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七九
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俺たちは坑道の入り口まで駆け寄った。
坑道内がどうなっているのか、ここからはナイーダさえ知らない。
しかし隠れるところもない坑道の外に居続けるのは、それはそれで危険だ。
こんな時にレンジャーが居れば。
俺はなんとなくルガたちの事を思い出した。
だが、こんな危険なところへ来てくれとは言えない。
ましてやミスリル銀の件は俺の個人的な用件なのだ。
まあ、無い物ねだりはしても仕方ない。
今ここにある材料だけで何とかしなければ。
坑内をうかがってみる。
耳を済ませても特に何も聞こえない。
モンスター類特有の獣臭さも感じなかった。
この場面で剣士に出来ることはあまり多くはない。
ならばおれ自身、『レオ』として出来ることはないか。
タンブルぐらいか。
タンブルは足を使って立っている者にしか効果はない。
相手が蛇のように足を持たないか、鳥のように空中に浮いているような場合には、もちろん効かない。
それから当然ながら『立っていなければ』効き目はない。
つまり寝ていたり座っている相手にも効かないということだ。
子供がイタズラに使う程度の魔法である。
大きな風車や水車は生活の役に立つが、子供が遊ぶオモチャの風ぐるまを小麦を挽いたりするのに使わないのと同じ理屈だ。
冒険者が戦闘で使う類いの魔法でないのだ。
「……ま、俺に出来ることはこのくらいか」
だが何もしないよりはマシだろう。
俺は坑道内に向けて小声でタンブルを唱えた。
「タンブル」
しかし、当たり前ながら何も起きない。
取り敢えず、立って歩き回っているモンスターは居ないと言うことか。
それが判っただけでも意味はある、と思いたい。
これだけで安心して入っていける理由にはならないのは説明した通りだ。
俺はバックパックからランプを取り出した。
ランプ本体をひねるとカチッと音がする。
パッ
ランプは突然光を放ち、辺りを煌々と照らした。
どういう理屈で光るのかは判らなかったが、オオムカデンダルがくれたランプだ。
普通のランプよりも明るく、炎も使わない。
俺の知らない類いのマジックアイテムだ。
「行こう」
俺はランプを掲げると先頭に立って歩きだした。
その後ろをナイーダがゆっくりと着いてくる。
どの程度の深さなのか。
山の頂上付近ということを考えれば、そう深くはないばずだ。
坑道内は外とは違って何の形跡もなかった。
本当に何もない。
人のいた形跡も、モンスターが争った痕跡もない。
モンスターはともかく、人間はここまで入れていないという事か。
あんなにたくさんの冒険者たちの痕跡が外にはあるのに、誰一人として中まではたどり着けていないのか。
そこに今、足を踏み入れている。
俺は緊張に冷や汗をぬぐった。
坑道内がどうなっているのか、ここからはナイーダさえ知らない。
しかし隠れるところもない坑道の外に居続けるのは、それはそれで危険だ。
こんな時にレンジャーが居れば。
俺はなんとなくルガたちの事を思い出した。
だが、こんな危険なところへ来てくれとは言えない。
ましてやミスリル銀の件は俺の個人的な用件なのだ。
まあ、無い物ねだりはしても仕方ない。
今ここにある材料だけで何とかしなければ。
坑内をうかがってみる。
耳を済ませても特に何も聞こえない。
モンスター類特有の獣臭さも感じなかった。
この場面で剣士に出来ることはあまり多くはない。
ならばおれ自身、『レオ』として出来ることはないか。
タンブルぐらいか。
タンブルは足を使って立っている者にしか効果はない。
相手が蛇のように足を持たないか、鳥のように空中に浮いているような場合には、もちろん効かない。
それから当然ながら『立っていなければ』効き目はない。
つまり寝ていたり座っている相手にも効かないということだ。
子供がイタズラに使う程度の魔法である。
大きな風車や水車は生活の役に立つが、子供が遊ぶオモチャの風ぐるまを小麦を挽いたりするのに使わないのと同じ理屈だ。
冒険者が戦闘で使う類いの魔法でないのだ。
「……ま、俺に出来ることはこのくらいか」
だが何もしないよりはマシだろう。
俺は坑道内に向けて小声でタンブルを唱えた。
「タンブル」
しかし、当たり前ながら何も起きない。
取り敢えず、立って歩き回っているモンスターは居ないと言うことか。
それが判っただけでも意味はある、と思いたい。
これだけで安心して入っていける理由にはならないのは説明した通りだ。
俺はバックパックからランプを取り出した。
ランプ本体をひねるとカチッと音がする。
パッ
ランプは突然光を放ち、辺りを煌々と照らした。
どういう理屈で光るのかは判らなかったが、オオムカデンダルがくれたランプだ。
普通のランプよりも明るく、炎も使わない。
俺の知らない類いのマジックアイテムだ。
「行こう」
俺はランプを掲げると先頭に立って歩きだした。
その後ろをナイーダがゆっくりと着いてくる。
どの程度の深さなのか。
山の頂上付近ということを考えれば、そう深くはないばずだ。
坑道内は外とは違って何の形跡もなかった。
本当に何もない。
人のいた形跡も、モンスターが争った痕跡もない。
モンスターはともかく、人間はここまで入れていないという事か。
あんなにたくさんの冒険者たちの痕跡が外にはあるのに、誰一人として中まではたどり着けていないのか。
そこに今、足を踏み入れている。
俺は緊張に冷や汗をぬぐった。
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