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本編
罠
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唯桜は手榴弾を持つ男の手を掴まえた。
「別に手榴弾なんてどうでも良いが、今てめえに死なれるのは困るんだよ。案内してもらうぜ、ドン・ロッゴの所へよ」
唯桜が男から手榴弾を取り上げる。
ヤーゴはテーブルの下から出た。
「マスター、これ弁償代。二百円ありゃあ足りるだろ?」
ヤーゴはそう言って百円銀貨を二枚カウンターに置いた。
唯桜が男を突き飛ばしながら入り口から出て行く。
ヤーゴとロンメルはその後に続いた。
外は真夜中である。
街は寝静まっており、遠くで野犬の遠吠えが聞こえる。
一行は随分歩いた。
かれこれ小一時間は歩いただろうか。
「まだかよ」
唯桜が男を小突く。
「……もう少しだ」
「てめえ、さっきからそればっかりじゃねえか」
「本当にもう少しだ」
町外れにまで来てしまった。
ここは見覚えがある。
邪神を倒した例の教会跡地だ。
「こんな所で野郎は何をしてやがるんだ?」
唯桜が辺りを見回す。
よく見れば、辺りに人影が何人も見える。
「ちっ……また待ち伏せかよ。芸がねえな、つまんねえ真似するんじゃねえよ」
唯桜はうんざりした。
だがそれにしても、良くここまで気配を消せた物だと感心もしていた。
「しかし、なんだこの臭いは」
鼻をつく悪臭がする。これは腐臭だ。
「おい、何だここは」
唯桜が男に尋ねる。
だが、見ると男は震えていた。
「死人だ……俺も……俺も一緒に始末する気なのかあっ!」
なるほど。こいつも知らない間にハメられた訳だ。
ドン・ロッゴと言う男は必要が無くなると、どんどん部下を捨てていくらしい。
「清々しいほどの悪党だな」
唯桜が笑う。
「笑ってる場合じゃねえぜ。死んでるヤツをどうやって殺すんだよ」
ヤーゴが言う。冷や汗が尋常では無い。
「ビビるんじゃねえよ。死んでる奴に何が出来るってんだ。死んだ時点で終わってんだよ、コイツらは」
唯桜はそう言うと、肩をぐるんぐるん回した。
「手本を見せてやる」
そう言うと、唯桜は死人の群れに突っ込んだ。
ヤーゴはその後ろ姿を呆気にとられて見つめた。
ロンメルも同じである。
この人は怖いと思った事は無いのだろうか。
相手が誰だろうが躊躇したのを見た事が無い。
ヤーゴは今更ながらに呆れていた。
「うおおおおっひゃっはあーっ!」
唯桜の雄叫びが辺りに響く。
襲い来る死人を殴り倒し、蹴り飛ばす。
だが、流石は死人である。
倒れても倒れても立ち上がってきた。
「伊達に死んでねえってか」
唯桜が感心する。
ヤーゴも銃を抜くと死人を撃ちまくった。
だが、これではキリが無い。
いずれ弾も尽きる。
「唯桜さん、何とかしてくれえっ!」
ヤーゴが叫ぶ。
「しゃあねえな、これならどうだ!」
唯桜が両腕を死人に向ける。
前腕部分が開いて銃身が現れる。
ドパラタタタタタタタタタタタッ!
エネルギー弾が機関銃の如く連射された。
闇夜の中を光の玉が飛ぶ。
辺りは一瞬明るく照らされた。
無数の弾が死人の群れに吸い込まれる。
当たった奴から吹き飛んだが、腕をもがれても腹に大きな穴が開いても、お構い無しに立ち上がってくる。
まさに不死身だった。
「ゾンビ野郎、流石に反則じゃねえか……」
唯桜が舌打ちをする。
「……ゾンビ? そうかゾンビか」
唯桜は何か思い出した。
「確かゾンビを火で焼いていたな。昔、映画で見たぜ」
唯桜はエネルギー弾の発射から火炎放射へと攻撃を切り替えた。
ゴオオオオオオオオオオオッ!
