見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七ニ

「こんなところで何してる?」

 俺は声に振り返る。
そこには女が一人たっていた。
どこから入ってきたのか。

「……そっちこそこんな危険な場所に何の用だ」

 俺は訝りながら女を見た。
こんな場所に入ってくるような格好ではなかった。

 なんと言うか、普段着である。
小さな里や田舎で見かけるような女性の普段着だ。
足元に目をやる。
裸足だった。

「放っておいてよ。私は日課なんだから」

 女はそう言うと近付いてきた。

「アンタこそ何してんの。冒険者らしいけど死にたくなければ帰った方がいいわよ。ブラックナイト級でもここへは近寄らないんだから」

 俺の格好を一目見てそういった。

 日課だと言ったな。
この女がひょっとしてあの資料を作ったのか。
いや、まさか。

「アンタが斡旋所にここの資料を作ってやったのか?」

 俺は女に問いかけた。
女は俺の顔を繁々と覗き込む。

「アンタあれを見たの。なのにここへ来るなんて、見たのに来たなら大馬鹿者だわ」

 どうやら本人らしい。
どう見ても普通の一般人だ。
装備も普段着だし訳が判らなかった。

 薄汚れてはいるがまだ若い。
いや、かなり若く見える。
二十歳かそこら辺だ。

 黒ずんだ頬や、痛んだ髪の毛を無造作に束ねた格好が彼女をみすぼらしく見せている。
そのせいで老けて見えるのかもしれない。
だが、実際にはかなりの美人なのだろうと判る。

「アンタ……いや、君こそこんな場所で日課なんて、一体何をしている」

 俺はストレートに疑問をぶつけた。

「どうでもいいでしょ、そんな事。他人には関係ないわ」

 取りつく島もない。

「……そうか。なら詮索は止めておこう。だが、俺も帰れないんでね」

 俺はそう言うと、気持ちを切り替えた。
俺だって他人に構っていられるほど余裕はない。

「……はん、冒険者ってのはどいつもこいつも欲の皮の突っ張ったのばっかりね。どうせミスリル銀がお目当てでしょうけど、命あっての物種よ」

 女はそう言って後ろから着いてきた。

「ミスリル銀は確かに目的だが、俺だって来たくて来たわけじゃない。人の命が掛かってるからな。帰れない」

 俺はそう言いながら先を急いだ。
モンスターに遭遇する前に一歩でも先へ進みたい。

「命が掛かってる?どういうこと?」

「……話すと長くなるからな、詳しくは説明しない」

 ここまで言って、オオムカデンダルみたいな言い方になっているのに気付いた。

「……ゴホン。大怪我で生死の境を彷徨っている仲間がいる。それを助けるのにどうしてもミスリル銀が必要らしい」

 俺は最低限の事だけ説明した。
女は俺の話を聞いた後、何も言わなくなった。
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