」
涼が言った。
だが美紅は肩をすくめて惚けた。
「さあ? 何かしら。地震でも来るのかしらね」
「ふざけるな! 何を企んでいる!」
光司が叫ぶ。
「企むも何も、私達まだ何もしてないわよ。アンタ建ちこそ何なのよ」
美紅が鼻で笑いながら言った。
「お姉様!」
「美紅様!」
ビビアンとクイーンが駆け付けた。
だが様子を見て言葉を呑み込んだ。
一方的にやられたのが見て解った。
美紅は満身創痍である。
「貴様らあーッ!」
クイーンが大声を上げた。
それを美紅が手で制した。
「止めなさい。無駄よ」
クイーンが驚いて美紅を見る。
「あなた達は関係無いわ。今更どうやっても戦況を引っくり返せないわ。知らんふりしてなさい」
ビビアンが言葉に詰まった。
「美紅様! それはあんまりです!」
クイーンが食い下がる。
「無駄な事にエネルギーを使うのは浪費と言うのよ。ビビちゃん、貴女なら解るでしょ?」
美紅はそう言ってビビアンを一目見た。
その一瞬で、ビビアンは何かを感じ取った。
今から何かする気なのではないか。
今、その後を託そうとしているのではないか。
ビビアンはそう受け取った。
「美紅様!」
叫ぶクイーンの腕をビビアンが掴まえた。
「大丈夫。大丈夫です」
ビビアンはクイーンにそう繰り返した。
「今は負けを認めるわ。今だけね……だけど結局全体で見れば私達が勝つのよ」
美紅はそう言うとスネークビュートを螺旋状に体に巻き付けた。
そしてゆっくりと回転し始めると、そこから超高速回転へと移る。
ドリルの様に地面を掘ると、美紅は自ら地面へ潜って行った。
ここから同じく数千メートル地下まで潜り、そこでスリープモードに移行する。
ゲニウスがスリープモードを解除するまで何百年でもこのままである。
「しまった! さっきのもこれか!」
光司が気付いた。だが、もう遅い。
巨大マシンも美紅も地中深く消えてしまった。
追跡も引き上げも不可能である。
「やられたな……」
涼が美紅の潜った後を見て、一言呟いた。
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