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十四
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震える俺の唇から微かな嗚咽が漏れた。
泣いていた。
男のくせに泣くんじゃないと仲間を叱咤してきた俺がいつ以来だろう。
思い出せないくらい子供の頃以来に泣いた。
「……宗教的な何かが関係あるのか」
そんな俺を意図的に無視したのか、それとも本当に興味が無いのか、オオムカデンダルは壁に向かってそう言った。
俺はゆっくりとオオムカデンダルの向く方向に視線を移した。
壁には犠牲者の物であろう血で、何かの紋様らしきものが描かれている。
新しい物ではない。
血はすでに黒く変色していた。
「プニーフタール……」
間違いない。
これはプニーフタールを信仰する狂信者達の紋章だ。
「ぷにーふたーる?なんだそりゃ」
オオムカデンダルが眉毛をひそめて振り返った。
「……邪神の名前だ。それを崇める狂った奴等がプニーフタールの象徴として代わりにその紋様を崇めている。誰もプニーフタールなんて見たことないんだからな」
俺は混乱していた。
怒りと悲しみと恐怖が同時に心を支配している。
自分が今、どういう感情なのか正直なところはっきりとは判らない。
だが。
あの化け物野郎がやったと言うことだけはハッキリしている。
ヤツに対する憎しみだけが沸々と沸き上がってくる。
「……やってやるッ……ぶっ殺してやる!」
俺は出来る限り優しく彼女を床に降ろした。
フックを抜くことはできなかった。
フックごと降ろした。
「待ってろ……俺がヤツをぶっ殺してやるからな……そしたら直ぐに医者へ行こう……」
オオムカデンダルは何も言わずに俺を見ていた。
「なんだ」
俺は自分でも何故か判らないまま、突っ掛かるようにオオムカデンダルに言った。
彼の表情が俺を鼻で笑っているように感じたせいかもしれない。
ただの気のせいかもしれなかったが。
「いや別に」
オオムカデンダルはそう言って視線を天井へ向けた。
ギィ……
微かに物音が聞こえた。
俺の背中に電流のような感覚が走る。
ギィ……
また聞こえた。間違いない。
俺はビビってなどいない。
恐ろしさに後悔するのはヤツの方なのだ。
心の中で俺は自分にそう語りかける。
ギィ……
段々とその音は大きくはっきりとしてきた。
近付いてきている。
これは足音だ。
「あんだけ悲鳴をあげりゃあジジイでも気づくだろうさ」
オオムカデンダルはそう言って鼻で笑った。
コイツ、俺を馬鹿にしているのか。
ガタッ
階段の入り口に何者かの気配が現れる。
オオムカデンダルはそこをじっと見ている。
特に怯えたり焦ったりしている様子もない。
やはり何も判っていないが故の態度だ。
しかし、彼はこの惨状を見ても取り乱さなかった。
俺はその事だけが少し引っ掛かっていた。
泣いていた。
男のくせに泣くんじゃないと仲間を叱咤してきた俺がいつ以来だろう。
思い出せないくらい子供の頃以来に泣いた。
「……宗教的な何かが関係あるのか」
そんな俺を意図的に無視したのか、それとも本当に興味が無いのか、オオムカデンダルは壁に向かってそう言った。
俺はゆっくりとオオムカデンダルの向く方向に視線を移した。
壁には犠牲者の物であろう血で、何かの紋様らしきものが描かれている。
新しい物ではない。
血はすでに黒く変色していた。
「プニーフタール……」
間違いない。
これはプニーフタールを信仰する狂信者達の紋章だ。
「ぷにーふたーる?なんだそりゃ」
オオムカデンダルが眉毛をひそめて振り返った。
「……邪神の名前だ。それを崇める狂った奴等がプニーフタールの象徴として代わりにその紋様を崇めている。誰もプニーフタールなんて見たことないんだからな」
俺は混乱していた。
怒りと悲しみと恐怖が同時に心を支配している。
自分が今、どういう感情なのか正直なところはっきりとは判らない。
だが。
あの化け物野郎がやったと言うことだけはハッキリしている。
ヤツに対する憎しみだけが沸々と沸き上がってくる。
「……やってやるッ……ぶっ殺してやる!」
俺は出来る限り優しく彼女を床に降ろした。
フックを抜くことはできなかった。
フックごと降ろした。
「待ってろ……俺がヤツをぶっ殺してやるからな……そしたら直ぐに医者へ行こう……」
オオムカデンダルは何も言わずに俺を見ていた。
「なんだ」
俺は自分でも何故か判らないまま、突っ掛かるようにオオムカデンダルに言った。
彼の表情が俺を鼻で笑っているように感じたせいかもしれない。
ただの気のせいかもしれなかったが。
「いや別に」
オオムカデンダルはそう言って視線を天井へ向けた。
ギィ……
微かに物音が聞こえた。
俺の背中に電流のような感覚が走る。
ギィ……
また聞こえた。間違いない。
俺はビビってなどいない。
恐ろしさに後悔するのはヤツの方なのだ。
心の中で俺は自分にそう語りかける。
ギィ……
段々とその音は大きくはっきりとしてきた。
近付いてきている。
これは足音だ。
「あんだけ悲鳴をあげりゃあジジイでも気づくだろうさ」
オオムカデンダルはそう言って鼻で笑った。
コイツ、俺を馬鹿にしているのか。
ガタッ
階段の入り口に何者かの気配が現れる。
オオムカデンダルはそこをじっと見ている。
特に怯えたり焦ったりしている様子もない。
やはり何も判っていないが故の態度だ。
しかし、彼はこの惨状を見ても取り乱さなかった。
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