見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一六二

 どうしたもんか。どうしたもんか。
歩きだしても、まだどうするべきか決まらない。
面倒ごとはごめんだ。
かと言って、聞いてしまったものを聞かなかったことにするのは難しい。

 なかなか無視して良いような悲劇の内容ではない。
コイツが痛い目を見るなら、それもアリかもしれないが、何の罪もない女性や子供が悪党の餌食になるのは忍びない。

 亭主が不甲斐ないと家族が不幸になるパターンか。
そうは言っても悪党と言うのは向こうから絡んでくると相場が決まっている。
旦那ばかりが悪いとも言えないか。

 さて、どうしたものか。

「……おい」

 ドスの利いた下品な男の声がした。
俺は我にかえって声の主を見る。

「……てめえ、なんの真似だ」

 気がつくと、いつの間にか俺は四人の間に割り込むように座っていた。
四人の顔を眺めながら考え事をしていたら、無意識に彼らの輪に入っていたらしい。

 何やってるんだ俺。
この体になってから、なんだか少しおかしい。
精神的に無頓着になったと言うか、なんと言うか。
改造前と後では、怪人になった事に対する嫌悪感も無くなっていた。

「おい!誰だてめえはッ!」

 リーダー格と思しき男が怒鳴った。
その瞬間、店中の視線がこのテーブルに向けられた。

 喧嘩か、と誰かが言った。
好奇の視線と面倒ごとを嫌う視線が混じりあっている。

 喧嘩は表でやってくれよ、と言う声も聞こえる。
喧嘩をするつもりはないんだが、どうすればこの場を収められるか。

 この期に及んでまだ決められない。
もう既に傍観者ではないのに。

 そうだ。
もう当事者だ。
だったらこの展開がどうなろうと俺の責任。
好きにやっても良い筈だ。

 だったら流れに任せてみよう。
俺は何もしたくない。
第一、面倒くさくなくていい。

「おい!なに黙ってやがるッ!てめ……」

「エールお代わり。あとさっきの肉のヤツも」

 俺はカウンターに向かってお代わりを催促した。
となりのむさいヒゲ面が何か言っているが、知らん。
正面の普通の男は口が開いてる。
閉じろよ。
馬鹿みたいだ。

「聞こえないのか!この野郎ッ!」

 となりのヒゲ面が、やおら立ち上がった。
いや、立ち上がろうとしたが立てなかった。
俺がテーブルの上で、ヤツの左手首を押さえたから。

 虫ピンで標本にされたかのように、男は手首をテーブルに押し付けられて立てない。
なるほど、なかなかの怪力ぶりだ。
これが改造人間の力か。

「は、離せッ!この馬鹿力!」

 ヒゲ面が吠える。
しかし、なにもできやしない。

「てめえ!」

 仲間の二人が見かねて立ち上がった。
三人が相手か。
しかし、俺は驚くほど冷静だった。
一ミリも負ける気がしないのだ。
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