見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一四四

「で、どうする?何か良い案でもあるのか?」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲に尋ねた。

「……いや。残念ながら何もない。だいたい、この世界にツテもコネもないからな」

 蜻蛉洲が肩をすくめて見せた。
そりゃ、そうだろうが、自分で提案しておいて何もないと言うのは蜻蛉洲にしては珍しい気もする。

「……そうか。よし、じゃあ拐いに行くか」

 オオムカデンダルがあっけらかんと言った。
俺はオオムカデンダルを二度見したが、それより早く蜻蛉洲が怒鳴った。

「なんでそうなる、違うだろレオを使えよ!」

 俺はオオムカデンダルを二度見し終わった後に、今度は蜻蛉洲を二度見した。

 俺?

「レオ?ああ、なるほどな。おいレオ、お前が行って拐って来いよ」

 俺はさらにオオムカデンダルを二度見した。
もういいだろ。首がおかしくなる。

「俺に拐って来いって……正気か?」

「コイツを使うってそう言う意味じゃない!」

 蜻蛉洲が食い気味に声を荒らげた。
たぶんオオムカデンダルはわざとやっている。
蜻蛉洲はからかわれているのだ。

「判ってるよ、冗談だ冗談」

 オオムカデンダルは半笑いでそう言った。

「だが、俺はメイジもウィザードも知り合いにはいない。彼らは魔法職の上級職だ。簡単には知り合えない」

 俺は会話に割って入った。
このまま期待されても困る。

「でも、さっき帝国軍にはたくさん魔法使いが居たじゃないか」

 オオムカデンダルが不満そうに突っかかる。

「確かにそうだが、彼らは帝国に忠誠を誓っている。宮仕え、言わば役人だ。簡単には抱き込めんよ」

「宮仕えねえ……公務員て事か。まあ、とは言え、お前に頼むしかないのは変わらんみたいだし、近いうちに何か考えておけ」

 オオムカデンダルはそう言ったが、もう笑ってはいなかった。
どうやらこれはマジな話らしい。
どうしたものか。

「……そう言えば、あの赤ん坊は?」

 俺は思い出したように尋ねた。
実際、今の今まで忘れていた。

「赤ん坊は医務室の方でカプセルに入っています。令子様が先ほどお連れになりましたので」

 管理人が答えた。
さすがはマネージャー。
オオムカデンダルの後だと余計に安心する。

「そう言えばアザも調べなければな。あれはあれで興味深い研究対象だ」

 蜻蛉洲が顎を触りながら言った。
その顔はどこか嬉しそうにも見える。
さっきまでの剣幕はどこへやら。
オオムカデンダルよりも、よっぽど好奇心旺盛な男だ。

「……一気にやる事が増えたな。忙しくなりそうだ」

 俺はため息混じりに呟いた。
別に嫌な訳ではなかったが、ますますプニーフタールを追う事からは遠ざかっている。

「別にたいした事じゃないだろ。拠点を作って、お前らを治療して、アザを調べて、そんでもって誰か拐って来いってだけだ」

 オオムカデンダルが容易い事だとうそぶいた。
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