見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六三

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 いつの間にか、あのミミズクも空を飛ぶ巨大な塊もいなくなっていた。

 オオムカデンダルさえ、もうどこにもいない。
まったくもって不思議な男だ。
確かに説明したところで理解できないだろう。
俺はとっくに諦めている。

「これ以上長居は無用だな」

 俺は皆に向かって言った。

「肝心のヴァンパイアは逃がしてしまったが……」

 ガイが力なく言う。
ガイだけではない。皆、疲労困憊だ。

 予定とはまったく違う大物と遭遇したのだ。
倒すことは元より無理だし、全員生きている事の方が奇跡と言えた。

「とにかく戻ろう。依頼は終了だ」

 俺はそう言って皆の所へ近付くと、一緒に座り込んだ。

「ただし、少し休んでからな」

「でも、まさかレオが魔法を使えたとはねー」

 ディーレがニヤニヤしながら言った。

「確かに剣士が魔法を使うのは、無くはないが珍しいな」

 ガイもそう言うと俺を見た。

「止してくれよ。あれは子供の頃に習ったほんのイタズラだ」

 俺は恥ずかしくて話を終わらせようと試みた。

「えへへ。あれエルフは子供の頃イタズラでよくやるんだよね」

 ルガが笑いながら言った。

「へえ、友達同士イタズラでもするの?」

「ううん。だいたいは里の人間とかに」

 ディーレの質問にルガは悪びれもせずに答える。
ここにいるのは全員人間なのだが。

「俺もエルフに習ったんだ。よく覚えてないんだが、子供の頃に何故かエルフの子とよく一緒に遊んでいた」

 俺は子供の頃一緒に遊んでいたエルフの子を思い出していた。
記憶は曖昧だったが、タンブルの魔法を教わって一生懸命に練習したことは鮮明に覚えている。

 村の大人に物陰からタンブルの魔法を掛けて転ばせた。
そうやってイタズラをしたものだ。
まさか俺が魔法を使えるとは知らない大人たちは最後まで俺を疑わなかったが。

「でも魔法を使えるってこと自体凄いことよね。だって普通は魔力がない者には魔法の習得は無理じゃない」

 ディーレはそう言って俺を見る。

「そうでもない。他の魔法はちっとも身にならなかった。タンブルだけさ」

「それはまた不思議ね。どんな小さな魔法でも、使えるならば魔力は宿っている筈だわ」

「じゃあ、もともとタンブルしか使えないくらいのわずかな魔力だったんだろう」

 俺はそう言って立ち上がった。
結局俺は魔法ではなく剣の道に進んだのだ。
魔法の才能は俺にはない。

「さあ、そろそろ行こう。朝までには戻りたい」

 俺は皆に手を貸して起こした。

「報酬は出るのか?」

 ルガが歩きながら尋ねた。

「ああ。結果は残念だったが真相は判ったんだ。依頼は達成だ」

「良かったー。こんなに大変な目にあったのに報酬無しだったらどうしようか心配だったんだー」

 ルガはそう言うと安堵のため息をついた。
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