一直線に炎の線が死人の群れへと伸びる。
瞬く間に死人の体へと引火した。
動きの遅い死人は燃えながらも構わず前進し続けたが、数歩進むうちに燃え尽きて地面に崩れ落ちた。
唯桜は辺りに炎を撒き散らした。
次々に炎は燃え広がり、あっという間に死人は全滅した。
「中々面白い趣向だったが、解ってみればただの雑魚だな」
唯桜が笑った。
ヤーゴもロンメルも、どっと疲れが出た。
すぐ側で案内役の男が腰を抜かしている。
「いつまで腰を抜かしてやがる。早く案内しろ」
唯桜が男の尻を蹴った。
男はひいひい言いながら立ち上がると、また先を歩き始める。
所々崩壊し、廃墟と化した教会に入って行く。
唯桜達はその後に着いて行った。
礼拝堂を抜け、脇の扉に入る。
細い通路を歩き、幾つかの扉を無視した。
そして広い部屋へと辿り着く。
「あそこだ。あの地下にドン・ロッゴが居る」
男は部屋のすみに有る床の入口を指差した。
「地下室か」
ヤーゴが呟く。
「本当か? あからさまに罠っぽく無いか?」
「本当だ、俺も何度も入ってる。けど……」
「けど、何だよ」
ヤーゴがその先を促した。
「さっきの死人でも解るだろ。もう気付かれている」
男はこの中に入るのが恐ろしいと言わんばかりである。
実際、恐ろしいのだろう。
「まあ、良い。じゃあ、俺が見てくるぜ」
例によって唯桜は全く怖じ気づかない。
幹部自ら率先して入ると言うのも妙な話ではあるが、こう言う場合の唯桜は本当に頼もしい。
「唯桜さん、何かあったらすぐに呼んでくれよ」
ヤーゴが声を掛ける。
唯桜は一言、ああと言って入って行った。
「別に手榴弾なんてどうでも良いが、今てめえに死なれるのは困るんだよ。案内してもらうぜ、ドン・ロッゴの所へよ」
唯桜が男から手榴弾を取り上げる。
ヤーゴはテーブルの下から出た。
「マスター、これ弁償代。二百円ありゃあ足りるだろ?」
ヤーゴはそう言って百円銀貨を二枚カウンターに置いた。
唯桜が男を突き飛ばしながら入り口から出て行く。
ヤーゴとロンメルはその後に続いた。
外は真夜中である。
街は寝静まっており、遠くで野犬の遠吠えが聞こえる。
一行は随分歩いた。
かれこれ小一時間は歩いただろうか。
「まだかよ」
唯桜が男を小突く。
「……もう少しだ」
「てめえ、さっきからそればっかりじゃねえか」
「本当にもう少しだ」
町外れにまで来てしまった。
ここは見覚えがある。
邪神を倒した例の教会跡地だ。
「こんな所で野郎は何をしてやがるんだ?」
唯桜が辺りを見回す。
よく見れば、辺りに人影が何人も見える。
「ちっ……また待ち伏せかよ。芸がねえな、つまんねえ真似するんじゃねえよ」
唯桜はうんざりした。
だがそれにしても、良くここまで気配を消せた物だと感心もしていた。
「しかし、なんだこの臭いは」
鼻をつく悪臭がする。これは腐臭だ。
「おい、何だここは」
唯桜が男に尋ねる。
だが、見ると男は震えていた。
「死人だ……俺も……俺も一緒に始末する気なのかあっ!」
なるほど。こいつも知らない間にハメられた訳だ。
ドン・ロッゴと言う男は必要が無くなると、どんどん部下を捨てていくらしい。
「清々しいほどの悪党だな」
唯桜が笑う。
「笑ってる場合じゃねえぜ。死んでるヤツをどうやって殺すんだよ」
ヤーゴが言う。冷や汗が尋常では無い。
