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四五
「出てこい。居るのは判ってるぜ」
ガイが声を張り上げた。
相手が何者か判らないがこちらの侵入に気付いていない筈はなかった。
狼ならば人語は理解しないだろうが、正体が判らない以上呼び掛けておくのは常套手段だ。
「ふふ。人間なのにやるもんだ。今までのとは違うな」
突然声が廃墟の中で響き渡る。
明瞭で通る声だが、冷たく威圧的な声だ。
これが人間の声か。
俺は本能的に自分が緊張していることに気付いた。
「何者だ。姿を見せろ」
ガイが声の主に話しかける。
「はははっ、残念だが今は無理だ。もう少し待ち給え」
声の主はそう言って姿を現すのを拒否した。
なんだ?
俺たちと会話しておきながら、その存在を隠す意味などあるのか?
『今は無理だ』と言った。
どういう意味なんだ。
声の主の不可解な態度に俺は違和感を覚える。
ディーレの呼吸が浅く、速くなっている。
顔色も悪い。
「どうした?」
俺は心配して声をかけた。
「駄目……こいつは駄目よ。相手が悪い。撤退するべきだわ」
ディーレが震える声でそう言った。
ガイとルガが顔を見合わせる。
「レオ、バルバ。ここは一旦撤退しよう」
ガイが意を決したように言った。
おそらく彼らのパーティーはディーレのセンス・エネミーに絶大な信頼を寄せている。
今までもそれでピンチを切り抜けてきた過去があるのだろう。
この潔いまでの撤退の決断は、他のパーティーでは中々見られない。
つまりディーレの言葉は信頼性が高いということだ。
「……判った。言う通りにしよう」
俺はバルバと顔を見合わせてそう答えた。
今度は殿をガイに任せて、俺が先頭になって廃墟の出口へ向かう。
「おっと。お帰りかい?つれないじゃないか」
声の主がそう言うと、入り口の前に狼が突然現れた。
「!?」
一体どこから湧いて出た。
俺たちはいつの間にか退路を絶たれている。
この声の主がこいつらの飼い主という訳か。
ずいぶんとよく躾られている。
この巨大狼を統べるとはどんな奴なのか。
「……ちっ。いい加減姿を見せろ。他の人間はどうした」
ガイが声の主に尋ねた。
さすがのガイも表情に余裕がない。
今このパーティーがピンチだということは明らかなようだ。
「聞いてどうする?どうせもう二度とは会えんと言うのに」
「……どっちの意味だ。もう殺してしまったのか?それとも俺たちを始末するつもりだからか?」
「ふふふ、判らないヤツだな。だから聞いてどうするんだ?」
ガイの頬を汗が伝う。
「……さあて。どうするかね」
ガイが声の主にではなく、自分自身に小声で自問した。
ガイが声を張り上げた。
相手が何者か判らないがこちらの侵入に気付いていない筈はなかった。
狼ならば人語は理解しないだろうが、正体が判らない以上呼び掛けておくのは常套手段だ。
「ふふ。人間なのにやるもんだ。今までのとは違うな」
突然声が廃墟の中で響き渡る。
明瞭で通る声だが、冷たく威圧的な声だ。
これが人間の声か。
俺は本能的に自分が緊張していることに気付いた。
「何者だ。姿を見せろ」
ガイが声の主に話しかける。
「はははっ、残念だが今は無理だ。もう少し待ち給え」
声の主はそう言って姿を現すのを拒否した。
なんだ?
俺たちと会話しておきながら、その存在を隠す意味などあるのか?
『今は無理だ』と言った。
どういう意味なんだ。
声の主の不可解な態度に俺は違和感を覚える。
ディーレの呼吸が浅く、速くなっている。
顔色も悪い。
「どうした?」
俺は心配して声をかけた。
「駄目……こいつは駄目よ。相手が悪い。撤退するべきだわ」
ディーレが震える声でそう言った。
ガイとルガが顔を見合わせる。
「レオ、バルバ。ここは一旦撤退しよう」
ガイが意を決したように言った。
おそらく彼らのパーティーはディーレのセンス・エネミーに絶大な信頼を寄せている。
今までもそれでピンチを切り抜けてきた過去があるのだろう。
この潔いまでの撤退の決断は、他のパーティーでは中々見られない。
つまりディーレの言葉は信頼性が高いということだ。
「……判った。言う通りにしよう」
俺はバルバと顔を見合わせてそう答えた。
今度は殿をガイに任せて、俺が先頭になって廃墟の出口へ向かう。
「おっと。お帰りかい?つれないじゃないか」
声の主がそう言うと、入り口の前に狼が突然現れた。
「!?」
一体どこから湧いて出た。
俺たちはいつの間にか退路を絶たれている。
この声の主がこいつらの飼い主という訳か。
ずいぶんとよく躾られている。
この巨大狼を統べるとはどんな奴なのか。
「……ちっ。いい加減姿を見せろ。他の人間はどうした」
ガイが声の主に尋ねた。
さすがのガイも表情に余裕がない。
今このパーティーがピンチだということは明らかなようだ。
「聞いてどうする?どうせもう二度とは会えんと言うのに」
「……どっちの意味だ。もう殺してしまったのか?それとも俺たちを始末するつもりだからか?」
「ふふふ、判らないヤツだな。だから聞いてどうするんだ?」
ガイの頬を汗が伝う。
「……さあて。どうするかね」
ガイが声の主にではなく、自分自身に小声で自問した。
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