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三
玄関の前まで必死に辿り着いた。
両開きの扉を開こうとした。
だが鍵が掛かっているのかびくともしない。
「ふふ……やっぱりか」
早くも全てが終わった。
さっきの時点で終わる筈だった物が、ほんの一分かニ分伸びただけだった。
もう駄目だ。
立ってさえ居られない。
俺は背中で片方の扉にもたれ掛かる。
そしてその場にズルリと崩れ落ちた。
ガチャリ……
静かに音がした。
そして俺のすぐ横で、滑る様にゆっくりと扉が開いた。
俺は力無くぼんやりと扉の上方を見上げる。
開いた扉の間から、女が無表情にこちらを見下ろしている。
美人だ。
俺が抱いた感想はこの状況には場違いな物だった。
もうどうでも良くなった人間の感想なんて、どこか他人事なものだ。
黒く長い髪が神秘的だ。
あまり彫りが深くなく、それでいて切れ長の目。
深淵を思わせる漆黒の瞳。
細く華奢な顎。
白人ではない。
どこの異人種だろうか。
少なくとも大陸の人間では無さそうだ。
ひょっとしてエルフか?
「貴方、誰?」
女が静かに言った。
心配している風でも無い冷たい言い方だ。
かと言って敵対心も感じない。
単純に疑問に感じて尋ねていると言った感じだ。
「失礼……もし良かったら……助けてはもらえませんか……」
俺はそう言うのが精一杯だった。
出会いの挨拶としてはこれが適当なのかどうかもはや解らなかった。
思ったことをストレートに口にしただけだった。
「……」
女は一瞬沈黙した。
何か考えているのか、外観からは全く変化を読み取れない。
「……どうぞ」
そう言うと、女は大きく扉を開いて俺を中へと促した。
「感謝します……ですが、お恥ずかしい事なのですが一人で立つこともままなりません……少し手をお貸しいただけませんか……」
何とか立ち上がろうと試みるが、今や力尽きようとしている自分には血で滑ってロクに立ち上がることさえ出来ない有り様だった。
産まれたての子馬も斯くやである。
「……」
女はそんな俺を冷やかに見つめていたが、やがて手を差し伸べてくれた。
「……あ、ありがと……オおッ……!?」
礼を言い終える前に俺の声は裏返った。
俺の二の腕を掴まえた彼女の力は、か弱い女性のそれでは無かった。
まるで牛か馬の様な力で軽々と俺を引き上げる。
怪力と言うのはこう言うのを言うのだろう。
本物の怪力を俺は生まれて初めて目の当たりにした。
ほとんど自力を使わずに、俺は屋敷の中へと足を踏み入れた。
大きな屋敷の割には豪華さや絢爛さは感じられない。
妙な違和感が漂っている。
やがて一つの扉の前へと辿り着いた。
客間だろうか。
そんな俺の感想など全く意に介さず、女は扉を開き中へと足を踏み入れた。
両開きの扉を開こうとした。
だが鍵が掛かっているのかびくともしない。
「ふふ……やっぱりか」
早くも全てが終わった。
さっきの時点で終わる筈だった物が、ほんの一分かニ分伸びただけだった。
もう駄目だ。
立ってさえ居られない。
俺は背中で片方の扉にもたれ掛かる。
そしてその場にズルリと崩れ落ちた。
ガチャリ……
静かに音がした。
そして俺のすぐ横で、滑る様にゆっくりと扉が開いた。
俺は力無くぼんやりと扉の上方を見上げる。
開いた扉の間から、女が無表情にこちらを見下ろしている。
美人だ。
俺が抱いた感想はこの状況には場違いな物だった。
もうどうでも良くなった人間の感想なんて、どこか他人事なものだ。
黒く長い髪が神秘的だ。
あまり彫りが深くなく、それでいて切れ長の目。
深淵を思わせる漆黒の瞳。
細く華奢な顎。
白人ではない。
どこの異人種だろうか。
少なくとも大陸の人間では無さそうだ。
ひょっとしてエルフか?
「貴方、誰?」
女が静かに言った。
心配している風でも無い冷たい言い方だ。
かと言って敵対心も感じない。
単純に疑問に感じて尋ねていると言った感じだ。
「失礼……もし良かったら……助けてはもらえませんか……」
俺はそう言うのが精一杯だった。
出会いの挨拶としてはこれが適当なのかどうかもはや解らなかった。
思ったことをストレートに口にしただけだった。
「……」
女は一瞬沈黙した。
何か考えているのか、外観からは全く変化を読み取れない。
「……どうぞ」
そう言うと、女は大きく扉を開いて俺を中へと促した。
「感謝します……ですが、お恥ずかしい事なのですが一人で立つこともままなりません……少し手をお貸しいただけませんか……」
何とか立ち上がろうと試みるが、今や力尽きようとしている自分には血で滑ってロクに立ち上がることさえ出来ない有り様だった。
産まれたての子馬も斯くやである。
「……」
女はそんな俺を冷やかに見つめていたが、やがて手を差し伸べてくれた。
「……あ、ありがと……オおッ……!?」
礼を言い終える前に俺の声は裏返った。
俺の二の腕を掴まえた彼女の力は、か弱い女性のそれでは無かった。
まるで牛か馬の様な力で軽々と俺を引き上げる。
怪力と言うのはこう言うのを言うのだろう。
本物の怪力を俺は生まれて初めて目の当たりにした。
ほとんど自力を使わずに、俺は屋敷の中へと足を踏み入れた。
大きな屋敷の割には豪華さや絢爛さは感じられない。
妙な違和感が漂っている。
やがて一つの扉の前へと辿り着いた。
客間だろうか。
そんな俺の感想など全く意に介さず、女は扉を開き中へと足を踏み入れた。
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