「ビビるんじゃねえよ。死んでる奴に何が出来るってんだ。死んだ時点で終わってんだよ、コイツらは」
唯桜はそう言うと、肩をぐるんぐるん回した。
「手本を見せてやる」
そう言うと、唯桜は死人の群れに突っ込んだ。
ヤーゴはその後ろ姿を呆気にとられて見つめた。
ロンメルも同じである。
この人は怖いと思った事は無いのだろうか。
相手が誰だろうが躊躇したのを見た事が無い。
ヤーゴは今更ながらに呆れていた。
「うおおおおっひゃっはあーっ!」
唯桜の雄叫びが辺りに響く。
襲い来る死人を殴り倒し、蹴り飛ばす。
だが、流石は死人である。
倒れても倒れても立ち上がってきた。
「伊達に死んでねえってか」
唯桜が感心する。
ヤーゴも銃を抜くと死人を撃ちまくった。
だが、これではキリが無い。
いずれ弾も尽きる。
「唯桜さん、何とかしてくれえっ!」
ヤーゴが叫ぶ。
「しゃあねえな、これならどうだ!」
唯桜が両腕を死人に向ける。
前腕部分が開いて銃身が現れる。
ドパラタタタタタタタタタタタッ!
エネルギー弾が機関銃の如く連射された。
闇夜の中を光の玉が飛ぶ。
辺りは一瞬明るく照らされた。
無数の弾が死人の群れに吸い込まれる。
当たった奴から吹き飛んだが、腕をもがれても腹に大きな穴が開いても、お構い無しに立ち上がってくる。
まさに不死身だった。
「ゾンビ野郎、流石に反則じゃねえか……」
唯桜が舌打ちをする。
「……ゾンビ? そうかゾンビか」
唯桜は何か思い出した。
「確かゾンビを火で焼いていたな。昔、映画で見たぜ」
唯桜はエネルギー弾の発射から火炎放射へと攻撃を切り替えた。
ゴオオオオオオオオオオオッ!
一直線に炎の線が死人の群れへと伸びる。
瞬く間に死人の体へと引火した。
動きの遅い死人は燃えながらも構わず前進し続けたが、数歩進むうちに燃え尽きて地面に崩れ落ちた。
唯桜は辺りに炎を撒き散らした。
次々に炎は燃え広がり、あっという間に死人は全滅した。
「中々面白い趣向だったが、解ってみればただの雑魚だな」
唯桜が笑った。
ヤーゴもロンメルも、どっと疲れが出た。
すぐ側で案内役の男が腰を抜かしている。
「いつまで腰を抜かしてやがる。早く案内しろ」
唯桜が男の尻を蹴った。
男はひいひい言いながら立ち上がると、また先を歩き始める。
所々崩壊し、廃墟と化した教会に入って行く。
唯桜達はその後に着いて行った。
礼拝堂を抜け、脇の扉に入る。
細い通路を歩き、幾つかの扉を無視した。
そして広い部屋へと辿り着く。
「あそこだ。あの地下にドン・ロッゴが居る」
男は部屋のすみに有る床の入口を指差した。
「地下室か」
ヤーゴが呟く。
「本当か? あからさまに罠っぽく無いか?」
「本当だ、俺も何度も入ってる。けど……」
「けど、何だよ」
ヤーゴがその先を促した。
「さっきの死人でも解るだろ。もう気付かれている」
男はこの中に入るのが恐ろしいと言わんばかりである。
実際、恐ろしいのだろう。
「まあ、良い。じゃあ、俺が見てくるぜ」
例によって唯桜は全く怖じ気づかない。
幹部自ら率先して入ると言うのも妙な話ではあるが、こう言う場合の唯桜は本当に頼もしい。
「唯桜さん、何かあったらすぐに呼んでくれよ」
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