見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四四

「ギャウウンッ……!」

 痛みを訴えるように狼が声をあげる。
可哀想だが仕方がない。
手加減できる余裕などこちらにもないのだ。

 倒れた狼の頭部にバルバが執拗に攻撃を加える。
やがて狼は動かなくなる。

 一対一なら巨大な狼にも決して負けるような彼らではないようだ。
ならば少しずつでも数を減らしていくしかない。

「ゥオオオオオン!」

 何処からともなく狼の遠吠えが聞こえる。
それを合図に草の中に潜んだ狼たちが一斉に移動を開始した。

「なんだ?どこへ行く?」

 ガイが注意深く狼たちの動向を見守る。

 ザザザザザザザザザ……

 草が波打つ。
茂みの中の狼が移動している。
その波は廃墟の方へと向かっていた。

「せっかく決めたハンドシグナルも意味ないわね」

 ディーレが皮肉混じりに笑う。

「後を追うぞ」

 そう言ってガイが先頭を進む。
俺たちはガイの後に続いた。

 狼たちは廃墟の中に入っていく。
まさか狼たちの寝床になっているのか。

 廃墟の前までたどり着いた俺たちは、あらためて廃墟を見上げた。
元は教会らしいが今は見る影もない。

「ずいぶん大きいな。教会ってより聖堂だったのか?」

 ガイが建物を見上げながら言う。

「バルバは気にしないの?」

 ディーレがバルバに尋ねた。

「拙僧は多神教だからな。別に気にしない」

 そう言って入り口に近づいた。

「おい、危ないぜ。先頭は俺に任せてくれ」

 ガイがバルバを引き止め、自分が先頭となって入っていった。
衛士はその辺り徹底している。

 陽がかなり傾いてきている。
夜になるのも時間の問題だ。

 廃墟に一歩足を踏み入れる。
天窓はなくなっていて、明かりがダイレクトに入ってくる。
とは言え裏手は森になっていて、陽が低くなってくればすぐさま辺りは真っ暗だ。
もうすでに森に陽が掛かっていた。

「この雰囲気……ただ事じゃないわね……」

 ディーレの生唾を飲み込む音が俺にまで聞こえる。
確かに何もないのにも関わらず、この気配は明らかにおかしかった。

 つい今さっきここへ入ってきた狼たちは、一体どこへ消えたのか。

 ディーレは静かに魔法を唱えた。

 センス・エネミー

 索敵の魔法だ。
生命の有り無しや、魔力の有り無しを関知する。

「!?」

 ディーレが思わず小さな悲鳴を漏らす。

「どうした?」

 ガイがディーレのただならない反応に気づいた。

「何なのこれ……こんな魔力感じたことない……!」

 ディーレは危うく腰を抜かしそうになっていた。
こんな所で動けなくなられては困る。

「魔力?魔物か」

 俺はディーレを支えながら辺りを見回す。
あんな巨大な狼が天然物だとは思えない。
だが、それほどの魔力を秘めていたようにも思えなかったのだが。
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